Amnesia Ghost   作:ワッタン2906

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どうも、ワッタンです。

本当だったら先週投稿だったんですが、体調不良で今週投稿です。
いやはや、ごめんなさいです。

それでは第十三話をどうぞ!!


第十三話 寂しさ

 

どちらかというと朝ごはんはパン派だ。別に深いこだわりは無いのだが、昨日の残り物の割合がどちらかというと和食より洋食の方が多いから、必然的に洋に合うパンが朝飯の主食に優先されるだけの話。

 

でも今日は違った。

今、俺の目の前にはご飯に味噌汁、そして朝から絶対に自分がやらない焼き魚が食卓に並んでいた。その光景は丁度、一ヶ月前の沙綾が作ったペペロンチーノが食卓に並んだ光景と重なる。結局また俺は、沙綾が料理を作るという申し出に折れていた。

 

「あのー、沙綾? 流石にこれは張り切り過ぎじゃないか......?」

 

『えー、そうかな? 』

 

「少なくとも朝から焼き魚は、余程時間がある時じゃないとしないよ普通」

 

焼き魚を箸でつまみ口に運ぶ。絶妙な塩加減の味はは朝の体によく染み渡った。

沙綾はというと朝食を作るのに使った料理器具の洗い物をしていた。

 

『あー、それはあるかもね、でもその魚の消費期限、明日までだったから良いかなーって思って』

 

「へっ、そうだったのか? 」

 

『うん。それに、作りたかった物もあったからさ』

 

そう言いながら、朝食とは別にとある皿を出してきた。そこには、おそらく今俺が食べたであろう魚。それが解された物が入っていた。

  

「これは?」

 

『えっとね、クロも食べるかなーって思って、ほら死神とか言ってるけど猫だし』

 

そんな会話をしたあと、二人でリビングのソファーへと視線を向ける。そこにはまだ気持ちよさそうに寝ているクロの姿。

 

『...食べてくれるかな? 』

 

「どうだろうな、さっきの様子を見てると、『猫扱いしないでくれにゃ』とか言いそうだけどな」

 

下手なクロの真似で沙綾の質問に答える自分。でも、そんな言葉を言っても最終的には食べてくれそうな気はする。沙綾もそんな俺の思考と同じ結論に辿り着いたようで、クロを見る顔が和ぎ──

 

『そうだね』

 

そう呟いたのだった。

 

 

『全くこんなの食べるわけないにゃ。俺は死神なんだから...でもまあ、折角作ってくれたんだから食ってやるにゃ』

 

『ふふふ、どーぞクロ』 

 

そんなどこに需要があるか分からない、ツンデレを発揮した後沙綾が用意した魚を食べるクロ。そして食べ始めると同時にクロの尻尾が大きく横へと揺れていた。猫の尻尾が大きく揺れるのは安心している証拠。

 

「そう言っている割には尻尾が揺れてるんだが? 」

 

『こ、これは、あれだにゃ。そう、生理現象だにゃ、俺はご飯を食べる時は尻尾が揺れるんだにゃ』

 

全くといってもいいほど、クロの言い訳は説得力がなかった。死神猫という自分の中では凄いと思っていたイメージが、徐々に『ツンデレな猫』というイメージに変わっていくの感じるが、俺はツンデレ猫のクロではなく死神猫のクロとして話しかける。

 

「まあ、そういうことにしとく。で、悪いんだけど食事しながら聞いてくれ」

 

『ん、なんにゃ? 』

 

もぐもぐ、魚を食べながらこちらを見るクロ、どうでもいいがその顔に解された魚がべっとりと付いていたので、そばに置いてあったテッシュでそれを拭き取った。

 

「...これはあくまでも俺の推測なんだけど」

 

そう前置きをしてからクロへとある事を告げる。今から話す内容を聞くのが何もしらない俺の立場だったのなら、顔をしかめると思う。現に沙綾の表情は少しだけ驚いたような表情をしていた、俺が言った内容それは。

 

──沙綾の記憶と俺の夢がリンクしているという事だ 

 

『...ふむ』

 

昨日の夜寝るまでに考えていたことを全て告げ終わると同時に、魚を食べ終わったクロ。今度はちゃんと綺麗に食べたらしく顔はそこまで汚れてはいなかった。

 

「どう思う、クロ?」

 

『そうだな......お前は何で山吹沙綾が見えるようになったか分かるかにゃ?』

 

「理由?」

 

その言葉に首を傾げる、沙綾の方も見ると首を降っていた。そもそも幽霊が見えるようになるのなんて、論理的な理由があるのだろうか、大抵は偶然──と思っていたのだが、その俺の疑問をクロにぶつけた所、ただ一言「ある」そんな答えが返ってきた。

 

「えっ、あるの? 」

 

勿論、驚く俺。

 

『よく波長があったら幽霊が見えるようになるって言うだろ、それと一緒だにゃ』

 

