ガタゴトと揺れる列車。蒸気機関の仕組みは良くは知らないが、意外と煙突から出る黒煙が窓から入ってくる事はなく、車内は快適だった。俺は初めて見る列車にその車内や車窓から観る景色を堪能していると、幼い子供みたいだと笑われてしまった。恥ずかしい。
今日まで列車など乗ったことがないので興奮してしまったと正直に告げると、二人して顔を見合わせた後、じゃあ今まで任務にどうやって向かって来たのかと問われる。柱になる前でも遠出の任務はあるだろう、と。
そんなの歩いたり走ったりに決まっている。
日ノ本は世界的に見れば小さい部類に入る国だ。北から南(現在の青森〜鹿児島)までだいたい直線500里(約2000km)位なんだから、十日もあれば何処でも着く、と答えると何故かドン引きしていた。
「おすすめだぞ。足腰鍛えられるし、警邏にしょっ引かれそうになったらそのまま
「…普通の人間は一日50里も歩けません。」
「無理しちゃダメよ。」
「無理してない。あと普通の人間だよ。慣れの問題じゃねぇか?んな事で大丈夫かよ。妹ちゃんは兎も角、あんたは柱候補なんだぜ。」
俺は柱を舐めてると痛い目を見るぞ、と同じ柱となる彼女へ忠告しておく。ただの善意のつもりで。
「柱は激務だ。俺は遊撃隊として全国回っているが、そうでなくともお館様の警護に、合同任務では甲以下への指示献策、緊急任務に緊急出動。それでいて自分の鍛錬を欠かせば呆気なく死ぬ環境。確実に今までとは別格の仕事量になる。そんな華奢な身体で出来るかね。」
ヤバい、最後の一言は余計だった。
緊張からか、口数を増やそうとし過ぎて失敗してしまった。
すかさずしのぶちゃんに突っ込まれてしまう。
「華奢かどうかは関係ないでしょう!姉さんの活躍を見てもいない癖にっ」
しのぶちゃんの大声で列車の中に居る人達が驚いてしまう。俺もちょっとチビりかけた。
「しのぶ」
憤るしのぶを目を閉じたカナエがそれを止める。
「…ありがとうございます。今のは貴方なりの激励、なんですよね?ウフフ、それはそれとして真摯に受け止めておきます♪…でも、
女の子にそんな態度は減点ですよ。」
"全く、貴方はもう少し女性の扱いを学ばなければなりませんね。"
「……すまん。知った風な事言った。」
「ウフフ、はい。…しのぶも。」
「…すみません。柱の方に向かって生意気な口を利きました」
そんな風に言われてしまってはこちらとしては謝る他ない。自分で言い過ぎだと思ったしな。
彼女の一言で列車内はまた安寧を取り戻す。俺達も周りの人に会釈して謝り、一先ず落ち着いた。
「ウフフ、それにしても意外とお喋りさんなのね、桃晴君って。最初は寡黙な人なのかと思ってたわ。…どうして初めは黙っていたの?」
「…いや、別にお喋りでもないが。…黙ってたのは少し人見知りなだけで」
「姉さんに見惚れてたんですよね?」
「あらそうなの?困っちゃうわ、ウフフ」
「違うっての。勝手に決めつけんな。」
良かった。話す内に心臓がバクバクいってたのも収まって、彼女の美貌にも目が慣れてきた。緊張も解けていつもの俺らしくなってきたと思う。
「
取り敢えず話題を変えようと俺は今回の任務の話を切り出す。
「ええ。今回は私の甲昇格も兼ねた大事な試練でもあります。油断は禁物と心得ているわ。」
「私もお手伝いしても構いませんか?折角ここまで来ましたし、今の私がどれだけ出来るのか試すつもりです。あと、個人的に私は"毒"を使った鬼狩りも研究しているんです。サンプルは多いに越した事はないので…」
「良いぞ。別にトドメを刺すのが誰かなんてどうでも良い。柱だからと単騎の戦闘能力に特化しなきゃいけない訳ではないと俺は考えてる。"毒"とやらもそうだ。何を使ったっていい、鬼を殺さればそれで。」
俺は俺の考えを口にする。俺にも因縁ある相手が居るがそれはそれ。この二人は姉妹だし、これからも同じ任務を受ける場合はあるだろう。
