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目の前に突然現れた少女は、泣いてる少年の目を見据えこう言います。
「君は何も悪くない」
「君は正しいことをした、絶対に…間違ってなんかいない」
その言葉で、少年は救われました。
少年は他人への信頼と、自分の中の正義を失ってしまいました。
ですが、少年には大切な人と大切な約束ができたのです。
その日から、少年はまた戦うことを決めました。
自分の正義のためではなく、たった一人の少女と結んだ、かけがえのない約束を守るために。
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真言「んで?何か用?」
「あんたさぁ、一体なんなの?」
真言「花咲川一年、神代 真言ですが」
ただいま俺をイジメている三人組に呼び出されています。
やっと待ち望んだ直接対決。俺よくこの日まで耐えたな……
「ふざけてんの?」
真言「いや、自分たちがイジメてる相手の名前すら知らねぇの?」
「………!!」イラッ
イライラしてんな……カルシウム足りてないんじゃねぇの???
「まあまあ、それにしてもさ……」
ぱっと見リーダー格のやつが話しかけてくる。
「あんたも不運だよね?あたしらみたいな奴に目つけられて」
真言「そう思うならとっととやめてくんない?」
「え?嫌だけど」
……この女、多分三人の中で一番めんどくさい。
「あんた、もうあたしらのオモチャだから」
あと一番腐ってやがる。どうしょうもないくらいのクズだ。
真言「は?」
「あんたも悪いんだよ?あたしらがアイツで楽しく遊んでるとこ邪魔して」
真言「…………クソ女が」
人間をなんだと思ってやがる……
「でもあんたつまんないね。アイツもそうだけど全然何も言わないし反応もしてくれない」
真言「誰が好き好んでクズの思い通りになるかよ」
「でもあれは傑作だったかなwあいつの大事にしてたボッロイお守り、あれをあいつの目の前で燃やしたときwwwあいつ泣いて止めようとしてたよねwww!!」
「そうそうwww」
「あれは面白かったwww」
真言「………………なんでそんなことをする」
「え?だって……」
「面白いじゃん。弱い奴が必死こいてる姿が」
真言「…………そうかよ」ギロ
きっとこいつとは1000年かかっても分かり合えることはないだろう。
「なに、その目」
真言「俺、前に言ったよな?"大事になるぞ"って」
真言「今、手ついて謝れば許してやるよ」
「てめぇ!なめた口聞いてんじゃ──」グイッ
取り巻きの一人が俺の胸ぐらを掴んでくる。
……………………………ドシャア!!!
真言「な?こうなりたくないだろ?」
「………………は?」
こいつら、何が起きたのか分かってないみたいだな。
「あんた……今何を……」
真言「何って、殴った」
結構強めに。
真言「ほら、そこに転がってんじゃねぇか」
「………………」
ほんの一瞬、女が真言の服を掴んだ瞬間に、ただ右手で顔を殴り、そのまま思いっきり地面に叩きつけただけ。
真言の幼少期、通わされていた祖父の道場で習っていた武道は対人戦闘を目的とした技を教えていたが、それを彼は我流に変えて……と言うより今のはただ力任せに殴っただけだ。
彼自身、道場で教えてもらった技など一つも覚えてはいない。
「てめぇ!やりやがったな!!」
真言「お?お仲間か?」
物陰から5人の男子生徒が出てきた。
真言「なるほど……俺は今日こいつらにリンチされる予定だったってわけだ」
「あんたら!ボコボコにしちまえ!!」
真言「はっ、まるで悪役のセリフだな。とてもクラスで優等生キャラを演じてるやつのセリフとは思えねぇな?」
「あんた何なのよ!元々アイツを助ける義理もなかったのに!!勝手に首突っ込んできて、正義の味方のつもり!!??」
真言「正義の味方?俺はそんなもんのつもりねぇよ」
俺は……
真言「俺はな……正義になりたいんだよ」
正義、そのものに。
「はぁ!?頭おかしいんじゃないの??」
真言「お前、さっき俺のこと"オモチャ"とかなんとかほざいてやがったな………………いいぜ、遊んでやるよ」
「黙らせてやれ!!」
5人が一斉に殴りかかってくる──
「うそ……でしょ……?」
5分、たったの5分で真言は男子生徒を全滅させてしまった。
真言「残念だけど、嘘じゃないんだよな」
「だ……だれかたすけ──」
ドシャア!!!
一人目と同じように地面に叩きつける。
うるさいのは好きじゃないんだ。そこで静かにしてろ。
真言「ハハハハハハハハハ!!!!」
いいねいいね!!こいつらみたいなのを叩き潰せるなんて!!今日はなんていい日なんだ!!我慢してきて良かった!本当に良かった!!!