「...その話って本当なのか!? 」

 

『まあ、ちょっと中身の理論は違うけどにゃ。だから、山吹沙綾の記憶を夢として見れる可能性はあるかもしれない、けどそう言った事は聞いたことがないけどにゃ』

 

クロの言葉に暫し考え込む。

これは少し前進したのだろうか。正直この話をクロに告げるまでは、この夢の事が沙綾の記憶に関係するとはそんなに思ってもいなかった、沙綾が見えたからその夢を見た、ただの偶然だろうと。

だけどクロの発言から、それはもしかしたら偶然じゃないかもしれない、という事は。

 

『えっ、という事は。クロの発言が本当なら、希月君が私の夢を見たら、その夢が私の記憶が戻る手がかりになるっていう事?』

 

『まあ、そういう事もあるかもってことだにゃ』

 

今まで黙っていた沙綾が口を挟んだ。そして俺の思っていた事も代弁してくれた。でも、それに一つ重大な欠点がある。

 

「...でも、どうやって沙綾の夢を見るんだ?」

 

『それはまあ、色々と試すしかないんじゃない?』

 

『山吹沙綾の言う通りだにゃ。どちらにしろ時間がないの事実だからにゃ、だから早速試してみるにゃ』

 

クロがそう言うが、その言葉に嫌な予感しかしないのは何故だろうか。

何か途轍もないことをされそうな...。

 

 

 

『とりあえずお前らは一緒に寝るにゃ』

 

クロのその言葉がリビングへと響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『何で居るのかにゃ』

 

唐突に聞き覚えのある声が部屋に響いた、私は膝の間に挟んでいた顔をゆっくりと顔を上げ、声がしてきた方向へと顔を向けた。

そこに居たのは、窓の前でこちらを見ながら佇む、この前出会った死神猫だった。

 

『...クロこそどうして? 』

 

『言っただろ、仕事が終わったら合流するって』

 

そう言いながら私の隣へと座るクロ。

 

『窓開けた? 』

 

『いや、通り抜けて入った』

 

『ん、そっか。死神だからそんな事も出来るのか、凄いねクロは』

 

──うまく笑えていただろうか。

正直油断していた、まさかクロがここ来るなんて思わなかったからこんな姿を見せてしまった。そんな私の焦った気持ちを察したのだろうかクロが口を開いた。

 

『今、この場所に居るのはお前と俺だけにゃ、あの小僧も寝てるから大丈夫にゃ』

 

『...優しいねクロは』

 

足を伸ばしクロを黙って後ろから抱きかかえる、その間クロは黙って私のされるがままだった。

 

『ここにはよく来るのかにゃ? 』

 

『...うん』

 

『それは寂しいからかにゃ』

 

クロってエスパーなのかな、そんな事を思ってしまう。クロの言った事は本当で、抱きかかえる力が強くなる。そんな事をしても、クロは嫌がるそぶりを見せない。

 

『うん、私が幽霊って自覚した時は寂しくなかった。ああ、私幽霊なんだーって思ってた、でも──』

 

そこで言葉が詰まってしまう私。そんな状況でもクロは口を開かず、私の話の続きを待っていた。

 

『──でも、希月君と関わってから寂しいって思うようになったの、それと同時に消えるのが怖くなった、希月君と会えなくなるんだと思ったら...気付いたらいつもこの場所に居た、不思議なんだけどねここに来ると寂しさが和らぐんだ。』

 

希月君には悪いけど、自分の中の寂しさが我慢できなくなった時にお邪魔している。それが、いけない事は頭では分かってる、きっとこの事を伝えれば優しい彼は居てもいいよとは言うかもしれない、だけどただでさえ私の記憶を思い出させる手伝いをしてもらってるから...凄く申し訳ない気分になる。

 

『それに、クロの話を聞いてからは私が怨霊になるかもって思うと......余計にね』

 

自虐的な笑みを浮かべながら自分の弱い心を吐き出す。

すると、抱きかかえていたクロが動く気配がする。抱きしめていた腕を解きクロを解放してあげる。解放されたクロはその黄色の瞳で私の事をしっかりと見据えていた。

 

『...俺は死神だからそういった人間の感情を理解するのは疎い...だけど、俺はお前がそう思うのは悪いことではないと思うにゃ』

 

『そう...かな?』

 

『ああ、それにお前がそう思うのはヒトの心を失ってない証拠だにゃ、だからお前は絶対──』

 

──怨霊にはならない

 

その後、私はどう返したのかは覚えていない。

ただ分かるのは一つだけ。寂しさという氷が解け自分の心が温かったというのは覚えていた。




それでは、今回もお読みいただきありがとうございました。
感想、評価等貰えると凄くやる気出るので、是非とも清き一票を。

それでは、次のお話でお会いしましょう。

(虹々咲を最近ベッターで書いてるのです)

来週の更新予定

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