監視対象と約束された日々【完結】   作:砂糖ノ塊

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27."少年"神代 真言【監視対象 過去編】

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 昔々、あるところに心の優しい真っ直ぐな少年がいました。

 

 "正しいものは何があっても正しい"彼はずっとそう思っていました。

 

 正しさはどんな力を持ってしても歪めることはできない。真実は何があろうと真実だ。

 

 悪では、正義に勝つことはできない。

 

 それは彼自身の信念であり、同時に彼の母親の言葉でもありました。

 

 "真実を言う"と書いて真言。その名前に恥じないよう、絶対に嘘はつかない。結んだ約束は必ず守る。

 

 それが、彼の誇りでした。

 

 

 

 彼の信じていたものが、彼の正義が、すべて崩れ落ちたあの日までは。

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 きっかけは些細なことだった。少なくとも俺にとっては。

 

 ごくごく普通の高校生。それが俺、神代 真言。

 

 友達もそれなりにいるし、部活には入ってないけど、まあそれなりに楽しく高校生活を送っている。

 

 そんな俺はガキの頃からちょっとばかし正義感が強かった。

 

 親の影響か、はたまた生まれ持ってのものなのか、

 

 小学生の頃、無理やり祖父の家の道場にぶち込まれたときには、クラスで女子をからかっていた男子たちを殴って破門になった。

 

 入門期間、約2週間。

 

 そりゃあもう祖父にも母親にもボコボコにされたよ。

 

「弱い者いじめをするな。手出すなら一対一の試合形式でやれ」って言われたときには、この親ホントに大丈夫かって思ったけど。

 

 それでも俺は自分が正しいと思ったことを貫き通してきた。

 

 だからあの時も、俺は間違っていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真言「あ?」

 

 今日の授業が終わり、家へ帰ろうと廊下を歩いていると、隣のクラスから言い争う声が聞こえてきた。

 

「返してください!」

「はぁw?何こいつ必死すぎwww」

「めっちゃウケるんですけどwww」

「ほら!取れるもんなら取ってみろよチビ女」

 

 四人のの女子生徒、どうやら三人のガラの悪そうな奴らがもう一人の方の私物を取り上げて遊んでいるようだった。

 

 クソ幼稚だな、ガキかよ。

 

「返して!そのお守りはおばあちゃんの形見なの!!」

「こんなボロいのが?」

「汚いなそれ、捨てちゃったらw?」

「………!やめて!」

 

 三人組の一人がそれを窓から投げる。

 

 

 

 

 

 気づいたら俺は、窓の外にいた。

 

 

 

 

 

真言「よーしナイスキャーッチ!」ガシ

「!?」

 

 空中でお守りをキャッチ!……でもこれ落ちるな。ここ三階だけど、大丈夫かな?俺。

 

 うん。やばいな。

 

真言「………………………………………………あれ?」

 

 落ちない。なんで?あれ俺飛べたっけ?

 

「ちょ、おまえ何やってんだよ!!」

真言「…………あんた誰?」

「いや、そんな余裕ねぇだろ!?」

 

 どうやら誰かが俺の足を掴んでくれたらしい。

 

 俺の足の方向、つまり教室の方向から声が聞こえる。声の感じは女性のものだ。けどさっきの奴らじゃない。

 

 てかうちの高校女子生徒の比率多いな……最近まで女子校だったなんて入学する前日まで知らなかったし。

 

 ちょっと焦って行く高校適当に決めすぎたか。

 

 おっとそんなこと言ってる場合じゃねぇ。このままだと俺頭から落ちちまう。

 

 流石の俺でも校舎の三階から頭から落ちたら……ただじゃ済まないだろう。

 

真言「あー……どなたか存じませんがそのまま引っ張り上げてくれませんかね?俺このままだと頭から地面に叩きつけられて、R18グロ映画みたいになっちゃうんですけど」

「だ、から、何、でそん、なに、よ、余裕なんだよ……!!」ハァハァ

 

 流石に男一人持ち上げるのに、か弱い女の子一人だけだとキツイわな……

 

「誰か!!手伝ってください!!」

 

「ねぇあれヤバいんじゃない……?」

「でもアタシら関係ないし……」

「ほら行こ行こ」

 

 

 

 

 

 

「あいつら………!!」

真言「大丈夫ですかー?」

「ちょっとキレそう!!」

 

 もうキレてますやん。無理もないけど。俺もキレてる。

 

「おいどうしたんだ!」

「先生!助けてください!」

真言「お、先生ー引っ張り上げてくださーい」

「おまえ、そこで何してるんだ!!」

真言「何って……」

 

 ……宙づりになってます?

