作者は「超次元サッカー」に関して、にわかじゃない自信はありますが、「サッカー」についてはにわかもいいとこです。
―――― ―――― ――――
「――――それでさぁ、ソイツすっげえシュート打つんだ!」
「そんな選手、雷門にいたんですねえ」
「でも、ソイツサッカー部入るの乗り気じゃないんだよなあ」
「なら仕方ありません、諦めましょう」
「……お前なあ」
「強さより、やる気の方が大事です」
現在は放課後。例によって河川敷に行く最中のこと。
わたしと円堂先輩は、昨日現れたという謎のストライカーについて話している。わたしは昨日ずっと、鉄塔広場で必殺ワザの研究をしていたので、実際のところは見ていない。
ちなみに最後の一文はお世辞ではない。わたし自身やる気があったからこそ、ここまで出来るようになったという自負があるからだ。
「あっそれと」
「……それと?」
「帝国学園と試合することになった」
「帝国学園!!? そっちの方が大問題じゃないですか!? あの天下の帝国ですよ!」
「だって仕方ないだろ!! 今日決まったことだし!!」
「……ちなみに言いたくないんですけど、負けたら?」
「廃部だって」
「おお……もう……」
もう何も言うまい。大方偉い人に乗せられたとか、そんなんだろうし。
だが、今サッカー部を潰されるのは非常に困る。ならば、特訓して廃部を取り消してもらえるくらい、強くならなくては……三軍相手くらいだったら、何とかなるかもしれないからね。
*
それから話をして、円堂先輩と木野先輩が部員集め主体で動くことになった。
わたしは……まあ口下手だし友達もそんな居ないし、仕方ないけどさ。まあいつものメニューを通すかな……といつものように鉄塔広場についてタイヤを背負う。タイヤももう馴染んだな……と思っていると。なんとも見慣れない影が目に入るではないか。
――――幽霊とかはニガテなんだけどなあ。
恐る恐る近づく。昔のように春奈に泣きつける年でも立場でもないし……かといって確認せず練習できるほど精神は豪胆にもなっていない。
でも近づいてみたら、拍子抜けもいいとこだった。呆れと脅かされた怒り半分に、影に声をかける。
「……何してんのよ、壁山」
「ひぇっ」
「驚いたのはこっちよ……先輩方までいるし」
にしても、いつもの特訓場所に他のサッカー部員が来るとは思わなかった。聞くと、わたしがやけに強くなってたから、理由を知りたくて染岡先輩を筆頭についてきたらしい。いいとこあるじゃん。正直、見直したよ。
さすがにタイヤはみんな背負ってなかったけど、唯一染岡先輩だけがタイヤ背負いつつ食らいついてきた。本人が言うには、「お前にだけは負けん」とのこと。
そんな調子で、あとは試合を迎えるだけ……部員さえ集まればいいんだけど。ああ、栗松と宍戸、ちょっと残ってよ。やりたいことがあるから。
*
試合当日。
とりあえずは、部員が十一人以上、確かにそろったこと。これはめでたい。目金先輩……はさておき、陸上部の風丸先輩とか、器用そうな松野先輩とかは即戦力になりそうだ。かの謎のストライカーは……入ってこなかったみたいだけど。そもそもわたし、参加できるのかなあ……入れなかったら十一人ギリギリだ。
曇天の中、帝国を待つ。
やがてわたしたちは目を疑う光景を目にした。さきほどのめでたさが霞むような。
装甲車の群れ。レッドカーペット。敬礼する控えたち。……ナニコレ、現実?
というか一軍と戦うんですか円堂先輩!? 聞いてないですって……!
あ、壁山が逃げた……
ふと見た観客席には……春奈がいてくれた。大体の観客は帝国のプレイに興味があるだけで、
だがしかし春奈の表情は、何故か観客の盛り上がりとは正反対。この曇り空のように暗く、落ち込んでいるように見えた。――――コレは絶対に何かあったね。試合が終わったらそれとなく聞いてみよう。
それとあれから円堂先輩も修行して、“熱血パンチ”を打てるようになっていたようだ。“ゴッドハンド”同様、まだ安定して発動には至ってないみたいだけど。しかし自分の技をポイポイ取られると、正直悔しい。結局自分だけの技は見つからなかったしなあ……
しかしそれでも、試してみたいことはある。勝てぬと諦めるには、あまりにも早すぎる。自分の全力を、とりあえずぶつけてみなくては。
「センパイ、わたしにキーパー、やらせてもらえませんか……! 試してみたいんです、自分の実力を」
*
試合開始。わたしたちのボールだ。
やれることはやった。風丸先輩のドリブル、宍戸からのパス、半田先輩のフェイント、染岡先輩のシュート。今のチームに出来る最大限の攻め。
だが、わたしには分かっていた。円堂先輩も認めたくはないだろうが、分かってはいるだろう。アレは、
――――ならば、かの有名なキング・オブ・ゴールキーパーに通るわけはない。スローボールが飛んできたかのような余裕をもって、相手のキーパー、源田は対応してみせる。
「オレの仕事はここまでだ」
「さあ始めようか……帝国のサッカーを」
いうねぇ。なら、見せてあげるよ。決まった勝負ほど、面白くないものなんてないしね。ボールはハーフラインに戻ってくる。そのとき敵のキャプテンが歪んだ笑顔を浮かべる。コレは――――強者が遊ぶ時の
「いけ、寺門」
「おらあっ!!」
今まで人生で受けてきた中で、最強のシュート。それが手を抜いて出せるってことだから、末恐ろしい。
でもさ、このシュートは散々受けてきたタイヤと
位置もど真ん中。カウンター決めるなら、ここっ!