「あんた……」
真言「あ?」
「この化け物!!!女に手をあげるなんて最低!!!アンタなんか人間じゃない!!!!」
化け物……ね……人の皮を被ったクズのこいつらだけには言われたくないな。
真言「何言ってんだお前?」
この期に及んで……よくもまあそんなことが言えるものだ。自分たちが何をしたのか覚えてないのか?
真言「俺が人間じゃねぇならお前らは人間以下のゴミクズだろ、なぁおい?」ガシッ
「だ、誰か!!助けて!!!」
真言「ざんね~んお前の友達はそこでのびてま〜す」
こいつらもこいつらだ。なんでこんなゴミクズと一緒にいるのだろう?
俺に言わせれば本当に不運なのはこいつらのほうだ。
俺みたいなやつに目をつけられて。
「ちょっと!!起きなさいよ!!」
真言「はぁ…もういいよお前、そろそろ黙ろうぜ?な?」
「グヘッ!!!」
汚い声を上げ、そして静かになった。
そうだ……こいつらは悪!悪じゃ正義には勝てねぇんだよ!!
……………ザッ
真言「誰だ?」
……………………気の所為……か……
「ゆるさない……」
真言「あ?」
「ぜったいに……復讐してやる……」
痣だらけの汚い顔で地面に転がったそいつが呻く。
真言「うるせぇよ」
まあ蹴り飛ばしたら黙ったけど。
言ったろ?うるせぇのは嫌いなんだ。
〜〜次の日〜〜
「一体どういうことだ!!ちゃんと説明しろ!!」
真言「はぁ……」
俺は職員室に呼び出されている。理由はもちろん昨日のことだ。
真言「だからぁ!何度も説明してるでしょうが!!あいつらが俺とあと別クラスのやつをイジメてたからそれを止めた!はい以上!!」
「デタラメ言うな!!」
真言「デタラメじゃないって何度も言ってるだろうが!!」
こんな感じでずっと頭の固い教師と押し問答を繰り広げている。
正直言ってクソ時間の無駄だ。
「無関係の、しかも女子生徒の顔を殴るなんてどうかしてるぞ!!」
真言「いいかげんにしろ!!あいつらはイジメの主犯格だぜ!?無関係なはずあるかよ!!」
どれだけ言っても信じてくれない。どれだけ上手く立ち回ってたんだよ…………
「証拠はあるのか!イジメの証拠は!!本人たちは「やってない」って言ってるぞ!」
いや、イジメだって言ってんだから加害者側が自白するわけ無いだろ。こいつバカなのか?
真言「もう一人のやつはイジメが原因で学校休んでんだ、あいつに聞けば全部……」
「その"もう一人のやつ"というのは○組の────の事か?」
真言「……ああ」
「はぁ……お前な……」
真言「?」
「嘘ならもっとマシな嘘をつけ」
真言「嘘じゃねぇ!!」バン
「お前が言ってるその子にも話を聞いたんだよ、生徒会の調査でな」
生徒会?あの二人か……
「そしたら返ってきた返答がこれだ」
『私はイジメられていません。全部その人の勘違いです』
は?
「お前のいう"イジメ"の被害者もこう言ってるんだ」
……何言ってるんだこいつ?まったく意味がわからない。
「いいか!お前はな…自分の勘違いで無関係な人を殴ったんだよ!!」
勘違い……?あれが……あの涙が勘違い……?
ありえない。絶対にありえない。だって…………
「それに止めに入った男子生徒も傷つけて…自分が何をやったのかわかっているのか!?」
俺は…………裏切られたのか……?助けたつもりが……見捨てられたのか?
ガチャ
扉が開いて…入ってきたのは…………
「先生」
「危ないからまだ入ってくるんじゃない!」
「大丈夫ですよ」
この女………………!!!!
「大丈夫って……怖くないのか?こいつは君を殴ったんだよ?」
「ええ……けどどうして殴られたのか、その理由がわかった今、全然怖くなくなりました。それに…………」
真言「…………………」
「勘違いは誰にでもありますから」ニコ
ああ、そうなんだ。こいつはきっと今までこうやって、騙して、嵌めて、潰して、生きてきたんだ。そしてこれからも……
「それにあたし……決めたんです」
「何を?」
「……あたしはあなたを許します」
真言「は?」
許す?ゴミクズの分際で何を言ってるんだこいつは?
