鬼滅の刃RTA 上弦の弐単独討伐   作:一億年間ソロプレイ

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書き切れないので無惨様の中継しときます

「無惨様~、(生まれてすらいない)兄が見つかりました~! 唯一の肉親との縁をありがとうございます! さよなら! しかしだね、折角の再会だとい(ブツン)」
「は? は……?」(ボコボコボコボコォ)
「なんか無惨がすごく怒って……いたた……」眼球ぐりぐり

なんかすごく見られてました。ありがたい気持ちと共に恐怖も湧き上がる。
それからたくさんの誤字報告をありがとう、本当にありがとう。
必死に絞り出して続きを書いたところで俺は失礼する(不定期更新)


EX1:上弦の壱戦 part14 / 赤い月夜の果てに

 

「霜柱、仏塚文寿郎。上弦の弐、撃破! 撃破ァ!」

 

 聞こえた鎹鴉の声にヒューッ、と口笛を吹く隊士がいた。

 

「へえ、やるじゃんアイツ。早速上弦の首取ったってか、有言実行だなオイ」

 

 振り向きざまに襲い来る鬼の頸を斬る。人の胴体程のある太さの首を斬った隊士の階級は(きのえ)――柱を除いて最高位の階級だ。

 

「賽河隊士! この辺りの鬼は全て斬ったようです!」

「そうか。んじゃ次の鬼どもをぶちのめしに行くぞ」

「「「はい!」」」

 

 彼は自分の実力を正しく判断している。甲になろうが柱には到底敵わないと、柱稽古の際に思い知った。

 呼吸法の技量は勿論、筋力や速度からして違う。何をしたらあの域へ辿り着けるというのか。

 いや、辿り着くことは目的ではない。あくまで自分の命が脅かされない為の手段を学ぼうとしたが、自身ではその手段を得ることさえ難しいと悟った。

 

 最終決戦なんぞの渦中に巻き込まれたくはなかったが、鬼の血鬼術のせいかそうはいかなくなった。

 折角あれこれと同じ隊の者に言って抜けて出てきた先で博打をやっていたというのに。負けそうな辺りで抜け出した所で突然落下して……。

 

 ――仕方ねぇ。

 

 鬼の巣窟に来てしまったからには他の隊士たちをまとめる指令役程度はやろうと考えた。

 現場に指揮官がいるのといないのとでは動きやすさが違う。――その点、あの男は指揮官によく向いていた。判断が早いのだ。それで一体、何人の隊士が助かったことか。

 奴の動きをなぞる訳ではないが、生き残る為には他者の動きを学ぶことが必要だ。

 この場に残る最後の鬼の首を斬り、賽河は刀に付いた血を軽く払って鞘に納めた。

 

「その調子で無惨の首を斬れ。俺はお前たちを消耗させねぇ為にも、そこそこの鬼の頸を斬っておくからよ」

 

 生きて帰ったら博打にでも誘ってやろう、そう考えながら隊士たちは城の中に満ちる鬼の首を狩る為に走っていく。

 

 

 

 

 

 また一方では――行動を共にする竈門炭治郎、冨岡義勇らが鎹鴉の報せを聞いた。

 

「聞きましたか義勇さん! 仏塚さんが上弦の弐を倒したって!」

「ああ。アイツは、自分の言葉を実行したのだな……。流石だ、文寿郎」

「自分の言葉……、ですか?」

「文寿郎と上弦の弐は対峙したことがある。上弦と相対した文寿郎たちから情報を聞こうと柱合会議が開かれた際、奴は『あの鬼は必ず自分が滅する』と言った。並々ならぬ覚悟だった。あそこまで真剣な顔をした文寿郎を見たことが無かった」

「そう、だったんですか……」

 

 いつも匂いはしないがニコニコとしていた文寿郎の顔が浮かぶ。そんな人が真剣な顔で、上弦の弐を滅するだなんて……。

 

(あの人も、何かを失ったのだろうか)

「――行くぞ、炭治郎。俺たちも動くぞ」

「はいっ!」

 

 二人は無限に続く城を走る。――そして、彼らの元に炭治郎と縁深い上弦の参が襲撃するまであと少しのこと。

 

 

§

 

 

 そこは酷く、冷たかった。

 入り口と思われる扉は爆破されていたけど、その周辺はちりちりと霜が降りていて、とにかく冷たい。厚着をしていても凍える程に冷え切った……真冬の夜のよう。

 

(入り口が爆破されてる……。しかも、香ってくるのは藤の花。藤の爆弾をあの人が使った……?)

 

 しのぶの元にも仏塚文寿郎が上弦の弐を撃破したという報せは届いた。そして、上弦の弐は恐らくこの場にいる。――情報共有の際、上弦の弐は冷気を扱うと聞いた。

 だからここを爆破したのは仏塚文寿郎。一体何のために、という疑念は視界に入る光景で吹き飛ばされた。

 

 そこは睡蓮の生える池も、その上を渡る橋も、壁も、何もかもが白く白く凍りついていた。あまりの冷たさに池には大輪の霜の花があちらこちらと咲いている。

 全てが凍えきった様な景色の中心にいたのは、雪を被ったような髪をした男。――忌むべき男、仏塚文寿郎の体が崩れ落ちる様だった。

 此方に背を向けていたが、揺らいだ体に大きな怪我が見え、さっと胆が冷えた。

 

「大丈夫ですか!」

 

 霜を踏み鳴らす音が煩わしく感じる程、――その男が、いつでもにこやかに立っている男が倒れた瞬間を恐ろしく感じた。

 

 駆け寄ったが当然の如く彼の体温は酷く冷たかった。血が巡っているかも怪しいぐらいだったが、斬られたであろう傷口から見える赤色が彼を人間だと示していた。

 彼は日輪刀を握っている、――上弦の弐と対峙していた筈だ。

 鎹鴉は先程、上弦の弐を撃破したと鳴いていたが周囲には誰もいない。

 ……たった一人で、上弦の鬼を相手取ったというのか。

 

(傷の手当が先、でも体が異様に冷たい……。姉さんの体を壊した鬼の血鬼術のせい?)

 

 即座に珠世らと共に開発した血鬼術の症状を軽くする血鬼止めの薬を投与し、目に見える傷の手当てに掛かる。

 心臓部にかけて鋭い刃物を振り下ろしたような一直線の傷、これが一番の重傷だ。しのぶは携帯している医療道具を開き、傷口の消毒に当たった。

 

(この冷たい空間のおかげで傷口の血が凝固してる。――まだ助かる、けれど)

 

 仏塚文寿郎は、驚くほどに静かだった。手当てをしているというのに心臓の鼓動も、息遣いも、何もかもが死体の様に静かだった。

 

(死んでいる……なんてこと、無いわよね。……嘘、――呼吸で止血してる訳じゃない)

 

 目に見える大きな傷を手当し終えたしのぶは思いついた可能性に。

 

(まさかこのまま、……死のうとしたの?)

 

 

 

 ――体が震える程の怒りを感じた。

 

 

 

「上弦一体を倒した程度で、死のうとしたんですか。貴方は……、私より力もあるのに?」

 

 その言葉を震える唇で零した途端、カッと全身の血が沸騰した。煮え立つ血がぐるぐると巡り、彼女の体温を上げ始めた。

 しのぶは仏塚文寿郎のことが嫌いだ。人形の様に薄っぺらな笑顔が嫌いだ。馴れ馴れしい軽薄な態度が嫌いだ。

 最愛の姉を助けておきながら、彼女を曇らせるこの男が嫌いだ。

 

 だがそれ以上に。

 自分よりも力も呼吸も扱えるこの男が生きる気力を見せず、死を選ぼうとした事が――許せない。

 

「貴方の評価を知ってますか、あの鬼殺隊最強の悲鳴嶼さんと並ぶ程に称されているんですよ。実際、貴方の功績は凄いですよ。同じ任務になったらどの隊士だって安心してその背を任せる。鬼殺隊の中で貴方のその力は求められている」

 

 お前が幾人、鬼殺隊士の命を救ったと思っている。

 彼が大方の鬼の攻撃を庇ってくれたお陰でまだ命があったのだと。彼が鬼を凍らせたお陰で毒が全部回り切る前に生きて帰ってこれたのだと、何度も何度も蝶屋敷へ来る怪我を負った隊士たちは彼へと感謝をしていた。

 ギリ、と歯が軋む程に彼女は喰いしばる。

 