「…あの」
歯切れ悪くカナエが俺に伺いをたてる。
「姉さん、止めた方が良いです…相手は下弦なんですよ?」
しのぶはカナエが何か言う前に止めようとする。一体何だと言うのか。
「…鬼を討伐する前に、その鬼か悪い鬼なのかどうかだけでも、私に確認する猶予をくれませんか」
その言葉を聞いた途端、急速に自分の中の熱が冷めていく感覚を覚えた。
鬼殺隊になんて入隊しておいて、
そんな事が言う奴が居るとは。
いやそんな事より、コイツはあの人の死を見て、まだそんな事が言えるのか。
「悪りぃが前言撤回だ。そんな考えじゃすぐに死ぬ。あんたこの仕事向いてねぇよ。辞めた方が良い。」
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「何ですかあの人は!失礼な人!」
「…しのぶ、そんなに怒らないで。あの人にもあの人なりの考えがあるのよ。今回はそこに無神経に踏み込んだ私が悪いわ。」
目的地の最寄り駅。
此処からは歩きで村へ向かう。
カナエとしのぶは駅のホームで荷物を確認しながら二人話合っていた。
手荷物すら無い桃晴は既に駅員に切符を渡し、さっさと村へ向かってしまった。
「姉さんも姉さんですが、何もあんな言い方しなくても良いじゃないっ」
憤慨するしのぶは風柱が目の前にいない事をいいことに悪態をつきまくる。カナエはそれを宥める形で共に鬼の出る村へ出発した。
「…桃晴君はあの優しい岬さんを目の前で失っているのだもの。鬼に対して憎しみの感情を抱いているという事は分かっていたことだわ。…私が悪いのよ」
「だからって他人の職業にまで口出しする権利は無いと思うわ!実績だって姉さんは今丙だし、もうすぐ甲になって、柱になるまでの成果を挙げているのよ?」
「それとこれとはまた別なんでしょう。彼が怒ったのは私が鬼に慈悲を向けるからなんでしょうし…」
鬼と和解し、互いに幸せになれる世界を望む。それが胡蝶カナエの願いであり、最終目標。こんな考えが少数派なのは知っているし、通用する程鬼殺の現場は甘くないという事は重々承知している。
だが、カナエに諦めるつもりはない。
彼女にとって鬼殺隊に入隊した目的であり、恩師である岬にも影響を受けた思想。元々人間だった鬼も含めて、全ての人に救済を。
いつか。その日がきっと来る。
自分のこの考えに賛同してくれる人がきっと現れてくれる。自分のこの考えを継いでくれる人がきっと居るはず。
この思いを絶やさない限り。
まずは同じ恩師を持つ風柱からだと思ったが、道のりは険しそうだ。
取り敢えずは村へ向かおう。
任務を放棄する訳には行かない。
麗しい二人組は手荷物を纏めて目的の村にある藤の家に向かうのだった。
異聞大正こそこそ小噺
やぁ皆久しぶり。序盤のヒロイン回ってどうしても喧嘩しがちだよね。分かり合えない部分が際立って、時間が経つにつれて徐々に相手の事を理解していく。人間関係ってそういうものです。うーん、王道。鬼?鬼とは理解し合えません。あくまで人間関係だから。奈落童子ヒロインにしろって僕のゴーストが囁くけどそんな事にはならねぇよ、馬鹿か僕。酒呑童子は恋も愛持ちえないし、情緒は捩じくれてんだよ、金時だから耐えられるんだ!(過激派)え?奈落童子と酒呑童子は別モノだろって?そこがミソなんだなぁ。(適当)
今回乗った列車は勿論だけど無限列車じゃない、普通の列車だよ。警戒したニキ、ここじゃ鬼は出ねぇよ。ちゃんと村で端役になるから安心しな。
うん、そんなんだ。今回も短め。ごめんね。長くなる、時間が取れない、筆が進まないの3拍子だから更新エタらないようにだけ気をつけてるんだ。
何度でも言うけれど、この作品では戦闘描写は各自の脳内で補って欲しいな。原作並みの白熱を求められても困るからね!心理描写とか伝えたい所を作者が勝手に書くオ●ニー作品だし多少はね?と言う事で次回に続きます。
次回
「胡蝶の夢〜③〜」