「誰にでも間違いはあります。それに彼のやろうとしてたことは間違っていません。ただ……」
「どうなるかをもう少し考えれば、こんなことにはならなかったと思うんです」
「だから先生、もういいんですあたしは彼を許します」
「聞いたか?こんな子がイジメをするように見えるか?」
真言「………………」
悪じゃ正義には勝てない。
俺は…………………………正義だ。
「謝れ、お前まだ一言も謝ってないだろ」
真言「………………」スクッ
「おい待て!どこ行くんだ!!」
俺は正しい……俺は正しい……俺は正しい……俺は正しい……俺は正しい……俺は……俺は……俺は…………………
「いい気味ね」ボソ
真言「…………………」
すれ違ったときに聞こえた言葉で、俺は確信する。
殺しておくべきだった。あの場で、殴り殺しておくべきだったんだ。
「まったく……高校生にもなって謝ることもできないなんて……」
「亡くなったお母さんもさぞ悲しんでる事だろう……」
『真言……お前は、正しい人間になりなさい──』
真言「殺す」
頭の固いクソ教師も、俺を嵌めたゴミ女も、
今ここで、全員殺す。
これが人生で初めて、確実に殺す気でふるった拳だった。
燐子「ダメ!!!!!」
真言「!?」ピタッ
白金…………燐子……!!!
燐子「…………ダメだよ」
真言「…………………………」
燐子「もう少しだけ……時間をください……」
真言「……………クソ!!」
俺は逃げるように職員室から出ていった。
〜〜次の日〜〜
有咲「おはよう神代くん」
真言「……………」
有咲「?どうかした──」
「知ってる?神代くんって無関係の人殴ったんだって!」
「しかも女子!顔痣だらけになったって!」
「なにそれ……最低……」
有咲「…………なんだよこれ……」
真言「…………………どいつもこいつも」ボソ
有咲「あ、おい!どこ行くんだよ!」
真言「あ"?」ギロッ
有咲「…………!」
真言「……………………」スタスタ
その日から神代くんは学校に来なくなった。
「市ヶ谷さん大丈夫?」
有咲「え?あ、うん……」
「怖いよねー暴力事件だってさー」
有咲「…………そうなんだ」
「ホントよく学校に来れるね」
「どの面下げて……殴られた女の子……可愛そう……」
有咲「神代くん……あんな目、してたっけ……」ボソ
まるで別人だった。一体何が…………
「市ヶ谷さーん、呼んでるよー?」
有咲「?」
私を?誰が……
有咲「紗夜先輩…燐子先輩」
燐子「………………」
紗夜「神代 真言くんについて少々お話があります」
有咲「!」
私は自分の知っていることを先輩達に全てを話した。
燐子「なるほど……そんなことが……」
有咲「はい……」
紗夜「お守りを取るために窓から身を投げる……正気の沙汰ではありませんね……」
有咲「多分あいつが殴ったっていうのは、そのイジメの主犯格たちだと思います」
紗夜「この学校でイジメとは……許せません……!」
燐子「でも何でイジメられていたその子は加害者を庇うような事を言ったんでしょうか……」
紗夜「……脅された、と考えるのが一番自然ですが……」
紗夜「なんであいつがこんな目に…………」
神代くん……
一方その頃、真言は…………
真言「……………………」
何をするというわけでもなく、ただ家にいた。
真言「……………………」
……俺は一体、何をしていたのだろう。
偽物の正義感を振りかざして、勝手に一人で舞い上がって、助けを求めてないやつを助けて、それで?それで今俺は何してる?
クラスにも居場所がなくなり、家に引きこもってる…………
真言「…………ははっ」
これも全部……あのクソ女の思うつぼってか?
真言「母さん……………………」
まこと「かあさん!」
「どうした真言?」
まこと「おれね!おおきくなったらせいぎのみたになる!」
「ほほぅ…そうかそうか……なら!まずはこの私を倒してみろ!!」
まこと「……え!?」
「当たり前だ!私程度を倒せずして正義の味方など、聞いて呆れる!!」
まこと「………………」
「さあ!どこからでもかかってこい!!」
「話にならんわ!!!」
まこと「………………」チーン…
「……それとな、真言」
まこと「……………なに」
「"正義の味方"なんて小さいもんになろうとするな。男ならでっかく"正義"そのものになれ!!」
まこと「………………それがさっきぼこぼこにしたむすこにいうこと?」
「ああ!」
まこと「………………………」
真言「正義そのもの……」
無理だよ母さん。
俺はあなたみたいに強くない、
………………ただの化け物だ。
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少年には新しい友人たちができて、毎日幸せに暮らしています。
けれど時々"何か"が少年の前に現れ、こう言うのです。
「お前は正しくない」
「お前が何をしたのか、それを忘れるな」
少年は"何か"を忘れ、生きていくことはできません。
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次回、真言過去編 終結。