近くて遠くてやっぱり近くて   作:鴨南蛮ver.2

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それではダリア編、始まります。


All for One

 

更衣室で帰り支度を済ませ、マスターから耕平用のお冷やをもらい、つぶれた耕平を休ませている個室に戻ってきた私。

 

そのまま傍らに座り、そのうなされている顔を眺めるのも一興ではあったが、どうせなら私もいい思いをしようというイタズラ心が鎌首をもたげてくる。

 

「寝ゲロはやめてね」

 

そう伝わってはいないだろう忠告を一言こぼし、耕平の頭をもちあげ、その頭とソファーの間に自らの足を滑り込ませる。

 

所謂、膝枕というやつである。

 

 

ダンスのために鍛えた私の足。

枕にするには少し固すぎないだろうか?

茉莉花の細くしなやかながらも柔らかいその足と比べると寝づらくはないだろうかと頭によぎるが、寝心地よさそうに弛んだ顔をしだした耕平を見て一安心。

 

 

こうやって近くで耕平を見るのは随分と久し振りな気がするが、何だかんだ近くにはいつもいる気がする。

 

ただ、こういうふれあいになると久方ぶりなので、そう思ってしまうのだろうか?

 

それとも、2人っきりだからだろうか?

 

 

膝の上でモゾモゾと耕平の頭が動く気配がし、何かと思えば、私の手が無意識にその頭を撫でていたのがくすぐったかったようだ。

 

 

意識することなく動いていた自分の手に、私って意外に素直なんだと思いながらも、その手を今度は自分の意思を持って優しく動かす。

 

 

その一方でもう片方の手ではスマホを起動し、時刻表を立ち上げる。

茉莉花の家を知っている=耕平の家を知っていると同義であるため、その最寄り駅には察しがつく。

 

今の時刻は11時過ぎ。終電は0時20分。間にいくらか便があるがそこは無視でいいだろう。

 

ここから駅への道を考えるとあと1時間ほどは休ませても問題ないと結論付ける。

 

 

 

 

逆に言えば、1時間を越えたら電車では帰れない。

酔いで判断能力の落ちた耕平を言いくるめることは簡単だろう。

 

頭によぎるは"連れ込める"その言葉。

 

人間一度悪いことを考えるとズルズルと抜け出せないものである。

 

私もそれに違わなかったようで、頭の中でその思考を正当化する言葉がループする。

 

創作の中で、頭の中で天使と悪魔が言い争う場面があるが、私の中には悪魔しかいないらしい。やはり私は思っている以上に素直らしい。

 

ひとり、苦笑しながら思い出す。

私と、この二日酔い予備軍との出会いを。

 

私と彼の、憧れの話を。

 

 

 

◆◆

 

 

「強くなりたいから鍛えてくれ」

 

あれは小学4年生ころ。

私の通っていた空手道場にヘンなやつが来た。

 

別に空手等の習い事を始めることは珍しいことではないと思う。

 

親から言われて、兄弟がやっているから、テレビで、漫画で、アニメで見てかっこよくて、蘭ねーちゃんでなんて、理由は色々だと思う。

 

けど、こんな理由でこの道場に来た人は初めてかもしれない。

ストリートファイターにでもなりたい人なのだろうか?

 

私たち門下生は練習を続けるよう指示をうけ、師範はその子の対応にあたる。

 

やけにその子の目が印象に残った。

 

 

 

その後暫くして師範からの召集がかかり、私はその子の名前を知った。

 

「境耕平です、よろしくお願いします」

「ってことで仲良くやれよお前ら、そしてついでだ、意欲的なガキが入ってきたのとだし少し話でもしようか」

 

そういってどっこいしょと腰をその場にすえ、煙草を咥える不良師範。

 

「道場で煙草っていいのかジジイ」

「俺がこの場のルールだからいいんだよ」

 

さてはこの境くんって失礼なこ?

って思ってしまうくらいには師範に対して慇懃無礼な態度である。

 

…ってよりは拗ねてる?なにか師範がいったんだろうか?

 

「さてと、お前らは何で空手やってんの?」

 

次々と指名され答えていく。

 

親に言われたから。

兄弟がやってるから。

スポーツ選手に憧れて。

 

何て答えが続いていく。

 

私も同様である。

 

「はぁ…お前らつまんねぇなぁ。うしっ!耕平!!お前の理由をかましてやれや!」

「……家族を護りたいから」

 

顔を反らし、拗ねたように言う境くん。

意外にかわいいところもあるんだ。

そして、

 

「ガハハハっ、やっぱおもれぇわその理由」

 

全力で爆笑する師範。

 

「空手やっただけで守れるわけねぇだろが」

 

笑いを納めた師範が語る。

腕っぷしだけで何から守れる?

力だけで守れるもんなんてほんの一握りだ。

 

例えばいじめからはどう守る?

力でねじ伏せるか?

影で動くやつもいるし陰湿になるやつもいるだろう。

そして暴力を振るうお前を見てお前の守りたいやつはどう思うだろうな?

 

そんじゃ社会的なものからはどう守る?

例えば病。

例えば学業。

例えば就職。

色々なもので挫ける機会が人生あるだろうよ。

 

 

 

子供に語る内容では一切ないように思う。

ちんぷんかんぷんな顔をしてる子がほとんどである。

 

 

 

「ははは、んじゃどうすんだ見てな顔してんな」

「つっつくなジジイ」

 

 

 

そんな中、拗ねたような、叱られたような顔している境くんの顔をツンツンしている師範代。

 

正直その態度は私もどうかと思う。

 

 

 

 

「いろんなことをやんな、それが糧になる。お前は将来何になりたいよ」

 

そういってひとりひとりに将来の夢を聞いていく師範。

 

「色々あんな~、いいね、若人よ大志を抱けってか。ま、将来の夢を目指してお前ら頑張ってくんだろうが、そればっかり人生やってる訳にゃいかねぇよな」

 

例えば学校とかな?

 

「将来の夢にかけている時間とそれ意外をする時間。どうやってもそれ以外が長いんだよ。だからな、それ以外のものを夢に活かせる方法を考えろ」

 

"全ては一つのために"

 

「意味なく過ごすな、意味を見いだせ、だからな耕平。ここでは力を学べ。そのふるい方を学べ。そして別のところでもっと沢山のことを吸収しろ。そうすりゃいつか、ちゃんと護りきれる日がくるだろうよ」

 

 

こうして私たちの道場に新たな仲間が加わり、私と耕平は出会った。

 




最初のダリアのくだりは送って帰る的なプロットだったんですが、いざかいてみたらお持ち帰りしようとするダリアさん。

前回ガチャで出しすぎた影響で主張か強いって印象がついてしまったんでしょうか…?

とりあえずモンハンで勲章集めしてきます。
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