監視対象と約束された日々【完結】   作:砂糖ノ塊

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親愛なるあなたへ


59.Dear you

真言「ここは…………」

 

 目が覚めると、そこはおかしな……いつもの見慣れた光景が広がっていた。

 

 俺が監視対象となってから何十回と通った場所……

 

真言「生徒会室だ」

 

 なんでこんな所に……俺は確か…………

 

「ちょっと君」

真言「あ"?」

 

 誰かいるのか?今どっかから声が聞こえたような……

 

「こっちだこっち」

真言「…………?」

 

 そこにいたのは俺と歳が同じくらいの、目つきが鋭い少女と、温厚そうな微笑みをたたえた少年だった。

 

 二人とも見たことない奴だ。というかまず二人が着ている制服が花咲川の物じゃない。

 

 学ランとセーラー服を着たそいつらは、何故か生徒会の会議用に並べられている椅子に座っていた。

 

「いつまでそんなとこに突っ立ってんだ」

「まあまあ、とりあえず座りなよ」

 

 乱暴な話し方をする少女と、そんな彼女と対象的に穏やかな少年。なんかどっかで見たことある気が……

 

真言「あんたら一体誰だ?それにここは……」

 

 隣同士で座っている二人の正面の椅子に座りながら、俺は聞く。

 

真言「俺は確かさっきまで……」

「『病室にいたはずなのに』だろ?そんなわかりきったことを一々思い出してんじゃねぇよ」

 

 そうか……じゃあやっぱり……

 

真言「ここは夢の中で、あんたらは俺が創り出したイメージってことか?」

「ん……まぁそんなとこだ。ったくちょっと考えれば正しい答えが出んじゃねぇか」

 

 正しい……答え。

 

真言「なぁ、聞きたいことがあるんだけど」

「んだよ」

真言「俺…………やっぱり間違えたのかな」

 

 Roseliaの皆の……紗夜先輩の静止を振り切って、一人で燐子先輩を助けに行った俺の判断は正しかったのだろうか?

 

「そんなもん、お前がこれからどうするか次第だろうが」

 

 ニヒルに笑う少女。

 

真言「俺………まだ生きてんだよな」

「辛いか?」

真言「……!」

「あの時、黒服のやつらが助けに来なければお前は確実に死んでいた……それがお前の望んでいたことだったのか?」

 

 見透かされている。それは彼女が俺の創り出した脳内人格だからなのか、それとも…………

 

「もう死んで、楽になりたいか?」

真言「………………」

「逃げるのか?大切な人達から」

「おい、もうその辺に……」

真言「もう……大切な人達が傷つくのは見たくない」

「だからってそれは自分を見てくれる人から目を逸らしていい理由にはなんねぇんだよ」

真言「初めから……俺にはあの人の側に居る資格なんて無かったんだ」

 

 それこそ考えればすぐにわかりそうなことだ。薄汚い化け物の俺には……あの人達は眩しすぎて、そして温かすぎた。

 

 消えてしまうくらいに。

 

真言「今回の事件だって俺がいなければ燐子先輩は拐われることは無かった……!それにこころだって……」

「マコ、愛する人の側に居ることに資格なんか必要ねぇんだ」

 

「確かにお前の人生には狂った連中が多いのかもしれない、それでもお前は大切な人達を守ろうと必死に戦ってきたじゃねぇか。そうだろ?」

 

「資格うんぬんの話がしてぇなら……安心しろ。お前にはその資格がある!」

 

 力強くそう告げるには少女には、どこか懐かしい、不思議な安心感のような物があった。

 

真言「でも俺は約束を……」

「それは燐子とのか?それとも家族とのか?」

 

 そのどちらも、だ。

 

 燐子先輩を守れず、暴力をふるい、そしてそんな俺の選択は正しくなかった。

 

 やっぱり、父さんが正しかったんだ。

 

「『暴力じゃ何も解決しない』……私に言わせればそれは少し違うな」

 

 

 

「正確に言えば『暴力じゃ解決しないこともある』だ。大抵のことは拳で何とかなっちまうもんなんだよ!」

 

 

 

真言「えぇ……」

 