「体格だってかなり恵まれていますし、筋力だって、肺活量だって、……幾ら私が鍛えようが貴方方の領域には届かないんですよ。身体的不利とはそういうことです。人間は鬼の様に自分で背丈を変えられないし筋肉量を操作することだって出来ない。与えられたこの体で勝負する他ない」

 

 しのぶの体は姉より小さく、そこで成長の果てを迎えてしまった。

 蟲の呼吸――鬼を毒殺する方法を編み出すまでは花の呼吸を使っていたけれども、呼吸で身体能力を上げたとしてもしのぶの力が弱すぎて鬼の頸を斬れたことは、本当に数少ない。

 

 人を食えば食う程、強い鬼ほどその頸は固い。

 何度も鍛錬して筋力を付けた、食べるものにだって気を付けた。

 それでも首は斬れない。己の体には筋肉が付かない。

 

「なのに!」

 

 自分より背丈のある女性の隊士が鬼の頸を容易く斬る。その度に何度、何度、己は小さく育ったこの身体を呪ったことだろう。

 

「貴方は! 認めたくはないけれど、鬼殺隊の中でも最強の一角だというのに!」

 

 姉と「多くの人を助けよう」と約束したのに、彼女のお荷物でしかない自分が嫌で嫌で仕方なくて。

 自分が嫌いな人間の方が自分より人や組織にも貢献していて、――いつだって苦しかった。

 

「何『やる事やったら終わります』みたいに死を選ぼうとするだなんて! ほんっと信じられない……! 許さない、絶対に許さない。――貴方は生きる、必ず生かす!」

 

 激情に駆られながらもしのぶは命の灯火が消えゆく体の原因を探る。傷は治した、血鬼止めは投与した。――足りないならもっと打ってやる。

 

「生きて、無惨を倒しなさいよ!」

 

 抑えていた毒が彼女の口から吐き出されていく。

 手早くアンプル瓶から注射器で中身を吸い取り、彼の腕の血管に打つ。意識があれば痛みで顔を顰めるぐらいにはその手つきは荒い。

 それでも、目覚めない。彼の中の火が消えようとしている。

 

「それに私は約束しているの。姉さんの元に生きて帰るって! 貴方だって、姉さんに()()()()()()()()って言われたんでしょうが! ホンット許さない、許さない許さない! このまま死のうとするだなんて許さない!」

 

 ……冷気は晴れて室温も少しではあるが戻りつつある。だが、それでも体が冷たい。その血が巡りを止めるならばと、彼女は文寿郎の心臓の位置を探す。

 

「姉の言葉を破ろうとするだなんて、私が許すものか!」

 

 ――私の手がお前の心臓の代わりとしてその動きを止めてやるものかと。

 

 後の世に言う、胸骨圧迫による心肺蘇生法を試みた。

 

 

§

 

 

 皆さんこんにちは。初めましての方は初めまして。

 宿敵の頸を斬った後のRTA、始まり――ません。こっからは普通の実況と相成ります。まぁタイム計測は続けてみますが……。

 

 今ポーズ画面開いて好感度一覧見たんですけど、どうして童磨が最高の好感度になってるんですか?

 まだ生きている……、いや、スゥー……、背後霊……。います、いますねこれ……。

 

 お前なんなんだよ!?

 

 突っ込んだところで落ち着きましょう。

 タイマーストップ後に何が起こったかというと、死にかけてたら合流してきたしのぶ姉貴のレスキューで回復しました。はい。

 

 これだけなんですが、想定以上にしのぶ姉貴が辿り着いたスピードが速すぎる。これは間一髪でしたね……、アブナカッタ……(再走)

 

 本来だったらゲームオーバー画面へ移行し、『思いを託しますか?』でエンディング直行の予定だった筈なんです。

 『はい』を押せば無惨討伐エンディングになる筈だったんです(キレ)

 ちなみに『いいえ』で最後にセーブした所に戻ります。もう一回童磨戦とかやりたくありません(断固拒否)

 

 しかもなんというか……、拗らせてます。君とは話したこと無いんですけど……どうして?(素朴な疑問)

 ホモくんが童磨そっくりだから何かしら影響もあったりするんですかね。今回のチャートだとしのぶ姉貴と童磨に接点は無いんですが、運命的な何かがあったり……?

 そっくりアバターじゃない試走段階では普通に「貴方のことは凄く尊敬しています。姉さんも助けてくださいましたし」で好感度高めの状態で終わっていたのに……。

 

 ――蘇生されちゃったものは仕方ないんで、このままホモくんこと仏塚文寿郎が上弦の壱の頸を刈り取り、無惨を日光でジューシーに焼くことにします(宣誓)

 狛犬殿はそのまま炭治郎ら鱗滝一門に一任します。鳴女には愈史郎が自動的に辿り着くんで放置だ放置。

 

 この時点で鳴女を撃破すれば無限城が解体され、最終決戦に移行できますが……、それには無惨側の手下が揃い過ぎてます。

 無惨とタッグを組んだコクシボー+縦横無尽に走って殺しまくる狂悪狛犬殿込みの最終決戦とかマジムリゲーなので一切オススメしません。各個撃破で戦力を削り、鳴女と無惨様に同時アタックを仕掛けてから無限城解体→無惨戦の方が断然に楽です。

 

 先程確認したらしのぶ姉貴の好感度がちょっぴり上がってました。これならちょい融通利くかと彼女への指示を試みたところ、しのぶ姉貴には衛生兵として負傷した仲間の治療をメインに立ち回ってもらえることになりました。やったぜ。

 ほいで現在はしのぶ姉貴と共に上弦の壱の元へ案内され――ではなく直行している最中です。

 

 移動してる最中ですが、成長点を振り分けたいと思います(唐突)

 童磨をソロで討伐したことで――うわぁ、めっちゃ成長点入りました。

 百超えてます、ヤバァ……(恍惚)

 

 仏塚 文寿郎 性別:男 特徴:『冷気』 階級:柱

 

 ステータス

 体力(76/100) 根気(100/100) 筋力(100/100) 防御(50/100) 速度(100/100)

 

 技能

 風の呼吸(100/100) 喧嘩殺法(25/100) 水の呼吸・凪(100/100)

 霜の呼吸(100/100) 全集中・常中(100/100) 炎の呼吸(38/100)

 花の呼吸(36/100) 雷の呼吸(50/100) 霞の呼吸(41/100)

 岩の呼吸(50/100) 獣の呼吸(12/100) 透き通る世界(100/100)

 扇術(47/100)

 

 実は童磨がドロップした鉄扇を回収したら扇術をゲットしていました、なんで?

 これじゃエセ童磨の出来上がりだよ(恐怖) まぁ折角だから入れときますが……

 

 後は透き通る世界をMAX、雷・霞・岩・炎の呼吸にちょちょいと入れ、今までガン放置だった喧嘩殺法くんに残った点を振り分けました。

 喧嘩殺法くんは攻撃力アップもですがその副次効果こそが本質というか。

 対人格闘スキルなので冷気を避けなければならない童磨戦ではあんまり必要無かったのです。

 黒死牟戦やるなら必須スキル……とはいきませんが、可能な限り欲しいスキルではあります。効果は発揮した時にお話いたしましょう。

 

 わはー、透き通る世界MAXは文字通り世界が違いますね。

 無限城編では愈史郎術持ち鎹鴉くんが各上弦の元へ集まる為の必須ガイドなんですが、至高の領域(の手前)になればそれはもう要りません。

 基本的に(100/100)というのは極めたという状態を示しています。

 なので、今のホモくんは常に世界がに見えてますのでぇ……。

 

 黒死牟殿と無惨の位置が

            

            

            レ。

 

 通常の透き通る世界では構造物までスケスケにならないんですが、一般隊士録のオリジナルキャラクターくんのスケスケ視界はどうやら特別製らしいです。壁なんてものがあろうが鬼共の居場所が見える見える……。

 

 もうこうなったら無惨弱体化ボーナスも狙って上弦壱・参同時フィニッシュを狙います。

 繭こもり無惨に到達する時間が早ければ早い程珠世さんレスキューも間に合いますし、無惨とも弱体化した状態で戦えます。

 良い事尽くめですね。無論、それが出来ればの話だがなァァァ!

 

 ということでやってきました、ここがこくしぼー殿のハウスです。もう戦闘が始まってますね。

 玄弥が玄弥になって、オアー! 無一郎クゥンの片腕が消えとるやないか!

