産屋敷邸に居候している身だが俺がそこに居る時間は隊士となった日からというもの、あまりにも少ない。
癸の初任務で今は亡き山柱と喧嘩別れで全国の藤の家を転々としながら鬼狩りに精を出し、彼女の葬儀の後も同じ様な生活を続けて、あれよあれよの間に柱になってしまった。
柱も柱で激務で知られており、なかなか帰ってくる暇などない。普段からあまり家に居付く性格でも無いが。
俺は現お館様の耀哉を含めた柱との談合、所謂、柱会会議にて遊撃隊という名目で、これまで通り全国鬼狩りツアーの立場を勝ち取った(大反対を受けたが耀哉の鶴の一声により事なきを得た)。
俺は耀哉の劔となる約束だ。あいつの刃を全ての鬼共の喉元を突き立てるのが俺の役目。これでいい。
まぁ、何が言いたいかと言うと、産屋敷家の周辺を巡回し警護する事を第一任務として近くを拠点としている他の柱ではなく、俺がわざわざ呼ばれるにはそれなりの理由がある。多分。
「近々柱になる隊士の昇格試験って事か?」
「うん。その隊士は今
「…俺が問題児だったこと弄ってくるなよ。ちゃんと自覚してる。」
唐突に悪態を突かれて口を尖らせる俺をまあまあ、と耀哉が宥める。お前が弄ってきたんだろ。
「今報告に挙がっている鬼の出現場所は此処から遠いが、どうやら下弦の鬼でね。君も知っての通り他の柱はここら辺を守ってくれている。そこで君にその子が無事に下弦を討伐する面倒を見て欲しいと言った所だ。」
私を守る必要はないと散々説いているのにね。と付け加えるが、あの人達の言い分も分かる。鬼殺隊にとってお館様という指標は重要だし、何よりお前の人徳で鬼殺隊が成り立ってる所もある。近くで護りたくもなるだろ。
「…それにしても、何というかちょっと過保護な気がするが。俺や柱が同行しなきゃいけない案件か?ソイツ強いんだろ?柱に推薦される位だし。」
「問題は無いだろうが、目的は君に会わせるためだよ。」
「んん?どういうこった?」
「…お館様、そろそろお時間です。次が迫っております。」
「…ああ、今行くよ、あまね。どうだろう、頼めるかな桃晴?」
食い気味に急かす耀哉。なんだからしくない。あまねさんもだ。お館様が忙しいのは知っているが、今日は特に急ぎの用でもあるのかね。
「…いやお前の頼みなら断る事ねーけどよ。了解、行ってくる。危なくなったら俺が代わりに討伐してくるから安心しな。」
「…いつもありがとう桃晴。それじゃあ頼んだよ。」
「おう。お前も無理すんじゃねーぞ。」
任務は受了した。少し気になる所はあるが特に問題なく終わるだろう。俺は一足先に後輩となる柱候補の顔を拝むとしますかね。
「…上手くいきましたね、あなた。」
「…ああ、助太刀ありがとう、あまね。」
「いえ。あの子達にとって良い刺激になると良いですね。」
「…少し性急過ぎたかな。」
「今が最良かと。彼女もこの後柱になるのですし、顔合わせは遅いか早いかだけの違い。早く打ち解けてもらった方が宜しいでしょう。」
「うん、そうだね。…僕はお似合いだと思うけど、あまねはどう思う?」
「私も同意見です。彼女にその気があるか次第ですが、桃晴様の好みの女性はどう考えても岬様…いえ、年上好き…いえ、あの方は尻に敷かれる位が丁度良いでしょう。」
「(言葉を選んでそれかぁ…)桃晴驚くだろうなぁ、ふふ。」
「ふふふ。(
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〜鬼殺へ向かう列車の中〜
「…………」
「……」
「…あの、お茶菓子があるのだけど、食べます?」
「…いや、いい。お前達で食え。」
対面する形で座席に座る俺達。
何で真正面に座ってしまったんだ、俺。
正直こうなるとは考えて無かった俺は、馬鹿正直に鎹鳩の旭丸から伝えられた通りの打ち合わせ場所、この座席へ導かれるままに座って待っていた。
するとそこへやってきた美少女二人組。
歳は離れているが姉妹だろうか。よく似た顔付きのとびきりの別嬪が、こちらへ座るなり挨拶をかましてきた。
「お早うございます。本日お世話になる胡蝶カナエです。隣りに居るのは私の妹、しのぶです。本当は私の単独任務だったけれど、しのぶもきっと強くなるから今のうちに下弦並みの鬼を体験させておきたくて同行を勝手に許可しました。…いけなかったでしょうか?」
「お早う御座います、同行致します胡蝶しのぶです。姉が危なっかしいので着いてくる事にしました。」
「もうっ、しのぶったら心配ないって言ってるのに…鬼殺隊の先輩としても姉としても、いつまで経っても敬ってくれないんだから…」
「敬ってほしいならそれなりの行動で示して下さい。駅前でお茶菓子選びに夢中になって乗り遅れそうになったのは何処のどなたですか…」
「えへへ…」
ホワホワした姉とキチッとした妹。
どうやら性格は真反対。
いや、そんなことより俺は余りの美形に戸惑って声すら出せず固まってしまっていた。目も合わせられず、ギギギと錆びついたカラクリみたく顔を車窓に向けて黙りこんでしまう。
「(おいィ!耀哉ァ!