 なんつー暴力的な女だ……

 

「暴力的?いいじゃねぇか!力だって善良な市民が使えば正義足りうる!要は力を使う奴が問題なだけであって始めっからそこに善悪の区別は──ってぇ!!」

真言「!?」

 

 独特な持論を展開する少女の頭を少年が引っ叩いた。

 

「いい加減にしなさい。いくら夢の中だからって言って持論を押し付けるのはどうかと思うよ」

「ちっ……別にいいじゃねぇか!なぁ?」

真言「俺に同意を求められても……」

「ほら、真言も困ってるじゃないか」

真言「…………」

「あ?なんだよマコ。急に黙っちまって……」

真言「……なぁ、俺、これからどうすればいい?」

 

 こんなこと、こいつらに……夢の中の俺が作り出した思念体に聞いても仕方がない。

 

真言「でももう分かんねぇんだよ」

「どうすればいい、か…………」

「そんなもん、自分の好きなようにやれよ」

真言「でもそれは……」

「できない。それは燐子先輩に想いを告げることだから、かい?」

真言「…………」

 

 無言で頷くほか無かった。

 

「はっ、くだらねぇ」

 

 そしてそんな俺を嘲笑い、彼女は一蹴する。

 

「くだらねぇよマコ、そんな小せえことでいつまでもウジウジ悩んでるお前が」

真言「んだと……?」

「お前の友達の二人、あいつらも言ってたけどよ、お前は今までよくやったよ。いろんな奴らを助けてきた」

 

「だからこそ、お前はお前を助けるべきだ」

真言「俺を……」

 

 助ける?俺が?

 

「わかったらとっとと行け!」

真言「は、ちょ、押すなって!!」

 

 目で男に助けを求めるが意味ありげな微笑みを返されるだけだった。

 

「帰った帰った!いつまでもこんなとこにいんじゃねぇよ!!」

「彼女に会いに行ってきな。真言」

真言「…………」

「どうか、拒絶しないで」

 

 それが俺が夢で聞いた最後の言葉だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あいつ……大丈夫だよな?」

「うん。あの子は君に似て強いからね。目つきも喋り方も昔の君にそっくりだった」

「ナヨナヨしてるとこは父親似だけどな」

「ははっ!手厳しいね」

「…………あいつが苦しんでるときに何もできないってのは、なんとも歯がゆいな」

「大丈夫、だってあの子は僕達の子供だからね」

「……そうだな。しっかりやれよ、マコ」

「僕達は君を見守ってるよ。ずっとね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真言「ん…………」

 

 視界には見慣れた病室の天井、のはずだ。

 

 今まで何か別のものを……夢を見ていたような……

 

真言「気のせい……か」

 

 病室のベッドで考える。足りない頭で精一杯考える。

 

 有咲に言われたこと、こころに言われたこと、

 

 俺が何をしたいか。俺は…………

 

真言「………………行かなきゃ」

 

 会わなければいけない。会って今俺が思っていることを話さなければ、何も終われない。何も始まらない。

 

 そんな気がしてならないのだ。

 

黒服A「神代様、何か大きな音がしましたが……」

こころ「ダメよ」

黒服A「こころ様?」

こころ「お願い。入らないであげて」

 

こころ「(真言……頑張って……!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真言「………………」

 

 窓から病院を抜け出したのは良いものの、行く宛もないのでひたすらに街を歩く。

 

 いつかの日に似た、空を雨雲が覆う曇天の空のもとを。

 

 ただ……俺の気の赴くままに。

 

 そうして歩くうちに出会う……出会ってしまう。

 

 心の準備だってまだ満足にできていないのに。

 

燐子「真言……くん……!?」

 

 燐子先輩は病院で寝ているはずの俺が……見るからに痛々しい姿をした俺が、外を出歩いていることにたいそう驚いた様子で駆け寄ってくる。

 

真言「来るなッ!!」

燐子「!」

 

 それを俺は拒絶する。

 

真言「来ないでくれ……!」

 

 燐子先輩を目の前にして、怖くなった。

 

 きっと燐子先輩は俺を恨んでいる。

 

