めっちゃ長くなってしまったので前後編に分けました!
それでは皆様、最後までお付き合いください……
〜〜【花咲川学園・
真言「はぁ…………」
有咲「何だよマコ、緊張してんのか?」
こころ「ため息ばかりついてちゃ燐子達を笑顔にできないわ!」
真言「あー……うん、そうだな……」
こころ「…………」
有咲「弦巻さんにツッコミを入れないのはだいぶ重症だな」
そんな元気あるわけがない。
きっと俺は今、生まれてから一番緊張している。さっきからずっと手が冷たい。
真言「不安だ……」
有咲「それさっきも言ってたぞ」
こころ「大丈夫よ!ここまで頑張って練習してきたんだから!それに友希那からもオッケーもらったじゃない!」
真言「いや、まあそうなんだけどさ……」
この一週間、俺達即席バンドは死ぬほど練習に励んできた。
元々バンドに所属しているわけでもない俺でこうなってるんだから、他のメンバーは俺よりも更にキツかったはずだ。
有咲「いや……まぁ楽じゃなかったけど、お前も相当だったと思う」
こころ「ずっと友希那が付きっきりだったものね!」
真言「正直言ってじいちゃんより厳しかった」
「青薔薇の歌姫」、そう呼ばれている彼女に、初心者が歌を教えてもらうなんて贅沢にもほどがある。
その点には感謝しているが……
真言「やっぱ……キツかったなぁ……」
でもおかげで、最低限人に聞かせても恥ずかしくない歌が歌えるようになった。バンドでの演奏も、決して悪い出来じゃないと思う。
真言「はぁ…………」
それでも不安は消えないもので。
真言「あれ……ってかセンパイと氷川さんは?」
有咲「二人ともまだ文化祭を楽しんでるよ」
真言「大丈夫かよ……」
でも演奏を聞いた限りじゃ、氷川さんも、それにこころも、それが初めてやる楽器とはとても思えなかった。
やっぱり似た者同士……天才ってやつか。
こころ「真言は文化祭を回らなくていいの?」
真言「とてもじゃないがそんな気にはなれない」
有咲「でもお前……ライブ始まるまでまだ2時間くらいあんぞ……」
真言「仕方ねぇだろ……なにせ俺らは──」
紗夜『くじ引きの結果、神代さん達のバンドは一番最初に演奏することになりました』
そう、俺達はトップバッターなのだ。ちなみにRoseliaはラスト。
真言「悪意あるよな……この順番」
有咲「なんで?」
真言「結局俺達以外に有志で出るバンドは無かっただろ?他は全部、名の知れたガールズバンドだ」
真言「そんな奴らで盛り上がった会場に突然知らないバンドが出てきたら、一気に会場が冷めるなんてことになりかねない」
まあ俺以外、その「名の知れたバンド」のメンバーなんだけども。俺を除けば4バンド合同のドリームチームなんだけども。
真言「だから一番最初に持ってて、ズッコケてもいいようにしたんだよ」
こころ「あら?紗夜はくじ引きって……」
真言「おおかた気を回してくれたんだろ……はぁ……」
こころ「…………どうしよう有咲、真言が有りもしない被害妄想に陥ってるわ……」
有咲「ほんっと仕方ない奴だなお前……とりあえず外に出て空気吸ってこい!」
真言「おー……」
有咲「30分前くらいまで帰ってくんなよ!」
真言「──とは言われたものの……なぁ……」
クラスの準備もろくにしてない俺が文化祭を回るのもなんだか気が引けるし、かと言ってもう監視対象でも、雑用係でもなくなってしまった俺が生徒会の手伝いをするというのもおかしな話だ。
というわけで、今俺はいつもの昼寝ポジである中庭にいる。
合同文化祭ということで、学校中どこもかしこも人だらけの花咲川学園だが、ここは比較的静かだ……
真言「……………………だめだ」
やっぱりリラックスできない。
真言「燐子先輩に会いに行こうかな……」
会いに行って……いいよな……?
あれ……?ってか今の俺と燐子先輩の関係って…………"恋人"でいいのか?
俺、ちゃんと好きですって言ったよな……でその後…………
『──んっ』
真言「!!!!!/////」ボッ!!!
キス…………したよな…………
真言「あああああ…………///」
やべぇ……今思い出しても恥ずかしくて死ねる。
真言「…………………柔らかかったな」
「あの……」
真言「ギャアアアアアア!!!!!」
「きゃあ!」
後ろから話しかけてきた少女が、俺の大声に驚いて尻餅をついてしまった。
真言「あ、大丈夫か?」
「うん、大丈夫」
真言「悪いな、大声出しちまって」
「ううん、私も急に声をかけてごめん……」
真言「…………お前、どっかで会ったか?」
「あの……えっと……一応同じクラスなんだけど……」
真言「あーっと………………」
必死で脳内の記憶細胞から情報を叩き出そうとするが何一つ出てこなかった。ごめんなおかっぱヘアの少女よ。
真言「ん?」
おかっぱ……?
