近くて遠くてやっぱり近くて   作:鴨南蛮ver.2

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仕事の追い込み時で投稿が遅れましてすみません。

いか続きになります。


向かい合うも追うは背中

 

向かい合う男の動きを注意深く見る。

こちらもそれに合わせ、油断なく構え、足を動かす。

 

相手の動きはよく知っている。

 

まずあちらから飛び込んでくることはない。

受け止め、受け流し、崩して制圧。

 

それが相手の戦法だ。

 

常にその背中に人を庇い、庇うものに攻撃を届かせず、自分から動かないことで庇護対象から離れないことを考えた結果の動きだ。

 

今この場にその背に庇う対象はいない。けれどそれはその戦法をやめる理由にはならない。

 

"全てはひとつのために"

 

ならばこの組手も"護る"というひとつを成すためにあるべきである。

 

だから、対峙するその男は必ずその動きを貫き通すと信じれる。

 

 

 

だから私は、全力で攻める!

 

「シッ!」

 

繰り出すは下段蹴り。

突きは万全の体勢である今、手が届く範囲ならば確実に対処される。

 

だからこそまずは相手を崩す!

 

相手の対処はシンプルに退かないことだ。

退くということはその背に庇う対象に敵を近付けることになる。

 

だからこそ前に出てくる。

 

その結果、蹴りの威力が十分に乗っていない膝の少し下くらいでインパクトが発生する。

 

相手は前に出たその一歩を利用し、掴み技を仕掛けてくる。

 

空手にはない動きだがこの相手は何でもありだ。

護るに必要な力をいろいろこの道場で仕込まれてる。

 

そもそも、これは空手の試合ではない。

だから私も、私の全てをもって対応する。

 

手は私の襟目掛けて延びてきている。

手で払おうとすればその手を絡み取られるだろう。

 

だから私は、避けることを選択する。

 

 

相手は"護る"といういちのためにこの場に立っている。ならば私はなんのためにこの場に立っている。

 

 

"ダンス"といういちのためだ。

 

 

蹴り足はそのまま、腰を下ろしたその態勢。

その体勢はまさしくウクライナ発祥のコサックダンスのものである。

 

何も前に足を蹴り出すだけがコサックではない。

低い体勢での足のステップ、それによる回転もコサックの持ち味である。

 

そしてそれは、相手の足を刈り取る技となる。

 

踏み出し、体重が乗ったその足を払われ、体勢を崩す相手。

 

そこに追撃を加えるように回転のベクトルを操っていく。コサックの回転からあたかもブレイクダンスで見るような回転へ動きを変える。

 

右足による後回し蹴り。崩した体をさらに捻ることで回避。右足による顎を狙った蹴り上げ。首を反らすことでかわされる。

 

蹴り上げの勢いで逆立ちの体勢となった私と完全に体勢を崩すした相手。

 

体勢的にはこちらが有利。

逆立ちでも攻撃は繰り出せるが、両足で立つにこしたことはない。

 

だが、私が動くより早く相手が動いた。

倒れかけ、身を捻り、仰け反ったその体をさらに崩すことでむしろ早く地面に落ちる。

両手と頭の三点で体を無理やり支え、蹴りを繰り出してくる。

 

虚を付かれ、受ける体勢もできてない。

ならばやることはひとつ。

 

迎撃だ。

 

ただ足を振るっただけの攻撃は当然のごとく押し返される。

だが、相手もとっさの攻撃だったからか、こちらを吹き飛ばすほどの威力はない。両手とも地についているなら立て直すも用意である。

 

押し返され、身体が流れるに従うように向きを整え、ハンドスプリングの要領で立ち姿勢に戻る。

 

たんっという軽い着地の音が2つ重なる。

相手も同様に立ち姿勢へ戻っている。

 

さて、振り出しだ。

 

次の攻め手を考える前に身体は動き始める。

相手は突きでも蹴りでも対応できるよう体勢を戻している。

 

だからこそ選択するは全身、全体重、全速力をもって行う体当たり。

 

「ちょっ、ま!?」

 

相手から焦ったような声がはじめて聞こえてくるが止まってはやらない。

私という砲弾に対しての相手の対応は受け止めることだ。

 

