近くて遠くてやっぱり近くて   作:鴨南蛮ver.2

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先の土曜日で仕事で今年度最後の大仕事が終わったのでひとまず息をつける加工食品(?)です。

もろもろやりたいこと、見たいもの貯まってるので早く解放されたい今日この頃。

って訳で投稿です。


河川敷で殴りあいってエモい

 

◆◆

 

 

上履きを隠された。

 

教科書を隠された。

 

落書きをされた。

 

ページが破られた。

 

給食のデザートがなかった。

 

筆記用具を隠された。

 

トイレの扉を執拗にノックされた。

 

足を引っ掛けられた。

 

肩をあてられた。

 

呼び出しをされた。

 

頬を張られた。

 

髪を引っ張られた。

 

引き摺り倒された。

 

蹴られた。踏まれた。

 

罵声を浴びせられた。

 

視線が怖くなった。

 

こそこそ話してる様子が恐ろしくなった。

 

そんな日が続いた。

 

けど私は、学校に通う。

 

何でもない顔をして家を出る。

家族に心配をかけないため。

 

自分はまだ耐えられると言い聞かせた。

こつこつ、こつこつと堪え忍べば、いつか周りも飽きて、諦めると思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

まちがいだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

一週間耐えた。変わらない。

二週間耐えた。変わらない。

一月が過ぎた。エスカレートした。

 

自分の中のこつこつと積み上げたものがひび割れて崩れそうなのを自覚した。

 

いつも通りの人目につかない校舎裏。

いつも通り可愛がられ、

 

 

 

私は、ついに、泣いた。

 

 

 

「どうしたよ?」

 

堪えきれない嗚咽を噛み締めた口から漏らす私に声がかかる。

 

今思うと、優しく、慈しむような声をかけてくれたんじゃないかと思う。

 

けど、そのときの私には恐怖しか沸かなかった。

後ずさるように角に踞り、頭を抱える。

 

その声をかけてきた男の子はそこから動かず声をかけてくる。

 

「何があったの?」

 

私は答えれない。

 

「言わなきゃ伝わらないよ」

 

伝える口を開けない。

 

「…そうかい」

 

そういってその男の子が動く気配を感じる。

その場に座り込んでボーッと暮れていく空を見始めた。

 

何をしたいのか全くわからない。

 

私を蹴ったりしないし、踏んだりしたいし…

 

新手の私の精神を追い詰める虐めなのかと考えてしまう。

 

そこでようやく私はその男の子の顔を認知する。

 

 

校内で噂になってた人だって。

 

確か名前は……

 

「…さかい、さん?」

「そうだけど、どうかしたか?」

 

思わず声に出てたらしく、こちらに目線を返しながら返答する境さん。

 

目線から逃げるようにまた踞る。

 

境くんが、目線をまた空に向け始めたのをなんとなく感じ、腕の隙間からまた様子を伺う。

 

 

そうして、どれだけの時間がたったのだろうか。

まだ青かった空は茜に染められて行き、その端には、濃紺の帳が迫って来はじめている。

 

 

「…境さんは何をしているんですか?」

 

その間、ずっと空を見上げていた意味のわからない男の子に、意を決して問いかける。

 

「俺の幼馴染みってさ、何かあると部屋にとじ込もって泣いてるんだよね。何か俺にもできることないかって思っても、聞いてみても、なかなか話してくれないんだよね」

 

今のお前みたいに、強情なヤツだよな?

 

そういって視線は空に向けたまま、優しげに小さく笑った。

 

「そんときにさ、ひとりにした方がイイかなって傍を離れようとしたんだけど、無言で袖捕まれて引き留められてな…だから傍にいることにした」

 

だから今も、ただ傍にいる。

簡単な話だろ?

 

そういって視線が私に向いた。

 

怖くないと思った。

 

けど、その目を合わせ続けれはしなかった。

だって恥ずかしいし…

 

そして私は目をそらしたまま、ポツリ、ポツリと溢した。

 

 

私の言葉と涙を。

 

 

 

 

全てを吐き出した頃には陽ではなく、月が照らす時間になっていた。

 

全てを吐き出した。

しっちゃかめっちゃかに叫び散らしたと思う。

理不尽に怒鳴り散らしたと思う。

我が儘に泣き喚いたと思う。

 

 

「…聞いてもらってごめんなさい、少しは気が楽になりました」

 

自分の声が随分と声が嗄れてしまってるなと何となく思いつつ、黙って全部を聞いてくれてた境さんの様子を伺う。 

 

