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少年は逃げました。
どこかへ行くというわけでもなく、ただひたすらに、
逃げて、逃げて、逃げて、逃げて、逃げて。
しかしどこまで逃げても"それ"はずっと少年の後ろを追いかけてきます。
自分が正しくないという現実からはどうやっても逃げ切ることができません。
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気に食わなかった。
たったそれだけ。それだけの理由で俺はあの暴力事件を起こした。
傍から見ればバカげた理由だ。頭がおかしいとしか思えない。
けど気に食わなかった。
自分より弱い者を虐げ、それで優越感に浸るクズが。
家族が遺してくれたものをゴミのように扱うあいつらが。
許せなかった。
自分のことのように思えた。
思えてしまった…………
真言「……………………お前」
「……またあなたですか」
そいつは雨も降ってないのに全身ずぶ濡れで立っていた。
真言「それはこっちのセリフだ……一体何があった」
「なんでもないです。あなたには関係ないことでしょう?」
なんでもないわけ無いだろ。
明らかに誰かの仕業。それこそバケツの水をぶっかけられたようだった。
真言「お前、この前お守り盗られたやつだろ」
「……その節はありがとうございました」
真言「どうして助けを求めない」
「…………助けなんか求めたって、意味がないからです」
真言「…………」
「前に……あなたみたいに私を助けようとしてくれた人がいました。でもその人は、突然学校を辞めてしまったんです」
あいつらに潰された……か。
真言「俺も、その辞めてったやつと同じだと?」
「もう……いいんです。私が耐えれば済むことですから」
真言「ふざけんな!そんなもんいつまでも持つわけないだろうが!!」
「お願いですから!もう、私に関わらないでください……」
もう、助けてくれるなんて希望、私に見せないでください。
そいつは俺にそう言った。
結局俺はそれ以上何も言えなかった。
真言「………………」スタスタ
どうすればいい?俺はあいつに何もしてやれないのか?
目の前に困ってるやつがいるはずなのに、助けてやれないのか…………?
助けを求めないやつは、救えないのか?
真言「…………………」スタスタ
「…………!!」バサ−
真言「うわ!ごめんなさい!!」
考え事をしていたせいで、曲がり角で人にぶつかってしまった。
どうやら俺のぶつかった人は何かのプリントを運んでいたらしい。盛大にぶちまけてしまった。
「あの……大丈夫……ですか……?」
真言「え、あ、はい。大丈夫です」
プリントを拾いながら彼女はそう聞いてくる。ってやべ俺も拾わなきゃ。
真言「………………」ヒョイヒョイ
「………………」ヒョイヒョイ
き、気まずい……正面でプリントを拾う彼女は一言も話さない。何というか、人と話すのが苦手だといった感じだ。
「………………」ジーッ
真言「?何か……」
「あ、あの……ありがとうございました……」ペコ
真言「あ、いや、こちらこそすみませんでした」ペコ
そう言って黒髪の物静かそうな少女は去っていった。
いや、"物静かそう"って人を初見で判断するのはダメだな。市ヶ谷みたいに猫かぶってるやつもいるし……
…………思い出し笑いが出そう。
真言「市ヶ谷に相談…………はやめとくか」
あいつには全く関係ないことだ。無関係の人を巻き込む訳にはいかない。
真言「それじゃあどうすれば……ん?」
足の下に違和感。落ちていたプリントを踏んでしまったようだ。
真言「これ……さっきの人のやつか……」
拾い忘れでもあったのだろう。結構な量運んでたもんな……
真言「"生徒会"か…………」
それは生徒会作成のプリントだった。どうやらさっきの人は生徒会の人だったみたいだな。
真言「これは最終手段……かな」
生徒会や教師を頼ると大事になるケースが多い。それはあいつも望んでないはずだ。
まあ、これ以上酷くなるようなら報告することにしよう。
間違えた。判断を、完全に間違えてしまった。
真言「……………」
目を疑った。言葉が出なかった。
この前、あの悠長な考えをしていた自分をぶん殴ってやりたくなるほど、それは衝撃的だった。
「……………」ポロポロ
あいつが……
ボロボロな姿でうずくまって泣いていた。
体中に殴られた跡、蹴られた跡、踏みつけられた跡、そして──
──黒焦げになったお守りらしきものが落ちていた。
ゴミのように。
「なんで……どうして……」ポロポロ
真言「…………………」
これが……本当に人間のやることなのか?
