「……ねえ、五月。ここ風君の大学じゃないじゃない」
「ここ、、福沢諭吉が作った大学。全然名前も違うし、どんな間違い方したの五月」
「う、うぅ〜〜。ごめんなさい……。私が以前チェックしていた大学リストのなかから住所を間違って持ってきてしまったようです」
みなさんこんにちは。
中野五月です……。
四葉が上杉君に会いに、一花が仕事でそれぞれ東京にいる今、二乃の発案により私たちもということで東京観光に来ました。今はせっかくだからということで、私たちも秘密で上杉君のいる大学がどんな場所なのか見に来たつもりだったのですが……
「いや、そもそも今はスマホがあるんだからそれを見ていけば良かったのに……五月はなんでわざわざ住所を手帳に書いて現地で調べながら行くなんて面倒臭いやり方してるの。アナログすぎる」
「全くね。それで場所も間違えるだなんて世話ないわ」
三玖からは、結構イライラしていたのか長文が帰ってきました。三玖がこんなに話すのは珍しいです。二乃も三玖に同意見なのか、私をシラッとした目で見つめながらスマホを取り出していました。
うぅ。だって、、だってぇ。
弁解をしたいのは山々ですが、どんなことを言っても言い訳になってしまう手前、もはやグゥの音もでません…。
『グゥ』
「……五月」
「五月アンタ……流石肉まんお化けね」
嘘だったようです。お腹からグゥの音がなりました。
……だって、知らない土地で長い間歩いてたらお腹すいちゃったんです!! 仕方がないんですっ!!
もうっお腹が空きましたぁ!!
「お姉さんたち可愛いね。どう、お腹空いてんなら俺たちとご飯でも行かない? 」
「うわ、三つ子ちゃんかな? 似てるね〜」
「美味しいもの食べさせてあげるよ? 」
大学の横にある道で、そんなことをニ乃と三玖と話していたら、三人の大学生のような男性に囲まれてしまいました。
三人はなんだか、、チャラいのでしょうか?
落ち着いた服装なのに、内側から危険なオーラを感じます。私と三玖はそのよく分からない不自然なオーラに怯え、何も発することができません。
「私たちそういうのは間に合ってるから大丈夫〜だからとりあえずどいてくれないかな? 」
に、二乃!!
流石です。笑顔なのにイライラしているのがすぐに分かるその態度と声。地元では二乃のコレに恐れをなしてどんな男性でもちょっと怯えます。その隙に逃げれることがほとんどなのですが、、、
「おっ……気が強い子は好きだよ」
「満足させてあげるから」
「怒ってるとこも可愛いね。あ、もちろん大人しげな君も、頭に星がある君も」
その三人は、二乃の威圧にもめげませんでした。それどころかエスカレートして、二乃も三玖も私も腕を取られてしまいます。私と三玖は恐怖で声が出せません。
「ちょっ離しなさいよ! 大学に言うわよ!? 」
「ほらそんなこと言わないでさ。別に何もしないから」
二乃の威圧にも臆さないその三人に、私はほんの少し諦め始めた時でした。
「あーあ、またやってる。だめだよ〜もう二度としないでって言ったよね? 」
「ひっ!? 」
「なっ!? 」
「まじかよ……」
声のしたほうを向いてみると、お団子頭に茶髪の女の子が、携帯を横にフリフリして男三人組に見せながらニコニコ笑ってるのが見えました。
「今ね、優美子まだ学校の中にいるんだ。これから私と待ち合わせの予定なんだよね」
お団子頭の女の子の放った言葉に、男三人は一気に顔に力を込めました。固まっています。
「それに、もし私に何かしようとしたら優美子だけじゃなくてゆきのんも飛んでくるよ? 前みたいに」
その言葉を聞いた瞬間。三人組は顔を青白くさせ、こころなしかブルブル震え出しているようにも見えます。さっきの二乃の威圧を軽く受け流していたのと同じ男三人とはとても思えません。何者なんでしょうこのお団子の女の子は。
「や、やだなぁ……あ、俺たちやることあるからもういかなきゃ、なっ!? 」
「そ、そうだな」
「あの二人とゾンビにはもう会いたくねぇよ……」
三人は、口々に何かを言って去っていきました。
しばらくして、私も怖かったですが、三玖は相当怖い思いをしたようで、その場に座り込みます。
「大丈夫? 怖かったよね」
そんな三玖に、助けてくださったお団子頭の女の子が、優しい笑顔で手を差し伸べました。
* * *
「この度は本当にありがとうございます。それにしても、ここの学生さんだったのですね……すごい」
「あ〜いや〜。みんなには天変地異の前触れとか一生分の運を使い切ったとか散々言われたくらいだから、あんまり身の丈にはあってないんだけどね……」
「……実際あーしも結衣がここに来れるとは思ってなかったよ」
あの三人が去った後、私たちを助けてくれたお団子頭の女の子、名前は由比ヶ浜結衣さんと、私たちはお話をしていました。さらに、そのご友人の三浦優美子さんとも直ぐに出会い、先程の体験をお話しました。
あの三人はどうやらナンパの常習犯らしく、以前結衣さんが狙われた時に、三浦さんと、上杉君と同じ大学に通う女性、そして新宿にある大学に通う男性の三人で袋叩きにしたとのことです。三人がすぐに逃げて行ったのは、こんな理由があったからなのですね……それにしても、三浦さん、怖いです……
「あの、本当にありがとう。助かったわ」
「私からも……ありがとう。すごく、怖かった」
二乃と三玖も、由比ヶ浜さんと三浦さんに深く頭を下げます。まさかこんな目に遭うとは思っていなかったので、安堵も大きいのです。
「ううん。私は何もしてないし……でも、二乃ちゃんも三玖ちゃんも五月ちゃんも無事で良かったよ! それにしても……ほえ〜、、五つ子ってすごいねぇ。まだ二人いるんでしょ? すっごい似てる」
「あはは……よく言われます」
由比ヶ浜さんはまるで尻尾を振る犬のように、興味津々といったような目で私たちを見ています。……ちょっと恥ずかしいです。
「ハァ。まあ、なんでもいいけど。五月たちはどうしてここに? なんか用でもあったん? 」
三浦さんが、すぐに話題を変えてくれました。この人は見かけによらず、すごく面倒見のいい人なのかもしれませんね。その三浦さんの声に、二乃が反応します。
「私たち、友達に会いに東大に行きたくて……なのにこの娘が間違えてここに来ちゃったの」
「はぁ? どうやったらアソコとここを間違えるん? 」
「全く……その通り」
うぅ。三浦さんの驚きに二乃と三玖のジト目が私を襲います。も、もうっ。我ながら結構ハードな間違い方をしたことに結構傷ついてるんですからね!! ちゃんと反省してるんですからね!?
すると、苦笑いをしていた由比ヶ浜さんが、明るい声でこんなことを提案してくださいました。
「じゃあさ、私たちも今日は授業終わったから、これから一緒に行こうよ!! ゆきのんにも紹介したいしっ」
この由比ヶ浜さんの申し出にありがたく甘えて、私たちは一緒に上杉君のいるはずの大学を目指すことになりました。
* * *
『グゥ』
「五月、、なんか食べる? あーし奢るから」
「………………肉まんを……お願いします」