「
シュートが豪炎に包まれ、容易くその向きを変える。先のシュートとほぼ同じ勢いで今度は敵のゴールへ一直線。これでもキング・オブ・ゴールキーパーには通用しないだろうが――
「ハイでやんす!」
「いっけーっ!」
栗松と宍戸が足を使って、熱を纏うボールをゴール端に誘導。ボールは勢いよく、敵ディフェンスを抜けていく。
一週間の練習の賜物。これならば――――
相手キーパーは驚いた表情を浮かべながらも、対応してみせた。
「チッ」
「……予定変更だ、“デスゾーン”開始」
本気になっちゃったか。点が入らなかったのは残念だけど……口の端が吊り上がるのを感じる。
「……そうでなきゃ、面白くない」
――――もっと、もっとだ。日本の頂点とやらを見せて頂戴。
*
男三人が空中浮遊している異様な光景。その三人が黒いオーラを出しながら、同速で回転。蹴られたボールの色は、漆黒。物理法則も何も、あったもんじゃない。わたしは必殺ワザの定義を改めなくてはならないかもしれない……
――――そんなところが、日本の最高峰の必殺ワザに対する感想だった。
「「「“デスゾーン”!」」」
あんな馬鹿げたフォームから、これまた馬鹿げた威力、スピード。
はたしてアレに、こちらのワザが通用するか……?
だが、最大限の抵抗をさせてもらう。諦めるわけにはいかない。それがサッカープレイヤーとしての矜持。
「“熱血パンチ“!」
一瞬の均衡。だが勢いは確実に向こうの方が上。ずるずる、ずるずるとゴールへと押し込まれていき――――わたしは、失点を許した。
*
「ごめんなさい、センパイ……止めきれませんでした」
「……気にするな、アレはオレたちが受けることになった初めての必殺シュートだ……腕はまだ、動きそうか?」
「痺れていますがなんとか……しかし今のわたしにはアレは、止めることは難しいと思います――――後を任せても、いいでしょうか」
「……いいのか?」
「悔しいですが、サッカー部をみすみす潰されるわけにはいきませんから。ディフェンダーとしての方が、わたしは役に立てるかと」
「そうか、あとは“ゴッドハンド”に任せてくれ!」
――――わたしはまだ、役に立てる。
*
結局つまらないサッカーをする相手だ。
ディフェンダーになったわたしは、帝国のプレイに対し、そんな感想を抱く。
彼らは強く、わたしたちは弱い。そんなものは誰にだってわかることだ。
油断してくれるなら、わたしたちとしては普通ありがたいというものだろう――――だがわたしは、残念ながら普通ではなかった。
だがあの相手をなめまわすような、上から目線のサッカー。そんなものは楽しくない。面白くもない。
せっかく本気になったと思ったのに……やるなら全力できなよ。それが出来るんでしょ?
全力を出す必要がない相手って言われてるみたいで、鼻につくんだよ……!
――――渾身のスライディングを、いけ好かないキャプテンに向けて繰り出す。相手は何事もなかったかのように軽やかに跳躍し、わたしを突破してみせた。こっちのチームの誰も近寄れないと踏んで、こっちを振り返って笑みを浮かべるおまけ付きで。
「フッ……なかなかやるな」
「ああっもう、腹立つ!」
逆に煽ってんじゃないの、アイツ!
円堂先輩もまだ、“デスゾーン”のスピードに追いつけていないみたい。“ゴッドハンド”のタイムラグは、なかなかキツイみたいだ。
――――点差は、開いていくばかり。
*
深紅の心臓のオーラが、敵を吹き飛ばす。
観客席とフィールドに、何度目かのどよめきが起こる。
「“レッドハート”!」
わたしが、絶対に負けたくないと思ったもの。
それが、わたしの武器になると思った。
たとえ力や技術が、相手に劣っていたとしても、「心」だけは折れたくなかった――――負けたく、なかった。
だから、その感情がこうして必殺ワザに昇華されてくれて、わたしは凄く――すごく嬉しかったんだ。
「いくよみんな! 試合時間はまだ残ってる! 何としても、点を取りに行くよ!」
声がいつもより張り上げられる。思いがいつもより伝えられる。
ここに来て、自分自身に勇気をもらったみたいに。
ふと前を向けば、染岡先輩と目が合った。わたしを見る視線には、なんの敵対心もなく、ライバルだと認めるような瞳が、そこにはあった。
「お前に士気が引き上げられたのは、少し面白くねえが……いい声出せんじゃねーか赤井」
「……染岡先輩!」
「今は試合中だから……今までのいざこざ忘れて、乗ってやるよ! お前の気合に!」
初めて、チームとして分かり合えた瞬間だった。
このサッカー部は、こんなところで終わっていい存在なんかじゃない。
そう思うと、より気合が入るというもの。
「行くぞお前ら!!!」
「「「「「「おおおーっ!!!」」」」」」
染岡先輩の声とともに、攻撃が開始される。
「“キラースライド”!」
「うわあっ!」
「まだまだあっ!」
ボールを取られようと、仲間がわたしに敵を誘導してくれる。
「くっ、ドリブル技なら!」
「“ジャッジs「“レッドハート”!」
「ぐわっ……!」
そして、わたしが“レッドハート”で、ボールを奪う。
さらに、もしボールを通してしまっても、
「負けてたまるかーっ!!!」
「「「“デスゾーン”」」」
「“ゴッドハンド”!」
ズバァァァァン!!!
「止めただと……」
こちらにはボールのスピードに慣れた、チームの大黒柱がいる。
完全にこちらのペースだ。
これならもしかしたら、いつかは逆転できるかもしれない。
この部活を消すには惜しいと、思わせられるかもしれない。
サッカー部も、もしかすれば。
――――わたしたちの反撃は、まだ始まったばかりだ。
―――― ―――― ――――
(打ち切りエンドじゃ)ないです