いや違う。こんなものは…………
真言「正しくない」
ダメだ。これはもうどうしょうもなく、
間違っている。
間違っているものは……正さねばならない。
「ねえ、何あんた」
「私たちに何か用なの?」
「てかあんた誰?」
真言「…………俺は一つ、忠告しに来ただけだ」
「はぁ?」
真言「イジメを今すぐにやめろ」
「何、急に」
「あたしたちがイジメをしてるっていう証拠でもあんの?」
「あ、てかあんたあの時窓から飛び出したバカくんじゃんwww」
「あwホントだwww」
真言「…………………」
直接忠告したら少しは良くなるかと思ったが、ダメだったみたいだ。
真言「ゴミはどこまでいってもゴミ……か……」ハァ
「は?なに?」
真言「いや?だけどなお前ら、これ以上派手に暴れるといずれ大事になるぞ」
「もう行こ?」
「そうだね」
そう言って三人は去っていった。
真言「俺だって、できればこんな事に関わりたくねぇよ……」
もし奴らがこれ以上なにかすればいずれ大事になる……いや、俺が大事にしてやる……
そこから先も三人のイジメは止まらなかった。
あいつはどんどんやつれていき、終いには学校にも来なくなった。
教師どもは何故あいつが学校に来ないか、皆目見当もつかないらしい。よくボロが出ないと思ったら、どうやらクラスでは優等生キャラを演じているみたいだ。
まったく、誰かさんと同じ様なことをしてる癖にここまで天と地の差があるもんなのかね。
どうせ言っても信じてもらえるとは限らない。
真言「さて……どうしてやろうか…………あ?」
下駄箱に大量の土が入れられていた。
後ろからクスクスと笑い声が聞こえる。
真言「(なるほど……あいつがいないから次の標的は俺ってわけね……)」
有咲「神代くん、そんなとこで何してんだ……って!何だそれ!?」
真言「おお!市ヶ谷、おはよう」
有咲「いや、呑気に挨拶してる場合か!?」
真言「なぁに、ゴミが標的を俺に変えただけの事だよ」
有咲「いや、お前……とりあえず先生に──」
真言「市ヶ谷」
真言「邪魔すんなよ。こっから楽しくなるんじゃねぇか」ニタァ
有咲「っ!」
ここで教師にチクったら俺の手であいつらを裁けない。
さてどう潰してやろうか……
真言「今から楽しみで仕方ないな……」
有咲「………………」
その日から俺への徹底的なイジメが始まった。
私物を隠されたり、靴がビショビショになってたり、雨の日には水をかけられたりした。
真言「ほんっと……別クラスなのによくやるな」
今日も靴の中はドロドロだ……後で洗わなきゃな……
真言「まだ我慢しろ俺……あいつらが直接俺にコンタクトとって来るその時まで……」ニヤ
「あの……」
真言「?」
「大丈夫……ですか?」
振り返って見ると、黒髪の女子生徒が俺のことを心配そうに見ていた。
おおっと、にやけてたのがバレたのか?
「靴……ドロドロですよ……?」
真言「あ、そっちか」
「……?」
真言「何でもないですよ、こっちの話です」
というかこの人、どっかで……
「どうかしたのですか?」
あ、一人増えた。どうやら黒髪の人の友達らしい。
黒髪の人よりちょっとだけ背が高い。何というか……こう……キリっとしてる感じがする……?
…………なんじゃそりゃ。
真言「思い出した。あんたこの前のプリントの……」
そうだ。この人は…………生徒会。
「あ、あの時はすみませんでした……」
真言「いえいえ、こっちの前方不注意でしたから……」
「知り合いでしたか……というかあなたその靴……」
キリっとしたほうが俺に話しかけてくる。
真言「ああ、これですか?」
真言「…………まあ俗に言う、"イジメ"というやつを絶賛体験中なんですよ、俺」
「「!?」」
「先生には言ったんですか!?」
真言「いや?言ってないですけど……」
「何故ですか!?」
真言「何故と言われましても……」
「……わかりました。先生たちには私たちから報告しておきます。これでも私たち生徒会の役員ですから」
「もう少し……耐えてください……」
いやいやいやいや。
真言「は?」
「「え?」」
真言「何勝手な真似しようとしてんだ?」
「え……」
「勝手な真似って……」
真言「これは俺がやるべきことなんだよ、だから……邪魔だけはすんな」
「「…………………」」
真言「一年○組の────、今そいつがなんで学校休んでるか調べれば、何が起こってるか全部わかるだろうよ。じゃあな」
「ちょ……待ちなさい!」
真言「あ?」
「あなた……名前は」
真言「…………神代 真言。あんたらは?」
紗夜「氷川 紗夜です」
燐子「白金 燐子です……」
ひかわさよ……しろかねりんこ……
真言「んじゃ精々頑張れよ、生徒会」
紗夜「何だったんでしょうか……あの人」
燐子「さあ……わたしにもよく分かりません……」
これが俺と先輩たちとの出会い。
今思えば何たる失態。燐子先輩に敬語を使わなかっただけでなく、あろうことか先輩たちの優しさを無下にするなど(ry
何はともあれ、その時は刻一刻と近づいていた。
「ねぇ、あんた」
真言「?」
「今日の放課後、ついてきなさい」
真言「なんで?」
よし来やがったな……
「口答えすんじゃないわよ」ボソ
真言「へいへいわかりやしたよ、行けばいいんでしょ、行けば」
有咲「神代くん……さっきの」
真言「遂に念願のお呼ばれだな」
有咲「…………それは……ちょっと言い方が違うんじゃない?」
そして、俺は監視対象となる。
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走り疲れた少年は、遂に倒れてしまいました。
そんな彼に追い打ちをかけるように大雨が降り出します。
寒くて、惨めで、辛くて、悲しくて、悔しくて、
彼は涙が止まりませんでした。
そんな時、彼の前に一人の少女が現れました。
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