「突然の訪問だというのに、受け入れていただきありがとうございます」
「前から言っていたからなぁ。弟くんも、少しは良くなったんだろう」
「はい。前よりは容体が安定しているようで」
町の医師などに採取した
当時陽光丸に使用されている生薬の解読を行っていた私は珍しい植物の情報を求めていた。弟も目覚めていなかったので手当たり次第情報は欲しかったのでその山へと赴いた。
そこで炭焼きをしている竈門家の炭十郎という方に出会った。
『珍しい色の花……。ああ、青い彼岸花のことかい。あれは五年待っても咲かない日もあるが……、まぁまず花が咲く時期頃に来てみたらどうだい』
花の咲く秋頃、毎年時間を作って来てみたら――、本当に青い彼岸花が咲いていた。採取しても良いかと尋ねると彼は快く頷いた。
……まさかそれが鬼の頭領が求める物だとは、珠世殿からお聞きするまでは露知らず。彼女に見せると腰を抜かして恐る恐るといった風に触れて、「す、少し、花の一欠けらだけでも頂いて……いい、かしら?」と言った。
言われた一欠けらを珠世殿に渡した。――そして、この花が『鬼』という存在の根本に位置するものだということを知った。
また翌年行くと、一本咲いていたので許可を取ってから採集。つくづく此処の竈門家の方にはお世話になっている。
彼等から「良かったら正月……でなくても、いつでも顔を見せてくれ」と言ってくれたので、今年はその言葉に甘えた形で訪れた。弟は旅の最中で寝てしまっていて静かだった。
「年の瀬に一晩中舞を踊るとは……。この辺りの風習なのですか?」
「いや、ウチぐらいだな……。本当に、君も一晩中付き合うのかい」
「誘っていただいた身ですから」
『炎』と書かれた白面を付け、柄に神楽鈴を付けた七支刀の木剣を手にする炭十郎さんとその祖父母方と共に踊り場へと向かう。
夜も更けた頃から夜明けまで。いくら日の出の時間が夏よりは早いといっても何時間も踊り続けるなんて事を、……炭焼きの一家の一人が遂げる瞬間を見た。
彼の祖母から傘を預かったけれど、私は雪が降る中……傘を使うことを忘れるぐらい、その舞を見ていた。
空を割き、竜が昇り、雪空の中で陽炎が現れる。
あそこだけは雪で体温が奪われる事もなく、彼から――剣舞から発せられる熱で雪も氷も解けていく。
彼は苦しみながらも『大切な人との約束』をやり遂げた。
きっと彼はまた年の瀬に舞う。年々その動きを洗練させてゆき、……またその約束を子へと引き継いで、受け継がせていく。私にはきっと出来ないことだ。
私は蛙の死体を抱えたまま、壊れた井戸の前で立ちぼうけているだけ。
漠然と物事が大きく動く気配を感じていた。いつだって死が訪れる気配は背後にあり、私に思考させる前に取り返しのつかない事態へと転じさせる。
常に淵の傍にいる。逃げてもまたそこが“淵”となるから、溺れない為に足掻くしかない。
月の光さえ差さない暗中。背後に迫るあの淵の気配を感じながら手探りで進む日々だった。
そうしてやがて、確かな光を掴んだ。
それは身を、人を護り、己を越える術。人知の及ばぬ作用を齎す花。
人に戻ろうと人を助けていた鬼たち。何故か優しい目をする人たち。
暗夜はいつしかどこまでも澄み渡る世界へと変わり、暗闇を照らす陽光の如き眩しき光が、私の心の臓に在る。
――渡るべき道というものが見えていた。
(いつでも一人、と思う様にしていた。そうじゃないと
師匠から教わった護身術と、揺れぬ心の構え。これで身の危険を防ぎ、護れるようになった。
『どんな傷にも病にも、必ず薬や治療法があるのです』と言われて、どれだけ救われたことか。
あの青い花の場所を快く教わらなければ『鬼を人に戻す薬』の研究も早くは終わらなかった。
(色んな人がいたから、私は今立っていられる)
あの時とは違う。体が熱い。
ずっと胸の内にあったものが、数字の鬼たちを前にして急激に引き出されていく感覚。
あったとは知りたくなかった。それでも、……私はこれを糧にして立ち上がっていたと。
激しく脈打つこの鼓動が、そう示している。
§
皆さんこんばんは。初めましての方は初めまして。
帰りな、今日はもう上弦ラッシュのみだよ……なRTA、始まります。
前回はキチ子が波紋法を覚え、無惨様の前で青い彼岸花をポロリした結果、上弦の鬼が五体連れました。ええ……。
まぁまず技能【素流】があるので猗窩座は確定で連れますが、上弦の壱IKIHAZI以外釣れるとは思いませんでした。これってぇ、もしかして乱数が荒ぶってらっしゃる?
