清正「2人とも死んでおる……それも、真言の目の前でな」
清正「父親は小学生の時、そして母親は高校に入学する数週間前に」
その事実を知ったRoseliaの反応は、「絶句」の一言に尽きる。
リサ『ごめんね〜……というかマコくんご両親は?大丈夫なの?』
真言『……ああ、俺、一人暮らしなんですよ』
リサ「(あの時感じた違和感も…………そういうことだったんだね……)」
紗夜「(私今、とても………………怖い。神代さんが、だんだん普通の人に見えなくなっていくような気がして……)」
友希那「……どうやら真言は」
清正「!」
口を開いたのは5人のリーダーである友希那だった。
友希那「私達が思っていたよりも"底"が見えない男のようだわ」
清正「底が見えない……か。確かにそうかもしれんのぉ……」
清正「人の知られたくない過去を知るというのはな、言うなれば地獄の釜の底を覗こうとすることと同義なんじゃよ」
清正「それでも聞くか?燐子さん」
燐子「……………」
あこ「りんりん……」
燐子「おねがいします…………」
その目には決して揺るがない意思があった。
清正「……君は強い人じゃな。まるで…………いや、なんでもない」
清正「あの子にはな、絶対的な才能があったんじゃ」
紗夜「絶対的な…………才能」
友希那「一体なんの話……」
清正「これも大切な話なんじゃよ、聞いておくれ。幸い時間もあるしな」
清正「これはワシの持論なんじゃが、人にはそれぞれ才能がある」
清正「勉学の才能、運動の才能、音楽の才能…………この世に天才はいても才能のない人間などおらん」
清正「無論、マコにも才能があった。ただしあの子の場合……それは開花してはいけなかったんじゃ」
あこ「まっくんの……才能?」
紗夜「開花してはいけない才能……一体どんな……」
清正「人を…………殺す才能」
紗夜「っ!」
燐子「そんなわけない!!!」
あこ「りんりん!?落ち着いて!」
燐子「真言くんは誰より優しい!本当は誰も傷つけたくなんかないの!!」
友希那「燐子」
燐子「っ…………!」
清正「…………知っておるよ」
清正「才能というのは時に残酷な物じゃ。本人が望んでいないのに天から勝手に授かってしまう」
清正「…………たがらこれは、あの子の才能を開花させてしまったワシらのせいなんじゃ」
清正「今でも忘れはせん。真言が変わってしまったあの日を」
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ワシらの家系はな、由緒正しき……とはいかんまでもそこそこ古くからある格闘術を代々継いできたんじゃ。
ワシも、正義も、真言も、そして真言の母親も、この道場で体術を学んでおった。
ワシは仕事のため、真言達は基礎的な体力と、自分の力の使い方を覚えるため。
まこと「すきあり!」
「遅いわ!」
まこと「うげッ!」
清正「……本気で殴るやつがおるか」
「私の息子に手加減など必要ない!さぁ次は正義だ!来い!」
まさよし「やだ」
「あはは……大丈夫かい?真言」
まこと「いってぇ……」
本当に人と戦う訓練をしておったわけではない。言ってしまえば趣味のようなものなのじゃよ。
「今の時代、暴力では何も解決しない」
真言の父親がワシらの目の前で言った言葉じゃ。
面白い男じゃろ?神代家に代々受け継がれてきたものをそいつは簡単に一蹴しよった。ただニコニコしておるだけではなくしっかりとした芯がある。
まぁ、そういうところにワシの娘は惚れ込んだのかもしれんが……それでもワシら家族にはちゃんと理解を示しておった…………いい父親じゃったよ。
まこと「じーちゃん!いってくるね!」
「行ってきます、お義父さん」
清正「二人とも気をつけてな」
今でも夢に見る。
もしあの時、ワシもふたりについて行っていたら……
あのいい父親は死ななかったはずなんじゃ。
まこと「とーさん!はやくいこー!」
「そんなに急がなくてもお母さんは逃げたりしないよ。お仕事だからね」
まこと「かえったらまたバトルだからね!こんどはぜったいかつ!」
「真言は負けず嫌いだなー……」
まこと「ヒーローみたいにカッコよくなりたいから!ずっとまけてたらカッコわるいじゃん!」
「なるほどね…………ん?」
真言の目の前に現れたのはひとりの男じゃった……それも手にナイフを持った、明らかに普通じゃない。
まこと「え…………」
「真言!!!!!」
一瞬の出来事だったそうじゃ。
真言に振り下ろされるナイフを、身を挺してかばった。
男は何度も何度もナイフを父親の背中めがけて振り下ろした。
そして父親は真言を最後まで守り抜いた、失血死で死んでしまう……最後のときまで。
まこと「おれの…………おれのせいだ…………」
清正「マコ…………それは違う、お前のせいではない」
