鬼滅の刃RTA 上弦の弐単独討伐   作:一億年間ソロプレイ

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キメ学でのお話です。
番外編の更新数話で終わるかなって思ってたんですが、まだ更新しそうです。これがIKIHAZI……。


キメ学:バーでのひと時

 

 カフェ『ふろすと』。昼間はカフェ、夜にはバーにもなる店。

 本日はキメツ学園の先生方による二次会によって貸し切り状態のバーである。

 カウンターに並び座る死屍累々とした客の様に「おやおや」とグラスを下ろす。

 

「飲み過ぎですよ、お客様」

「カーッ、今回もバーテン潰しならずか」

「バーテンダーが潰れたら駄目でしょ」

 

 左目に派手なメイクをした男――宇随天元の言葉に呆れながら笑うバーテンダーこと文寿郎。

 バーカウンター席に並ぶ面々は彼を除いてぐでんぐでんになっていた。

 仕事中に飲むなど言語道断ではあるが、常連たちに「酒勝負だ!」と言われてしまえば引き受けるのもやぶさかではない。

 

「で、どうされます? ベット?」

「フォールド、俺らの負けにしといてやる。俺一人じゃアンタを潰せる気しねーしな」

「君も君で強いよねぇ。後ちょっと続けられたらこっちが負けちゃうかも」

「その手にゃ乗るか。会計」

「はいはい」

 

 蟒蛇の囁きに惑わされない宇随に手早く領収書を渡す。「今日も散財しちまったよ……」とばかりの顔色に文寿郎には実に良い笑顔が浮かぶ。

 会計を素早く済ませたバーテンダーが「今日はどうする?」と聞く。

 

「タクシー? 知り合いに連絡?」

「タクシー頼むわ」

「はーい」

 

 タクシーを呼んでもらっている間、宇随は隣で伏せる白髪頭に声を掛ける。

 

「おい起きろ不死川。水飲め」

「く……、居酒屋でビール飲んでなきゃやれたわクソッ」

「はいはいやれたやれた。悲鳴嶼サンと飲んだ後に勝負なんかする馬鹿はお前だけだよ」

 

 ここは二次会、当然ながら彼らは一次会の会場の居酒屋でも飲んでいる。

 酒豪として恐れられている悲鳴嶼行冥との飲み合い(一方的)さえ無ければ勝てたかもしれないというが、毎回同じことを言っているので酔っ払いの発言をまともに聞いてはならない。

 ちなみに悲鳴嶼は猫の世話があるので一次会で離脱している。

 

「胡蝶、水飲めるか」

「へーきへーきれす。お水ください……」

「宇随くーん、四十分後に来るって。あ、水足りなかった? はいどうぞ」

 

 電話し終えた文寿郎が新たに水を出す。胡蝶カナエはぐったり微笑みながら水をぐびぐびと飲んでいく。

 不死川よりは顔の赤味は薄い。酔いからの回復が早いタイプだ。

 

「はー……。落ち着きました。マスター、軽食のスモークサーモンのサンドイッチを二つお願いします。一つはテイクアウトで」

「いいよー。宇随くんは追加注文ある?」

「ねぇよ。俺からこれ以上絞り取ろうとすんな」

「あら、宇随先生が払ってくれたんですか? 今出しますね」

 

 シッシッと追い払われて「酷いよ~」と声を出しながら文寿郎はサンドイッチを作り始める。

 カナエは復活したが不死川はまだ意識がぼんやりとしているのか、隣の彼女につんつんとされても反応が無い。

 

「……一次会で大分飲んだね?」

「ああ。たんまりとな」

「「……」」

 

 宇随と文寿郎は互いに見合わせてにんまりと悪い笑顔を浮かべた。彼は静かに携帯で写真を撮り、それを文寿郎へと送信した。

 受け取った彼は軽くつまめる形にカットしたサンドイッチを()()()()した。

 二人の様子に彼女たちは気付いてはいない……。

 