これまで大体二~三体だったのになんで急にブッパ? 馬鹿なの死ぬの(走者が)?
ということでリトル無限城ナイトメアへようこそ。ウェルカムドリンクのコカ・コーラにございます(ゴッキュゴッキュ)
コカ・コーラの効能は攻撃力上昇。薬学時にはこればっかり作ってました。あんぱんバフを重ねて拳伍『秉燭宵宵』で更に重ねます。
ああそうそう、本来の上弦の弐を鬼連れモードで起用している為、上弦連中の原作キャラにズレが生じます。
猗窩座殿が“上弦の弐”になってまして、他はそのまま“上弦の肆”半天狗、“上弦の伍”玉壺、この場にはいない“上弦の壱”黒死牟だけですね。
参・陸は見知らぬゲーム版オリジナルキャラクターたちです。
妓夫太郎と堕姫がおらへんやんって? 当たり前じゃないですか~!
謝花兄妹が鬼になれたのは童磨が勧誘したからだって、ハッキリわかんだね。
その童磨がいない上弦のメンバーがわざわざ遊郭に行くことも、そしてその最下層たる羅生門河岸で死にかける兄妹を助けることも無いんだよなぁああああ(ボリボリ)
という理由で上弦の陸もあの二人ではありません。だから攻略が楽チンチン!
その為の鬼連れモード:童磨。こいつ引き抜くだけで厄介な鬼が三体減ります。(ダブルアタックでのみ死ぬ兄妹・呼吸メタクソ冷気)
それじゃ送゛っ゛て゛や゛る゛よ゛地獄に!!!!!
直近で近くにいた上弦陸(モブ)を拳陸『
ご覧ください、上弦の鬼が蒸発しました。それもその筈、今のキチ子は何と痣が出ている状態!
顔には出ていないので胴体に出るタイプですね。前回の時点で何気に究極のリセポイントも超えてました。顔発現だと再走です。痣縛り? イヤーキツイっす(素)
痣が他キャラから見える場所にあると無惨様の危機感知センサーが作動して最終決戦どころではなくなるからです。
陽光丸での鬼殺害で「ん……?」となってるのに、そこで痣をドーン!なんかしたら逃走一択ですよもう。(ラスボスとして)恥を知れ!
現状ステータスの常中による二倍+各呼吸のパッシブ+ステ補正付き技能+痣+食べ物バフモリモリでモブ上弦は死にます。
数字が参であろうと
今回集まった面子での撃破優先順位はモブ鬼>玉壺>猗窩座ですので、陸くんへとターゲット変更。
拳素壱『薄氷』で攻撃をパリィしながら拳素弐『風脚・小夜嵐』で蒸発。
玉壺へターゲティングしますがいきり立つゴリ座を受け流します。
「ば、化物か……?」
失礼な! これまでのたゆまぬ努力によって上弦の鬼を相手取っているだけだというのにこの言われ様!
なおこれは陽光丸で鬼を蒸発させた時に出してくる台詞です。まるで鬼がパニック映画のパンピーみたいに怯えだします。(勝手に)震えてろ!
玉壺の攻撃に触れたら一発で終わりますのでぇ、はいカウンター技の拳肆『寸鉄殺鬼』発動!