「…あの、何か失礼でもしたでしょうか」
「…(この反応…もしかして)姉さん、風柱は姉さんの美貌に見惚れてるんですよ。」
「え、ええ?そうかしら。完全に目を逸らされてるけど…」
「間違いありません。初対面でこの反応の仕方はあの寺子屋での思春期の男子そのものです。…姉さんに変な事したら許しませんからね。」
「ちょ、ちょっとしのぶ、失礼よ!…御免なさいね、風柱様。この子私の事になると少し過激で…」
「姉さんもいい加減自分が美人だと自覚してください!無邪気に笑顔を振りまくからあちこちから縁談持ち込まれて、逐一断る身にもなって下さい!」
妹に警戒されてしまった。
俺なんかはしのぶちゃんも確実に美人の類いだと思うが。具体的にはあと四つか五つ歳取れば絵巻物に描かれるレベルで。いや、そういう目では決して見ないだろうが。
いかん、話題に困る。美人ですねと正直に話したら楽になるだろうか。でも妹に警戒されてるし。しかし全く喋らないのも変な奴だ。俺は別に最近水柱になった義勇みたいなコミュ障やらではない。
そういえばその妹のしのぶちゃんが少し気になる言葉を口にしていたな。
「…寺子屋。」
「…あ!はい。私達、両親を亡くして産屋敷の孤児院に拾われたんですが、そこで山柱の巌山峠岬様の生徒だったんですよ。」
「風柱様とお会いするのは葬儀の時以来で、あの時は話しかけられる雰囲気でもなく…でも、不思議な縁もあるものですね。こうしてお会い出来るとは思ってもいませんでした。」
「ホントねぇ。二人共々これからよろしくお願いしますね。」ニコッ
笑顔が素敵ですね。
「(…いや違う違う!)…そうか、師匠の。遅れたが風柱の劔桃晴だ。好きに呼んでくれ。」
何とかつんのめる事なく挨拶を終えた俺は、どうやらこれからこの美人姉妹と列車に揺られながら目的の村へ向かうことになるらしい。
ある意味前途多難な鬼殺が始まろうとしていた。
「(取り敢えずは目を慣らすことからだな…)」
「(…良かった。岬さんの言う通り、怖い人じゃなかったわね。仲良く出来ると良いな。)」
「(邪な視線…では無い様な、でもやっぱりチラチラ姉さんをエロい目で視てる様な…)」
異聞大正こそこそ小噺
十何話にして漸くヒロインが登場する二次小説とは。大概牛歩ですがお付き合い頂きありがとうございます、てーけー。です。
この人っていつ柱になったんだろう、とかこの出来事っていつ起きたんだろうとか考えながら書くとゲシュタルト崩壊起こして一から洗い直して結局崩壊するを繰り返してます。
この小説では数え歳と誕生日を都合良く解釈する事で時系列の矛盾を出来るだけ少なくする小賢しい工夫をしています。季節とか考慮するんじゃないっ!頭で読むな、心で感じろ!それでもダメなら感想でダメ出ししな!(ステマ)
ここからどんどん原作キャラが出てくる予定なのでようやっと読者が楽しめるくらいになるかと思われます。オリジナル展開と設定はたんまりあるけど。
巷では鬼滅の2期が始まりますね。楽しみです。皆の推しは、何処から?私は音から!宇髄さんのカッコいい所いっぱい観たいと思います!ufoなら神作画間違いなしなんだよなぁ。ようつべでのMADとかまた流行んだろなぁ。オラワクワクすっぞ。
今回の小噺として今作品の鬼殺隊の序列、階級の上がり方について今更まとめときますね。
癸→壬→辛→庚まで
1年間生き残ることで自動的に繰り上がるものとする。(癸でも現在の価値で月20万円と現代社会と当時の物価的にそこそこ高給職ではある鬼殺隊だが、その死亡率は凄まじい。特に初任務の殉職率はズバ抜けて高い)
庚→己→戊→丁まで
低難易度の任務を3回以上こなす事でその功績に応じて振り分けられる。この頃はまだ合同任務の数は多い。
丁→丙→乙まで
継子又は才能を見込まれる隊士で、単独任務や応援に呼ばれることが多くなる。その功績によって振り分けられる。
甲
既に柱になるだけの能力を持っていると見込まれた者に与えられる。功績さえ揃えばすぐに柱へ推薦される。(殆どの場合、甲に上がる隊士は既に鬼を50体以上倒しているか下弦の鬼を討伐しているケースが多い。大体上がって1週間以内に柱へ昇格する。柱は10人分しか席が無いが、今作においては全ての席が埋まったのは無一郎の時が初めて。)
今回はちょっと短め。次回はもう少し長いです(作者が嘘つきなのはご存知か?)。タイトル詐欺も何回目。気にせず行きたいと思います。カナエの下弦討伐、戦闘描写あった方がいいかねぇ。
次回
「胡蝶の夢〜②〜」