「はい、スモークサーモンのサンドイッチ。テイクアウトは今渡そうか?」

「そうしてくれると忘れないわ~。ありがとうございます~」

「いいえ~」

 

 文寿郎はキメツ学園のOBではないが、カナエとの縁によって芋づる式に顔見知りになっていった。

 カナエが最初に文寿郎の店へと通い、そして数名の教員と飲みに来てからは連れ合いの彼らも時折店へと来るように。

 初対面の時から妙な気安さと喋りやすさがあって、店主気に入りの客人たちである。

 

「そういやよぉ、この店前より休み増えたな?」

「ああそれね」

「マスター、もしかして体の具合が……」

 

 ちら、と宇随が店の入り口へと目を向けた。店の前の看板には営業日を記入しており、『祝日・火・水曜日休み』とあった。

 気遣わし気な視線を向けるカナエと宇随にふふふと微笑んだ。

 

「弟が『もうちょっと休み増やしてよ! これじゃちょっとしか兄さんと遊びに行けない!』って言うものだから増やしてみた」

「えぇ……」

「あらあら」

 

 彼らの脳裏に、派手な髪色と目をした男性(おとうと)が悲痛さを滲ませて文寿郎に言う光景が浮かぶ。

 この店に通っていれば店主の弟とその仲の深さは嫌でも目にする。ある意味で名物かもしれない。

 

「ブラコンがよ……」

「兄弟仲が良好なのは良い事ですよ、宇随先生。私もしのぶに言われちゃったらお休み増やしたくなっちゃうもの」

「お前は教員だろうが。……でも、俺も嫁に言われたら休み取りたくはなるか」

「うんうん。身内には弱くなるよね。俺的にはいつ彼女を紹介してくれるか楽しみにしているんだけど」

「ほほー……。って、紹介?」

「『兄さん、この人との結婚を許してくれますか』っていうイベントを待ってるんだけどいつまでも起きなくてね……。兄さん悲しい」

 

 めそめそと泣き真似をする文寿郎に宇随が噴き出した。ぼーっと聞いていた不死川がふいに口を出す。

 

「そりゃ兄貴じゃなくて父親の役割だろうが……」

「俺にとっては子供みたいなものだよ。優良物件だから引く手数多の筈なんだけどね~」

「確かに。下の子ってなんだか可愛いわよね~」

「あー? あんなの可愛さから程遠い存在だろ。勝手に俺の化粧道具使いやがるし。あームカついてきた。此処爆破していいか?」

「何で聞いたの? 駄目だよ?」

 

 宇随の酔いが酷いと勝手にダイナマイトを店に設置し始めるので一時出禁にした。

 それ以降酔いナマイトは控えられていたが、彼は彼で酒が深く残っているらしい。

 店の前の通りに明かりが差す。車のライトだ。

 

「おっと、お迎えのタクシーが来たみたいだね」

 

 カナエの分の会計を済ませると各々が立ち上がる。水を飲んだり、他愛のない話をして大分回復したようだ。

 

「あいよ。今日もありがとさん」

「サンドイッチもお酒も美味しかったです」

「……また来る」

「うん、またのお越しをお待ちしております」

 

 バーテンダーがタクシーに乗る三人を見送る。時計を見上げるとオーダーストップの時間はとっくに過ぎていた。

 

「楽しいおしゃべりだとすぐ時間が過ぎちゃうね。ふふ」

 

 店の扉に掛けた看板を返して本日は『営業終了』。

 

 明日が来れば見知った顔や新しい客が来るだろう。そんな日々を楽しみにして店仕舞いの準備を続けた。

 

 

§

 

 

「で、彼女とかいるの」

ピ○ピッ

「どうした急にマジックガードなんて発動して」

「今の技はマジックガードじゃ防げないよ。完全にふいうちだよ。コ○ッタだったよ」

 

 前で鍋をつついていた弟が突然苦い顔をし始めた。空になった器に鍋から中身をよそっていると神妙な顔をした弟と目が合う。

 

「兄さんからそんな話題が出るなんて珍しいね」

「バーで客と話をしてね。気になったから聞いてみた」

「今の所いないよ。日々の仕事で忙しい……あ」

仕事が忙しい……?