伸ばした両手の指先、手首、肘、肩で威力を殺しきり、一歩も引くことなく受け止められるが、その代償として相手にかせられたのは僅かな硬直時間。対して私は衝撃を全て受け取りきってもらえたおかげですぐにでも動き出せる。

 

相手をポールにみたて、ポールダンスのように相手の身体に組み付く。

 

そのまま体重と回転を用いて相手を地面に引き倒す。

 

「はっ!」

 

引き倒した相手に下段突きを入れる。

 

「そこまでっ!技ありってことでダリアの勝ちな」

 

「だぁくそっ!負けたぁ」

「フフ、そう簡単に勝たせてあげないよ」

 

床に寝そべる組手相手、耕平に手を差しのべながら不敵に笑って返す。

 

「いいとこまでいったと思うんだけどなぁ」

 

私の手をとり、立ち上がりながらぼやく耕平。

 

 

あの日、耕平が入門してからすでに4年の年月が過ぎ、私たちは中学2年生へと成長した。

 

あの頃は同じくらいだった身長も今では耕平の方が高くなり、体つきもがっしりとしてきたなと、その繋いだゴツゴツとした手から思う。

 

「ハハハ!ダリアに身体擦り付けられたのに動揺して負けるとかまだまだガキだな」

「はぁ!?別に動揺なんてしてねぇよジジイ!あんなの茉莉花で慣れっこだから平気だし!ダリアの動きに驚いただけだし!」

「ハハハ!そういうことにしといてやるよ!」

「わかってねぇなこのクソジジイ…」

 

さっきの決まり手について師範に茶化されている耕平。

特に試合中は私も気にしてはいなかったが、なかなかに大胆なことをしてしまったと今さら思う。

 

が、それよりも気になるのは"茉莉花"という存在である。耕平が言うには護りたい家族らしいけど…

 

自分の身体を見る。

女性にしては高い身長と同級生の女の子と比べると筋肉質だがメリハリのある身体。

加えて、ダンスをする都合、身だしなみにも気を遣っている。

 

自分事だが、十分に女性として魅力的だと思う。

それを妹で慣れているからと一蹴されるのは……

 

 

ちょっと、気にくわないかな

 

 

「ダリアさんお疲れ様です」

「ん、ありがとう真秀」

 

ちょっとむすっとしていると視界の隅からタオルと飲み物が差し出されてくる。

 

「さっきの組手凄いですね、めっちゃかっこよかったです!」

「ありがとうね、けど私もまだまだだよ」

 

タオルで汗をぬぐいながら思う。

先の組手も、耕平が手を抜かなければ…いや、耕平が背後を護ることに固執しなければ、負けていたのは私である。

 

最後のタックル。

耕平であれば受け流すことも投げることも容易な攻撃である。

 

だがそれをしなかったのは、それをした場合私が背後に辿り着けるからに他ならない。

 

だからあれは私が試合に勝って、勝負には反則負けしたようなものだ。

 

決して誉められる勝利ではない。それに…

 

 

「それではダリアさん、耕平さんにも飲み物とタオルを渡してきますね」

「うん、いってらっしゃい」

 

まだ師範と話している耕平の方に駆けていく真秀。

タオルと飲み物を受け取り、お礼を言いながら頭を撫でて上げている耕平。

 

真秀も兄ができたみたいで嬉しいのか、喜んで耕平の腰にぶら下がっている。

 

微笑ましくも思うが、羨ましいという感覚が先行してくるあたりに苦笑してしまう。

 

 

 

 

私は頑張る人が好きだ。

 

変わろうと努力する人が好きだ。

 

目標に向けて努力する人が好きだ。

 

 

 

 

だから、私は耕平が好きだ。

 

 




4年も近くで必死に努力を続ける姿を見せつけられダリアさん陥落。

そしてこの頃のダリアさんは茉莉花を、耕平の家族という口ぶりと、真秀との接し方から、茉莉花のことを勝手に妹だと認識しております。

そして地味にMerm4id以外のメンツの初登場です。緋彩さんはあれだから、名前だけだからセーフ。

そしてこの頃の真秀ちゃんはダイナマイトではないです。(小学3年生)
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