ダイパリメイクが発表されたので、お焚き上げ。
3年くらい前に設定を練って、いざ書いたら面倒になった作品。
独自解釈とオリジナル設定のオンパレードなので、なんでも許せる人向け。
──偶然だった。
ただ無気力に過ごす日々。夢か現かも分からないまま、周りに合わせて動く空っぽの生活。
全ての過去がゼロになり、全ての可能性がゼロになる新しい人生。
一度は考えたことがあるだろう。一度は願ったことがあるだろう。人生のやり直し。夢想に浸った、強くてニューゲーム。
夢にまで見た出来事は、夢だからこそよかったのだと思い知る。もしかしたら、今も夢を見ているのかもしれない。そんな感覚のまま生きていた。
いつもと同じ一日。いつもと同じ時間。いつもと同じ公園で、空を眺めていた。
家に帰りたくないという、3歳の子供らしい願い。しかし、そこに秘められている思いは全く別のもの。
ここが違う世界だと知った。ここは現実じゃないと思った。このゲームに似た世界に、期待を持とうとした。不安を抱こうとした。楽しもうとした。苦しもうとした。けれど、抱いたものは虚無感のみ。空を見上げる瞳は虚ろで空っぽ。世界は灰色に染まり、音は滲んで聞こえた。
変わらないと思っていた。同じ日々が続くと思っていた。だが、その日は違った。この日からは変わった。
たまたま帰る時間が遅かった。たまたまいつもと違う道を通った。理由は覚えてない。理由なんてない。
周囲は鬱蒼とした森。迷うはずがないのに、気づけば知らない場所にいた。
頭上で輝く黒い星に、凍っていた感情が久しく揺らいだ。
漠然とした不安を覚えながら、無心のまま、無意識に、夢遊病者のようにふらふらと歩き続ける。
出会ったのは小さな生き物。どこにでもいる、ありきたりなポケモン。
──その出会いは
◆
──鳥の鳴き声で意識が覚醒する。
「……んぁ……ふぅ」
欠伸をしながら体を起こしカーテンを開けると、窓際に止まっていたヤヤコマが羽音を響かせて飛び立つ。何となくその姿を見送った後、ゆっくりとベッドから立ち上がった。
「……懐かしい夢を見たな」
二年ぶりに家に帰ってきたからだろうか、なんてセンチメンタルな気分で呟く。昔にもこんなことがあった気がしたが、はっきりとしたことは思い出せず、悶々とした気持ちになって髪の毛を搔き乱す。
その時不意に視界に入った赤色の髪。
「この身体になって、もう十年か……」
寝起きにも拘わらず、ほとんど癖がない綺麗な赤髪を弄りながら呟く。
部屋の壁に立てられた全身鏡の前に立てば、中性的な容姿をした美少年が鮮やか真紅の瞳を向けていた。
我ながら素晴らしい美少年だな。などと未来の勝ち組人生を自画自賛しながら、昨日のうちに用意しておいた服に着替える。
「ああ、ようやく十歳だ」
零れ落ちた言葉は、先ほどセリフと矛盾していた。だが、どちらの言葉にも嘘はない。
それだけ十歳という年が特別なものなのだ。
それにしても──と部屋を見回す。綺麗に片づけられた部屋には埃一つ落ちていなく、とても丁寧に掃除されていることが一目で分かる。
二年間の間家を出ていて、帰ってきたのが二日前。何の連絡もしていなかったのにここまで綺麗なのは、きっと家にいない間も親が掃除をしていてくれたのだろう。
普通の子供とは違うというのは自分でもわかっているのに、ここまで大切にしてくれる親には頭が下がる思いだ。
生まれてこの方迷惑ばかりかけているが、これから始まる目標を達成できれば、少しは親孝行になるかもしれない。
先のことを考えながら再び鏡の前に立つと、抑えきれない笑みが浮かんでいた。
「本当に楽しみだ」
「ずいぶん気合が入ってるな」
部屋の入口に視線を向ければ、いつの間にか少女が立っていることに気が付く。
背中まで流れる美しい黒髪に此方を見据える鋭い赤色の目。首からは動物の毛を使った黒いマフラーを巻かずにかけている。胸を強調するようなタンクトップも黒色で、ショートパンツに至っても同じ色。全体的に黒で纏められたラフな格好の少女。
今の部分だけを言えば、普通の少女だろう。しかし、普通とは違う点が二つ。
それは、背中から見える黒い大きな尻尾と、頭についた二つの獣耳。
「おはよう、
「ああ、おはよう。マスター」
自分で付けた名を呼べば、少女は笑って挨拶を返す。
そう、彼女は人間ではない。本当にどういうわけか、月禍はポケットモンスター、縮めてポケモンと呼ばれる存在なのだ。
