雷門のサブキーパー、親友と共に   作:iRa@作家になりたい

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一方(*音無視点)

 

 

 

 染岡先輩視点が上手く書けなかったので、無慈悲にもカットしました。

 技量が追いついたら書くかも。

 

―――― ―――― ――――

 

 

 

 

 

 四月下旬らしい心地よい風が吹く校庭のベンチで、わたしこと音無春奈は悩んでいた。というのも幼馴染であり親友でもある、シンの様子がおかしいのだ。

 

 彼女がサッカー部に所属したばかりのときは普通だと思っていた。なんでもエンドウって名前の先輩に感化されたとか。その先輩は男の人みたいだし、彼女にもついに春が来たのか~なんてはじめは考えていて、シンも慣れない運動で身体を動かしづらそうにしていたものの、一緒に帰ったり、学校で会話したり、放課後買い物をしに行ったり普通の女子中学生らしくしていたんだけど。それにしては様子がおかしくなっていった。

 

 一つ目は、身だしなみにより気を使うとか、そういった兆候が何一つ見られなかったこと。それどころか隠してるつもりなんだろうけど絆創膏が身体中についていたり、体操着の土の汚れが落ち切っていなかったり、授業中にも居眠りをしかけていたり……と気になる点が多かった。理由を本人に問いただしてみても、「それはタイヤを…………じゃなかった。まあ部活で色々あって……」などとはぐらかされてしまう。……タイヤ?

 

 二つ目に、サッカー部について個人的に調べていたが、なんともまあよくわからないことが多々あったということ。四十年前の雷門中フットボールフロンティア準優勝。その時のチーム、伝説のイナズマイレブン。それからの衰退。それに反して今では部員数が試合もままならないほど少ない、ボロボロの部活だということ。そしてかのサッカー部が参加目標としているフットボールフロンティアは、()()()()

 

 二つの情報から導き出される結論としては、いろいろなものがある。

 そもそもサッカー部に所属していない、言葉巧みに騙されて部員にさせられた、感銘を受けたはいいが試合に出られないことに気づいていない、サボリの口実、サッカー部の連中に目をつけられてイジメの対象に……などなど。

 いろいろと考えてはみたけど、わたしには真実は分からなかったし、これ以上考えても悩みが晴れるとは思えなかった。――――ならば、本丸に突撃あるのみ!!

 

 時は放課後。わたしはサッカー部の部室前に立っていた。部室の見た目はボロボロで、女子が惹かれそうな外観ではないどころか、正直言ってわたし一人で入るには、かなり勇気がいる。――――それでも、彼女の身が心配だ。いざとなったら新聞部の権力を借りてでも、シンを助ける――――そう意気込んで、思いっきりドアを開ける。

 

 

「たのもーっ!」

 

 

 中には、雷門中の男子が4~5人ほど、机の周りにたむろしていた。

 お菓子、ゲームなどが目立ち、とてもまじめにサッカーをするようには見えない。部室は汗臭く、女子用のスペースも、彼女の痕跡もどこにもない。

 そんなことを思っていると、強面の人がゆらりと立ち上がって、わたしの前に立ちはだかる。低い声が響く。わたしも気圧されるわけにはいかない。

 

 

「……なんの用だ。部長なら今はいないぞ」

 

「わたしは新聞部の一年の音無といいます。……赤井心という一年生を、ご存じありませんか」

 

 

 すると目の前の男が、わずかに目を見開いた。しばらくして心底面倒そうに、まるで話などしたくもないとばかりに口を開く。

 

 

「ソイツは確かにサッカー部に入ってる――――だがソイツのことなら何一つ知らねえ。今も何処ほっつき歩いてるんだか」

 

「あんまり話したことないでやんす」

 

「円堂先輩か、木野先輩なら知ってるかもッスね」

 

「――――てめぇら余計な事をしゃべるな。お前も帰れ」

 

 

 机の方にいる二人が、それぞれゲームとお菓子に触れながら、話に割り込んでくる。だが目の前の人は、それを好ましくは思っていないようで、早々に追い返されてしまった。どうやらシンがサッカー部に所属していることは確定みたい。シンは彼らとは馬が合わなかった、ということだろうか?エンドウ先輩、彼がキーであるに違いない。

 

 

 

 *

 

 

 それからは暇なときにサッカー部やグラウンドに顔を出しつつ、シンとエンドウ先輩を探し出す日々を過ごした。だが、どこにもいない。シン本人をつけようとしても、授業終わるとすぐどこか行っちゃうから、追いつけないし……

 探し始めてもう一週間。わたしはいい加減しびれを切らしていた。思わずこんな愚痴を、こぼしてしまうほどに。

 

 

「いったいどこにいるのよ……」

 

「何がよ」

 

「シンがどこで部活をしてるのかなって」

 

「基本的に河川敷だけど」

 

「なるほど河川敷ね! いくらグラウンド探しても見つからないわけ…………って、シンじゃない!? なんでここに!?」

 

「なんか頭抱えてたから、心配になって」

 

 

 心配させている本人が言うのか。

 無意識のうちにシン本人に「探していた」と聞かれてしまうポカをやらかしたものの、彼女は隠すそぶりもなく、練習先が河川敷だという。

 やっていることをはぐらかしている割に、こんなところは正直に話すのかと、わたしは正直拍子抜けした。しかし彼女が堂々と嘘をつくこともないだろうから、わたしは素直にその様子を見学しに行くことになった。