 

 仕事が忙しい人間は日々兄の経営するカフェに入り浸らない。文寿郎は訝しんだ。

 兄の視線をあせあせと冷や汗を流す童磨に対し、視線の圧は強まっていく。

 

「たまには他の場所へ行ってみたら? そしたら出会いがあるかも」

 

 ぼんやりとどこかで見たドラマにあった展開を上げてみても弟は深く溜息を吐くばかり。

 丁寧に箸を置いた彼は重々しく口を開いた。

 

「……実は一つだけ基準というものがありまして」

「ほう」

「俺の兄さんマシンガントークに一時間耐えられたら」

「馬鹿じゃないの」

 

 ――沈黙。そして。

 

馬鹿じゃないの

「二度も言わないでよ兄さん! だって琴葉は頷いてくれたもん! 『お兄さんが大好きなんですね』って言ってくれたもん!」

「それは琴葉さんが特殊な一例というだけであってお前のその基準を越えられる人間はそういないんだよ」

「うわーん! 兄さんの鬼畜! いじわる! 大好き! よそって!」

「最後で台無しなんだよね。はいはい」

 

 寄せ鍋の大き目の豚バラ肉をよそってやると無邪気な笑みで器を受け取って熱々の具を口に運ぶ。

 それから「あとね」と付け足した。

 

「手料理が兄さんより美味しいと思えたら」

「それは難しいな……」

 

 文寿郎は弟の舌を肥やしているという自負があった。昔は節約料理主体だったが、最近は料理を提供する仕事に就いたとあって日々勉強を重ねている。

 

 現状弟と結婚できそうな女性が一人しか浮かばないが、果たして弟が結婚する日は来るのか。

 そして密かに貯めている結婚用資金を弟に渡す日は来るのか……。

 頑張れ文寿郎。負けるな文寿郎。式場で弟の晴れ姿を見るその日まで!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、しのぶ先輩。今日はサンドイッチなんですね」

 

 キメツ学園での昼ご飯時。薬学研究部の後輩、久世(くぜ)はしのぶが開けたランチボックスを見て目を輝かせた。

 

「ええ。自分で作ってみたのですが、上手くいかなくて」

「えー!? そんな事ないですよ! めちゃ美味しそうです!」

 

 卵やツナ、ハムにチーズ。メジャーな具材を挟んだ色とりどりのサンドイッチが丁寧に詰められているランチボックスは一目見て「美味しそう」と食欲を湧かせる出来栄えだ。

 しのぶは自分で作ったサンドイッチを食べる。

 

(……くっ、悔しい。朝食のサンドイッチの方が美味しい。……いいえ、それは他者が作ったから美味しいのです。ええ、決してあの人の料理の腕が良い……良くない訳じゃないですけど、ですけど!)

 

 カナエがバーでテイクアウトしてきたサンドイッチはしのぶの朝食になった。

 香ばしいサーモンのとろける旨味。一晩経ってもシャキシャキと瑞々しさを残した葉野菜と玉ねぎ。ピリっとくるブラックペッパーとクリームチーズをも合わせた……、あのサンドイッチ。

 

(……絶対越えてやるんだから!)

 

 負けず嫌いが高じて昼食もサンドイッチにしてしまったが、あの味は一体どうやって生み出されているというのか。

 一人悶々としながらしのぶはランチタイムを終えた。

 




ちなみに一次会には冨岡先生も参加してましたが、宇随主催の二次会を教えられたものの飲んでいる内に吹っ飛んでしまい、そのまま直帰しています。健康的だね。

ワシ(が参考するのに)得(する)情報

カフェ『ふろすと』 祝日・火・水曜休み
不定期に休みアリ(出来るだけお知らせします)
営業時間
昼間(カフェ)  10:00 ~ 17:00
夜 (バー)   18:00 ~ 22:00

『ご来店をお待ちしております』 (名状しがたい動物の絵)
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