 しのぶさん、レスキュー頼んます!(あんぱんもぐもぐ)

 

「分かりました。そちらはお願いします」

 

 オッハー! ドーモ=黒死牟・サン。治りたてほやほやのホモくんがお相手いたします。

 

「ほう……。ここまでの者を見るのは……、実に久しい……。よくその体で……、来たものだ……」

 

 兄上の目敏い強敵シックスEYE’sに適ったみたいです。これでしばらく彼の意識はこちらに向いてくれます。

 強敵と戦い技を極めたいこくしぼー殿は「つわもの」・「弱者」・「不快」の三つの基準によって相手の優先順位を変えます。

 原作をお読みのホモたちならご存知、「つわもの」ならその判断を下した相手に首ったけになります。

 それ以外の基準は基本一刀の元に殺されます。理不尽すぎる……。これが上弦の壱か……。

 

 なんで、こくしぼー戦をまともに戦うには基本「つわもの」ラインに入ることが必須です。

 この基準はステータスだったり、これまでの功績だったりで判断されるようです。ホモくんは高ステータスかつ童磨討伐後なので問題なく入ります。

 んで、原作通りチャートなんで恐らくここに来るのは風柱のさねみん、岩柱の悲鳴嶼女神です。

 このお二人と無一郎きゅんクゥンは「つわもの」ラインに余裕で入ります。

 しのぶ姉貴は「弱者」か行動次第で「不快」、鬼喰いボーイGENYAは何しようが「不快」に入ります。

 ちなみに「弱者」と「不快」の違いは、前者であれば優先順位が低くなり、後者であれば「つわもの」より先に処理されます。コワイ!

 

「しかし……、まこと、あ奴……、童磨に似ておる……。不可思議なり……」

 

 

 ア゛ァ゛ン゛なんだとこの侍ごっこボケ徘徊老人蟹野郎!?

 

 

 失礼、取り乱しました。この程度で取り乱すなど未熟者、未熟者です(心の中のSNB姉貴)

 ここにいつも大事な者をマモレナイ風柱とドッシリドスコイ女神な岩柱が合流する前までに体力を半分削るのが好走の目標です。

 こくしぼー殿は特に冷気耐性は無いので二回分のゲージブレイクで済みます。字にすると簡単ですが、そもそも接敵して攻撃するのが難しすぎるんですよね。

 ということでいつもの霜の呼吸 陸ノ型『月落霜天・烏啼』で冷気アゲアゲ効果と一撃をお見舞いします。

 

「初めて見る……、呼吸だ……。興味深い……」

 

 簡単に受け流されました。が、別にいいです。この緩やかな動きのまま接敵して霜の呼吸 壱ノ型『秋霜烈日』をすると~、はい軽く受け流されます。

 こくしぼー殿は童磨より攻撃をガードしてきます。しかも相手にも根気回復+ダメージを無効化するジャストガードの概念があるので、下手な攻撃を打てばジャスガ祭りしてきてこちらを嬲り殺しにしてきます。は?(キレ)

 

 なのでこれが必要なのです。出でよ『喧嘩殺法』!

 

 ホモくんが(やから)みたいに足を使ってこくしぼー殿の手元を狙い、――おっし成功です。すかさず霜の呼吸 弐ノ型『大霜の雨』による突き技を全部ぶち込んで冷気ゲージが溜まりました。

 そう、『喧嘩殺法』の副次効果とはいわゆるガード崩し。数値が高ければ高い程相手のガードを崩してくれます。

 まぁこのスキル自体が不死川兄貴との試合でしか手に入らない貴重なレアスキルなんで……。通常であれば、岩の呼吸にあるガードブレイク技を会得することで黒死牟戦の対策は取れます。

 

「なかなかやる……。こちらも見せよう……」

「月の呼吸 弐ノ型 珠華ノ弄月」

 

 このモーションは弐ノ型ですね。実に接近しやすいです。というか息してていいのでめっちゃ戦いやすいっすね(RTAの疲れ)

 わー、なんて綺麗な攻撃……。これ全部に攻撃判定があり、当たれば軽く腕が吹っ飛ぶ威力があります。フザケルナー!

 なので当たらない様に隙を見つける……、よりもこれはこの型が有効ですね。

 

「水の呼吸 玖ノ型 水流飛沫」

 

 水の呼吸で唯一元の動きが判明していない玖ノ型くんです。炭治郎たちがその派生させた型である『水流飛沫・乱』を扱うので元の動きは……んにゃぴ、よく分からんです。

 恐らく、沖田総司の三段突きみたく一瞬で接敵する型だったのではなかろうか。という製作陣の考えにより、瞬時に距離を詰める型となっております。

 

 詰めた後は攻撃しますが勿論ガードされて、おら喧嘩殺法ゥ!

 

 崩れた瞬間に霜の呼吸 伍ノ型『堅氷至り』で確実に刃を届け、参ノ型『露霜払い』でこくしぼー殿の追撃を避けます。通常攻撃にもクソ当たり判定の斬撃が飛ぶので要注意。

 

「ほう、血潮が凍る……。この感覚……、ほお…………」

 

 こくしぼー殿がめっちゃ褒めてくれるし目を細めてますね。美少女かな?(お目目グルグル)

 というか鬼にしろ柱にしろ、体格のデカい男が多すぎ……多すぎない?

 あいつ等全員集めてラッコ鍋でも食べたらいいのでは? あ、この場合鬼のラッコ鍋は不死川兄貴(稀血)……?

 

「月の呼吸 参ノ型 厭忌月・銷り」

 

 透き通る世界MAXにしろ攻撃が素早いし攻撃の判断も早い。よっ、妻子と弟を捨ててまで剣の道を選んだ男!

 ただ今は位置が悪いですね。避けるにしろクソ斬撃判定で囲まれて避け切れない。

 ならばジャストガードを狙いたいところですが……、折角この技があるので使いましょう。

 

「水の呼吸 拾壱ノ型 凪」

 

 派生トンチキ呼吸による超常現象なんでもござれな型を含んだガード技ランキングでも一位の座を譲らぬ『凪』です。

 

 発動速度もですが効果もおかしい。ゲームシステム的に言えばジャストガードを狙えるフレーム数を拡大しているようですが(おかしい)

 ジャスガのダメージ無効化に加えて自身の周辺の攻撃とその余波を打ち消してくれます(おかしい)

 

 チートかな?(おかしい)

 

 ただ何発も繰り出せる程根気消費が優しい技では無いのでェ、猗窩座戦では何発も受けてしまったという訳です(それでもおかしい)

 

 痣者になると根気消費も優しくなるから技連発し放題なんスよね。ま、ホモくんにはカンケーないっすけど(鼻ホジ)

 

 凪った所で雷の呼吸 壱ノ型『霹靂一閃』で接近!

 攻撃を……なんかもう長いので省略、炎参『気炎万象』の上から下への斬撃で弾き、水参『流流舞い』で月の呼吸 壱ノ型『闇月・宵の宮』を避けつつ水拾壱『凪』で受け止め霜肆『露の緯・霜の経』で冷気ゲージを半分以上溜められました。

 

「様々な呼吸……。実に愉快適悦……、こうして渡り合うのは……ほんに久しい……」

 

 こくしぼー殿がニコニコしていらっしゃる! スクショして弟殿に見せて差し上げろ!

 でもこちらも童磨戦と違って一々冷気を見据えて避けなくていいのが本当にやりやすくて困る。

 別に攻撃判定も根気計算もジャスガしてれば回避&根気回復しますし、距離取って攻撃よりはガン詰めして攻撃ぶち込んだ方が早い早い。

 

 ということで、はい。ゲージブレイク。

 

「ふむ……。実に練り上げられた技……、肉体……。しかし、痣は無いのか……、残念なことだ……」

 

 痣人(あざんちゅ)じゃない人間に体力半分にされたらこうして痣のことを言及しながらスピードアップしてきます。クソボケがァ!

 視界の端ではしのぶ姉貴が無一郎クゥンへ止血を行い、GENYAをくっつけてます。治療ヨシ!