病院にいた真言は全身返り血にまみれて、ボロボロ泣いておったよ。
男は逮捕され、死刑判決が言い渡された。
真言達を襲った動機は…………「誰でも良かった」。
それを聞いた真言はワシにこう言った。
まこと「じいちゃん」
清正「…………なんじゃ?」
まこと「せいぎのヒーローってね……ぜったいにまけないんだよ」
まこと「どんなにわるくてつよいやつにも、ぜったいにまけないんだ」
まこと「だからおれ……せいぎのヒーローになりたい」
まこと「もっと……つよくなって……せいぎのヒーローになって……まもりたい…………」
まこと「だ、だいすきなみんなを…………ま"も"り"た"い"ぃ……!」
それは涙と嗚咽にまみれた……決意じゃった。
清正「もうわかった……お前の決意は痛いほどわかったよ……!」
まこと「ひぐっ…………ぁ」
しかしその決意は、子供が背負うにはあまりにも大きすぎたんじゃ。
本格的にワシの道場に入り、真言は狂ったように鍛錬に打ち込んだ。
来る日も来る日も人を倒す技術を身に着け、とてつもない速さで強くなっていった。ワシや真言の母親に追いつきそうな勢いでな。
そして真言の父親が殺された事件から少し経ったある日、真言が通っている小学校から連絡が入った。
話を聞くとどうやら、真言が同級生を殴ったとのこと。
学校に行き、先生から直接話を聞くと、クラスでからかわれていた少女を真言が庇い、そこから喧嘩に発展したらしい。
生徒だけではなく、止めに入った先生にも暴力を振るったことでかなり問題になったのじゃが、真言は全く反省しておらんかった。
まこと「おれはわるくない。ただしいことをした」
そう言う真言の両手は…………グチャグチャに潰れておった。
普通人を殴ったことのない人間が、人を殴ると手が折れてしまう。
しかし真言のそれは明らかに異常だった。
なぜ両手がこんなになっておるのに、真言は涙1つ流しておらんのか。
どうすれば、こんなになるまで人を殴り続けられるのか。
そうしてワシは気づいた。
この子には人を殺す才能があると。
敵に情けをかけることなく、自分の身すら顧みない、
圧倒的な暴力の才能。
今はまだ未完成だがこのままこの才能を開花させれば、この子は間違いなく普通の生活が送れなくなってしまう。
そう思ったワシらは真言を破門にした。
真言は大切な人を守れるくらい強くなりたいと願っておったが、ワシとしては普通の人間として生きてほしかったんじゃ。
強くなくていい。誰も守らなくていい。正義のヒーローになんてならなくていい。ただ普通に生きて、普通の幸せを手にして欲しかった。
けれど真言は強くなることを止めなかった。
ワシらに隠れて自分を鍛えておった。
そうして訪れた、真言が中学3年生の……真言にとって2度目の転機となる日。
母親が倒れた。
かなりの重病で一刻も早く都会の病院で入院しなければならなかったんじゃ。それで誰かが一緒についていくことになったのじゃが……
真言「俺が行く」
正義「馬鹿を言うなマコ!お前には受験があるだろ!」
真言「向こうの高校に行く。それでいいだろ」
正義「お前……!」
清正「真言」
真言「頼むよじいちゃん、行かせてくれ」
清正「……お前の気持ちはわかる」
真言は父親の死と今の母親の病気を重ね合わせていた。
清正「じゃがお前に何ができる?今までワシらに隠れて鍛錬を積んできたようじゃが、相手は病じゃ。どうすることもできん」
真言「…………………」
清正「……納得しておらんという目じゃな。わかった」
真言「!」
清正「昔のように、手合わせで決めよう」
真言は昔から母親と何度も手合わせしてきた。真言に一番思い出深い方法で決めればあの子も納得する……そう思っておった。
清正「勝ったらお前の好きにすればいい。ただし負けたら……」
真言「わかった。やろう」
ワシは完全に見誤っていた。
あの子の内に秘める才能を。
真言「…………………これでいいだろ」
清正「な…………」
真言「……腕、早く医者に見てもらえよ」
完敗じゃった。
あの子の拳に耐えきれず、ワシの右腕はへし折れて終わり。ほんの1,2分の出来事じゃった。
しかしワシは真言との攻防の最中、確かに見た。
まるで闘いを楽しんでいるかのような、真言の不気味な笑顔を。
真言「俺は俺の正しさの為にもっともっと強くなる。もう誰も、死んでほしくないから」
真言「でもじいちゃんの言った通り、今の俺には母さんを助けることはできない。でも……せめて側にいたいんだ」
そう言う真言の目は、昔の明るくて元気だった少年のそれとはかけ離れていた。
自分の思い描く正義の為なら、他者も、自分も、全てを壊し尽くす……そんな化け物の目に成り下がっていた。
「真言……お前は、正しい人間になりなさい──」
真言「うん、約束する」