真言「あ!山吹さんと一緒にいた!」
俺の顔見て逃げたやつ!
「うん、思い出した……?」
真言「ああ!なんとなく!」
「(なんとなくか……)」
りみ「私、牛込(うしごめ)りみって言います。よろしくね神代くん」
ウシゴメ……なんかまたまた聞いたことがあるような…………
真言「あー……なんだっけかな……思い出せねぇ」
りみ「……沙綾ちゃんと有咲ちゃんから聞いてたとか?」
真言「何で有咲と山吹さん?」
りみ「私、有咲ちゃんたちと同じバンドのメンバーなの」
真言「なるほど…………」
沙綾『神代くん、"牛込りみ"って子、知ってる?』
……俺、前に山吹さんにこいつのこと聞かれた気が…………
真言「…………」
りみ「……あの、ね、神代くん」
真言「あ?」
りみ「私……神代くんに謝らなきゃいけないことがあるの」
真言「何?」
言わなきゃいけないこと?ほとんど初対面の俺にか?
りみ「今から一年くらい前かな……」
真言「一年前…………ってまさか……」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
…………で…………用
りみ「…………?今こっちの方から声が……」
……んた…………なの……
りみ「…………!」
「ふざけてんの?」
真言「いや、自分たちがイジメてる相手の名前すら知らねぇの?」
そこにいたのは同い年っぽい一人の男子生徒と三人の女子生徒だった。
りみ「(け、喧嘩?でも今イジメって……)」
どうしよう……先生に言ったほうがいいかな……と、とりあえず隠れて様子を……
真言「今、手ついて謝れば許してやるよ」
「てめぇ!なめた口聞いてんじゃ──」グイッ
りみ「あぶな──!」
一瞬、女子生徒のほうが男子生徒に掴みかかった瞬間、女子生徒は顔から地面に倒れこんだ。
りみ「…………!」
「あんた……今何を……」
真言「何って、殴った」
真言「ほら、そこに転がってんじゃねぇか」
「………………」
「てめぇ!やりやがったな!!」
真言「お?お仲間か?」
殴られた方の女子生徒の仲間……のような男子生徒が現れたところから先は、あまり良く覚えていない。
ただ人が壊れていく光景を、震えて見ていた。それだけを覚えている。
りみ「(に……にげなきゃ……)」
様子なんて見るべきじゃなかった。一刻も早く先生を呼びに行かなくては。
頭ではそう思っていても、足は言うことを聞かなかった。
……………ザッ
りみ「(音……たて……)」
真言「誰だ?」
転がる人の中で唯一立っている彼は、ゆっくりとこちらを振り返った。
りみ「(きづかないで…………!)」
真言「……………」
きづかれて……ない……?
「ぜったいに……復讐してやる……」
真言「うるせぇよ」
りみ「……っ!」ダッ!
彼の注意が倒れている女子生徒に向いた隙を狙って、私は駆け出した。
りみ「先生っ!」
「牛込!?そんなに焦ってどうした?」
りみ「人が……人が…………!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
りみ「その後、神代くんは学校に来なくなって……クラスでも色々な噂を聞いたりして……」
真言「…………」
りみ「でも有咲ちゃんがね──」
有咲『あいつはバカだけどな、それでも理由もなく人を傷つけるようなやつじゃねぇんだよ。』
りみ「──って」
真言「…………」
りみ「あ……あの……私」
真言「おかしいな」
りみ「え?」
真言「お前、俺に謝るようなことしたか?」
りみ「え……だって……」
真言「お前は正しいことをしただけだろ?」
真言「自分で言うのもなんだけど、あんな光景を見た上で先生を呼びに行くなんて勇気ある行動だと思う」
少なくとも俺にはできない……というかあの時の俺なら絶対乱入してる。
真言「だからお前は何も謝る必要はない!」
りみ「…………」
ポカーンといった擬音がピッタリ当てはまるような顔でこちらを見る牛込さん。
真言「謝るのは俺の方だ。悪かったな、怖いもん見せて」