さて、玉壺は基本舐めプ勢かつその体の小ささと「おおっと危ない!」とか言って首への一撃を引っ込めて避けます。クズがこの野郎……。
これにて上弦陸・伍・参の掃除完了です……。
さっきから絶妙に邪魔してくるのでその度にジャスガでじゃれていた上弦の弐こと猗窩座殿とのタイマンに持ち込むとムービーが入ります。
お馴染みの勧誘コーナーです。拍手!パチパチ
「――素晴らしい技の冴えだ。あっと言う間に上弦の鬼を殺した貴様に喝采を送ってやろう」
さて、鬼の中でもフェミニストな猗窩座最大の特徴をご紹介。
プレイキャラが女性だと彼の方から「目障りだ。消えろ」とか言いながらこちらを
Q.女の子であるキチ子を前にしても戦いを避けようとしないのは何故でしょうか。
「少年。名前を聞いておこう。貴様程の強者ならばすぐに俺達上弦の域にまで登り詰められる。そして俺と戦い、その技を更に極めようではないか」
A.彼のフェミニストEYEはプレイキャラの見た目で判断されるので、簡単に誤魔化せるからです。
このためにキチ子の胸をまな板、髪も売る為のベリーロングにしておき現在は短髪、性差の判断できない年頃辺りの背にしておきました。
猗窩座が女と誤認する→戦闘が避けられるという超有用テクニックは通常プレイの方も多くの走者も使う、――通称『男の娘テク』にございます。
いや、母数的にメスガキみてぇな男の娘にする方が多いのでね。キチ子の場合は『逆・男の娘テク』とでも言いましょうか。
そして答えます。
(鬼に)ナラナイ! ホロベ! ホロベ! ボンクラガ! ヨメトチチオヤタチガナイテルゾ!
「そうか、残念だ。――仕方がない」
猗窩座戦開幕ゥ~↑
ディスイズマイストォォアアアアア!!!!!(気合いの咆哮)
さぁ此処が本RTA正念場。無限猗窩座襲来編の始まりです。え、無惨様? ここに比べれば(難易度なんて)カスや……。
速攻で各スキル割り振り!
仏塚 吉子 性別:女 特徴:『筋肉密度異常』 階級:『神』
ステータス
体力(108/108) 根気(108/108) 筋力(108/108) 防御(108/108) 速度(108/108)
技能
薬学(100/100) 交渉(47/100) 岩の呼吸(100/100)
人体理解(100/100) 素流体術(50/50) 拳の呼吸(100/100)
節制(100/100) 器用(46/100) 全集中・常中(100/100)
瞑想(100/100) 柔道(100/100) 医学(100/100)
強靭(70/100) 運び上手(100/100) 心眼(10/100)
不落の陽(100/100) 透き通る世界(100/100) 日の呼吸(50/100)
ンォフゥwww上弦をすり潰してやったので成長点がウレシイ……ウレシイ……タノシイナァ……タノシイナァ……!
そしてステータス・日の呼吸以外の呼吸術・人体理解・柔道・透き通る世界をMAX!
強靭・日の呼吸は猗窩座殿から搾り取る成長点で上げます。
猗窩座戦最大の特徴は刀を使用していると一定の確立で折ってきまカス。おっと殺意。一体何人ものプレイヤーが彼奴の凶拳によって刈り取られてきたことか……(810敗)。
上弦の壱の
赫刀でサクッと初撃首切断、固有イベントで成仏の二択しかないから上弦戦ってほんまクソ。だから
あとアッカザァ殿の攻撃は急所を狙ってきますが単なるジャスガ練習台なので気にしないで良いですはい(根気回復)。
「ははっ! 貴様もしや俺と同派の使い手か? 今まで見なかったなァッ!」
それ完成です(フラグ勃つ)
この状態でジャスガの舞とチクチク攻撃を入れてゆき、はい頸チョンパ。
「俺はまだ死ねない」とか抜かしながら首再生! 死ねィ!!!(鬼殺隊士の感想)
「は、ははは! これでまた俺は戦える、凄いぞお前は。俺の頸を斬ったのはお前が初めてだ。――改めてお前の名を聞こう!」
ここで情報開示のお時間です。しゃーない俺が気付かせてやるか!
