「い、五月……って、二乃、三玖まで!? お、お前らなんで……」
上杉風太郎。
さっき知り合った雪ノ下と同じ大学の同じゼミ生で、あのゲロリボンの彼氏。
そんな上杉は、怒涛の如く食い物を平らげていたあのゲロリボンと同じ顔の女を見て、さらにその横にもゲロリボンと同じ顔を2人確認すると、驚きに顔を染めていた。
ちなみに、同じ顔を今日だけで五人見るということもそうだが、何故かそこに由比ヶ浜と三浦がいることに、俺も口をあんぐりとさせた。
* * *
「なるほど……それであの子の尻拭いに二人で謝りに戻ってきた訳……身内として申し訳ないわ」
ゲロリボンと同じ顔の一人、名前は中野二乃さんは、俺と上杉に頭を下げる。それに次いで三玖さん、さっき大喰らいしていた五月さんも深く頭を下げてきた。
……サイゼに上杉と戻って来た時、妙に裏にいる店員さんたちが動揺していたと思ったらこれか。確かにこれは混乱するわ。ドッペルゲンガー大集合かよってな。
どうして彼女たちが頭を下げているかというと、さっき五つ子の大食い担当に上杉が見つかってから、俺たちは一連のことについて説明をしたからだ。
俺とリボンがそれぞれ雪ノ下と上杉に会いに行ったこと。
たまたま二人が一緒にいるところをたまたま俺たちが見て勘違いしたこと。
サイゼでヤケ酒したこと。
リボンが俺に絡んできたこと。
リボンが吐き出して俺が介抱したり怒られたりしたこと。
たまたま雪ノ下と上杉が同じサイゼに入ってきて、雪ノ下が暴走を始めたこと。
俺とリボンが殺されないために逃げたら、あの中野一花がリボンを助けに来たこと。
雪ノ下が三人纏めて葬ろうとした時に上杉が全ての謎を推理して解いてくれたこと。
改めて見るとたまたまが多すぎる。
所詮現実に起こることのほとんどはたまたまだが、ここまで悪い方に働くこともないだろう。
「ま、まあ。四葉は一花がホテルに連れて行ってくれてるなら安心だわ……。今はそれよりも、えっと、比企谷君って言ったかしら……大変な目に合わせちゃってごめんなさいね。あの子がたからなければこんな事にはならなかったんだから」
次女は気が強そうな口調や目元をしているが、しっかり俺のことを考えた言葉をかけてくれた。
俺の目にこの姉妹たちが全く怯えないのにも驚くが、リボンといい次女といい横にいる他の姉妹たちといい、なかなかにこいつらは肝が据わっているらしい。
「いや、いいんだ。わざわざ丁寧にどうも」
まあ、初めて会った女子にはこんくらいしか話せないよね。いやいいんだけどね? 俺には雪ノ下いるし。むしろ変に仲良くしちゃったらさっきみたいにフォークとか投げられちゃう。
「ねえねえヒッキー。ヒッキーももちろんそうだけど……ゆきのん。大丈夫? 」
由比ヶ浜が心配そうな目を俺に向けて来た。さすが雪ノ下の親友とだけあって、あいつの弱い点を分かっている。
「ああ……俺にもリボンにも一花さんにも死ぬほど謝ってきた。俺も問題がないわけじゃないって言ったんだが、かなり自虐したり気落ちしててな……今はリボンと一花さんと一緒のホテルで落ち込んでる」
「あはは……やっぱりそうなんだ。ゆきのんってヒッキーのことになると暴走して後で自己嫌悪するまでが最近のワンセットだから……」
「ハァ。あんたらめんどくさすぎ。高校卒業してもう2年経つってのに、なんなん? あんたらなんでどんどんポンコツになってるん? 隼人も言ってたけど」
全くその通りである。三浦さんの言う通りだ。さすがオカン。でも最後のはウザイことこの上ないのでスルー。
「あ、あのぅ……私たちも、四葉や一花の所に行きませんか? 心配ですし……」
パフェの5つ目を頬張りながら、五月さんがそう提案する。それだけではないテーブルを埋め尽くすほどの大量の食器たちは、なんだか物言わぬ迫力があった。
俺と由比ヶ浜に三浦は思わず口をアングリと開けて固まるが、他のやつらにとってはそれはいつもの通りらしくスムーズに話が進む。結局俺たちは、これから一花さんがとってくれたホテルに向かうことになった。
* * *
「あれ? ヒッキー携帯からなんかなった? 」
「ん? ラインだ…………うわぁ」
「どうした比企谷。そんなこの世の終わりみたいな顔して。また俺といた時みたいに雪ノ下さんが暴れ出したのか? 」
「……ああ、別な”雪ノ下さん”がな」
「っえぇ……ヒッキーそれってどういう……」
「……これを見てくれ」
陽乃
比企谷君。
雪乃ちゃんにさっき突撃電話したら泣いてたんだけど
なんか私が悪いのとか言ってたけどさ
すぐ切られちゃったんだよね
何があったの?
っていうか私言ったよね。雪乃ちゃん泣かせたら許さないって。
逃げたら地獄の果てまで追うからそのつもりで