近くて遠くてやっぱり近くて   作:鴨南蛮ver.2

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もろもろの解体作業が終わったのでこっそりとおいていきます。


別れは突然に

 

 

その日は突然に来た。

 

日頃道場の稽古に遅れることがない耕平が大遅刻してきたと思ったら、大事な話があるといって師範と奥の部屋に引っ込んでいく。

 

胸騒ぎのした私は練習を放棄し、そのあとを追った。

 

 

扉一枚を隔てて聞こえる声に耳を澄ませる。

 

 

 

『んで耕平、辞めるってどういうことだ?』

 

 

そうして耕平は道場を辞めた。

 

 

 

 

◆◆

 

 

 

 

「懐かしいな…」

 

そう呟き、髪を撫でていたその手をずらし、耕平の頬に寄せる。

 

「あのまま、お互いに目標に向かって切磋琢磨していくんだって思ってた」

 

けどそうはならなかった。

耕平が途中でいなくなったから。

 

「真秀も寂しがってたよ」

 

本当のことだよ?

『耕平"お兄ちゃん"は?』

って、思わず本当に呼びたかった呼称を溢してしまうくらいにはショックを受けてたんだよ?

 

けど、それよりも……

 

 

「私が、寂しかったんだ」

 

 

もっと一緒にいたかった。

もっと一緒に頑張りたかった。

もっと一緒に話したかった。

もっと一緒に笑いたかった。

もっと一緒に悲しみたかった。

もっと一緒に、もっともっともっっと一緒に

 

 

考えれば考えるほど暴れ出る欲求。

 

 

「けど、止めなかったのは私」

 

 

あのとき、やめないでと言わなかったのは私。

 

自業自得だ。

 

けど止めたところで止まる人じゃないことは私もよく知っている。

 

一度決めたならやり抜く。

そんな男の子だったから。

 

だから今も耕平は、昔決めたことを守っている。

 

 

 

"茉莉花(家族)を守る"

 

 

 

あの時聞いたあの言葉。

家族と表現はしていたが、本当のところはただ1人にのみに向けられた誓い。

 

それを成すために進歩を止めない。

自分が自分に科したルールに従い続ける。

 

 

「そんなところを好きになったんだから止めれないよね」

 

けど、今こうして

 

「また会えたね」

 

 

クラブで見かけたときは本当に驚いた。

 

面倒なお客に絡まれている3人の女性、リカに茉莉花、さおりを背に庇うように前に立つ耕平。

 

耕平は私が最後に見た姿より、だいぶ大人っぽくなっていた。

けど、雰囲気が変わっていなかったのもあるけど、その背に誰かを庇う構え。誰よりもそばで見てきたからすぐわかった。

 

嬉しくて身体が震えるってことに驚いた。

感情が溢れるとこんなに身体は騒ぎだすことを知った。

 

だから私は…

 

「殴りかかっちゃったんだよね」

 

我ことながら苦笑してしまう。

 

あの時は私も感情の制御が効かなくて大分荒ぶってしまったし、だいぶ乱れた姿をリカたちには見せてしまったように思う。

 

私の数少ない黒歴史にはすぐさま蓋をし、膝の上で呑気に寝息をたてている耕平と時計に意識を向ける。

 

いつの間にか時間は過ぎており、一時間というボーダーがすぐそこまで近づいていることに驚く。

 

 

持ち帰るか、持ち帰らないか

 

 

その決断までの制限時間は今まさに無くなろうとしている。私の身体は耕平を起こそうという動きを見せない。

 

自分の正直さに苦笑が漏れ、今夜、今膝にある温もりが手に入ることに…

 

 

 

 

「こーくん、迎えに来たよ」

 

 

 

 

聞き慣れたハチミツのように甘い声。

それと共に膝からバネ仕掛けのように跳ね上がる影。

 

「あれ、茉莉花?」

「そうだよ~、こーくん遅いから迎えに来ちゃった」

 

個室の入り口に目を向けるとそこにはいつも通りの茉莉花が立っており、こちらに手を振っている。

 

「ダリアもありがとうね、こーくんの面倒を見てくれて」

「…これくらい平気だよ、茉莉花はどうしたの?」

「こーくんのお迎えだよ?」

 

こてんと首をかしげて答える茉莉花。

残念ながら"どうしてここがわかったの?"というと意図には気づいて貰えなかったらしい。

 

少なくとも私は連絡をしていないし、耕平も夜中に茉莉花が1人で出歩くような原因になる情報は送っていないだろう。

 

「はぁ、夜中は危ないんだから1人で出歩くなよ」

「ここまではタクシーだし、帰りはこーくんが一緒だから平気平気♪」

 

さっきまでの酔いつぶれている様子は嘘だと疑いたくなるほどにしっかりとし始めた耕平。

 

話には聞いてたけど本当にいざとなれば酔いも不調も抑え込めることに驚く。

 

「はぁ、んじゃあ終電に間に合うように帰りますか」

「りょ~かい」

「ダリアももう上がりだろ?」

「うん、そうだよ」

「んじゃダリアも送ってくわ」

 

今日はこれでおしまいだと思っていたところに思わぬ嬉しい提案。

 

「ふふふ、それじゃあお願いしようかな」

 

とはいってもこのバーからすぐ近くなんだけどね。

茉莉花が来なければ一晩中一緒だったことに比べるとだいぶ短い時間となってしまったが、ここでお別れよりは長くいられる。

 

そして耕平にとっては私も守る対象になることに喜びを感じる。

 

「それじゃあまずはダリアの家にゴー!」

 

そういって耕平の片腕をとり歩きだす茉莉花。

私もせっかくだから空いているもう一方の腕を抱える。

 

茉莉花と目が合い、その目から"簡単にはあげないよ?"というメッセージが飛んできたように感じる。

伝わるかはわからないけど、こっちもいつかものにするという決意をこめて目線を送っておく。

 

 

「そんなに腕を抱えなくても平気だぞ?酔いはどっか行ったし」

 

 

そんな私たちを余所に、酔っている自分を支えようとして腕を組んでいると勘違いしている耕平。

 

 

私が触れたいからこうしているんだよ

 

 

そう返すのは簡単だけど、今回はいい大義名分があるのでその名目を使わせて貰う。

 

「あんなに酔っぱらってたんだから大人しく支えられて」

「そーだそーだ♪」

 

私たちの圧に諦めたのか、溜め息を1つつき、歩きだす耕平。

 

目標の達成はならなかったが、そのために乗り越えなければなはないハードルの高さは知れた。

 

ならやることは1つ。

 

私と耕平が教わったただ1つのこと。

 

目標のために他全てを活かす。

それが私達のやり方なのだから。

 




ダリアの主人公お持ち帰り作戦は無事茉莉花により防がれました!


ここがすごい(?)ぞ茉莉花さん!

実はスマホのGPS情報をお互いに確認できるようにしてあり、位置から女狐の暗躍を察知すると乱入や鬼電による女狐妨害活動をおこなうぞ!
GPS情報の確認の頻度も高いので、暗躍する場合はモデルの仕事中やパフォーマンスの練習中等を狙うしかないぞ!


Ps.更新が大変遅くなり申し訳ありませんでした
拙い文章ではありますがこれからも不定期に更新を行っていきますのでよろしくお願いします。
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