ドーモ=仏塚キチ子=デス。女だわん♡
「は……? お、んな……?」
そうだよ(便乗)。見えねぇってのは怖ぇなぁ。
性別を誤魔化すことも出来ますがここはオンナの武器を盾にして猗窩座を弱体化させます。これRTAだから(非道)
目の前の相手が少年だと思っていた狛犬殿は戦いの興奮♂もどこへやら逃げ出そうとします。
当然敵前逃亡は武人の恥。不安よな、煽ります(煽の呼吸)
そうやって貴方は逃げるんですか? 目の前のことから(シュッシュッ
「は……? 逃げる、だと? この俺が?」
恥ずかしくないのかよ? あんぱんコーラを補給しながら言ってあげると。
ピキピキィ! おや、猗窩座殿の様子が……。
デンデデッデデレデンデデッデデレ デンデデッデデレデンデデッデデレ
猗窩座戦第二幕開始ィ!!!
ヘエーエ エーエエエー エーエエー ウーウォーオオオォー ララララ ラァーアーアーアー
こうして煽ることで武人は容易く勝負に乗ってくるので良いっすね。女性キャラ+他武術を収めていると
殺意 < フェミ座 が勝ってハンゴロシで終わる可能性もありますが、この【素流体術】の持ち主なら確定で乗ってきます。
この武術に ついて 思い当たることが あるようだ。
なんでやろなぁ(鼻ホジ) 花火とか見てなにか思い出さない? 君カワイイ恋人とかいない?
ちょっと紹介してよ。おっと危ない拳肆『寸鉄殺鬼』でカウンター。
どしたん? 話きこうか? うんうんそれ(数百年もの間無意味な殺戮を重ねる)は彼氏が悪いわ。
俺だったらそんな思いさせないのに(ジャスガ無双)
じゃあいれるね……ヌポポポ(拳素弐『風脚・小夜嵐』)
「ふざけるな……、ふざけるなふざけるな! 俺は負けてなどいない! 頸を斬っても死なない!」
それっておかしくないかな?(三殺目)
君は急所を三回斬られて殺されているということ。これ武人として如何に?
無言の破壊殺滅式やめちくり~。見えた、隙の糸……!(拳陸『瑩徹穿ち』)
おっと、ムービー入りました。七殺目でムービー入りは普通っすね。十よりマシかな?
一回殺した後は耐久値が脆くなるからキル数稼ぎは簡単とはいえ、ここは乱数ですね。
オッカシーナ、痣も出してるのでキチ子の手は赫手刀の筈なのに……。やっぱトラウマを刺激させないと駄目みたいですね(赫刀一撃で死ぬ上弦のNo.1 KOKUSHIBO)。
「なんだ、誰だ、貴様は……!」
一体誰の幻覚を見ていると言うんだ……。はい、ここで拳を使う攻撃をするとイベントが進行いたします。
ちょっとでも削りたいので拳壱『鉄火』をお見舞いじゃボケ!
――突如猗窩座に蘇る、
こんだけイベントムービー作られるぐらいだから無惨様のお気に入りってのはすげぇなぁ(狛治関連イベントの悍ましいまでの分岐数)。
「俺は……、おれは……」
呆然自失とした所で貴様の名を告げてしんぜよう。
そなたのその技の冴、もしや我が流派にて伝わる本流――
こうして同じ流派というか【氷心素流】技能を習得する最中、師範から『その昔、毒によって人生を壊された男がおってな……』と昔話を聞くとこのイベントフラグが立ちます。
話を聞いた上で何回かキルした辺りで『素山狛治』と真名看破が出来るようになります。たまげたなぁ。
「――俺は、素山の名を名乗る資格はない。だが、そうだ。俺は……狛治だ」
猗窩座戦第三幕開始です……。
あ゙あ゙あ゙も゙お゙お゙お゙や゙だあ゙あ゙あ゙ああ゛!!!!指が痛いんだよおおおお!!!!
だがこれを乗り越えれば無惨戦だけ、無惨戦だけだから!
