鬼滅の刃RTA 上弦の弐単独討伐   作:一億年間ソロプレイ

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日常系難しい……、難しくない?


キメ学:元気だよ!文寿郎さん!

 

 親が死んで真っ先に思ったのは「なんで死ぬのかなぁ」だった。

 確かに親にとっても子供にとっても良い家庭環境とはいえなかったが、それでも親は親。親のいない、子供だけで生きていくのは難しい。

 俺自身はどうでもいいけど、問題は片割れだ。

 

 俺だけなら施設に入って、道端の石ころでも食べながら生きていたと思う。

 だが、弟はまともな家庭で育って欲しいという気持ちが幼いながらに強くあったから。

 弟は真っ当な道で生きて欲しいと思ったから――。

 

 だから親戚連中で始めた『誰がどちらを引き取るか』の会話に参戦して弟を引き取ってくれるに相応しい家庭を探したが、どうにも怪しい家庭ばかりだ。

 いや、普通の家庭の所もあるにはあるけれど、弟の微笑み一つで傾倒してしまいそうな所には預けられないというか。

 あれだから。弟の姿に神聖さを見出した奴等から弾くからね、俺。

 

「俺、兄さんが良い。兄さんと一緒じゃなきゃ嫌だ」

 

 ふざけたことを抜かすな弟よ。厳しい世間を子供二人だけで生き抜ける筈も無いんだ。

 確かに俺たちは他の子供より思考が大人に近いかもしれないが、それでも死ぬ確率は高い。何より俺はお前に全うに育って欲しい。

 子供だけの家庭など歪みまくる要素ばかりだろうが。元々父親とかいないようなもんだったんだし、母親も段々と様子がおかしくなっていったし。

 

「じゃあ、兄さんが俺を間違った道に入らない様に見張っておいてよ」

「その手があったか」

 

 そうか……。他者が単なる白っぽい髪とカラフルの瞳を持つだけの子供に「通常の子供とは違う」やら「神の子だ」なんだと見出そうものならば、弟が単なる人間の肉袋という認識を持っている俺が弟の監視を担当すればいいのだ。

 いやでも経済面……。

 

「親戚のおじさんが俺たち二人だけで過ごせる様にお金を工面してくれるって」

「これまでの話し合いって何だったの」

 

 俺は黄昏(たそが)れた。計五時間にも及ぶ俺たちの先行きを決める話し合いは弟の一声で決まってしまった。

 これまで消費した時間と酸素量は何だったんだろう、本当に無駄だったんじゃないかと思う。

 

「二人っきりだね、兄さん」

「……」

 

 実は二人っきりじゃないんだ、弟よ。実はお前の後ろに血の涙を流した父親がずっと俺を見ていてね……。その背後にまた自殺した筈の母親と浮気相手もいるから、家が変わっただけでファミリー+別人一人が勢揃いしているんだ。

 中々珍しいよね。だって父さんってば浮気相手の所に行ってるから家に帰ってくること少なかったし。

 

「……俺が、お前を出来る限り普通に育ててやるから」

「うん!」

 

 ということで俺たちの新生活が始まった。

 新生活早々に父親が謎に弟へ近付こうとしたので持っていたお玉を投げつけるとジュワァっと溶けた。

 溶けた。

 

 俺は更なるデータを求めてフライパンを母親に投げた。

 溶けた。

 

 今度は確信を持って包丁を浮気相手に投げた。

 溶けた。

 

 溶けると、うっすらと感じていた体の重さや空気の重たさが無くなった。

 どうやら俺には除霊できる謎のパワーがあるらしかった。弟は暇さえあれば霊をホイホイくっつけてくるので、話が通じそうな霊は話し合いで成仏してもらい、話が通じない奴には腕力で除霊していった。そんな俺を弟は怪訝な目で見ていたが、気にしない事にする。

 

 除霊をしてからは言葉通り二人っきりの生活になった俺たちだが、生活費の工面は必要だ。

 成長期が来たらすぐに年齢が誤魔化せそうな緩い所のバイトを受けた。途中、一人でバイトしていることがバレて弟にまでバイトの苦労を背負わせてしまった。

 