 彼女は治療したら二人を場外まで連れて行ってくれるので気にせず戦闘続行します。

 

「上弦ってのはテメェかァ……。不気味なツラしてんなァ、オイ!」

 

 不死川兄貴の登場です。頭を垂れて這え。あ、CV間違えました。慢心王の方です彼は。間違えてはいけない。

 彼はしのぶ姉貴にくっつけられている玄弥を見て血管ビキビキになりました。原作と違いスラッシュされる直前の現場は見ていませんが、弟がヤられたことは瞬時に理解したようです。

 愛です、愛ですよGENYA。

 

「テメェか、俺の弟を刻みやがったのは……!」

「兄弟で鬼狩りか……。懐かしや……」

 

 ちらりと一瞬こちらを見ますが無言。

 寂しすぎるのでこっちで勝手に援護しましょう。クゥーン。

 

「風の呼吸 壱ノ型 塵旋風・削ぎ」

「風の呼吸 漆ノ型 勁風・天狗風」

 

 漆ノ型を使うことで攻撃を仕掛けつつ、不死川兄貴の纏う風の威力を倍プッシュ!

 普通に当たればネギトロ! しかし兄上のワザマエによって無効! コワイ!

 おっとあんぱんバフが切れそうなので再度食べます。もぐっとな。

 

「ほほお……。息の合った攻撃……。見事なり……」

 

 とかなんとか言って月壱『闇月・宵の宮』をこちらに向けつつ不死川兄貴へ月伍『月魄災渦』振り出しましたよ。

 やべぇよ……やべぇよ……。初見で受ける型じゃないので、水玖『水流飛沫』で不死川兄貴の前によってからの水拾壱『凪』で庇います。

 『なんか、一人でやった方が早くない?』とは思わず、味方へのサポートは欠かさず行いましょう。上弦戦では気を抜けば柱だろうとすーぐ欠損ゴアグロ表現ばっかりになります。

 

「ッチ、助かった」

 

 素直にお礼が言えて偉いでちゅね~、ヨチヨチ。の選択肢でも返しておきます。さてはこいつ余裕だな?

 見事に血管がビキビキになった不死川兄貴、ビークール! 落ち着いて!(自業自得)

 ようやく兄弟子と会話は出来ましたが、それでも相手は鬼。会話パートが終わるのを待ってはくれません!

 

「月の呼吸 参ノ型 厭忌月・銷り」

「風の呼吸 捌ノ型 初烈風斬り」

「風の呼吸 壱ノ型 塵旋風・削ぎ」

 

 ホモくんが通りすがりに『初烈風斬り』した後に暴走特急SANEMIが突っ込んでいきます。早速こくしぼー殿の理不尽斬撃の仕組みに気付いてその隙を突いたようです。

 ただ闇雲に攻撃してもこくしぼー殿の体力は削れません。攻撃は当たりましたが体力はすぐ回復します。

 刀カッチンカッチンで『赫刀』にするにはホモくん以外の柱が必要です。万力の握力よりかはこちらの方が気付きやすいでしょう。

 ちなみに不死川兄貴はまだ痣を発現させてはいません。

 ということで逐次ホモくんは兄弟子が怪我をしない様サポートしながら……、ま~だ掛かりそうですかね~(痣の発現)

 

「すまない、遅れたようだな」

 

 ヒャッハー! 勝利の女神が降臨したぜェ!

 こくしぼー殿戦を比較的軽傷で乗り越えているというちょっと性能のおかしい悲鳴嶼さんです。後武器に含まれる猩々緋鉱石の純度もおかしい。

 

 鎖がこくしぼー殿の刀で斬れません(驚愕)

 

 恐らく一番日当たりのいい所で採れたんでしょうね。そんな一番良い鉄が女神たる悲鳴嶼さんに巡ってきたのも当然のことでしょう。女神ですから。

 

 は? 胡蝶姉妹が女神?

 その女神姉妹を救った悲鳴嶼さんは大女神ですが? 異論は認めません。

 

 ただまぁ……、ホモくんとの試合の一端で痣発現手前まで行ってしまったらしく、デスノボリはビンビンでいらっしゃる。

 悲鳴嶼女神は上弦戦で発現させなくとも、最終決戦で確実に痣を出します。

 この世における女神の一柱が去ってしまう、なんて悲しいんだ……。世界の損失に等しい、俺は泣いた。

 

 悲鳴嶼女神の肉体に興奮したこくしぼー殿が「鬼にならないか♂」と誘いますが、女神は当然ながら拒否します。

 こうして女神と兄弟子との三対一戦に持ち越します。が、なんとも弾幕ゲーみてぇな呼吸だ。

 この人別ゲーやってま……、弟も別ゲーの登場人物だからお似合いっすね!

 

 お、戦いの最中に不死川兄貴が痣を発現させました。痣人(あざんちゅ)の風柱と岩柱との連携攻撃で着物も剥いでしまったのでクソデカ七支刀――第二形態戦へ移行します。

 嘘です、こくしぼー殿は体力半減+三人で相手すると「まとめてすり潰したる!」となって刀をBIGにしてきます。お前の侍って醜くないか?

 

 水拾壱『凪』で二人が避けやすい様に攻撃を消しつつ接敵して霜壱『秋霜烈日』を叩き込みます。帰り際に霜参『霜露払い』でちょっと距離を取ります。

 第一形態は押せ押せ押せ押せ!の姿勢で攻略できるんですが、第二形態になってからは乱数次第で初見殺しのノーモーション斬撃ブッパですぐプレイヤーキャラを肉塊にしてきます。

 ああほら今出しました。全身から刀を生やして……、それが侍の姿か?

 

 このようにフォロー&ヒットを繰り返しますと~、ゲージブレイク。

 体力がゼロになりました。

 

 ゲージブレイクして頸を斬ったとしてもこくしぼー殿はまだ戦います。

 つまり第三形態戦――、蟹上戦が始まります。

 この蟹上戦は結構簡単です。もうとっくにこくしぼー殿の中で回想は始まっているので今のご自身の姿を見せたら皆さんご存知『侍の姿か……? これが……』で自壊が始まります。

 

 はい、固まった隙を三人で突いて一斉に首をズドンと落としました。

 あっ、赫刀出てんじゃ~ん!

 

 こうするとォ、こくしぼー殿は首の再生を試み――はい、無惨の性癖爆押しスタイルの蟹上になりました。猗窩座の時は普通の姿に戻れるのに、何故こくしぼー殿が首の再生をするとこうなるんでしょうね(謎)

 

 そんで刀に映る自分を見てこう思う訳です。『うわ、私の姿……、醜すぎ……?』と。

 そして背後から弟の亡霊(ゴースト)が囁く訳です、『この国で二番目に強い侍になります』と。

 

 すると勝手に蟹上は自壊を始め、三人で肉体をクラッシュ〇ンディグーするのが定石ですが……。

 ちょっとやりたい事があるのでアクションを起こします。

 

 

 

 突然自分の持っている刀を相手に投げつけて、敵味方を驚かせましょう!(お前を消す方法)

 

 

 

 無ければ玄弥の刀を使います。この為にGENYAの日輪刀があると言っても過言ではない。

 

「これは……」

 

 名を名乗れ、侍。我が名はホモ、お前の首を今から斬る。

 ちなみに風柱と岩柱の両名は固まってこちらを見ています。

 

「…………我が名は、黒死牟。人間の時には、継国巌勝」

 

 

 いざ、尋常に勝負。

 

 

 ということで、蟹上とのタイマン戦がスタートします。ナニかを察した女神が不死川兄貴を抑えているので、ガチ目にサシでの勝負となります。

 

 蟹上スシサシ戦では動きが変わります。

 通常、第三形態戦になったら呼吸も何のへったくれも無い体振り回し攻撃(なお飛ばされる斬撃は軽く胴体を両断する)をするのですが、こうして刀を与えてサシ勝負のフラグを立たせると壱~拾陸ノ型を使用する第一・第二形態時の動きで戦います。

 

 無論、どう言われようが蟹上は第一・第二形態よりも進化した姿なのでステータスはアップしており、呼吸の範囲も馬鹿広くなります。

 なのでやる必要は無いんですね、普通は。難易度をハードからルナティックにしているようなもんです。

 

 第一・第二形態→第三形態に移行、からの自壊させつつ肉体をすり潰す。

 おおよそ本編の流れが黒死牟戦での最短となります。

 まぁ本当に最短なのは第一形態時点でメンタルブレイクさせてから首を斬ることですが……、そんなの縁壱スペックでもないと無理!