うおォン俺はまるでRTA走者だ。『万葉閃柳』を避けて『鬼芯八重芯』を拳素壱『薄氷』にて受け流してダメを入れつつ、『飛遊星千輪』でお互い空中に飛び上がり拳壱『鉄火』によってフィニッシュ!
キッチリケジメ付けてくださいよォ!
「良い、拳……だった。……ああ、ずっと、隣にいて、くれたのか…………」
我が月光――ではなくずっと嫁が隣にいる(地獄でも)って……、勲章ですよ?
この第三幕だと動きは緩みませんが、猗窩座の表情から狛治の表情となり、ボイスでも「蹴りが甘い!」と指導を入れてきます。
瞬時に素流の技が失伝していることを悟り、後継者に技を託してようやく成仏していきます……。
狛治殿さよなら、さよなら! ノシ
キリも良いのでここで今回は終わります。次回、このRTAも最終回です!
ほな、また。
§
その闘気は今まで目にした事が無い程に緻密に練り上げられていた。
闘気というのは誰にでも発するものであり、それは不定。揺らめく炎の様に弱まり、時に強まるものだった。
だが俺が今対峙する少年から発せられるその闘気は奇怪なまでに一律。己の体より少し一回り大きく覆う形を維持していた。
己よりも矮小で、年も下の少年が――その領域に至っているという事実は、確実に俺の血潮を沸き立たせ、感じた些細な違和感を思考の外へと放った。
そのあの鬼狩りの刀にも等しき手刀で頸を斬られた時、いやそれ以前から接敵し、拳を交わしあった時からあったものを。
放って、しまった。
「は、ははは! これでまた俺は戦える、凄いぞお前は。俺の頸を斬ったのは初めてだ。――お前の名を聞こう」
頸の切断という弱点の克服。相手が己と同等の領域にいたが為の我が身の成長に喜んでいた俺は、次の瞬間打ちのめされた。
「仏塚吉子。少年ではなく、少女と呼ぶのが適当かと」
「は……? お、んな……?」
――嘘だと、信じたかった。
俺の拳を流水みたく受け流した時に感じたあの拳の筋肉量は、間違いなく
それを、女が発していた? ――信じられない。体中から噴き出る脂汗を拭う暇も無く、俺の足はこの女から逃れようとしていた。
「そうやって貴方は逃げるのか? 目の前のことから」
「は……? 逃げる、だと? この俺が?」
「武の道を極める者として恥を知れ。痴れ者が」
何故かあんぱんを貪りながら言われた言葉に久しく全身の血管が沸騰する感覚を覚える。
……久しく? 俺はどこか、前にこのような侮辱を感じたというのか?
視界の影に、何かが映る。――それを殺したくて堪らず拳を握って突き出す。
ああ、相手だった。影ではない。実体だ。俺を侮辱したのはこの女だ。
――易々と拳を受け流す、これは女じゃない。女では、ない!
拳の呼吸 -氷心素流式- 弐ノ型 風脚・小夜嵐
破壊殺・脚式 流閃群光
何故だ? 俺の羅針は正確であり、俺は確実にこの体に向かって攻撃している。脚式も乱式も効かない。
一体何を見ている。コイツは、何を見て、――俺の頸を三回も飛ばした?
「ふざけるな……、ふざけるなふざけるな! 俺は負けてなどいない! 頸を斬っても死なない!」
「人間で言うと三……、いや五、六回は心臓を潰されているのと同じ。貴方が鬼でなかったらとっくのとうに死んでいる」
――――全力を、出さねばなるまい。
ここまで侮辱されたのは、腸が煮えくり返ることも久しぶりで、……あの時の怒りが、苦しみが吹き出してくる!
破壊殺・滅――――拳の呼吸-氷心素流- 陸ノ型 瑩徹穿ち
俺が、技を出すよりもはや、い……?
