監視対象と約束された日々【完結】   作:砂糖ノ塊

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ついに始まった真言とRoseliaの過去編!アンケート、ものすごいデットヒートでしたね!

さあトップバッターは師匠とのお話です!

それでは本編どうぞ。



37.信じるもの【監視対象と青薔薇編】

 宇田川 あこは俺の師匠だ。

 

 それはもちろん、俺が燐子先輩に誘われて始めたゲーム、NFOでの師匠と俺のジョブが同じだから。

 

 …………だけではない。

 

 俺は彼女のことを、闇の力に憧れる彼女のことを、心から尊敬しているのだ。

 

 俺にはない考え方を、彼女は持っている。

 

 だからこそ、今日も俺は宇田川 あこの事を『師匠』と呼ぶ。

 

 明日も、明後日も、その次の日も、……まあ大学生くらいになったらやめてるかもしれないけど。

 

 少なくとも師匠が「闇の力を〜」とか言っている間は、俺もこの呼び方をやめるつもりはない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

真言「ゲーム…………ですか」

燐子「うん……わたしの友達と……どうかな……?」

 

 突然の燐子先輩からのお誘い。どうやら先輩がハマっているネットゲームに俺も参加しないかというものらしい。

 

 正直、ゲームにはこれっぽっちも興味はない。

 

 しかも、燐子先輩の友達同伴、俺が知らない人間の同伴なんて、前向きに検討できるはずがない。

 

 けれど…………

 

真言「……わかりました」

燐子「本当…!?」

 

 燐子先輩のやりたいことは何となくわかる。

 

 多分この人は俺に、以前の"神代 真言"に戻って欲しいのだ。

 

 例の事件が起こり、俺は生徒会の監視対象となった。そんな俺に今まで通り接してくるやつは一人もいない。

 

 たとえ事件の誤解が解けていたとしても、他のやつらの認識は女子を含む生徒数名を病院送りにし、その上学校まで辞めさせた男だ。どいつもこいつも化け物を見る目で俺を見てくる。

 

 

 

 

 

 詰まるところ、今の俺には友達が一人もいない。

 

 

 

 

 

 かと言って何をされるかわかったもんじゃないからイジメられているわけでもなく、皆ただただ俺から離れていく。

 

 かつて友人だと思っていたやつも、そうじゃないやつも、全員。

 

 そんな俺を見かねた燐子先輩は、きっと自分の友達と接点をもたせようとしてくれているのだろう。

 

 以前の、それとなく皆と仲良くやれていた頃の"神代 真言"に戻って欲しいのだ。

 

真言「(余計なお世話だ)」

 

 ああそうだ、余計なお世話。これ以上無いくらいの。

 

 友達なんか別に欲しくない。俺の信じてきた正義を認めてくれないあいつらなんて、心底どうでもいい。

 

 俺には燐子先輩さえいれば、それでいい。

 

 あの約束を結んだ雨の日から、俺の中の正義は燐子先輩だ。

 

真言「……先輩がそう言うなら、俺はそれに従います」

 

 そう言うと、燐子先輩は少し複雑そうな顔で笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数日後、俺は燐子先輩に呼び出されネットカフェに来ていた。

 

真言「………………早すぎたな」

 

 現在の時刻は、待ちあわせより1時間くらい早かった。

 

真言「はぁ…………」

 

 手持ち無沙汰にスマホをいじりながら、深くため息をつく。

 

 不安だ…………

 

 いくら先輩の友達だからと言って、必ずしも俺が仲良くできるとは限らない。

 

 それでも、先輩が俺なんかのためにあれこれしてくれているのなら、その好意を受け取ることも恩返しに繋がるだろう。

 

燐子「真言くん……?」

真言「!」

燐子「早いね……まだ待ち合わせ時間より1時間くらい前だよ……?」

真言「…………すみません」

燐子「あ……ううん……!別に責めてるわけじゃ…………」

 

真言・燐子「「…………………………」」

 

 か、会話が続かない…………なんとか話題を──

 

「お兄さんがりんりんの言ってた人?」

 

真言「…………ん?」

 

 なんか今足元から声が……

 

燐子「あ、あこちゃん……!」

「こんにちはー!」

真言「………………小学生?」

 

 目線を下ろすと、こちらを見上げていた、背の低いツインテールの少女と目があった。

 

「な!失礼な!あこは中学生だよ!!!」

真言「………………?」

燐子「真言くん……紹介するね……」

 

燐子「この子は宇田川 あこちゃん……中学三年生だよ……わたしの一番の友達なんだ……」

 