りみ「ううん、今までずっと言おう言おうと思ってたけど……怖くて言えなかったんだ」
ああ……だからあんなに俺に怯えて……
真言「じゃあ何で今言おうと思ったんだ?」
りみ「神代くん、だいぶ雰囲気が優しくなったから」
真言「……そうか?」
そう言われると、悪い気はしないな。
りみ「……神代くん、また学校を休んでたみたいだけど、大丈夫なの?有咲ちゃんに聞いても何も教えてくれなかったし……」
真言「ん、大丈夫大丈夫」
やっぱあいつにも相当心配かけちまったよな……
真言「ちょっとあの女と決着つけてきただけだ。完全に叩き折ったし、当分は警察病院で寝たきりだろうぜ」
りみ「……?」
真言「……あ、そろそろ時間か」
りみ「ライブ、頑張ってね。私達は神代くん達の次だから」
真言「そっか。まぁ、俺もお前らから有咲を借りた手前、半端な演奏を聞かせるわけにはいかないからな」
よし、だいぶ気持ちも落ち着いた。
真言「んじゃ、話聞いてくれてありがとな」
りみ「う、うん。私こそありがとう」
さて、それじゃあ…………
真言「行こうか」
有咲「まだ早ぇ」
紗夜「それで私達のところに来たんですか……」
真言「あいつ酷いと思いません!?こんな大舞台じゃ基本一時間前集合でしょ!?」
紗夜「この人意識が高いんですよね……無駄に」
リサ「有咲もきっとマコくんにリラックスして欲しいんじゃない?」
真言「もう十分してますって!ほら!」
リサ「いや、ぱっと見じゃ分かんないよ。むしろ今のマコくん興奮してるからリラックスしてないよ」
真言「だって仕方ないじゃないですか!」
あこ「あ、開き直った」
大勢の人の前で歌うのなんてこれが人生で初めてだからな!緊張して何が悪い!
あこ「もーかっこ悪いなー。それでもあこの弟子?」
真言「師匠もなかなか酷いこと言いますね。いいんですか?俺、傷つきますよ?」
あこ「どんな脅し!?」
真言「…………まぁでも、自信ないのも事実ですし、そういうとこを見抜かれてんのかなぁ……」
あいつ、細かいことよく気づくし。
友希那「私のレッスンじゃ足りなかったかしら?」
真言「別にそんなことは言ってませんって」
湊さんには十分すぎるくらい鍛えられた。だからこれは俺自身の問題であって……
リサ「そういえば友希那、マコくんのボーカルはどんな感じなの?」
友希那「そうね……音楽の知識や技術が圧倒的に足りなかったから身体で覚えさせたわ。頭で覚えるより得意だったみたい」
真言「……………」
リサ「大丈夫?震えてるよ?」
思い出したくもない練習の日々。本当に二度とゴメンだ。
友希那「それに元から素質もあったみたい。肺活量は私以上よ」
あこ「へー!」
紗夜「神代さん、戦闘種族みたいなとこありますからね」
友希那「やれるだけのことはやった今の真言達なら、大失敗ということはまずありえないわ。私が保証する」
真言「湊さん……」
そうだよ……もっと自信を持て俺!大丈夫、なんてったってあの湊 友希那に鍛えられ──
紗夜「ですが、「オクターブ」という単語すら知らなかった神代さんですよ?」
友希那「………………きっと大丈夫よ」
真言「おい」
なんなんだその間は。
紗夜「冗談です」
友希那「冗談よ」
真言「二人の冗談は冗談に聞こえないんですって」
燐子「でも真言くん、楽譜も読めなかったよね……」
真言「燐子先輩!?」
だめだ!燐子先輩に言われたら反論できない!
リサ「なんで燐子限定なの」
友希那「その辺りも心配ないわ。細かいところは他のメンバーに言ってあるから」
真言「え、そうなんですか?」
友希那「あなたはただ私の教えた通りに歌えばいいの。歌詞はもちろん覚えてるわよね?」
真言「はい。元の曲も入院中に聞いてましたから」
リサ「でも最初聞いた時はびっくりしたな〜、マコくんがRoselia以外の曲を聞いてたなんて」
真言「入院中の俺はRoselia断ちしてましたから」
あこ「なにそれ」
なんて、こうやってこの人達と他愛もない会話を楽しむことができるのも、全部全部燐子先輩の……
真言「…………」
燐子「ふふっ……」
燐子先輩、いつも通り……だよな?