コイツの素早く、そして岩の如き攻撃の衝撃を受け流すことが出来ず、その傷さえ
理解が及ばない内に、また影が、道場着を着た誰かの――。
「なんだ、誰だ、貴様は……!」
被るんだ。この拳が誰かのものと。
遠くで木霊しているのに聞こえない。忘れてしまった声が、誰かが呼んでいることだけは分かるのに。
鋭い拳で顔と体がめり込む。目が潰れ、顔の骨という骨が砕き折れ、緩やかに治っていく。
誰かに、この威力では無いが殴られた。
誰かに、顔の怪我を心配された。
「俺は……、おれは……。一体、誰なんだ……?」
戦う事さえ止めた俺に、目の前の女が口にする。
「貴殿のその技の冴、我が流派に伝わる『素山狛治』殿ではなかろうか」
素山狛治。
その言葉を耳にして、――――ようやく声が聞こえた。可憐な声、大切な人の声、俺の人生を懸けてでも護り通したかったのに、出来なかった。
己の罪を象徴する、女性。
『狛治さん、もうやめて……!』
俺の名前は
狛犬の、
狛治。
――親父が俺に付けてくれた大事な名前だ。慶蔵さんが気付かせてくれて、大切な人たちから多くの真心を込められて呼ばれた名前があった。
「俺は、素山の名を名乗る資格はない。だが、そうだ。俺は……狛治だ」
鬼となって忘れていた記憶が呼び起こされる。
「何も守れなかった。傍にいてやれなかった。何もしてやれなかった。どうしようもない男だ」
俺が如何にして生まれたのか、大事な人と出会い、あの橋の上で死んでいった時のことから……今まで起こした殺戮の日々までも。
心の底から力を求めていた。親父に薬を持ち帰れる為の早さと捕まろうが殴り返せる力を。
親父が首を吊って死んでから出会った、大切な人たちを護る為の力を。
二度と失いたくなかった、隣で笑っていて欲しかった、毒で苦しんで死んで欲しくなんか無かった、――どうして俺の大切な人たちはいつも苦しみながら死んでしまう。
そして、俺はいつだってその場所にいなかった。
「お前の、その体術の流れは同じか」
「
「……そうか」
少ない言葉だが理解した。師範が俺を道場に引き入れてくれる前に辞めていった門下生たちが、その不完全な技を……それでも次へと繋ごうとしたのだ。
だから、彼女の動きと俺の動きは違う。源流を同じとしながら、別れ、様々な形へと流れゆく川の様に。
繋いだ彼らと、殺すことに使った俺。――どちらの支流が残るかなど明らかだろう。
彼等は不完全ながらも後世へ残した。弱者だと侮り軽蔑し、殺しの限りを尽くした俺とはまったく違う。
……たとえそうでも。俺自身が大昔に素流を破門にされていたとしても。
俺に、素流を語る資格が無いとしても!
(この技を継いで欲しい。俺の名前などはいいから、俺が師範から教わった技だけでも)
――生きている彼女の行く道を護ってくれないか。
俺が殺戮に使った技を、正しく使う気配がこの少女にはあった。
その闘気の練度、型の精度、そして完成された技の技巧。素流の教えを血管の一つ一つ、全身に行き渡らせた
それら全てがあの幼い限りで積み重ねてきた努力の結晶に他ならない。正しく敬われるべき人間の一人だ。
七回も手刀によって切断された首は辛うじて繋がっている状態だった。あと一度、首に打撃を受ければ今度こそ俺は死ぬ。
最期の一世一代の大舞台。武道修めたる者の意地として血鬼術は使わない。
深く息を吸い込んで全身に意識を行き渡らせる。
心を静め、力まず、全てが連動して……技となる。
試合の前に訪れる懐かしき静寂が俺の中で満ちていく。
互いが全身に力を漲らせ、試合の合図を待つ。――誰が合図を出すのか、あの白い道場着の師範が静かに佇んで俺たちの間に立っていた。
『――――始め』
低い声が耳を打った途端、彼女の足元目掛けて右の拳を地面へと突き出す。
破壊殺・砕式 万葉閃柳
全身に集中と力を漲らせた一撃はこれまで披露した技の中でもかなりの威力を見せた。砕け散る木片の中、その小さな体躯へ向けてひたすらに攻撃を向ける。
彼女なら確実に目の前に来る。振るわれる拳の威力は凄まじいがその手足の長さではより相手に近付かなければ空を切るだけに終わる。
両手による突き、両足の蹴り。刹那の間に左右計八回の打撃。酷く見慣れた型にて全てが受け流された。
――確実に肉を殴った感覚。己と同等の力でその矛先を軽く避けられたのだ。
拳の呼吸 -氷心素流式- 壱ノ型 薄氷
勢いの付いた拳同士が触れ合うが火花の代わりに散るのは切なく音を立てる氷片。濁りといったものが欠片も無い、素直な突きが腹の臓腑を打ち崩す。
この体が最早再生する事は無い。昔日ぶりに感じる疲労と体の痛み。
(だから、何だというのか)
その披露さえ感じぬ程まで――極限まで集中すれば良いだけのこと。行動を起こされる前に踏ん張りの効かぬ空へと放る。
一瞬だけ見えた。相手の人体がどう動くのか、その筋肉と骨の動き。それはまるで己の瞳が
(これが、武の極致か?)