 宇田川……あこ……

 

あこ「よろしくね!」

真言「どうも……神代 真言です」

 

 なんでそんなに元気なんだろうってくらい明るい雰囲気の女の子だ。

 

真言「あの……さっきはすいませんでした。小学生とか言って……」

あこ「ん?ああ!いいよ別に!分かれば良し!」フフン

 

 あ、いいんだ……ネチネチ言われなくてよかった。

 

『知ってる?神代くんって無関係の人殴ったんだって!』

『しかも女子!顔痣だらけになったって!』

『なにそれ……最低……』

 

真言「っ!!」

燐子「真言くん……?」

真言「…………なんでもないです」

 

 ……ここ最近、人と会うとたまにあのときの事がフラッシュバックしてしまう。

 

 クソっ……なんで今思い出しちまうんだ…………折角燐子先輩が…………

 

あこ「それじゃあ早速レッツゴー!」グイッ

真言「!?」

 

 は!?

 

あこ「あ、あこちゃん……!!」

真言「ちょ、宇田川さ──」

 

 初対面なのにグイグイ引っ張るなこの人!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜〜【ネットカフェ店内】〜〜

 

真言「………………」

燐子「あの……なんかごめんね……」

真言「………………大丈夫です」

 

 宇田川さんに連れられ、ネットカフェに人生初入店した俺。

 

あこ「ねぇねぇ。えーっと……まことくん?」

真言「……はい?」

あこ「まことくんはゲーム好き?」

真言「ゲーム……やったことないです」

あこ「ええ!?」

 

 そ、そんな驚くことか?

 

真言「俺がいたとこはテレビゲームとかは無かったんで……あ、よく山で鬼ごっことかしてましたよ?」

燐子「山…………」

あこ「す、すごいね……りんりんの後輩さん……」

真言「………………だ、だから」

あこ「ん?」

 

真言「その……いろいろ教えてくれると助かります」

燐子「……!」

あこ「ふふーん、あこにまっかせてよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二人はここによく来ているらしく、あまりの手際の良さで、気づいたら個室で二人からゲームの説明を受けていた。

 

真言「NFO……?」

 

 それが今からやるゲームの名前らしい。

 

あこ「そう!まずはゲームを起動して、それからこれを……」カチカチ

真言「おお……」

 

 なんかよくわかんねぇけどめっちゃ進んでる……

 

燐子「まずここにアバター名を…………」

真言「アバター?」

燐子「えっと……真言くんがこれから操作する、NFO内の真言くんの分身……みたいな感じ……かな?」

真言「なるほど……」

 

 俺の分身…………

 

真言「…………」カチカチ

 

 "mako"っと……

 

あこ「……マコ?」

真言「子供の頃、兄貴から呼ばれてたあだ名です」

 

 いや、多分()()だわ。

 

あこ「へー!じゃあ後はこれを入力して…………」カチカチ

 

 

 

 

 

あこ「よし!これで大体のキャラメイクは終わったかな?」

燐子「うん……多分……」

真言「ありがとうございました」

 

 キャラの容姿は後で変えられるらしいけど…………このmako、俺に似すぎじゃね?どんだけ細かく作れんだよNFO。

 

あこ「じゃああこたちは隣の部屋行くから、またゲーム内でね!」

燐子「何かあったら……メッセージ飛ばしてね……?」

真言「あ、ホント何から何まで……」

 

 そう言って二人は出ていった。

 

真言「………………はぁ」

 

 なんか……特に何もやってないのに疲れたなぁ…………

 

 あれだけまともに先輩たち以外と話したのってどのくらい前だろう。クラスの連中は誰も俺に話しかけては来ないし……まあそりゃそうだって話だよな。

 

真言「…………宇田川 あこ……」

 

 いい人だ。きっと。おそらく。

 

 決して社交的とは言えない性格の燐子先輩、それを補うような性格の宇田川さん。

 

 親友と呼ぶにふさわしい関係だと、出会って数分の俺でもわかる。

 

真言「でも…………」

 

 あれだけグイグイ来られるのも……疲れてしまう。

 

真言「やべっ!」

 

 ゲームにログイン(さっき教わったワード)しろって言われたんだった。

 

真言「えっとこれを……こうして……こうか?」カチカチ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜〜【NFO内 はじまりの街】〜〜

 

mako「………………ログイン、できたみたいだな」

 

 燐子先輩と宇田川さんは…………

 

聖堕天使あこ姫「あ!いたいた〜」

mako「…………」

RinRin「特に問題なくログインできたみたいだね(人*´∀`)。*゚+」

mako「…………ええ」

 

 すげえ……二人とも現実の容姿にそっくり…………いや、そんなことより…………

 

mako「(名前…………)」

 

 宇田川さんの名前……"聖堕天使"?なに"聖堕天使"って?しかも姫って……いろいろ詰め込みすぎじゃないですか?