病床でそう呟く弱々しい母親の姿を見て……ああ、と思ったよ。
きっと真言を化け物にしてしまったのはワシら家族なんじゃと。
なぜワシは、父親のように「暴力では何も解決できん」と言ってやれなかったのか。
なぜワシは、よりにもよって"暴力"で真言を止めようとしてしまったのか。
なぜワシらは…………あの子に"正義"を背負わせてしまったのか。
真言も、あの子の母親も、ただ怖かっただけなんじゃろう。
失うのが怖いから、自分の力は弱いから、"正義"を頼った。
『せいぎのヒーローってね……ぜったいにまけないんだよ』
そう言った真言の顔が今でも忘れられん。
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清正「……ワシの話はこれで終わりじゃ」
燐子「………………」
紗夜「………………」
リサ「マコくん……」
友希那「……………」
あこ「りんりん、大丈夫……?」
燐子「……………」コクリ
清正「今更もうどうすることもできん。そう思っていた」
清正「じゃがな、帰ってきたあの子はワシに身を護る術を教えてくれと言ってきた」
清正「今まで自分の身を顧みんかったあの子が……燐子さん、あなたとの約束のため、相手を傷つけずに大切な人を守りたいと言った」
清正「ワシはそれが…………心の底から嬉しかった」
燐子「真言くん……」
姿勢を正し5人を見つめ、清正は言う。
清正「燐子さん、そしてロゼリアの皆さん」
清正「今、あの子は自分の正義を捨て、燐子さんとの約束を胸に生きている」
清正「あの子がまた何か大切な物を失えば、治りかけていたあの子の心が今度こそ砕け散ってしまう……」
清正「身勝手な願いなのは重々承知、しかし見ての通りワシももう長くはない。だからどうか…………!」
清正「真言の側に……いてやってください」
燐子・紗夜「「…………はい」」
真言「ん…………ここは…………」
燐子「気がついた……?」
真言「っ!燐子先輩!?」
燐子「あ、あんまり急に動くと傷が……!」
真言「傷……?」
俺は確かじいちゃんと一緒に道場で手合わせを……?
燐子「覚えてない……の?」
真言「えっと…………」
清正「ワシから説明するよ」
真言「じいちゃん?」
じいちゃんの説明はあまりピンと来なかったが、俺がじいちゃんとの修行中に戦闘スイッチが入ってしまい、暴走したとのことだった。
真言「そんなことが……」
清正「マコ、お前が人を傷つけずに身を護る術を手に入れたいのなら、その暴走癖を直さなければならん。話はそれからじゃ」
真言「…………うん」
清正「よし、では夕飯にしようか」
燐子「みんな待ってるよ……」
あれ?暴走してたにしては傷が浅い……?
清正「今の鈍っとるお前を止めるなぞお手玉しながらでもできるわ。もちろん一発ももらわずにな」
真言「えぇ……」
燐子「(さっきはだいぶ手こずったって言ってたのに……)」
あこ「あ〜!まっくんおそーい!」
光「もうおなかペコペコだよー!!」
真言「すみません」
リビングにはRoseliaの皆と兄貴達が全員揃っていた。
俺なんか放っといて先に食べてればよかったのに……
由香「ご飯は家族みんなで食べるからおいしいのよ♪」
リサ「ほらほらマコくん座って!」
真言「え、ちょ」
姐さんに腕を引かれ席につく。
友希那「傷の方は大丈夫なの?」
真言「えぇまあ。手加減されてボコボコにされたらしいんで」
紗夜「周りが見えなくなるあなたが悪いんです。もっと物事を冷静にですね……」
真言「やーやっぱ義姉さんの料理はどれも美味しそうだなー!」
紗夜「まだ話は……!」
燐子「ふふっ……」
清正「(全員が何もなかったように、いつもどおり接してくれておる。本当に……いい人達と巡り会ったな、マコ)」
静「おなかすいた」
清正「ん、そうじゃな。ではさっそく……」
「いただきます!!」
あこ「まっくんまっくん!食べ終わったら花火やろうよ!」
光「あ!おれもやりたい!」
真言「いいですね、皆でやりましょう」
紗夜「宇田川さん、食事中は静かに……」
リサ「まあまあ……」
友希那「美味しい……」
由香「それはよかったわ〜♪」
その日の夜は久しぶりに賑やかな夕飯になった。
正義「ふぅ……やっと一息つけたなぁ……」
正義「(またマコが暴走したときは焦ったけど、流石はじいちゃん。燐子さん達も理解ある人達で良かった良かった)」
「あの」
正義「あれ、どうしたんだい?マコ達と花火をやってるんじゃ……」
「いえ、正確には今から始まるんですが、その前に少々お伺いしたいことが……」
正義「構わないけど……何かな?紗夜さん」
──to be continued……
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