 そうして迎えた高校受験。公立高校を受けて学費を免除しつつ、弟は適当な部活動に入る様に直々におねだりして、俺は帰宅部兼アルバイターとしての日々を続けた。

 金が必要だった。親戚からは「高校までは面倒を見るが大学までは見ない」と明言されているから。

 

 だが、バイトで稼げる給料なんてたかが知れている。スーパーのセールでの特売品を必ずゲットし、近所の商店街で安い青果店で野菜を買い漁ろうが、どうしたって人間は毎日を食べなきゃ健やかには生きられない。俺の分の食費を削ろうとすれば弟は真顔で引き留める。

 親戚からの仕送りだって無限にある訳じゃない。なんなら父親の遺言を捏造して搾り取った遺産にはまだ手を付けたくはない。

 学歴を高校で終わらせるより、大卒の方が弟の将来だって広がる……。

 人が生きていくにはどうしたって金が必要なんだ。

 

(好条件のバイト……。一体どこに……!)

 

 ありとあらゆる情報を検索して俺が得たのは、明らかに怪しいバイトの広告。

 

『除霊をお願いします。無事に熟してくれた方には三十万を支払います』

 

 三十万……? 俺がバイトを詰め込んでも届かない金額がたった一回の仕事で稼げる……?

 いや除霊とかおかしい。きっとスピリチュアル的な、マルチ商法の足切り要員にされるだけ。それか怪しいバイトだ。

 

(……とはいえ、除霊。除霊か)

 

 幸か不幸か、己にはソレらしい力がある。怪しかったらすぐ逃げる。警察にも連絡できるよう準備を整えておく。

 世間の方からは明らかに怪しいバイトに応募するなよと突っ込まれそうだが、俺はどうしたって弟だけでも大学に通える金銭が欲しかった。遺産だけではどうにも足りないようだから。

 

 ――結果から言えば、俺はゴーストバスターを副業にすることにした。

 

 この三十万を支払うといった依頼主は娘夫婦の二人。無念で死んだ祖母の霊を祓って欲しいとのこと。どうやら娘の方が霊感を持っており、日夜聞こえる耳鳴り音とラップ音に精神を擦り減らしていたらしい。

 祖母の霊から話を聞くと娘夫婦の孫を見るまで死にたくないらしい。その事を伝えると娘夫婦は安心しきった様子で俺に報酬を渡した。

 

(……なるほどな~。父さんが宗教の教祖を始めた理由も分かる気がする)

 

 簡単にお金が集まるんだ。気が弱っている人間は兎角脆いから、例え俺の話が本当だろうと嘘だろうと、何か結果――形あるものや言葉にすればそれに縋る。

 嫌な所で血の繋がりを感じ、俺はゴーストバスターとしてサイトを作った。あんな怪しいサイトの電話番号にわざわざ連絡する程弱り切った人たちの話を聞き、適宜報酬を得て、バスターしてと……。

 

 するとどうだろう、簡単に稼げるではないか。通帳で増えていく金額に思わず笑いが止まらなかった。バイトとは……一体……?

 

「弟や、給料が入ったから焼肉にでも行こうか」

「いいの!? ……でもそんなお金使っていいの?」

「いいんだ。とっても稼げる仕事を見つけた。この調子なら大学の入学費用も賄える」

「……」

 

 けれどゴーストバスターはあくまで副業。バイトもしつつ、不定期で入るゴーストバスター業をすることで収入を安定させた。

 バイトしつつ、弟の授業参観にも参加し、修学旅行費も無事に捻出。

 そうして過ごすとずるずると三年生。進路について悩む時期がやってきてしまった。

 

「弟や、お前は将来どんな仕事に就きたい? 何かしたい事はある?」

「兄さんはあるの?」

「検事になろうかなぁって」

「じゃあ俺弁護士になる」

「決まってなかったんかい」

「俺たち二人で法廷を転がそうね!」

「気が早いよ~」

 

 なんとも軽いノリで決まったが、こう……詐欺師とか、アブノーマルな方面に行かなさそうなので良いだろう。

 真っ当な人間として生きていて欲しいので、俺は安心した。

 

 当然の様に同じ大学へ進学し、そうだなぁ、大学二年生の頃だったかな。

 ゴーストバスターの方でちょっと離れた、田舎の場所に行ったんだ。ぽつぽつと民家と畑が広がる長閑な場所でね~。山奥にある祠を配信者系の若者に壊されたから何かしら起きてないかの調査依頼だったんだ。