ポケモン、それは以前の記憶であれば、創作、空想上のファンタジーでしかなかったもの。それが何故か現実に存在し、さらに人の形をとっている。
まったく、人生は何が起こるか分からない。
「それで、いったいどうしたんだ?」
「そうだった。母上がそろそろ飯ができるってさ」
「分かった。すぐ行くよ」
人型。彼女のようなポケモンはそう呼ばれている。
元のポケモンと同じ能力のまま、人の形をとった存在。
人型の数は決して多くはなく、野生で出会う可能性はほぼないと言っていい。
それでもトレーナーの手持ちにはそれなりの数の人型がいることから、人間に対する感情が大きくかかわっているだろうと言われている。
だが、それでも人型の数は少ない。このことから自分の勝手な予想で、ある程度の能力値を持ったポケモンでないと人型になれないのではと考えているが、ゲームとは違い個体値を簡単に確認できないこの世界では実証するのは難しい。
まあ、その辺りは研究者に任せておけばいいだろう。
この世界はゲームとは違うのだから、仮説が当たっているとは断定できない。
そう、ゲームとは違うのだ。彼女たちはデータ上の存在ではなく、この現実で生きている。
そして、今日から俺はポケモントレーナーで、彼女たちの命を預かる存在なのだ。
決意を新たにし、これから始まる新しい冒険に期待を膨らませながら、月禍の後を追った。
◆
玄関でトレードマークのようになった赤いパーカーに腕を通し、誕生日プレゼントに親からもらったスニーカーの紐を結ぶ。
最後に、腰につけられたホルダーを確認して全ての準備が終わる。
「──それじゃあ、行ってきます」
母親の声を背に受けて、抑えきれない気持ちを表すように駆け出した。
向かう先はトレーナズスクール。そこから、トレーナーとしての第一歩が始まるのだ。
ポケモントレーナー、十歳以上の
チャンピオンともなれば年収は軽く億を超えると言われ、一攫千金のロマンを求めてトレーナーになる人は多い。
もちろんトレーナーは誰にでもなれるというわけではなく、簡単な一般常識とポケモンについての筆記試験に合格しなければならない。しかし、この試験はあくまでも最低限のマナーを守ることができるかを判断するためのテストのため、余程のことがなければ合格できる。
俺は試験を受けてはいないが、二年前にトレーナズスクールを卒業しているので、その時点でポケモントレーナーになれることは確定していた。
試験に合格し10歳以上になればトレーナーカードを貰うことができ、それがトレーナーカードの証明証となる。
俺は今からこのカードと御三家のポケモンを受け取りに行くのだ。
御三家のポケモン。ゲームでは最初の手持ちとして選べる初心者用のポケモンだ。地方によって異なるが、必ず炎・水・草の三つのタイプのうちから一体を選ぶことができる。
この措置はこの世界にも存在していて、15歳以下であれば、トレーナーカードとマルチナビとともに受け取ることができる。俺は既に自分のマルチナビとポケモンを持っているが、15歳以下なのでルールが適応され、ポケモンを受け取ることができる。
これから出会う新たなポケモンに期待を膨らませていると、家を出て五分程度でトレーナズスクールに到着した。
しかし、なんというか──
「冒険感が足りない」
「あなたは何を言ってるのよ」
横を向くと、そこにはタンクトップ姿でカメラを持った見知った少女。
「おはようございます、ビオラ先輩。単にBGMの偉大さを再確認しただですよ」
「おはよう、リンネ君。あなたは時々頭のおかしなことを言うよね」
「酷いですね。俺ほど常識と良識に満ち溢れた美少年はいませんよ」
「ごめんねちょっと何言ってるか分からない」
ハハハ
「流石、8歳の子供に負けた大人は言うことが違いますね!」
「……いやいや、手加減されたのに勝ち誇ってるリンネ君ほどではないかな」
「子供に手加減して
隣で何かが切れるような音が聞こえたが、きっと気のせいだろう。とりあえず鼻で笑っておく。齢14でジムリーダーの座に就く天才少女も、ちょっとからかってやれば年相応で可愛らしい。
何やら捲し立てているビオラをスルーしてトレーナズスクールの中を見渡す。家を出たのはそんなに遅くないはずなのだが、既に50人以上の子供たちが集まっていた。表情からは不安や期待が見え隠れしており、独特の緊張感が漂っている。
「そういえば、ビオラ先輩は何でここに?」
「ここの先生にジムリーダーとして挨拶を頼まれちゃってね」
