Amnesia Ghost   作:ワッタン2906

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どうも、ワッタンです。
沙綾お誕生日おめでとう!!
(一か月前)

いや、ほんとにすみませんでした。
書く暇が取れなかったんです。
本当は投稿したかったんです。

とまあ、言い訳はここまでにして、
第九話をどうぞ!!



第九話 瞬間

教室に備え付けられたスピーカーから、チャイムが鳴り響く。

本来なら昼休憩開始の合図だが、それに反して生徒達は、帰りの支度を始める。

それもそのはず、3日前から今日まで期末考査だった。

 

お金持ち学校とは言えど、そこは一般の高校と変わらない。

期末考査も中間考査も存在する。

 

そして、勿論、成績が悪ければ留年も有り得る。

ドラマや漫画などでは、保護者が学校にお金を払って、留年を取り消してもらう......というような描写があるが、実際はそんなことはない。

 

そもそもがここに在籍している学生のほとんどは、社長のご子息やご令嬢。つまるところ、幼少期から英才教育を施され、上に立つという自覚をしっかりと備えている生徒ばっかりだ。そもそもが素行不良などを起こさない。

 

しかしそれにも、例外がある。

それが俺だ。

 

「やっと終わった......」

 

答案が回収され、チャイムが鳴った後も俺はしばらく自分の席から動いてなかった。それもそのはず、ここ最近は試験一週間前にも関わらず、沙綾と一緒に記憶に関して色々としていたのだから。

 

勉強なんて期末考査が始まる前の土日しか勉強していない。

正直、期末考査の手応えはない。

かといって、赤点という程でも出来が酷くはないと思う。

しかし、こればっかりはまさに神のみぞ知るという状況。

なので早々に期末考査のことを頭から排除する。

 

「......と、こんなことをしてる場合じゃない、早く合流しねーと」

 

机に突っ伏していた頭をあげ、帰り支度を急いで始める。

よく見れば、教室に残ってるのは俺を含めて数人だ。

いそいそと、学校指定のカバンに筆記用具を収め教室を後にした。

 

──────────────────────

 

『あっ、やっと出てきた』

 

「ごめん、待ったか?」

 

「うん、結構ね....よっと」

 

正門の端に腰かけていた沙綾が、

俺の前へと飛び降りてくる。

 

「そっか、それはごめん」

 

『まあ、そこまで気にしてないから大丈夫だよ。それに面白いもの見れたし』

 

「面白いもの?」

 

『うん、みんな正門を出た瞬間から、車が迎えにきて帰ってるの見て、本当にそんな事があるんだなーって』

 

「あー、それは確かにそうかもな」

その事に関しては俺もびっくりした。

 

『連音君は車の迎えとか来ないの?』

 

「俺んとこは、来ないよ」

 

そもそも俺は、

 

──()()()()()()()()()()()()()()

 

これが根本的に此処の学校の生徒と違う理由。

俺は所謂、転校生だ。

去年の四月にこの街に、上京して来た。

 

今まではお金持ち学校などに在籍していたことはない。

つまり俺は、あの学校に通ってるやつからしたれ、普通ではないということだ。

だからよく言われることがある。

 

──あの会社の社長の息子なのに普通だね。

その言葉が、

俺に劣等感を抱かさせる。

 

 

その言葉は、重く、俺という人物にいばらのように深く絡みつく。

そして俺という存在を分からなくして、全否定させる。

その言葉は嫌だった。

 

『そうなんだ』

 

「ああ、それより早く行こうぜ」

 

『あ、うん。 楽しみだなぁ、水族館』

 

「....うん、そうだな」

 

そう言いながら隣を歩く彼女は、

誰から見ても一目で笑顔と分かるような顔をしていた。

 

先週の土曜日。

沙綾の記憶を取り戻す為に、二人で考えた作戦。

それは、至ってシンプル。

色々な場所に行ってみるということだった。

 

現状分かっているのは『頭が痛くなると記憶を思い出すという』この一点のみ。

そしておそらく、訪れた場所で記憶を思い出すことは一回だけしかできないと思う。

それだったら、『やまぶきベーカリー』の件も納得がいく。

 