 

 ガードには喧嘩殺法、攻撃にはジャスガor凪で接近していきましょう。

 そうそう、月の呼吸の漆ノ型以降は本来クソデカ七支刀の技となりますが、蟹上スシサシ戦では壱~陸と同じく通常の刀の形での型となります。

 それ故に範囲は狭まりますが、その分変則斬撃を盛られております。なにこれクソゲー?

 ですが、蟹上サシ戦の救済措置として『体力回復阻害効果』が無くても体力が減る仕様です。たまげたなぁ。

 

 普通の斬撃でも体力が減り、ジャスガで攻撃をやり過ごしながら色んな呼吸を使いまして……あれは(体力が)ゼロです!

 蟹上の太い首に刀をスラッシュし、終わり!閉廷!以上!皆解散!

 あ、無惨討伐するんでまだ集合しててください!!!

 

「…………ああ、見事」

「……このような、成れの果てになろうと。ただ負けられぬと……、道を歩めど……、何も得られず……」

「後生が生まれ……、次を紡ぐ……」

「そう、か……。俺は……」

 

 

 

 

I n h e r i t a n c e

 

 

 

 蟹上サシ戦が何故必要かって?

 はい、ステータスチェック。

 

 仏塚 文寿郎 性別:男 特徴:『冷気』 階級:柱

 

 ステータス

 体力(76/100) 根気(100/100) 筋力(100/100) 防御(50/100) 速度(100/100)

 

 技能

 風の呼吸(100/100) 喧嘩殺法(25/100) 水の呼吸・凪(100/100)

 霜の呼吸(100/100) 全集中・常中(100/100) 炎の呼吸(38/100)

 花の呼吸(36/100) 雷の呼吸(50/100) 霞の呼吸(41/100)

 岩の呼吸(50/100) 獣の呼吸(12/100) 透き通る世界(100/100)

 扇術(47/100) 月の呼吸(1/100)

 

 無事月の呼吸をゲットできました。これで無惨戦が大分楽になります。

 

 蟹上サシ戦イベントを起こして勝利すると本来覚えられない月の呼吸を覚えることが出来ます。だから、わざわざルナティックモードでのイベントが必要だったんですね。

 最期の最期に侍として死なせることであの赤い月夜から黒死牟こと継国巌勝の時間が進み、死ねるってワケ。

 すいませへぇぇ~ん、縁壱さぁん!

 おたくの兄上そっちに送ったんで焼き尽くしてあげちゃってくださ~い!

 

 黒死牟殿の体も消えたことなので皆で集まり、ムービー大会になります。

 GENYA生存版風柱の独白ムービー、負傷した無一郎クゥンの独白、生存している柱たちの状況整理などなど。タイムを計っている癖でスキップしましたが、別撮りしたものを垂れ流しつつ現状を確認しましょう。

 

 不死川兄貴、痣発現。悲鳴嶼女神、痣無し。お二人とも傷は軽傷、しのぶ姉貴の治療で済みますね。

 無一郎クゥン・玄弥は離脱となりますが後方で援護してくれます。特にGENYAの後方行きはありがたいです。

 オメーが鬼を食ったままの状態だと無惨討伐時に確実に死亡するからよォ。しのぶ姉貴が人間に戻す薬を処方してくれなきゃお前ホンット死ぬからな。

 兄貴を泣かせたくないなら大人しく……後方で無惨に毒をぶち込め。それだけでかなりの貢献度になるから。

 本当に、もうこれ以上鬼を喰うなよゲンヤァァァ!

 

「あの戦いの最中、私にも()()()()()()()()()()

「悲鳴嶼さんが……!? それは一体どのような……」

「私にも分からぬが使えるやもしれぬ……」

 

 柱たちが情報共有する中、ホモくんは鎹鴉でシン・お館様とこれからの連絡を取るところで今回はここまで。

 

「上弦の壱と参、撃破ァ! 撃破ァ!」

 

 おっと、経済柱たちもやってくれたみたいです。

 ビール無くなったんでポン酒を呷りながらほな、また。

 

 

§

 

 

 血潮が、体が凍りつく。何百年もの間に忘れていた、自身の命が脅かされる感覚に鮮明に蘇る記憶。

 赤い月夜に見た、悪夢。

 

 生まれながらの痣者である弟は年老いてなお、生きていた。その弟に哀れまれた、老いた弟の攻撃はまったく見えず、しかし、その次には死んでいた。

 神に愛された縁壱の一撃で死ねなかった己は生きて勝ち続けることを選んだ。

 生きて、生きて生きて、勝つ他ならないのだと。

 

 ずっとその悪夢が続いていたのだと、血潮が凍る――上弦の弐に似た男の一太刀によって思い起こされた。

 

「落とせ落とせ落とせェ!」

「首を狙え!」

 

 日輪刀とは思えぬ棘の付いた鉄球と緑の刀身が己の首に打ち付けられて――その刃が赤く染まるのが見えた。続いて降ってきた三本目の青緑色の刀身で押され、首が落ちた。

 

(縁壱と同じ刀身)

 

 ――何が面白いというのだ。

 節操も無く様々な呼吸を使い、体から冷気を出し、痣すら無い人間の一刀で負けるなど。

 己の寿命など顧みぬ、技や肉体の保存などどうでもいいと切り捨てる人間に圧倒されるなど。

 弟を傷付けられた怒りでひたすらに奮戦し、痣を出した人間に翻弄されるなど。

 

 いいや、まだだ。まだ、意識はある。――首が再生さえすればいいのだ。

 

 一心不乱に纏わりつく人間を振り切れば首が再生し、視界が開ける感覚。常よりも広く、上下を見渡せる。首の弱点を克服すれば己を滅ぼせるのは日光のみ。

 これでまだ己は勝ち続けられる。日輪刀で首を斬られようが死なない、鬼狩りなど最早脅威でも――。

 

(なんだ、これは……)

 

 緑の刀身に映る己の姿を、見た。

 額に生える節ばった不揃いの角。六つの目は焦点が定まることなくぎょろりとあちらこちらを向き、獣染みた乱杭歯が口から溢れるように生え、体の背からは海洋生物にも見える触腕の大小が生えている。

 

(侍の姿か? これが……)

 

 余りにも人の姿からかけ離れた己に、体が止まった。

 

『俺も兄上のようになりたいです』

『俺は、この国で二番目に強い侍になります』

 

 遠い記憶で縁壱が語った言葉が臓腑を貫く。

 

 侍とは、大勢の人間を喰ってまで生き永らえるものだったか。

 侍とは、勝負に負けてなお自らの負けを認めぬものだったか。

 侍とは、――私が目指した侍は、こんな、このような、姿だったか。

 

 認めたくないと引き攣る体と何も答えの出ない自問自答が無意味に響く。

 その中で、突然聞こえた投擲音に反応出来たのは、こちらへ投げられた物が刀だったからだろうか。

 鞘に収まった――あの男が差していたもう一振りの日輪刀。

 

「これは……」

 

 投げつけたのは奇妙な程に上弦の弐に似ている男。そ奴の行動に同じ仲間でさえ驚いていた。

 

「名前を聞こう、侍。俺の名前は仏塚文寿郎。君の首を今から斬るよ」

 

 侍、……刀。――名乗りを上げての果たし合い。習慣づいた癖でその刀を腰に挿す。

 久しく手に触れていなかった日輪刀。鬼となり、鬼狩りと戦う最中で壊れた際に刀を自身の血肉で作ってからは永らく手にしていなかった。

 鞘から少し引き抜いて見えた刀身は鍛えた鍛冶師の腕が伝わる、良き刀だった。

 

「…………我が名は、黒死牟。人間の時には、継国巌勝」

 

 男の狙いは分からない、何故突然このような真似をしたのかは理解できない。

 でも――己は、名乗った。その果し合いに乗った。

 最早出で立ちも性根も侍から程遠かろうが、――せめてこの時ばかりは、“侍”でいたかった。

 

「では、参る」

 

 仏塚の一言、瞬時に接敵した相手の一刀を受け流す。

 拡張された視界、常よりも強化された筋力や心肺機能による呼吸の攻撃は前よりも遥かに洗練されていた。攻撃は素早く、飛ばせる斬撃の数も変わった。

 より強化された呼吸の技にこの男は食らい付いてきた。――能面のような男の目が全てを見透かすが如く、己にその照準を定めていた。

 

「月の呼吸 拾ノ型 穿面斬・蘿月」

 

 相手をすり潰すかのように攻め立てる斬撃の波。

 