 

 依頼とは特に関係無いんだけど、その山にはとある逸話を持つ泉があってね。

 薬師の娘が隣の町へ行こうと移動していたら、突然雷鳴が鳴り、驚いた娘が泉に落ちたという。娘は大きな背負子を背負っていたから、泉に浮き上がることなく溺れ死んでしまったという。

 

 こんな話、どう考えても語り手の第三者がいるからその人が溺れる前の娘を助ければいいのに、と思った程度の話だったんだよ。

 それがこう、……今は話さなくて良いよね。本筋に関係無いから。

 

 あ、ようやく目の前の相手の自分語りが終わったみたい。ちょっと意識を戻してっと……。

 

 

 

 

 

「俺は君の話に頷いていただけなんだけど……、良かった!」

 

「考えは整理出来た? 自らの行った行為の悍ましさを理解出来たかな?」

 

「うんうん、罪を懺悔してくれてありがとう。辛いよね、自分が間違ったことをしたなんて本当は思いたくないけれど、君が今まで生きてきた中で培われた良識が、君に自白するよう促してくれたんだよね。ありがとう、その勇気はとても良いものだ」

 

 

 

「でも嘘はいけないなぁ。いけない、それは良くないよ」

 

 

 

「君の罪状は住居侵入罪だけではなく、昔は誘拐もしただろう。こちらの調査で君たちの行いは全て分かっているとも」

 

「未成年者誘拐、強要、逮捕・監禁……。大麻所持もあったね?」

 

「さぁ、本当の事を話そうね」

 

 そう怯えなくともいい。俺はお前たちが昔、弟に対して犯した罪を償わせる為に此処にいるんだから。

 とっくの昔からお前たちを刑務所に送り込む用意は整っている。

 いやー、俺ってば優しいからさ。個人的に行うよりも法律に則って行っているんだぜ?

 

 俺に震える人間を甚振る趣味は無いのだが。

 精々長く長く長く苦しんで、何もかもを悔いてから死んでいってね。

 

 

§

 

 

「……さーん。にいさーん」

 

 揺さぶられる感覚で意識がハッキリとしてくる。寝ていた男が欠伸をしながら体を起こした。

 視界に入る虹色の目が心配を滲ませてこちらを見ていた。

 

「クッキー、焼けてるよ?」

「ああそう……。ありがとう……」

「具合でも悪い?」

「最近冬だからなんだか眠くて仕方なくってぇ……」

「兄さんだけ時間軸ズレてるよ。今五月、五月だよ!」

「ああそうだった……」

 

 寝ぼけ眼でのっそりとオーブンの元へ歩き、開いた文寿郎は無言で閉めた。そしてもう一回開けた。

 うたた寝をする前にオーブンへ突っ込んだクッキーだが、焦げの一歩手前の黒々とした茶色に焼けてしまっていた。

 様子が気になったのか、弟が後ろでひょっこりとオーブンの中身を覗いた。

 兄は口を尖らせ、手にミトンを嵌めて中の天板を取り出した。

 

「焼く時間間違えた……」

「あちゃー。でも黒くはないじゃん」

「大分味も風味も飛んだ気がする。失敗しちゃった」

 

 天板から弟はクッキーを取って食べた。あ、という間も無い犯行である。

 

「こらこら、熱いだろう」

「大丈夫大丈夫。美味し~」

「んもー。弟じゃなかったら刑務所に突っ込んでるからね~」

「「あはは!」」

 

 兄は夢を見ていたが、そんなことは些細な事ですぐに内容も忘れた。

 文寿郎には、目の前で弟が無邪気に笑い、健やかに育つ事の方が重要だった。

 




兄:罪人がのうのうと罰も無く生きているのは駄目ですよね?という気持ちで色々やった。君たちは兄が一体何をしたのか、想像してもいいし、想像しなくてもいい。全ては過去形である。今でも\ゴーストバスター!/業はしている。
弟:昔色々あったが気にしてない。中学では俺も!とアルバイトしていたが、高校では兄のおねだりに負けて部活に入った。悔しい。高校当時、兄の謎の高収入のバイトにうさみちゃんの目をしていたが、事情を聞いた現在でもうさみちゃんの目になる。
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