「…ありがとな、教えてくれて」

 

泣きそうな顔をしていた。

 

「遅くなっちまったし、帰るか」

 

決意に満ちた顔をしていた。

 

「んじゃ、送るから帰ろうぜ」

 

そして、優しい顔だった。

 

 

 

 

 

次の日、少し軽くなった心も、また通学と共に重さを増していく。

 

今日もまた、地獄が始まる。

 

 

 

そして、昼、意味がわからなかった。

 

『始まりましたお昼の放送。担当しますはジャックしました境と』

『同じくジャックしました、サッカー部のキャプテンでお馴染みの葵でお送りいたしま~す』

 

いえーいとハイタッチでもしたような音がスピーカーから聞こえてくる。

 

ってえ?

 

なんで境さん?それに葵先輩??

 

理解が追い付かない私と、噂のイケメンの境さんに、校内で男女共に人気の厚い葵さんのコンビの放送で色めき立つ教室。

 

ってかジャックって?放送委員の人いませよね?

 

『それでは早速お便りのコーナーからやっていきたいと思います!今日は人気絶大のサッカー部キャプテン様がゲストと言うことで、沢山のお手紙をいただいております!』

『うっし、バッチコイ』

『それでは1通目!』

 

お便りコーナー?

そんなコーナーもともとなかったよね?いつもは給食のメニューの紹介と小話、音楽を流すくらいだよね?

ってそもそもなんでお便り届いてるの!?

 

『PN.先輩を殴り飛ばした男さんより、校内で男女共に人気の葵先輩に質問です。最近、まさかの女の子告白をしたそうですが、その詳細を教えてください!っとのことです』

 

周りの視線が私に集中し、背筋に冷たいものがはしった。

 

『ハハハ、これはまた突っ込んだ質問が来ましたね』

『そうですね、校内でも随分と噂になっていましたから、気になるリスナーも多かったんでしょうね』

『それでは隠すことなく答えましょう。その子との関わりはなかったのですが、偶然図書室で見かけたんですよ。あれは授業の課題だったのかな?複数人で大机に集まって、調べものをしながら発表用のポスターを作ってたんだ』

 

その出来事を私は覚えている。

確かあのときは…

 

『気になってみていたらね、グループの子がどんどん用事があるといって帰ってしまって、最後はひとりの子に押し付けてみんないなくなっちゃったんだよ』

『それは酷いですね、その子はその後、どうしたんですか?』

『ひとりでこつこつと作業を進めていたよ』

『投げ出さなかったんですね』

『そうなんだよ。それをみて俺はその子に憧れたんだ』

 

ま、それで逸って告白してフラれたんだけどね

 

そういって笑う葵先輩。

あの告白の裏を知れ、あのとき感じた恐怖が申し訳なく感じ、見ている人がいることに嬉しさを感じた。

 

『フラれたことについてどう思ってますか?』

『フラれて堪えないってことはないさ…でもね、それは俺の魅力が足りなかったからであって、断じてその子のせいじゃない』

 

『だからもし…その子に逆恨みを、やっかみを、嫉妬を向けるなら』

 

 

 

 

『『必ず、俺達がブチのめす』』

 

 

 

 

『ってな訳で覚悟はいいか?』

『俺達は本気だぞって宣言でした』

 

『以上でお昼の放送を終わります。メインパーソナリティは私、木製バットを蹴り折れる境と』

『ゲストのスパイクシューズで蹴る覚悟を決めている葵でお送りしました』

 

 

その言葉を最後にぶつんっと音を立てて切れた放送。

 

その後には、顔を青くし震える生徒が残った。

 

 

そうして私は救われた。

 

 




自分で書いてて胸くそ悪くて吐きそうになりましたわ…

って訳で色々考えた結果オリキャラを追加。
主人公たちより一歳上の先輩で、このときはサッカー部キャプテンで、今は星朋大のサッカーサークルで汗を流してます。

フルネームは葵孝樹(あおいこうき)
そこいらの芸能人よりイケメンで、勉強もスポーツもできるスペック高過ぎさん。
ただし、恋愛はコクられるよりコクるタイプで、さらに好感度とかの積み上げもせずに「あ、やべ、好きだわ」ってなったら即告白するタイプ。
そのためか告白の成功率は低め。
今回のことで主人公の友人枠に収まりました。


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感想、お気に入り登録いただきありがとうございます。
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