「月の呼吸 伍ノ型 月魄災渦」

 

 刀を振ったことすら気付かせぬ速度で見舞う太刀筋。

 

「月の呼吸 拾肆ノ型 兇変・天満繊月」

 

 辺り一面を覆い尽くす触れれば全てを両断する刃の激濤。

 

(こやつも同じ視界を持つ……。だが……、()()

 

 それはかつて縁壱が到達した域のものだ。――殺意も、害意も、何も見せぬ平常の瞳。

 

()()()()()()()()()()()()

 

 するりと僅かに生じる攻撃の隙間を縫う様に入り、凪いだ湖面のように攻撃を受け止め、こちらに振るわれるは静かな太刀筋。

 己を焼き尽くす程に鮮烈で、暗闇の中でも明瞭に見える――陽光の如き剣術ではない。神の御業ではない。冷たくも洗練された剣の運び。

 静かに己を追い詰める。

 だがそれは、怨毒の日々に炙られた自身にとっては酷く安らかに思えた。

 

 凍りつく血潮が、治らぬ傷が、己の死がすぐ側に来ていると示しても。

 

 技を繰り出す。多く多く、――これまでの研鑽してきた全ての技を出す。

 

 その目に焼き付けよ。

 とくと見よ。

 これまでの剣技の粋を見せてやる。

 

 

 

 ――お前ならばきっと。

 

 

 

「黒死牟、――或いは継国巌勝。討ち取ったり」

 

 

 

 振るわれる刃が私の首を斬った。それは己が恐れていたよりも遥かに痛みも、燻る熱で焦がれることもない、静かな死。

 落ちる首が受け止められた。色彩の無い瞳と目が合う。

 

「全て、見たか」

 

 そこで男の表情は笑みを象った。それはよく似た鬼よりも自然で、色味もあるものだった。

 

「うん、()()()

 

 その言葉に、自然と声が漏れた。

 

「…………ああ、見事」

 

 体が朽ちていく。

 

「……このような、成れの果てになろうと。ただ負けられぬと……、道を歩めど……、何も得られず……」

 

 遠い中、永遠に近しい時をくださった方の怒号が聞こえる。

 停滞していた時が動き出す様だった。

 

「後生が生まれ……、次を紡ぐ……」

 

 鬼の生とは永遠では無かった。陽光を克服しようが、その先にあるのは恐らく、入るべきではない領域に立ち入った者に対する罰のみ。

 それ故、人は人として在らねばならぬ。だが人は短命で鬼よりも短い生である。

 短き一生の中で人が、永遠と呼べるものは――想い。

 

 縁壱はそれを識っていた。その視座の領域にあの時代の誰よりも先に辿り着いて、あのような言葉を並べた。……本当に、神に愛されていた。

 

 そんなお前と双子の生を受けた。

 酷く苦しかった。いつも俺は心火で焼き付いていた。

 それでも、俺は。

 

「そう、か……。俺は……」

 

 縁壱になりたかった。あやつの様に、――誰かの心に刻まれる程に忘れ去られぬ存在になりたかった。

 忘れられたくなかったのだ。俺は。

 日の呼吸の使い手を全て消そうが、黒刀になる鬼狩りを全て狩ろうが、お前の剣技は耳飾りと共に残っていた。

 

 それは、お前が誰かに想いを託したからなのだろう。

 そして、受け継いだ者が――今代にてあの方の前に現れた。

 

 

 

 ……あぁ、これで。

 少しは……、俺も……。

 お前に一つ、近付けただろうか……。

 

 

§

 

 

 消えてゆく上弦の鬼。その首が一つ、涙を流し消えゆく様を見つめる男が直前に取った行動は異質だった。

 余りの攻撃の激しさに岩柱と風柱は立ち入ることさえ難しく、言葉を発するのも躊躇われる程に。

 ――剣鬼と化した侍との果し合いだった。

 

「倒した……のか」

「ああ。仏塚、急にどうしてあのような真似をしたのだ」

 

 手の中から鬼の首が消えたのを見ると文寿郎は問いを投げた悲鳴嶼へと振り向いた。その顔にはなんら表情は浮かべていない。

 ――そのことが、盲目である筈の悲鳴嶼には見えている様に分かった。

 

「あの鬼は首を斬ったが再生した。つまり、首の弱点を克服した。再度首を斬るよりかは、彼を動かす原動力を潰した方がいいかと思って」

「ハァ? だからってテメェ一人でのサシ勝負をしたってことか? 手前勝手が過ぎるだろうがよォ」

「しかしなぁ、実弥殿。君は痣を発現させたとはいえ、未だ()()は拓けていないだろう?」

「……仏塚、お前には見えていたのか」

「おや、どうやら悲鳴嶼殿には見えたようだ。感心感心」

「視界だァ……?」

「その話は私も聞きたいのですが、仏塚さん」

 

 鈴の鳴るような声で会話に入ったのは胡蝶しのぶ。彼女は戦いの最中、怪我人たちを手当てしながら戦いの場から距離を取っていた。

 しのぶの背後には胴を両断されていた筈の不死川玄弥と、顔色も悪く左腕を失った時透無一郎の二人がいた。

 

「貴方には一体何が見えているんです?」

「何って、……そうだねぇ。痣を出せる者なら見える視界とでも言うのかな。人体の動きが透けて見えるから、人や鬼の内臓のどこが動くか、力を入れているかが分かる。だから攻撃の予測が可能になる。悲鳴嶼殿には見えたのだろう」

「ああ。お前とあの鬼が戦っている最中に見えた」

「僕にも見えたから……、何かの見間違いとかじゃなかったみたいだね……」

「二人も見えたようだ。いいね、戦力としては充分……とは言えないなぁ。――ねぇ無一郎くん。片腕が無ければ戦うことも難しい、だろう?」

 

 文寿郎はしのぶへと言葉を返した。実際、無一郎は固定された際の肩の傷に片腕からの失血でかなりの血を失っている。

 止血を行い、造血剤を投与したものの戦線復帰は難しい。

 

「でも、僕だってまだ戦える。片腕がある……! 斬られた方は利き手じゃないから、まだ動ける……ッ!」

「それはお薦めしません。医者としては無一郎くんには離脱を薦めます。実際、立つことも難しいでしょう」

「う……」

「時透、お前は戦線を離れなさい。――お前の想いは、私が連れて往こう」

「悲鳴嶼さん……」

 

 ――自分が無惨の討伐に参加できない。その手前の戦いで致命的な負傷をした不甲斐なさや悔しさに溢れて無一郎は俯いた。

 だが、残った右腕を悲鳴嶼へと伸ばし、彼はその手を取った。

 

「っ、お願いします……。どうか、どうか鬼舞辻無惨を、倒して……!」

「ああ、確と受け取った。後は任せろ」

「はいっ……!」

 

 顔をぐしゃぐしゃにして泣く無一郎の背を、優しくしのぶの手が撫ぜる。う、う、と漏れる嗚咽に誰もが――一名除いて――胸を痛めた。

 その一方、玄弥は己を凝視する実弥と対面していた。

 

「テメェ、腕と胴は……」

「く、くっついたんだ。鬼を、喰ってたから、その治癒力が働いたんだろうって、胡蝶さんが……」

「……」

 

 途端、実弥に湧き上がるのは底知れぬ怒りだった。漲らせる怒気が玄弥にも伝わるが、彼はそれでも口を動かした。

 

「あ、兄貴、ごめん。()()()、兄ちゃんを……、責めて、ごめん。迷惑ばっかり、かけて、ごめん……!」

「……」

「俺、ずっと兄ちゃんに謝りたかった。ずっと、ずっとだ……!」

 

 ぼろぼろと涙を流す玄弥に閉口していた。普段ならば突き返すだろう彼が、身に秘めたる本心を出したのは――弟が死に掛けている場面を目前にしてしまったからだろう。

 実弥は弟から背を向けた。

 

「テメェはどっかで所帯持って、家族増やして爺になるまで生きてりゃあ良かったんだよ」

 

 思い返すのは、帰りの遅い母親を心配して捜しに行った時の事だった。

 家への帰り道の途中で誰かが蹲っていた。暗がりの中だろうが苦しむ呻き声に何事かと近付いた。――その実弥を突き飛ばして、飢えに苦しむ“誰か”が走った。

 ――その先は、弟妹たちの待つ家だった。

 