 

 

 

 

 

 なんとか教室まで戻ってこれた。ふー……

 

「何で窓の外にいたんだ」

真言「いやーちょっと考えるより先に身体が動いちゃったと言いますか…………」チラ

 

「……その人は、私のお守りを取ってくれて……」

「お守り?」

真言「はいこれ」スッ

「何でそのお守りが窓の外に──」

「風で。飛んでいってしまったんです。ごめんなさい」

真言「…………」

「うーん……まあ今度からは気をつけるように。お前も、もう無闇に窓から飛び出すんじゃないぞ」

真言「はーい」

 

 

 

 

 

真言「おい」

「!」

真言「お前……いいのかよ。それで」

 

 せっかく教師にチクるチャンスだったのに。あれ、完全にイジメだったろ。

 

「……………いいんです」

真言「……あっそ、ならいいけどよ」

 

 チッ、スッキリしねぇ……

 

「あ、おい!待てよ!」

真言「…………」スタスタ

 

 さっさと帰るか。とんだ寄り道をしちまった。

 

 ………………クソッ!なんかすげえイライラする!!!

 

 ばあちゃんの形見……か。

 

「待てって!!」

真言「ん?俺か?」

「お前以外にいるかよ!」

 

真言「…………え、誰?」

「さっきお前の足掴んだ!!」

真言「ああ…………で誰?」

「いや私とお前、同じクラスだろ!?」

真言「そうだっけ?」

 

 人の名前覚えるの苦手なんだよな……

 

真言「まあいいや」スタスタ

「っておい!」

 

 

 

真言「…………」スタスタ

「ちょ、おま、歩くの速い!!どこ行くんだよ!?」

真言「…………」スタスタ

 

 着いたのは校舎の外にある自販機の前。

 

真言「オレンジジュースでいいか?」

「…………え?」

 

 ガコン

 

真言「ほい、助けてくれたお礼」スッ

「え、あ、ありがとう……」

真言「んじゃあな」スタスタ

「おい待てよ!神代くん!」

真言「……何で俺の名前知ってんだ?」

「だから同じクラスだって!」

真言「ふーん……」

 

 ついんてーる?の女子生徒。俺より身長は小さい……ま、俺170cmあるし。

 

真言「……お前、名前は?」

有咲「…………市ヶ谷 有咲」

真言「そっか、よろしく市ヶ谷」

有咲「お、おお……」

真言「さっきはありがとな。お前がいなかったら俺ケガしてたかもしれないし」

有咲「絶対ケガじゃ済まなかっただろ!!」

 

 どうだろうな。体の強さなら少し自信がある。

 

 あととてもいいツッコミだ。将来お笑い芸人になれるぞ君。

 

有咲「それより……いいのかよさっきの。放っておいて」

真言「?ああ、別に本人がいいって言うならいいだろ」

有咲「…………じゃあどうしてお前はあの子を助けたんだ?自分の身を危険に晒してまで…………友達って訳じゃないんだろ?」

 

 どうして……か。

 

真言「さぁな。俺にもよく分かんねぇわ」

有咲「…………変なやつだな、お前」

真言「ははっ、そうかもな」

 

 俺ってやっぱり変わってんのかなぁ……自分じゃよくわかんねぇけど。

 

真言「じゃあな市ヶ谷」

有咲「あ……おお…また明日」

 

 市ヶ谷 有咲か……多分良いやつだな。てかクラスにあんなやついたっけ……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の日の朝。

 

真言「眠ぃ……」ガラガラ

「おはよー真言。眠そうだな」

真言「あぁ……」

 

 そういえばあいつ……確か市ヶ谷……

 

「市ヶ谷さんおはよう」

 

 

 

 

 

有咲「ご、ごきげんよう」

 

 

 

 

 

真言「…………え?」

 

 眠気吹き飛んだわ。

 

 え?「ごきげんよう」?

 

真言「……………っっっ!!!」バンバン!!

「おい…どうした真言」

 

 やばい、なんかツボった。

 

有咲「あ」

真言「も、もう無理……」ヒーヒー

有咲「……神代くん?ちょっとこっちに……」グイ

真言「ごめんごめん!!でも、"ごきげんよう"って………っつ…………!」

 

 そのまま教室の外にまで連れて行かれた。

 

 

 

 

 

有咲「お前!笑い過ぎだって!!」

真言「あ、戻った」

 

 …………今日の俺の笑いのツボおかしくね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これが俺と市ヶ谷 有咲との出会いだった。

 

 しかしこの時、既に悪夢に片足を突っ込んでいたことを、俺は知らなかった。

 

 

 

 

 

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 自分は間違っていない。

 

 彼は何度も何度も叫びました。

 

 けれど誰一人として彼の話に耳を貸しません。

 

 どうして人を助けたのにこんな惨めな思いをしているのか、

 

 どうして正しいことをした自分が悪者扱いされるのか、

 

 どうして助けたはずのあの子は何も言わないのか

 

 少年にはわかりませんでした。

 

 しかしある時、突然現れた"何か"が彼にこう言います。

 

「君は善人じゃない。正義の味方でもなければましてや正義そのものでもない」

 

「君のようなやつを、君のような正義を気取った偽物を、世間ではこう言うんだ──」

 

 

 

 

 

「"偽善者"とね」

 

 

 

 

 

 少年の信じてきた正義は、いとも簡単に、そして跡形もなく、

 

 砕け散ってしまいました。

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お気に入り登録 希望光 様 サイガ02 様 藤井 浩 様 ありがとうございます。

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