ということで自ずと結論は、

『色々な場所を訪れて、沙綾の頭が痛くなる場所を探す』

という結論になった。

でも俺は....、沙綾が苦しむ姿を見たくはないと思ってしまう。

それに一つだけ危惧することが.....。

 

『希月君?』

 

「....あ、ご、ごめん。ちょっとボーっとしてた」

またやってしまった。

ここの所、沙綾の記憶の事を考えすぎて、物思いに耽ってしまう。

 

『......もしかして、水族館行くの嫌だった?』

こちらの顔を覗き込みながら、沙綾が遠慮がちに聞いてくる。

 

「え、いやいや、そんな訳ないって!!」

ブンブンと慌てて、頭を振る。

そんなわけがない。

 

『...ほんとに?』

 

「ほんと、ほんと、それに俺さ、水族館行くの初めてなんだよな。 だから正直ワクワクしてる」

 

『えっ、そうなの!?』

今度は先程とは違い、驚いた表情でこちらに言葉を投げかけてくる。

 

「うん、その....小さい頃は色々あって田舎の方に住んでたから、そういう場所に行く機会がなかったんだよな。それにこっちに来てからは、生活環境に慣れないといけなかったからね」

 

『へー、そうなんだ。じゃあ、今日はいっぱい楽しまないとね!!』

 

「....うん、そうだな」

 

『じゃあ、早く駅に行こ!!』

 

再びご機嫌になった沙綾はそう言うと、目的地の駅へと向かいだした。

「そんなに焦らなくても、水族館は逃げないよ」そう沙綾の背中に声を掛け、沙綾の後を追った。

さっきの笑顔にドキリしたのは内緒だ。

 

──────────────────────

 

水族館から出ると、真っ赤な夕日が俺たちをお出迎えした。

そして夕日に照らされながら、海岸沿いの道を歩く。

 

『いやー、楽しかったね!! 希月君は楽しかった?』

 

「うん、楽しかったよ。あんな感じなんだね、水族館って。 テレビとかで見るのとは大違いだったよ」

 

水中の泳いでる魚を見れるようにした水中トンネルや大型水槽。

そしてここの水族館の目玉。

ペンギンのエリアでは、大きなプールを上から見下ろすことができ、下の階に降りれるような作りになっていた。

そして下の階からは、目の高さで水中を泳ぐペンギンを見ることが出来る。

どれもが、俺の目には新鮮に映り、柄にもなく少し騒いでいたかもしれない。

 

『そっか、確かに希月君、目を輝かせてたもんね 』

 

「えっ、ほんとに?」

 

『うん、まるで餌を前にした子犬みたいな目をしてたよ』

 

俺は犬か!!

そう心の中で突っ込が口にはださない。

その代わり、別の事を、今日の目的の事について話す。

 

「....記憶、戻らなかったな」

 

『え? ああ、うん。そうだね』

 

今日の水族館では、沙綾に頭痛は起きなかった。

なので、今日の出来事は楽しかったが結果的には空振りだった。

 

『まあ、でも楽しかったから。私はそんなに気にしないよ。希月君は違うの?』

 

「.....違わない」

 

『でしょ? それに私思うんだ』

 

沙綾がそう言うと、ビーチ沿いの道から外れ、

砂浜の方に降り立ち、夕日に照らされている水平線の彼方を見つめていた。

 

『....私は記憶を取り戻す以前に、瞬間瞬間の思い出をしっかりと、作っていきたいと思うんだ』

 

海風が沙綾の髪を揺らす。

揺れる髪を沙綾がしっかりと手で抑える。

 

『それに、希月君も気づいてるんでしょ?』

 

「えっ....」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()

 

世界から色が失う。

 

──今、何を言ったんだ彼女は?

 

沙綾の言葉を皮切りに世界が固まってしまったんじゃないかと錯覚してしまう。

 

「その反応、図星だね」

 

彼女がどこか寂しく呟く。海の方を向いている為に彼女が今どんな表情をしているのかだ分からない。

波の音がやけに辺りに響く。

色が失った世界の中、ただ彼女の背中を見詰める。

 

....彼女の言う通り図星だった。

沙綾の記憶が全て戻ったら最悪の場合、

 

この世から彼女は消えてなくなるんじゃないか?