 俺に関わらなければ、俺を助けなければ、きっとあの女に目をつけられることも無かった。

 

 誘拐されることも……こんな見にくい化け物を目にすることも無かった。

 

 他の人間にどう思われようと構わない。けれどこの人には、この人だけには…………

 

真言「(いやだ…………)」

 

 拒絶されたくない。

 

 否定されたくない。

 

 見捨てないでほしい。

 

 見放さないでほしい。

 

 ……でもそれは決して叶わない、過ぎた願いだ。

 

真言「そこで聞いてくれ」

 

 だからせめて一言だけ……あなたに謝りたい。

 

真言「ごめんなさい」

 

 世話をかけて、迷惑をかけて、怖い目に合わせて、守れなくて、約束を破って、

 

真言「本当にごめんなさい……」

 

 あなたの気づかいを、思いやりを、無駄にしてごめんなさい。

 

 折角助けてもらったのに、救えないやつでごめんなさい。

 

 あなたに助けられて、ごめんなさい。

 

 こんな俺が、あなたを好きになってしまって……

 

 

 

 ごめんなさい。

 

 

 

真言「もう二度とあなた達に近づかない。だから……」

 

 だから……?だから何だ?俺はこの後に及んで許しを乞いているのか?

 

 全く、図々しい。

 

燐子「どうして……そんなこと言うの……?」

真言「俺がいるとまたあなたに迷惑がかかるかもしれない。いや、絶対にかかる」

 

 きっとこれから先、何度も何度も俺の目の前に悪魔は現れる。

 

 そうしてまた、俺から全てを奪っていく。

 

燐子「わたし……迷惑だなんて思ってない……!」

 

 そうだ……そうだよ。この人は優しい人なんだ。

 

 だからこそ、俺はこの人に釣り合わない。

 

 やっぱり化け物の俺にはこの人のそばにいる資格なんて……

 

真言「もう、いいんだよ……白金 燐子。そんな優しい嘘をつかなくたって、俺は消える」

燐子「真言くん……」

真言「俺なんか初めから消えるべきだったんだよ……あなたに助けられるよりも前に、さっさと消えるべきだった」

燐子「お願い……聞いて…………!」

真言「俺のせいで……俺のせいで……」

燐子「真言くん………!!」

真言「俺なんかいないほうがあなたにとって幸せ──」

 

 パァン!

 

真言「…………」

 

 頬に鈍い痛みが走る。

 

 いつの間にか目の前まで近づいてきた燐子先輩に頬を思い切り叩かれたようだった。

 

燐子「わ、わたしの…………わたしの…………!

 

 

 

 

 

燐子「わたしの幸せを!!あなたが勝手に決めないでよ!!!

 

 

 

 

 

 そう叫ぶ燐子先輩は、泣いていた。

 

燐子「いつもいつも……あなたは勝手に背負い込んで!!勝手に一人になって!!みんなあなたの力になりたいのに!!!どうして!?どうして誰も信じてくれないの!?」

 

 今まで溜め込んでいたものをすべて吐き出すような、普段の燐子先輩からは考えられないような悲痛な叫び。

 

 あの日のように、雨が俺と燐子先輩の頭上にポツポツと降り出した。

 

燐子「一人にならないでよ!!拒絶しないでよ!!今までいろんな人を助けてきたのに、どうして自分のことは助けてあげないの!!!」

 

 俺は何も言えず、ただ黙ってそれを聞いていた。

 

燐子「ねぇ……真言くん……」

 

燐子「わたしは真言くんのことが好き」

真言「……!」

 

燐子「ぶっきらぼうな態度の裏にある、誰よりも優しいところも」

 

燐子「わたしが困ってるとすぐに駆けつけてくれる、ヒーローみたいなところも」

 

燐子「たまにでる子供っぽくて可愛いところも」

 

燐子「その全部が好き」

 

燐子「わたしは……真言くんが大好きです……!」

 

 やっと言いたいことが言えたと涙でくしゃくしゃになった笑顔で燐子先輩は言った。

 

燐子「わたしは言いたいことを言った……だから次は……真言くんの番だよ……?」

 

燐子「真言くんの言いたいこと……全部聞かせて……?」

 

 

 

 

 

真言「俺は……

 

 

 

 

 

 言え。

 

真言「俺は!!」

 

 きっと本当の意味で、俺を助けられるのは俺しかいないから。

 

 だから……助けてやれ。俺を。

 

真言「本当は約束なんてどうでも良かったんだ!