 

 あと燐子先輩も……いつもよりなんか明るいというか……絵文字とか使う人でしたっけ……?

 

聖堕天使あこ姫「どうかした?」

mako「ナンデモナイデス」

聖堕天使あこ姫「……なんか片言?」

mako「気のせいですよ」

RinRin「とりあえず操作確認をしてみよっか(^∇^)ノ♪」

mako「わ、分かりました」

 

 そこからNFOガチ勢の二人による初心者講座が始まったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

mako「…………覚えること多いんですね。ゲームって」

聖堕天使あこ姫「でもでも!基本操作はまことくんすっごい早く覚えたんじゃない!?」

RinRin「そうだね(・∀・)」

mako「まだたまにキーボードの押し間違いがありますけどね」

聖堕天使あこ姫「どうする?モンスター倒しに行く?」

mako「……敵がいるんですか?」

聖堕天使あこ姫「そりゃあ、そういうゲームだからね」

 

 それもそうだ……

 

mako「でも……俺、初期装備ですよ?」

RinRin「強いモンスターが出るところには行かないし、わたしたちもサポートするよ\(・◡・)/」

 

 それは……心強いな。二人ともかなりやり込んでるらしいし、めちゃくちゃ強そうだ。

 

mako「……わかりました。お願いします」

 

 

 

 

 

mako「……………………」

聖堕天使あこ姫「えっともっかい説明するとね、まことくんのジョブだと………………」ウンタラカンタラ

RinRin「それをそうすればこのスキルが…………」アレヤコレヤ

mako「……………………てい」

 

 【makoはスライムを倒した!】

 

聖堕天使あこ姫「あ!ちょっと聞いてる!?」

mako「もうなんとなく操作はわかりましたから…………」

 

 なんかいろいろ複雑だわこのゲーム……

 

mako「首いった…………」

RinRin「大丈夫?」

mako「ええ、まあ」

 

聖堕天使あこ姫「まことくんは何でジョブをタンクにしたの?」

mako「適当に選んだだけです。なんか後で変えられるんでしたっけ?」

RinRin「うん……ジョブは違うのに変更できるし、クエストをクリアすれば上級ジョブに進化できるよ⊂((・▽・))⊃」

mako「二人のジョブはその"上級ジョブ"ってやつなんですか?」

聖堕天使あこ姫「うん!そうだよ!あこがネクロマンサーでりんりんがウィザード!」

 

 死霊術師に魔法使いか……

 

mako「ネクロマンサー……なんかカッコイイですね」

聖堕天使あこ姫「でしょー!!!」

mako「!?」

聖堕天使あこ姫「あこはねー……こう、闇の力で敵を…………バーンってするの!!!」

mako「ば、バーン…?」

聖堕天使あこ姫「そう!」

 

 宇田川さん……語彙力が残念な人だ……

 

 でもさっきの戦闘でもかなりかっこよかったのは事実だ。なんか強そうなやつが現れたら二人が瞬殺してたし……

 

mako「俺も目指そうかな……ネクロマンサー」

聖堕天使あこ姫「そうなったらあこがいろいろ教えてあげる!」

 

 頼もしい限りだ。

 

 だんだんとこの人のことがわかってきた気がする。……なんとなくだけど。

 

RinRin「あ、ちょっとわたし飲み物取ってくるね(・∀・)」

聖堕天使あこ姫「いってらっしゃ~い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

mako「……………宇田川さん」

聖堕天使あこ姫「ん?どーしたの?」

mako「……今日は、ありがとうございます」

聖堕天使あこ姫「…………なにが?」

 

 なにがって…………

 

mako「見ず知らずの俺なんかのために、時間を取ってもらって、本当にありがとうございます」

聖堕天使あこ姫「いいよいいよ!気にしないで!あこもまことくんに会ってみたかったし!」

mako「………………俺のこと、知ってたんですか?」

聖堕天使あこ姫「りんりんからねー」

 

 それじゃあもしかして………………あの事件も…………?