鬼となって求めた力の頂。極めた者だけが辿り着ける場所。
接触面積の多い背面からの体当たりを飛び下がって避け、奴は僅かに目を見開かせた。
明らかな隙。――迷いなく低く身を下げてからその身体を蹴り上げた。
破壊殺・脚式 飛遊星千輪
拳の呼吸 -氷心素流式- 弐ノ型 風脚・小夜嵐
互いの足技が競り合うことで燐光と小さな嵐を生じさせながら俺たちは空へ打ち揚げられる。
脚部の筋肉が動くのが見える。そうか、彼女はこの戦いの前からこの境地に至っていた。混じり気の無い視線を受けて、俺は体の全身という全身に力を滾らせた。
足元に浮かぶ雪花の紋、大切な人が見上げているのを感じながら。
破壊殺・終式――――
さぁ見届けろ。俺の無様な生き様を。
血に塗れ、
横殴。回し蹴り。空式。掌底打ち。冠先割。肘鉄。貫手。流閃群光。滅式。
技を繰り出す度に透き通る。血肉の動きは最適化され、速度という速度を越えていく。
俺の体が、まるで光の一粒になったかのように思考も、動きも、何もかもの雑念が消え去っていく。
轟音を立てて、弾けていく。
相手の姿は見えていた。自身へ当たる攻撃を避け、受け流し、その体格を生かして最小の動きで、そして最短の距離で俺へと突き進み。
――心臓への正拳突きが体内の臓器全てを破裂させる。
「良い、拳……だった」
崩壊する体と共に地へと落ちていく。見事という他ないその技量、判断力、そして意志の強さ。
このような強者と出会い、ほんのひと時でも己を見つめ直せた事は僥倖だった。
もう、満足だ。俺は最後に至る事も出来た。――素流を汲む、流派の技をこの身で確と味わった。素晴らしき使い手がこの世にいると、理解できた。
激しい怒気を持つ主よりも先に、未だに残る頸が何者かに拾い上げられた。
桃の地に雪の模様。しゃらりと軽やかで澄んだ簪の飾りが揺れる音。注がれる、優しい眼差し。
「……ああ、ずっと、隣にいて、くれたのか…………」
俺の手を握り、繋ぎ止めてくれていた人を。花の様な瞳一杯に涙を張らせて、その人は慈悲深く俺の頭を包む。
『狛治さん。狛治さんが、思い出してくれて良かった。元の狛治さんに戻ってくれて、良かった……。素山の名前が相応しくないなんて言わないでください。貴方はあの時からずっと』
――――私の、夫です。
引き摺られる感覚よりも先に、いつの間にかあった体で彼女の体を掻き抱いた。
ごめんと何度も叫んだ。許してくれと叫んだ。みっともなく泣き喚いた。これまで重ねた罪を懺悔するように何度も、何度も。
それでも尚、彼女は優しく触れてくれていた。
『おかえりなさい。あなた……』
『上弦の弐単独討伐』なんでね。今まで番外編でもちょこーっとだけ濁しておいた猗窩座戦をちゃんと書けて満足!