 

 ありったけの力で叫ぶ。

 

 あの日のように強くなってきた雨にかき消されないよう、目の前にいる大切な人へ。

 

真言「"一生"なんて不確定だって笑われてもいい!」

 

 今まで言えなかった欲を…………

 

真言「あなたが高校を卒業してからも、来年も、再来年も、その先もずっと!」

 

 吐き出せ。吐き出せ。吐き出せ!!

 

真言「恩を返せなくても!約束一つ守れない人間でも!人を傷つけることしかできない化け物でも!それでも俺は!!!」

 

 

 

 

 

真言「それでも俺は……あなたの隣にいたいです……」

 

 

 

 

 

 全部、吐き出した。

 

 醜い欲望、傲慢な願望、身勝手な懇願、その全てを、愛する人に吐き出した。

 

 力尽きた俺は土砂降りの中、アスファルトに座り込む。

 

 そんな俺に目線を合わせるように、燐子先輩も膝をつく。

 

真言「好きです。燐子先輩」

燐子「うん……」

真言「好きです……」

燐子「うん………!」

真言「だいすきなんです………」

燐子「わたしも……大好きだよ…………」

真言「りんこせんぱい…………」

燐子「うん……」

真言「あ……ああ…………」

 

真言「ああああああああああああああ!!!

 

 その叫びはまるで化け物のように悲しい、人間の叫びだった。

 

燐子「真言くん……こっち見て……」

真言「…………?」

 

 俺が泣き止み、空も泣き止んだ頃、燐子先輩はそう切り出した。

 

 言われる通り視線を前に向ける。すぐ目の前に燐子先輩の顔がある。

 

 雨で濡れた長い黒髪、少し赤くなった頬、涙で潤んだ瞳。

 

 それは間違いなく、俺が今まで見てきた中で一番美しかった。

 

真言「りんこせんぱ──」

燐子「──んっ」

真言「ん……!?」

 

 唇に温かい感触、思考が止まった。

 

 俺は今、燐子先輩と唇を重ねている。

 

燐子「ん……んん……」

 

 初めてのキスは涙と雨を混ぜ合わせたような、優しくて温かい幸せの味がした。

 

真言「ん……ぷはっ……!」

 

 唇を離すと少しの名残惜しさと共に新鮮な空気と正常な思考が脳に届いた。

 

真言「燐子先輩……何を……」

燐子「今度はわたしが……真言くんに約束する……」

真言「約束……?」

 

燐子「もう……絶対に真言くんを一人にしない」

 

 あの日、俺が誓ったように、燐子先輩は強い瞳でそう言った。

 

燐子「辛いことも……楽しいことも……これからは二人で……二人で分け合おう……?」

真言「俺も……」

 

真言「俺も、もう二度とあなたを拐わせたりなんかしない」

 

 何度も約束を破ってきた俺だけど……もう一回だけ、あなたに誓おう。

 

真言「守る。守ってみせる。俺の大切な人たちは誰にも傷つけさせない」

 

 守りたいものを守る。

 

 愛したい人を愛する。

 

 それが俺のやりたかったことなんだ。

 

真言「燐子先輩」

燐子「なに……?」

 

真言「愛してます」

燐子「わたしも……愛してます…………」

 

 子供のように泣き叫んで、愛する人に縋り付いて、全てを吐き出した化け物は、

 

 再び人間へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「…………で?ずぶ濡れになったお前だけ風邪を引いて?退院してもその風邪をこじらせて?今の今までずっと寝込んでたってわけだ」

真言「…………そういうことになるな」

 

有咲「ばあああああああか!!!