 

聖堕天使あこ姫「まことくん?」

mako「…………………」

聖堕天使あこ姫「おーい、聞こえてるー?」

mako「…………………俺のこと、燐子先輩は何て言ってました?」

聖堕天使あこ姫「?……後輩じゃないの?」

mako「それだけ?」

聖堕天使あこ姫「うん…………他になにかあるの?」

mako「いや……それならいいんですけど…………」

聖堕天使あこ姫「……?」

 

 大丈夫……燐子先輩は人の過去をペラペラ喋る人じゃない。大丈夫。大丈夫。大丈夫。大丈夫。

 

聖堕天使あこ姫「あ!でも今日あってみてわかったことがあるよ!」

mako「…………わかったこと?」

聖堕天使あこ姫「それはね…………まことくんにはこう……あこと同じ闇の力が宿ってるってことが…………」

mako「闇の……力?」

聖堕天使あこ姫「そう!」

 

 闇……悪…………正義。

 

mako「宇田川さんは……どうしてそこまで闇の力にこだわるんですか?」

聖堕天使あこ姫「カッコイイから!」

mako「…………嫌じゃないんですか?」

聖堕天使あこ姫「え?」

mako「だって闇の力って悪役が持ってる力ですよね?」

 

 ダメだな俺。まだ正義だとか悪だとかに囚われてやがる。

 

mako「…………すみません。忘れてください」

聖堕天使あこ姫「別に」

 

 

 

 

 

聖堕天使あこ姫「闇の力だって、良いことに使えば悪じゃないんじゃない?」

 

 

 

 

 

mako「………………」

聖堕天使あこ姫「あこはねーカッコよくなれば、困ってる人がいても……こう、カッコよく助けられるんじゃないかなって思うんだ!」

mako「カッコよく……」

聖堕天使あこ姫「あこはあこの信じる"カッコイイ"を目指してるから、まことくんの言ってる正義とか悪とかはよくわかんないや」

 

 俺は、あのとき自分の正義を疑った。

 

 俺の信じてきたものは正義ではなく偽善だったのだと、そう思った。

 

 でも……もしかしたら……

 

真言「俺の正義(ぎぜん)だって、信じてさえいれば、何か変わっていたのか?」

 

 信じてきたものが偽善だったんじゃない。

 

 俺は、俺の正義を信じてなかっただけなんだ。

 

 ただ自分の信じる正義を、偽善にしてしまっていただけ。

 

 ただ……それだけ。

 

真言「は……はは」

mako「…………ありがとうございます。宇田川さん」

聖堕天使あこ姫「な、なにが?」

mako「宇田川さんのおかげで、何か吹っ切れた気がします」

聖堕天使あこ姫「そ、そう……?それならよかったけど……?」

mako「俺から見ても、宇田川さんは十分カッコイイですよ」

聖堕天使あこ姫「ホント!?」

mako「はい」

 

 俺もこの人みたいに、自分の信じるカッコイイを、胸を張って信じていると言いたい。

 

RinRin「ただいまー└( ^ω^)」」

mako「おかえりなさい」

聖堕天使あこ姫「ねぇねぇ聞いてりんりん!まことくんがねーあこのことカッコいいって!」

RinRin「よかったねあこちゃん(•‿•)」

聖堕天使あこ姫「よーし!まことくんをカッコイイネクロマンサーにするぞー!!」

RinRin「まだ始めたばかりなのにジョブチェンジは……(・o・)」

mako「あと、俺今タンクなんでそれも変えないと……MPってやつを増やさなきゃいけないんでしたっけ」

聖堕天使あこ姫「大丈夫!あこにまかせて!!」

 

 な、なんかスイッチ入れちまったか?

 

RinRin「ふふ……あこちゃん張り切ってるね(≧▽≦)」

聖堕天使あこ姫「そりゃあ、まことくんはあこの弟子みたいなものだからね!」

mako「…………ははっ」

 

 弟子か……………………悪くない。

 

mako「それじゃあこれからよろしくおねがいしますね。()()

聖堕天使あこ姫「!!!」パァァ!!!

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 そうして俺は宇田川 あこの、自分のカッコイイをひたむきに信じる姿に憧れ、彼女を師匠と呼ぶようになった。

 

 その後、バイトで貯めていた貯金を使ってちょっとしたパソコンを買い、NFO沼に完全にハマる頃には、名実ともに俺は聖堕天使あこ姫の弟子、ネクロマンサーmakoになっていたのは…………まあ、言うまでもないことだろう。




お気に入り登録 なかムー 様 Coffee者氏 様 deportare 様 キズナ武豊 様 ありがとうございます!

あと4話。真言くんがどうやってRoseliaの面々と知り合ったのか、ぜひ最後までお付き合いください!
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