「お袋にしてやれなかった分も、弟や妹にしてやれなかった分も……お前が。お前の女房や子供を幸せにすりゃあ良かっただろうが」

 

 誰かは家に入った途端、幼い弟妹たちを鋭い爪で引っ搔いた。一撃で死んだことが分かった。

 せめて残った玄弥だけでも「逃げろ」と誰かを自身と共に家の窓から突き落とした。酷く暴れているが、血と共に懐かしい香りがして、嫌な予感が実弥の背後で渦巻いていた。

 

「そこには絶対に俺が……」

 

 辺りの家屋に放り出されていた鉈で暴れる何者かと応戦した。その何者かが鋭い爪で玄弥の顔を引き裂いた。

 ――突然、何者かの動きは酔いが回ったかのようにふらついた。それを好機だと思った実弥は、鉈を振るった。

 倒れた体を滅茶苦茶に斬った。それでも何者かの体はあり得ないことにくっついた。

 

 ――弟妹たちをよくも殺したな、と、治るならばと何度も刻んだ。

 

「鬼なんか来させねぇから……」

 

 朝日が近付くにつれて暗闇の帳が開いていく。自身が刻んでいた何者かが、誰なのか、――見えてしまった。

 どれだけ自分が辛かろうが、優しく自身を包んでくれた最愛の家族。――お袋が、刻まれた体を再生しながら倒れていた。

 今まで、自分が誰かと思っていた、弟妹を殺した仇だと思って刻んでいたのは母親だった。

 

 体が硬直するのが分かった。自分が母親を殺したのだと理解した瞬間、世界が色褪せていった。

 人殺し、と泣き叫ぶ弟の声が耳にこびりついていた。

 

「兄ちゃん……。兄ちゃん……!」

 

 それでも、護ると決めたのに。

 人殺しになろうが、残った唯一人の家族だけはもう鬼に殺させないと決めたのに。

 

「こンの馬鹿弟が……。んで、鬼殺隊になんか入りやがった……。本当に……」

 

 お互いが言葉を口にすることなく沈黙が降りる中、「ちょっといい?」という遠慮も何もあったものではない言葉が黙る二人の仲を割り裂いた。

 空気を読まぬ仏塚文寿郎である。

 

「不死川玄弥くんだっけ。鬼を喰ってるらしいね」

「あ、その……はい」

「以後鬼を喰うのは禁止。食べてるのを見かけたら自刃してもらうからね~」

「え」

 

 自刃と聞いた瞬間、実弥が文寿郎の襟首を掴んだ。

 

「もう一度言ってみろ……」

「だってねぇ、鬼を喰って自分の一部にするということはだよ? 鬼の始祖である鬼舞辻無惨を倒した際に君の弟くんが他の鬼諸共消える可能性もあるだろう? 実弥殿、弟の死に耐えられるのかい? 今でさえこんなことをする君が」

「………………チッ」

 

 長い間を置き、舌打ちと共に実弥は文寿郎の襟首を荒く離した。まったくもー、と何も思ってない顔で文寿郎は服装を正した。

 

「玄弥、鬼は食うなよ。二度と。……約束だ」

「うん。分かった……!」

 

 ――玄弥に向けられる声色が少し優しいものになったせいだろうか。実弥自身の表情も少し柔らかくなった。

 二人の間の壁が解消されたのだと分かり、彼らの話を聞いていた周囲にほんわりとした空気が漂った。

 あぁ良かった良かったと思いつつ、文寿郎はあんぱんを口にした。

 

「……テメェ、そういや戦闘中にあんぱん食ってたな」

「ん? そうだね」

「俺言ったよな? ――任務の最中に急にあんぱん食うなって。腹減ってるなら事前に食っとけっつったよなァ? オイ!」

「これにはちょっと深い理由が……。いだだだだ、何するの実弥殿」

 

 襟首の次は耳、とばかりに強く実弥は文寿郎の耳を引っ張った。突然の行動に周りはぽかんとした。

 

「大体急に刀投げつけた時もそうだった。テメェはどうしていつもそうよく分からねェ動きばっかすんだ! こっちがどれだけ胆冷やしてると思ってやがる!」

「さねみどの、いひゃい、いひゃいから」

「それからあんぱん今食ってるっつうことは日頃から真面に飯を食ってねェってことだよなァ……。寝てもいねェだろうし、んでお前はそう鍛錬ばっかやりやがる。程度ってモンがあるだろうがよォ! いいか、戦いが終わったらまずテメェはその生活態度を直せ。……そんでもっと、周囲と話せ」

「え、それ実弥殿が言う? 弟に誤解されたまんまでもいいとか言ってた実弥殿が!?」

「死にてェようだなァ……!」

 

 「本当のことじゃないか。でもあんぱんは義勇殿がくれるから消費しないと腐ってしまうし……」と言う文寿郎の証言により、実弥は戦闘中にあんぱんを食う奇癖を作り出した原因たる冨岡に突撃することを決めた。

 

 

 

 

 

「――今、不死川が俺の名前を口にした気がする。次会う時は開幕の攻撃を避けなければならないかもしれない」

「ええ? どうしたんですか急に」

 

 右頬に痣を出した冨岡はそう呟いた。彼らは先程、猗窩座との戦いを終えたばかりだった。

 ギリギリの凌ぎ合いにて痣を出した冨岡と、彼らの戦いを目の当たりにして透き通る世界に入った炭治郎。

 戦いが長期化し両名が大きな負傷を負う前に猗窩座の首を斬り、それでも尚動く彼との戦いを終えられたのは僥倖と言えただろう。

 

「上弦の壱と参、撃破ァ! 撃破ァ!」

「え、上弦の壱も倒したんですか!?」

「凄まじい速度。これは恐らく文寿郎が片付けたな」

「仏塚さんって何者なんですか……! すごい!?」

 

 むふふと笑い、冨岡は親友の無事とその功績を祝った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

§

 

 恐らく最初の記憶というのは、母親の胎にいた頃の記憶だ。眼球もあった物ではないから真っ暗ではあるが、俺の他にもう一つ、命があった。

 俺の体はすくすくと育っていくが、その片割れの体はまだ小さく。――やがて、育つ俺の体に比例するようにもう一つの命は徐々に小さくなり、潰えようとしていた。

 恐らく、手になるだろう器官を動かした。その消えゆく命を前に、何かしらを思った。

 

 そうして出来上がったのが賽の河原で延々と小石を積む、水子の己。

 今であればこう言えるだろう、己は片割れに生を譲ったのだと。

 

 親より先に死んだ罪を償う為に小石を積むことになったらしい。その傍らで、己が譲った生を歩む片割れを河辺の先から見ることが出来た。

 消えそうだった其れが人の世に在ることには何か、他の同じく小石を積む子供の言葉で例えると『恨む』ことでは無かった。

 

 ただ病に掛かってこちらに来ていた時はこう、焦った。まだ来るべきではないと、その手を引いて道を引き返させた。

 

 ――それが、己が犯した罪。

 

(俺が生かしたから。あの時、黄泉路を引き返らせてしまった。あのまま死ぬ、それがあの子供の“運命”だった)

 

 その“運命”を歪ませた結果を見た。河の底からずっと見ていた。

 

 元々丈夫な体ではない。精神には欠陥があった。

 それをひた隠しにして神の子などというものとして生きていた。

 

 いつも変わり映えのしない日々の中、都合の良い人形を求める人間の群れの中で出会ったのが鬼などという人間の始祖であったばかりに。

 

 人形として全うしていたその生真面目さを、新たに植え付けられた鬼の本能に従って全うすれば、――自らに集る群れの中から人間を貪り喰らう“鬼”が出来上がった。

 

 その過程、結果までを見ていた。

 見ることしか出来ない。死に縁遠い存在にもなれば介入する余地も無い。

 

(誰か、その子供の頸を斬ってくれ)

 

 鬼狩りと対峙したが、誰も彼もが成す術も無く肺が凍って死んでいった。

 

(もう、見たくはない)

 

 女の方が栄養価が高いなど、人間を食べる感想を述べていく姿は見たくない。

 

 酷くえづきたくなる気分になった。胃に物など入ったことが無いというのに。

 順当に鬼として強くなっていく。極彩色の目に数字などというものを得て、血鬼術などという不可思議な現象を携えて。

 

(……誰かがあの鬼の頸を斬らなければ)

 

 でも最早、誰かが、という期待は出来なくなった。

 誰も彼もが相対しては死んでいく。その命を散らしていく。

 ならば、と。普段は頼りもしない神仏に懇願した。

 

 

 

 

 

(俺が頸を斬ります。弟の、頸を斬ります。己の犯した罪を償います)

 

 

 

 

 かくして願いは聞き届けられた。不完全な人間の構造を持って己が生まれた。

 そこで本当に、己のしたことは罪なのだと悟った。

 多くの罪人が裁かれる様に、己もその罪を償わねばならぬのだと言われたようだった。

 

 色々とありはしたものの願いは果たせた。――あの黄泉路を戻るべきだ。

 

(しかしなんだろう、これは。……ああ、走馬灯というやつかな?)