特に"あの時のこと"を意識している訳でもなさそうだし……
真言「(もしかして……意識してるのは俺だけなのか……?)」
それはそれで……なんか虚しい。
真言「……はぁ」
あこ「大丈夫?」
真言「まぁ……」
あこ「さっきはあこもああやって言ったけど、まっくんならきっと大丈夫だよ!それに、ライブは一人でやるものじゃないからさ!」
紗夜「宇田川さんの言うとおりです。今の神代さんは一人じゃありません」
ちょっと違うんだけど……まあいいや。
真言「ありがとうございます」
お、そろそろ本当に時間だな。この時間なら有咲も文句言うまい。
真言「それじゃあ、行ってきます」
あこ「がんばれー!」
リサ「しっかりね♪」
紗夜「楽しみにしてます」
友希那「あなた達の力、見せてもらおうかしら」
燐子「行ってらっしゃい……」
そうして準備の為にバンドメンバーの元へ向かおうとする直前に、俺は気づく。
真言「燐子先輩」ズイッ
燐子「ど、どうしたの……?」
こんなのもっと早くに気づいたはずだ。それでも俺が気づかなかったのは、やはり今の俺が燐子先輩をよく見れていなかったからだろう。
そしてそれは、燐子先輩も同じだったようだ。
真言「どうしてさっきから目を合わせてくれないんですか」
燐子「な……なんのこと……かな……?」
ここに来てから一度として、燐子先輩は俺と目を合わせてはいない。
真言「こっちを見てください」ジーッ
燐子「…………///」
真言「燐子先輩……」
燐子「ち、ちかいよ……///」
真言「…………ぷっ」
燐子「……?」
真言「あははははは!」
紗夜「?」
友希那「?」
リサ「ま、マコくん?」
あこ「え、なに?急にどうしたの?」
真言「いや……意識してたのは俺だけじゃなかったんだって思って……ちょっと嬉しかっただけです」
燐子「………………?」
少しキョトンとした顔をした燐子先輩は、
燐子「っ!!///」ボッ!!
すぐに耳まで真っ赤になった。
リサ「え、なになに、何があったの?」
真言「……燐子先輩、皆に話してないんですか?」
燐子「…………///」コクッ
紗夜「神代さん……あなたまさか!」
あこ「何の話!?ねぇりんりん!まっくん!!」
真言「…………もう時間ないので行きますね」
友希那「あ、ちょっと!」
そうして俺は逃げ出した。
真言「……っと、燐子先輩」
燐子「……?」
いけないいけない。俺としたことがすっかり忘れていた。
真言「行ってきます」
燐子「うん、行ってらっしゃい…………!」
友希那「そういえば私達、燐子から「問題は解決した」としか聞いてないわ……」
紗夜「白金さん!詳しい話を聞かせてください!」
リサ「燐子!マコくんを説得しに行ったあと何があったの!?」
あこ「教えてよりんりん!!ねぇ〜!!」
燐子「ま、真言くん……!やっぱりもどってきて…………!」
そうして俺は、助けを求める燐子先輩の声を背に、
今度こそ、完全に、なんの迷いもなく、全力で、
逃げ出した。
〜〜【『Dear』控室】〜〜
日菜「たっだいまー……ってあれ?真言くんは?」
こころ「日菜!真言ならそろそろ来ると思うわ!」
モカ「マコくん以外はみんな来てるのにねー。うちのリーダーはどこで文化祭を楽しんでるのやら」
有咲「(私が追い返したからだな……)」
こころ「(有咲が追い返したからいない……って言うのはやめておこうかしら)」
ガチャ
有咲「お、噂をすれば…………?」
真言「ハァ……ハァ……」
有咲「……なんでそんなに息切らしてんだ?」
真言「ちょっとな……てかそれより有咲、その服……」
有咲「これか?弦巻さん達からだよ」
ここを出ていくときの有咲の格好はいつもの制服だった。
けれど今の有咲は、紫のシャツの上から黒服さん達のようなスーツを着ている。
胸のポケットには大きな紫色の星のブローチが。
真言「…………なんで?」
有咲「ライブ衣装だよ!Dearの!」
真言「ああ!」
有咲「ったく……」
日菜「あたしもさっき着替え終わったとこだよー」
見ると他のメンバーも着替え終わっている。
全員有咲と同じ、それぞれのイメージカラーのシャツに黒いスーツで揃えている。
真言「ほぇー……」
有咲「?なんだよじっと見て」
真言「いや、似合ってるなって」
有咲「そ、そうかよ……」
モカ「あー有咲照れてるー」
有咲「照れてねぇ!」
こころ「真言!あたしはどう?」
真言「ん、ああ。似合ってる似合ってる」
有咲「軽いな……」
こころ「ありがとう!」
こころも黒いスーツの下に黄色のシャツが見える衣装で、その胸ポケットには…………