 

 病室……ではなく俺の家に有咲の絶叫が響き渡る。

 

真言「うるせぇ!近所迷惑だろうが!!」

有咲「迷惑なのはお前のほうだ!!連絡も全く無いし、病院に行ってもとっくの昔に退院したって言われるしでどんだけ心配かけたら気が済むんだお前は!!!」

 

 くそ……ぐうの音も出ねぇ……

 

真言「それは……まぁ……悪かったよ」

有咲「ったく……そんなケガしてるくせに無茶しやがって!」

真言「悪い」

有咲「でもまあ……」

 

有咲「よかったな。マコ」

 

 先程の怒りの形相から一転、穏やかな顔でそう言う有咲は、どこか安心したようだった。

 

真言「…………おう」

有咲「じゃあ早速で悪いんだけどここからが本題な」

真言「え、何かあんの?」

有咲「まあな。この後時間あるか?」

真言「あ、いや……この後ちょっと……」

有咲「燐子先ぱ……彼女か?」

真言「言い直すな。……まあ合ってるけどさ」

 

真言「これからRoseliaのみんなのとこに」

 

 あれで全て終わりじゃない。

 

 やり残したことはまだある。

 

有咲「ふーん……じゃあいいや」

真言「え?」

有咲「もともと紗夜先輩からの伝言だからな。詳しい話は本人から聞いてくれ」

真言「…………」

 

 紗夜先輩……

 

お前に……お前に何がわかる!!氷川 紗夜!!

 

真言「はぁ…………」

 

 でよ一体どんな顔して会えばいいんだよ……

 

 

 

 

 

燐子「普通に謝ればいいんじゃないかな……」

 

 

 

 

 

 〜〜【CiRCLE】〜〜

 

真言「すみませんでしたッ!」

 

 先輩からのアドバイス、即実践。

 

 確かに下手に策を弄するよりも誠心誠意謝ったほうが良い。

 

 それで許してもらえなかったら……まぁ……うん……仕方ない。

 

 許してもらうまで謝ってやる。

 

真言「…………」

紗夜「…………はぁ」

真言「!」

紗夜「顔を見たら一発入れてやろうと思っていましたが……」

 

紗夜「今のボロボロの神代さんを見たらそんな気も消えてしまいました」

 

 あれ……

 

真言「…………?」

紗夜「何ですかその顔……「もう二度と顔を見せるな!」とか言われると思ってましたか?」

真言「いや…………」

紗夜「どうやら神代さんの不安も消えたようですし……それに、私の分は白金さんが代わりにやってくれたみたいですからね」

燐子「ひ、氷川さん……!」

 

 そっ……か……

 

真言「ありがとうございます。燐子先輩」

燐子「あ……うん……でもね…………」

 

 まだそれだけじゃない。分かっている。

 

友希那「…………」

真言「…………すみませんでした。湊さんとの約束、破ってしまいました」

友希那「何のことかしら」

真言「『燐子先輩を傷つけない』……俺は燐子先輩を危険な目に合わせました」

友希那「私が言ったのは『中途半端な答えで』よ」

友希那「その様子だと…………答えは出たようね」

 

 ホント……この人には敵わないな。

 

真言「はい」

友希那「ならいいわ。こうやって紗夜にも謝った、真言の答えも出た、もう私から言うことは何もないわ」

 

あこ「はぁ………」

リサ「よかった〜……」

 

真言「なんで俺より二人が疲れてるんですか」

リサ「だってこのままマコくんと疎遠になっちゃうかもしれなかったじゃん!」

あこ「ホントに心配したんだからね!!」

真言「ご心配おかけしました」

 

 意外とあっさり、俺の日々は元に戻りそうだった。

 

真言「あ、そうだ紗夜先輩」

紗夜「はい?」

真言「有咲が言ってたんですけど、俺への伝言って何ですか?」

紗夜「ああ!そうでした!神代さんにこれを……」

 

 そう言って紗夜先輩が鞄から取り出したのは一枚のプリントだった。

 

紗夜「不測の事態のため本番までの時間が大幅に少なくなってしまいましたが、それでもこれは私との"約束"ですから……もちろん守りますよね?」

 

 そこには【文化祭有志発表メンバー表】という文字がデカデカと書かれていた。

 

真言「………………ぁ」

紗夜「守りますよね?




愛を込めて。
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