 

 その道の手前に立って、不思議と己の生まれた時から死ぬ時に至るまで――その記憶の流れを呆けて見ていた。

 

 冷気なんてものを使える己を恐れず育てた両親、その片方が鬼となり、家を飛び出して後の兄弟子に縊り殺される様。彼に付いていれば鬼殺隊に入れるという確信があった。その鬼への殺意はきっと、同じ志を持つ鬼狩りを呼ぶだろうと考えた。

 

 色んな呼吸法を探した。何があれば最短であの鬼の頸を斬れるかの試行錯誤だった。

 

 様々な人間と話をした。命を大事にする隊士、鬼と仲良くなれるのではないかという柱に鬼は絶対に殺すと言った兄弟子。なんともまあ、正反対な意見を持つ人間がいても組織としては成り立つのだと思ったことがある。

 

 鬼狩りの任務の最中、ある医者の男と出会った。確かにそれは、記憶に残っている。

 

 彼は「地獄を見てきたのだ」と、己が斬った鬼の返り血を浴びて話し始めた。

 

 その目はわなわなと首を斬られた鬼の死体を凝視し、呼吸は荒く、尋常ではない様子を見せていた。一種の恐慌状態と言うには、あまりにも様子が違った。

 

「野戦病院での日々は凄まじいものでした。あれ程の苦難と悲愴に満ちた光景を私は知らなかった。尽きていく薬と医療道具、その場にある布で包帯を作って傷口を抑えようが膿と血が止まらない。負傷者は日に日に増え、彼らの苦痛による呻きも戦への恨み言も国に残した家族への遺言も、一室に満ちるあの酷い臭いも、今も鼻に残っている程であり、――それでも私は、医者として彼ら……人の命を救わねばならないと、思ったのです」

 

「その理由が、今、分かりました。あの日々の地獄を私が経験した意味を、その経験を経てすらなお、人を治さなければならぬと駆られる意味も」

 

 

 

「――鬼。彼岸花、私が、私が……作ってしまった、()

 

 

 

「私は鬼を作った。数多くの、何の罪も無い人間の命を奪った、大罪人だ。……ああ、ああ、ああああああああ…………」

 

 よくは分からなかったものの、「罪を犯したと思うなら償うべきだ」と答えて隠に処理を任せてその場を後にした。

 その時の医者が、屋敷に医者を雇いたいと産屋敷に伝えた際に来たことは驚いた。

 柱稽古になってから日々の診療を受けていれば、彼からある薬を渡された。アンプル瓶を通して尚青みの見える薬液が満たされていた。

 

「どうか、その薬を。鬼の始祖たる方に……お使いください」

 

 ――貴方ならばその薬を正しく使える。涙ながらに話した彼の話には、中々要領を得ない部分もあったが。

 

(ああ、薬。……結局使えなかったな。誰かに渡しておくべきだったか)

 

 誰か、と浮かぶのは……、兄弟子の姿だ。

 出会った時よりも遥かに傷だらけで、鬼への殺意を漲らせたその後ろ姿。彼ならば並外れた殺意で、例えどのような鬼の攻撃だろうと生きて、生きて生きてその頸を刈り取るだろう。

 そんな彼であれば「鬼を弱体化させる薬だ」とでも言えば何としてでも投与してくれただろう。

 

(……どうして、俺はあの時のことを――皮膚に刺さった棘のように、痛みと共に思い出すのだろうか)

 

 匡近の墓参りの時に言われた、「もういい」がどうしてあんなに、不快に思えたのか。

 それまでは少なくとも送られてきた――代筆された手紙が一切来なくなったことが胸を締め付けるのか。

 原因は――演技で泣いた事。それが決定的な間違いだったのだとは理解できても、その詳細な理由は分からなくて。あんな諦めたような顔で己を見つめた彼の姿が何度も過ぎっては、胸に痛みを齎す。

 ……感情に由来するものだとは知っているのだけれども。

 

(感情って、本当に何なのだろうか)

 

 人間は嬉しくても泣く。泣いても嬉しい。嬉しくても怒る。怒っていても哀しむ。哀しんでいても嬉しい。

 嬉しいなら嬉しい、なんて単純な構造ではないのは分かった。

 でもやはり、分からないのだ。

 

 上手く理解できない()()を当たり前の様に理解して、当たり前の様に使って、当たり前の様に――生きることの出来る人間とは、何だろうか。

 

 はあ、と息を吐く。

 

「……考えても仕方ない、そろそろ行こう。あの様子じゃ、待ってるだろうし」

 

 その一歩を踏み出す己の前に、何かが飛んでいる。

 余りにも場違いな鮮やかな色合いの物体に顔を上げた。

 

「…………蝶?」

 

 蟲の蝶が己の前に浮かんでいる。邪魔だなぁと避けようとしたらその蝶はまたすい、と俺の前を舞う。

 その蝶を避けて前に進もうとすれば、また蝶は前へと現れる。

 進みたい己と邪魔する蝶の攻防を何回か繰り返した。

 

 蟲ごときに邪魔されるだなんてとは思いつつも、その蝶があまりにも――蟲の癖に、人間の様に怒りの気配を纏わせているから。

 

「ああもう、分かった。分かった。……でも、本当に少しだけだから。それ以上は(ことわり)が崩れるから許されないよ」

 

 どうやらこの蝶はこの道を歩ませたくないらしい。

 蟲にしてはあまりにも頑固な姿勢に、己の得られぬ人間性というものを感じた。

 

「仕方ないな。本当に」

 

 ――蝶へと手を伸ばした。

 

「誰であろうと命を尊ぶその姿勢はいいけれど……、分からず屋だねぇ」

 




「やぁやぁ、ようこそ黒死牟殿! どうやら我が兄にしてやられたようで」
「お前の……兄……?」
「訳有って双子で生まれずに死んだ兄が俺の首を斬りにきたらしくてね。いやー! 流石の強さ! かの上弦の壱も敵わぬときた」
「…………ふむ。そのような……、こともあるのか……。摩訶不思議なり……」
「俺も死に際に兄の心臓を斬ったのだが、どうにも蘇生されてしまったらしく……。おかげで黄泉路を共に歩く予定が狂ってしまった!」
「……………………」
「あ、ここで『大正コソコソ噂話』! 我が兄の好物はあんぱん。風の呼吸の兄弟子たちと共にした食べ歩きで『好物』という感覚を教えられたらしい。うんうん、俺も女の肉は特に美味く感じたからね。あんぱん、あんぱんね」
「戦いの最中に食う程好きなのか……」
「確かに食べていたなぁ! ふふ、我が兄ながら愉快なお人だ」
「…………ここで『鬼滅の刃 ー烏兎之鬼録ーコソコソ噂話』。一般隊士録にて作られる……一般隊士の名は……、ふぁんなる愛好家たちの間では……、“次代殿”という通称で……親しまれるらしい……」
「次代殿かぁ。俺たち鬼にとってはあまり馴染みのない言葉だが、何かしらそう“次”を想起させる要素でもあるのかな?」
「私は……腑に落ちた……」
「へぇ~……。あれ、黒死牟殿、何方に行かれるので?」
「私はもう、首を斬られて死した身。……迎えが、来ている」
「お迎え? はて、どこにも見当たらないが」
「お前も……、早く往くことだ……」
「さよなら、黒死牟殿! さよなら!」

「行ってしまったなぁ。しかし、この後、我が兄は果たして迎えに来てくれるだろうか。もし生き永らえでもしたらどうしよう。その間に俺のこととか忘れちゃったりするのだろうか……」

「――ま、その時は俺が迎えに行けばいっか! 長く下らぬ話を聞きながら待つのは大得意だ。兄の人生を見届けた後に俺が出てきたらどんな顔をするだろうか。とても楽しみだ!」
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