フィクションの物語みたいにこの世の未練が消え成仏するみたいに。

 

いやそうでもなくとも、

いずれ俺の前からふらっと消えてしまうのではないか?

そんな仮説が俺の中で出てきていた。

 

どこか頭では理解している。

永遠というものは存在しない。

これはあくまで可能性の話だとは分かってる。

だけど、もし。

 

俺が危惧した通りの最悪の結末になった時に俺は....

 

「...気づいてたんだ」

 

どうにか言葉を絞り出す。

相変わらず、世界は色を失ったまま。

 

『うん、それに希月君、他にも悩んでいるでしょ? 』

 

「っ.....」

 

またもや図星だった。

それはあくまで家庭の問題。

そのことを彼女の前で話した事はなかったのが俺から何か感じ取ったのかもしれない。

 

「それも気づいてたんだ....」

 

『それは、カンだけどね。....今はそれについては聞かないよ、今は私の事についてだけ。だから、言わしてもらうけどね』

 

そこまで言うと、水平線を見ていた沙綾がこちらへと近づいてくる。

徐々に俺との間が縮まる。

両者の間が三十センチぐらいの間になった。 そして....。

 

『希月君のアホ』

 

「え、沙...って、いへへ!?!?」

 

俺の頬っぺたを両手でつねってきた。

 

つねられてる場所からは、温かさではなく冷たさが伝わってくる。 

怒っているのか、段々とつまむ力が強くなってくる。

そしてそのまま、沙綾は言葉を続ける。

 

『私はね、確かにこの世から消えるのは嫌、でもそれはあくまで可能性の話でしょ。だから、そんな不確定な要素に躍らせてネガティブになるよりかは、私は最後まで笑っていたいの、記憶を失っていたとしても「山吹沙綾」として恥じないように生きていたいの、だからね希月君....』

 

そこまで言うと、俺の両頬から手を離した。

 

『そんな事を考えずにさ、今を一生懸命生きようよ。 その方がきっと笑って生きていけるよ』

 

笑いながら沙綾はそう言い放つ。

 

その言葉に息をのむほどの驚愕に襲われる。

そうか、凄く単純な事だった。

と同時に、世界が急速に色を取り戻していく。

我に返ったというのは、こういう状態なのかもしれない。

 

全ては可能性の話だった。

あくまで未来がそうなるとは限らない。

人間は後悔をしながら、劣等感を抱きながら生きていく生き物。

どうしても『未来』という不確定要素の踊らされ、迷い、葛藤していく。

 

だけどそれは、

 

──()()()()()()()()()()()()

 

後悔をしないように....劣等感を抱かせないように、沙綾の言う通り瞬間を必死に生きればいい。

そうすれば、少なくとも今の不確定な未来に怯えている俺よりかは、マシな自分へと、未来へと変われる。

 

「....そうだな。ありがと、沙綾」

 

それを今、気づかされた。

沙綾の言葉によって。

 

『うん、分かってくれたなら良かった』

 

 

そう言った彼女の笑顔を、真っ赤な夕日が照らす。

その姿は電車に乗る前に見た時の笑顔よりも、展示されている綺麗な模様を持った魚よりも、今日一番目が惹かれた。

 

『それじゃあ....帰ろっか?』

 

──────────────────────

 

 

 

そこにその者はいた。

そこはかつて、木から落ちそうになった白い子猫が助けられた場所。

その者はなにが面白いのか、その木の上をジッと見つめ、やがてゆっくりと彼は、その場所から離れる。

その時に、彼は人とすれ違う。

そしてすれ違った人が一人言を呟く。

 

 

「こんなところに、黒い猫なんていたかしら?」




ということで、水族館デート?
みたいな話でした。
ほんとはこれを誕生日に投稿したかったんだ.....。

さて、次でいよいよ節目の十話です。
次は最後に出た謎のキャラがでる予定なのでお楽しみに。
(ああ、どんどん異端になっていく.....)

それでは、今回もお読みいただきありがとうございました。
感想、評価等貰えると凄くやる気出るので、是非とも清き一票を。

それでは、次のお話でお会いしましょう。

(美咲のフィギュア買いました)

過去一書いてて楽しかったキャラ登場

今週はお休み

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