ようやく落ち着いたらしいビオラに尋ねると、一瞬イラッとした表情を見せたものの質問に答えてくれた。
トレーナーカードを配るのも私だしね。という言葉に、ジムリーダーって大変なんだなー。などと適当な感想。
「とりあえず話は短くお願いします」
「……あなたって本当に可愛くない子供ね」
「今日から大人の仲間入りですよ」
中身が子供じゃないから。なんて言うわけにもいかないので、適当に笑って誤魔化す。
そろそろ時間ですよと言ってやれば、ビオラは子供たちの前の方に向かって行った。
そうして始まる挨拶。内容は要約すればポケモンとの絆を大切にして頑張れといったもの。
俺の要望を反映してくれたのかは分からないが、話は五分とかからずに終わり、トレーナーカードを渡す為に名前が呼ばれ始める。順番はID順。つまり卒業が確定したのが早かった者からだ。そして、一番最初に呼ばれる名前は俺。
いつになく真面目なビオラの前に出てカードを受け取る。
「はい、これでリンネ君も正式にポケモントレーナーになったね」
「ありがとうございます」
「ポケモンはバトルフィールドにいるから、そこから好きな子を一匹選んでね」
「わかりました」
新人トレーナーはそこら辺をあまり気にしないが、長く付き合っていくポケモンの相性はとても重要だ。ゲームとは違い、相性が悪ければ言う事を聞いてくれなかったり、場合によってはポケモンに攻撃される事もある。
最も、トレーナーによってはポケモンに寄り添い、ポケモンと共に成長するタイプもいる為、相性が絶対というわけではない。しかし、自分はそんな王道の主人公のようなタイプではないので、ポケモンとの相性はかなり重要視する必要があった。
この後に出会うポケモンのことを考えていると、ビオラが耳元に近づいて小声で喋る。
「あなたとのジム戦楽しみにしてるわよ。今度は本気で勝つから」
そう言ってビオラはニッコリ。
俺も思わずニッコリ。
「俺、これからホウエン地方に行くので気長に待っててください」
「えっ……」
唖然とするビオラに、スマイルを添えてからクルリと反転。
背後からの怒声をBGMにして、バトルフィールドに向かった。
「さて、ここか」
トレーナズスクールに設置されたバトルフィールド。そこでは五十匹以上のポケモンが好き勝手に遊びまわっていた。
見張り役として端に立っている教員に軽く会釈をして、フィールドの中央に立つ。
『マスター。私がやろうか?』
「いやいい。このレベルなら俺でも十分だ」
ボールの中から話しかけてくる月禍にそう答えて周囲を見回す。
フィールド内にいるポケモンは全部で三種類。フォッコ・ケロマツ・ハリマロン。
この中で欲しいポケモンは既に決まっている。
あとはどの個体を選ぶかの問題なのだが、これが中々に難しい。
俺も実力のあるポケモントレーナーだと自負しているが、これだけ同レベルのポケモンが多いと、さすがに強さの判別はつけにくい。
それに、時間をかければ分かるかもしれないが、この場で性格や相性を見極めるのは困難だろう。
だから、少々手荒な方法をとることにする。
「 動くな 」
たった一言。しかしそれは、トレーナーとしてポケモンを統べる為の言霊。圧倒的強者であることを示す力。
それを見せつければ、全てのポケモンがピタリと動かなくなる。
上位のトレーナーであれば誰でもできるようなこと。それだけに、低レベルのポケモンには絶大な効果を持つ。
支配者としての言葉に震えるポケモンたちを見渡し、選別する。怯えではなく、強い光を持った目で此方を見据えるポケモンは二匹。
フォッコとケロマツ。俺はそのうちの欲しいポケモン、フォッコの前に立つ。
震えながらも、鋭い視線で俺を見定める瞳をのぞき込み、問う。
「勝ちたいか?」
主語のない漠然とした一言。しかし、それ以上の言葉は必要ない。ただ瞳で、ついてこれるか? そう聞いた。
力強く頷くフォッコ。それを見て思わず柔らかな笑みを浮かべ、フォッコを抱き上げる。
見た目以上に重たい体。炎ポケモンらしい高い体温。それを肌身で感じながら宣言した。
「よし、君に決めた。お前は今日から
───さあ、一緒にこの世界を楽しもう!
こうして、新しいポケモンを手持ちに加え、新しいトレーナー人生が始まる。
書いてみたはいいけど、キャラクターが魅力的に書ける気がしなかったので諦めた。
とりあえず昔書いた分は投稿します。
続きは見る人が多ければ書く可能性が無きにしも非ず。
多分書かない。