性別が変わる病気にかかったって話   作:山田ヘイタロウ

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下校

 

「待たせたな……」

 

 結局、俺は図書室に戻らずに教室で漫画を読んでいた。現在時刻は午後七時過ぎ。

 野球部はハードだと聞いた事がある。

 いや、それを言ったらバスケ部はハードじゃないのかと言う話だが、中々にハードだったと弁明しておこう。

 

「何してた?」

「や、漫画読んでたんだよ」

「それ先生に見つかったら没収だろ……」

「心配しなさんな。それと……」

「うん?」

「山野と話してた。あの人、めちゃくちゃ良い人だわ」

「そうか……。友達になれたか?」

 

 どう言う目線で聞いてんですかねぇ。

 あれか、お前は俺の保護者か。

 

「お前にゃ勿体ないんじゃねぇの?」

「自覚はあるんだよ……」

「俺が言っといて何だけど、もっと自信持てよ、親友」

 

 俺はお前の良いとこいっぱい知ってんだ。それを山野にアピールすればいい。それができりゃバッチグーだ。

 

「俺はお前の良いところ知ってるからな」

「例えば?」

「…………」

「おい、やっぱりねぇんじゃねぇか」

「冗談ジャマイカ。ほら、あれだ。お前、面倒見いいし、背も高いし、お願いすればなんでも聞いてくれるし、背も高いし、勉強も結構できて教えるのも上手いし、背も高いし……」

「間に背が高いを挟むな、ちびっ子。あと、俺はなんか都合が良いだけのやつに聞こえるんだが?」

 

 まあ、悪ふざけだ。

 

「悪い悪い」

 

 俺には勿体ない親友だよ。TS病なったって言って、こんなに変わらずに接してくれてんだから。

 

「……つーか、どうよ。俺がTS病にかかったのを理由にして山野との距離を縮めるって考えは」

「ぶっちゃけ割とアリだと思った。手応え感じてる」

 

 マジか、アレでか。

 

「……お、おう。まあ、俺は天才だからな。ほれ、褒め称えろ。この詩音様を崇めろ」

「へいへい」

 

 止めい、頭を撫でるな。

 俺はそこまでガキじゃねぇ。

 

「あー、この調子で行けば付き合えるかな……」

「…………」

「何で黙るんだよ」

 

 考えてみて欲しい。

 ちょっと冷静になって欲しい。だって、あの感じの会話でいつか付き合えると断定できる訳ないだろ。恋愛漫画とか、少女漫画を参考にしろとか言わんが、もう少し会話を捗らせろとツッコミたくなったぞ。

 

「うん、いつか、……な。きっと、たぶん」

「いつかって……。俺、山野と付き合えっかなぁ……」

「もうちょい頑張れよ」

「し、仕方ねぇだろ! 緊張すんの! ……あー、取り敢えず、だな。……ありがとな、詩音」

「どーいたしまして」

 

 感謝されるのは結構気分がいいもんだ。親しき仲にも礼儀ありって言うし。ありがとうって言うのは大事。

 うん。

 

「さっさと帰ろうぜ、謙也」

「おう」

 

 俺の性別が変わっても、別にこいつは変わんない。

 俺はその心地いい距離感でずっと親友で居たい。こいつに恋人とか奥さんとかが出来ても、俺はその隣でゲラゲラと「俺のお陰だろ」って笑ってやりたいなーって思う。

 俺がお前を幸せにしてやったんだって、胸を張って言えるような、そんな人生が良い。そうしたら、そうして認められたら、親友冥利に尽きるってもんじゃん。

 なんてなー。

 俺の中の厨二病心が闇夜に刺激されてしまったぜ。

 

「ちょっと」

「ん?」

「歩くの速いんすけど」

「おお、悪い悪い」

「おらっ!」

「け、蹴んなよ!」

「本気じゃねぇから」

 

 そうやってスキンシップを取って、俺たちは笑う。

 

「そーいやさ、詩音?」

「ふむ?」

「……何でちょい偉そうなんだよ」

「用件を申してみせよ」

「お前は俺の恋路を応援してくれるけどさ、お前の恋愛とかどうすんの?」

「あ? 何、一丁前に人のこと気にしてんの?」

 

 お前に気にされるほど落ちぶれてないわよー。

 まあ、恋愛に関しては正直なところ消極的なんだけどな。

 長岡さんのだって、俺の中では割と諦めの付いてたことだし。女になったからってか、正直なところ長岡さんが謙也の事が好きだってのを察した時点で諦めてたし。

 

「けっ」

「唾吐くなよ」

「乙女の神聖なる唾液と呼べ」

「汚ねぇもんは汚ねぇの……」

「はいー、この話終わりー」

「……はあ」

「溜息つくなよ。幸せが逃げてくぜ?」

「逃げてく幸せなんて殆どねぇよ」

「おらっ」

「いっ……!」

「元気出せよー、ほらー」

「……はいはい」

「そうだ、恋のおまじないとか教えてやろうか?」

「え、お前そう言うの知ってんの?」

「『エンジェル様』って言ってな……」

「それヤバいやつじゃねーか」

 

 何だよ、知ってんのかよ。

 ちぇー。

 まあ、すぐバレる嘘のつもりだったからどうでも良かったんだけど。

 

「じゃあ、お前に女の子と一緒に見ると盛り上がる映画を教えてやるか……。これはとっておきだったんだがな。まあ、親友のお前だ。特別に教えてしんぜよう」

「どうせホラーとかスプラッタだろ」

「いや、ポルノ」

「気不味すぎるわ!」

「濡れ場ありとかそう言うんじゃなくて、ガチポルノ映画」

「……因みにタイトルは?」

 

 気になってんじゃねぇか。

 

「耳貸せ」

「…………」

 

 小さな声でタイトルを教えてやると、直ぐに謙也が離れた。

 

「ありがとうございます……!」

「おう、気にすんな」

 

 俺はニヒルに笑って見せた。




 あー、終わり方どうしましょ……。
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