真言「お前それ…………」
こころ「ええそうよ!真言からもらった缶バッジ!」
真言「……まだ持ってたのか。てっきりもう捨てたかと……」
こころ「そんなわけないでしょ!?」
モカ「ほらほら、もうそのくらいにしてー。リーダーも早く着替えてきてよー」
そう言ってセンパイは俺の分の衣装を押し付けてくる。どうやら俺のイメージカラーは青色のようだ。
真言「あれ、俺どこで着替えれば……」
モカ「トイレとかー?」
真言「…………わかりましたよ」
しぶしぶ控室から退散し、トイレで着替える。
真言「…………よし。サイズもピッタリだな」
なんで俺のイメージカラーは青なんだ?という疑問が残るものの、別にこれもカッコいいので文句は無い。
着替えも終わり、戻ろうとした控室の前で俺を待っていたのは黒服さん達だった。
黒服A「大変良くお似合いです。神代様」
真言「そりゃどうも」
思えばこの人達にも散々迷惑をかけた。
あの事件の後処理から俺の治療まで……あの時この人達が助けに来てくれなかったら、俺は今頃この世にいない。
真言「…………黒服さん」
黒服A「はい」
真言「本当に、何から何までありがとうございます」
黒服A「我々は我々の仕事をしただけの事、お礼を言う必要はありません」
真言「いや、そんなことは……」
黒服A「あなたはこころ様の恩人ですから。これ程の事は恩返しにもなりません」
真言「…………」
なんか昔の、燐子先輩に恩返し恩返し言ってたときの俺を見てるみたいだ。
でも一つ違うのは、この人達は盲信的でも狂信的でも、まして誰かに依存しているわけでもなく、ただ律儀なだけという事。
この人達は俺よりずっと大人で、プロなのだ。
黒服A「神代様、これを」
真言「……これは?」
黒服A「この衣装はメンバーそれぞれのイメージカラーのシャツに我々と同じ黒いスーツ、そして胸のポケットにはそれぞれワンポイントアクセサリーを施しております」
黒服A「こころ様は以前、神代様がお贈りになった黄色の缶バッジ。市ヶ谷様は紫色の星型のブローチ。氷川様は水色の音符型のアクセサリー。青葉様は黄緑色の…………パンのアクセサリーを」
真言「センパイのだけ変じゃないですか?」
黒服A「ご本人の熱烈な希望ということで……」
黄緑色のパンか……なんかカビてそう。
黒服A「そして神代様には"これ"ということです」
真言「なるほど、だから俺の色が青色だったわけですか」
これの色に合わせたってことか。全く………粋なことをしてくれる。
黒服A「はい、その通りです」
こころ「あら?真言そこにいたのね!」
控室の扉が開いてこころが顔を出す。
有咲「お、戻ってきたか」
日菜「ん〜!始まる前からるんっ♪てしてる!」
モカ「おー、リーダーも似合ってますな〜」
真言「センパイ、なんでさっきから俺のことをリーダーって呼んでるんですか」
モカ「だってホントのことじゃーん」
こころ「それじゃあ行きましょうかリーダー!」
有咲「ほらさっさとしろリーダー」
真言「お前らも悪ノリすんじゃねぇ!!」
黒服A「(どうやら何も心配いらないようですね)」
黒服A「神代様、本番は我々もDearの演奏を拝見させていただきます」
黒服A「それでは、ご武運を」
そう言って黒服さんは静かに立ち去っていった。
こころ「真言、あなた黒い服の人達と仲良しなのね!」
真言「仲良しとはまたちょっと違う気がするけど……」
有咲「おいマコ、最後に一言無いのかよ」
真言「一言って?」
有咲「本番前にメンバーに向かって何か言うことは無いのかってこと」
真言「ああ、そういうこと…………じゃあ皆」
俺は皆の正面に立ち、一人一人をしっかり見据える。
真言「ここまで俺の我儘に付き合ってくれてありがとう。でもあと少しだけ、もう少しだけ、俺に付き合ってくれ」
…………あれ?皆の反応薄い?
モカ「真面目だねーマコくんは。ひーちゃんなら"いつもの"で盛大にスベるのに」
真言「"いつもの"?」
モカ「なんでもな〜い。気合を入れる掛け声みたいなやつだよー」
真言「掛け声か…………」
有咲「あーうん、私もそういうのを期待してたんだけどな……」
真言「は?そうなの!?」
日菜「なんかシンミリしちゃったねー」
こころ「もっと明るくいきましょう!」
真言「なるほど…………了解した」
明るくか……やってみるか。折角の文化祭、一世一代の祭りだ。バカになる以外の選択肢なんてないだろう。
真言「それじゃあお前ら…………」
真言「暴れんぞ!!!!!」
「「「「おー!!!」」」」
行こうか。Roseliaと同じ舞台へ。
青色の薔薇を胸に。
後編に続く……