 

 

 

 *

 

 

 

 河川敷に現れたシンは、見たこともないユニフォームを着てはいたが、私も普段からよく知っている、無愛想だけどクールないつもの彼女だった。だけどなぜか、今までより頼り甲斐があると言うか、余裕があるように見える。絆創膏だらけで、やんちゃな小学生みたいになってるくせに。

 

 

「面白いモノ、見せてあげるよ」

 

「……面白い、モノ?」

 

 

 いうが早いか、シンが持ってきたのは大量のボールの入ったカゴ。そのボールがペナルティエリアぎりぎりに、十個綺麗に並べられた。彼女は慣れた手つきでグローブをはめ、ゴール前に立つ。そこにかの円堂先輩と稲妻KFCっていうジュニアチームのみんなが、ガヤガヤとしながらやってきた。

 

 

「ではセンパイ、アレお願いします」

 

「おう!いつでもいいぞ」

 

「アレが見られるぜ!」

 

「楽しみだな~」

 

 

 ひと際沸き立つギャラリーたちにのまれつつあるわたしは、何が起こるのか分からず様子を見る。すると、

 

 ズドン!

 

 重い音が響くと同時に飛んで行ったのは、円堂先輩の本気のシュート。それは女子の体育で飛んで来たら恐怖を覚え、思わず目をそらしてしまうレベルのもの。それがセットされたボール十発分、休むことなく飛んでいく。

 いくら彼女でもこんなことをしては怪我をする。思わず止めようとしたその瞬間。

 

――――彼女の動きが、予想の範疇を上回った。

――――ボールが、()()()

 

 彼女はそれを止める、弾く。全てを流れるように、ときどき燃えるような拳で打ち返しながら対応していく。ゴ-ルには、何も通していない。ボールも爆発したように見えたものの、すべてしっかり原型を保っている。

 

 

「“熱血パンチ”は十発中三発、まあ悪くないか」

 

「カッコいいよ、シンねーちゃん!」

 

「いいぞー!その調子で全部“熱血パンチ”になるようにな!」

 

「了解です。次もよろしくお願いします、センパイ」

 

 

 息が切れていない。それどころか、まるで余興のようにメニューをこなしていく。だがシンの目が、頬を叩く熱の余波が、皆の熱狂的な声援が――――遊びじゃないと()()()()()

 コレが、彼女の見つけた……サッカー。

 

 新聞部である私は、話は聞いていた。映像だけは見ていた。

 サッカーのトップクラスの選手が、「必殺ワザ」を使うことが出来ると。

 そのオーラは凄まじく、他のスポーツには見られない超常現象を引き起こすと。

 だが目の前の幼馴染が、()()()()それを使えるのか?

 サッカーの経験のない彼女が、この境地に至るまでいったいどれほどの努力を積んだのか――――いくら器用な彼女でも、大量の絆創膏や、体操着の落ちぬ砂の色や、授業中にまで表れる睡魔を隠し切れぬほど――――その凄さは、私ですら推測できた。

 

 シンの爛々と輝く瞳に映るのは、もはや目の前の彼だけ。その笑みはとても、恋人に向けるものではなく――――例えるなら生きる意味を見つけたような、今までの私が見たことも想像したこともなかったもの。

――――知らなかった。彼女がここまで物事に情熱をかけられたなんて。

 

 

「あのおねーちゃんは、一ヶ月前からここに来たんだ。初日はおこられるかとおもったけど、今ではすっかりウチの一員さ!」

 

「シンねーちゃんは、サッカーどんどんうまくなってるんだ。最近はすっげーワザも出せるようになったし。円堂にーちゃんより怖いけど、試合すると楽しいんだ!」

 

「そうなんだ……そうなんだね……」

 

 

見知らぬ子供たちから聞く、見知らぬ親友(シン)の一面。その非現実さは、まるで夢のよう。気づけば時は流れ、練習は終わっていた。

 

 

 

 *

 

 

 

「ねぇ、出来れば怒らないでほしいんだけどさ……実はとんでもない特訓してたんだよね、普通にサッカーするだけじゃ強くなれないと思ってさ……親にもナイショで」

 

 

 練習直後。後片付けの最中に、シンはそんなことを告白してきた。そんなこと、言われなくてもわかってるよ。あんな心配を、わたしにかけるぐらいだもんね……

 そんなふうに話す彼女は、どこか不安げで、それでいていつもどおりに――――わたしを気遣うものだった。あんなことが出来るようになるなんて、自分もいっぱいいっぱいだったろうに、わたしを思ってくれる彼女は、まぎれもなく――――昔から一緒にいた親友そのものだった。

 そんな彼女を、一瞬でも疑ってしまった、信用してなかった自分を、わたしは恥じた。だったら、わたしはどうすればいいか。答えは簡単だ。

 そんな親友を支えてあげるのが――――親友(わたし)の定め。

 

 

「良ければ見ていく……?」

 

「――――うん、見せてよ。シンの特訓」

 

 

 彼女は器用だけど、不器用なのだ。

 彼女の目指す道はたぶん、険しい。普通の男の子が頑張るよりもしんどいだろう。

 きっとケガとは隣り合わせ。大会で有名になれるメドもない。

 だけど、わたしは信じよう。

 夢に向かって一生懸命な彼女を。

――――わたしは彼女の親友であり、()()()()()()、だからね。

 

 

 

 

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