「あの、、雪ノ下さん。大丈夫だよ、だってみんなちゃんと分かってくれたんでしょ?」
「ほら、雪乃。あーしに何でも言ってみるし。そんなんだと結衣もヒキオも心配するよ?」
「雪ノ下さん……そんなに落ち込まないで」
「……うん」
みんなヤッホー。
中野一花だよ。
あれから、私は近くにあったホテルに四葉と雪ノ下さんをつれて来たの。後から三玖と三浦さんが一緒に来て、オエオエうるさかった四葉を寝かしつけてくれたあと、こうして今は雪ノ下さんの対応をしている。
「私はポンコツ……大学生なのに未だに胸が膨らまない、結局は、女としての敗北者なのよ」
う、う〜ん。
それにしてもさあ、さっきの手練れの暗殺者みたいな空気からよくこんなにしおらしくなるよねぇ……
ほら、さっきなんかは凄い勢いでフォーク投げてたりしたし、私の肩に置かれた手だってすごい力が入ってたし。
実際、肩にはちょっと跡に残ってる気がするよ……痛かったなあ。
「わたし、比企谷君に迷惑かけちゃった……それどころか、一花さんにも……三玖さんに、優美子にまで……もうやだ。私はやっぱりポンコツなんだわ。結衣さんが最近よく言う通り、私は彼が絡むと本当にダメ」
「ハァ……雪乃」
「……一花、これは私には無理」
「う、うぅ〜ん……」
どうしよう。ちょっとめんどくさ……いや、だいぶ繊細な人なのかな、雪ノ下さんって。横でグッタリ寝てる四葉と比べるとよりハッキリ違いを意識してしまう。面倒臭い時の二乃を相手にする感じがいいのかなぁ? でも、それともまた違う気がするし……
「ああ……もう、私はダメなのかも。……こうなったら、比企谷君を殺して私も……」
聞こえない聞こえない。
何も聞こえないったら聞こえない。
そんなふうに現実逃避していると、ちょうどよく携帯から着信が鳴った。
あっ……仕事すっぽかしちゃった件かな……いや、それについてはさっき社長から延期になったってメールきたし違うか。いやまあ、その時電話取れなかったことについて怒られそうだけど……
まあ、今の私を助けてくれる電話には変わりはないよね! よし、応答っと!
「もしもし、一花ですか? 」
「あ、あれ? 五月ちゃん!? ああそっか、東京にいるんだもんね。もうそっちはなんとかなったの?」
「ええ、なんとかなりました。私が、もう一人異様に落ち込んだ人を作り出してしまいましたが……」
「えっ……そ、そうなんだ」
またこんな面倒な人作っちゃったかあ〜
「はい……。まあその話はまた後でにしましょう。それよりも、四葉は大丈夫ですか?」
『う、うぅ。なんか、悪い夢を見ていた気がするよぉ』
「……たった今起きたね。普通に伸びしてるし、なんか立ち上がったから平気そう。……えっと、問題はもう一人なんだけど」
「ああ。そちら、雪ノ下さんの連れと今行動をともにしているのですが、引き取りに来てくださるそうです。車で来てくださるそうなので、その旨を、えっと、雪ノ下さんに伝えておいてくださると助かります」
「あ、うん。分かったよ。ありがとね五月ちゃん」
「あと、雪ノ下さんのお姉さんが私たちの今日の宿も用意してくださるそうです。なんでも、精一杯のお詫びだとかで」
「え? い、いいの?」
「はい。私たちとしてもありがたい申し出なので、二乃と相談してお言葉に甘えることにしました」
「そ、そうなんだ。じゃあ後で私もお礼しなきゃね。五月ちゃんお疲れ様」
「いえ、では後ほど」
ふぅ。とりあえず、なんだか色々なことが片付いたみたい。
* * *
私は三浦さんと三玖に、さっきの電話の内容について説明をした。四葉は本調子とはいかないまでも、とりあえず一人で歩くことくらいはできるみたい。本当に人騒がせな妹だ。
「それにしても車……誰が……」
「ん? どうしたの三浦さん?」
「いや、今向こうにいる中で車を運転できる人はいないはずで。結衣は免許ないし、雪乃の姉さんは多分今は雪乃みたいにこんな感じで落ち込んでるから使い物にならないだろうし、ヒキオは酒飲んでるし」
「二乃も五月も、多分フータローも車の免許はまだなかったはず……」
不審げに三浦さんは言う。
三玖の言う通り、あっちには私たち側の人たちも車を動かせる人はいないはず。
三浦さん側の誰も運転できないなら、一体誰が来てくれるんだろ。
「……ま……まさか、あいつだとしたらっ……結衣のバカ! まずい! 今の雪乃の状態であのあざとい奴に貸しを作るのはまずいし!」
唐突に、三浦さんが取り乱し始めた。
* * *
「ふふふ……こんなところで恩を売ることができるなんて思ってなかったからラッキー……。雪乃先輩や結衣先輩がこれで封じれるから……さて、どんな手を使ってあんなことやこんなことさせよっかなぁ……せ〜んぱいっ♡」