暖かい日が
増えてきた今日この頃。
「_______み」
なんだ?
「______か_____み」
誰だ?
「大丈夫かい、きみ」
重い瞼を開けると、見知らぬ天井と見知らぬ人が目に入った。
やばい。
飛び起きた秋明はその人から逃げられるよう準備し、相対した。
「ごめんごめん、驚いたよね。山で倒れていたのを見つけて、運んできたんだ。僕は光直治。ここで陰陽師をしている者だ。」
まずい
いや、待て
我は人間だ、問題ないはず
「…出雲秋明。」
体勢を変えず、警戒を解かずにそれだけを言い放った。
すると直治は少し驚いた後、顔を綻ばせた。
「君が秋明くんか、堅剛さんから話を聞いたことがあるよ。まさか人間だったなんてね、少し吃驚してしまったよ。」
「じいちゃんを知ってるのか?」
「知っているも何も、仕事仲間さ。僕ら陰陽師は妖怪でも凶暴化した妖怪、いわゆる狂怪を魔祓いをするんだ。妖怪団も定期的に百鬼夜行をするだろう?あれもやっていることは同じさ、だからすぐに祓わなければならない狂怪を堅剛さんの連絡で知らせてもらっているんだ。」
「そうなのか、少し安心した。」
秋明にこれまでの疲労感が襲い、へなへなとその場に座り込み、項垂れる。
「ははっ、その様子じゃご飯も食べていない様だね、こちらで用意するから、きみの話を料金代わりに聞かせておくれ。」
そう言ってテキパキと料理を作り、秋明と直治は食卓を囲んだ。
そして秋明は妖怪として育てられていたこと、そして今日、自身が人間だったことを知ったことを話した
「なるほどねぇ。でも、その齢で堅剛さんの鍛錬についていけるのは凄いことだ。きみは人里に下りたら人の弱さに驚くだろうね。」
「でも、我、妖怪の中じゃダメダメだよ。」
「…もし、人里に下りるなら、生活は保証するよ。まあ、僕の仕事の手伝いになるんだけど。それでもきみは妖怪の中生きるかい?」
「…我は、まだじいちゃんの元で強さを求めていきたいよ。でも、身体は妖怪よりも強くはならないし、妖力んでしょ?我は、強くなりたい。」
「きみがそう思うならそれが一番いいんだろう。ところでだ。きみは強くなりたいと言ったね。強さというのは何も力だけではないんだ、技や呪術、人間の方が妖怪よりも器用だからね、選択肢が色々あるんだ。」
「じゃあ、我に出来るものはあるのか?」
「きみが積み重ねてきたものを有効に使うとすれば、僕が教えられるのは『狩舞鬼』だ。これは僕の先祖で呪術や祈祷が出来ない人が編み出した体術のひとつでね、狂怪の悪心を打ち砕き、改心させるための技なんだ。」
どくん。
我は暗い洞窟の中に見える光明を発見した。
「我、それ、やりたい。そして、妖怪の中でも生きていける力をつけたい!」
「わかった。僕が責任を持って教えよう。ただ、狩舞鬼で大切なのは慈悲の心だ。くれぐれも忘れないように。稽古は毎日、早朝からだ。堅剛さんにちゃんと言うんだよ。」
そう言って直治は松明と人型の紙切れに何かを書いて秋明に渡し、紙は式神といい、堅剛の家と直治の家の間を案内することを伝えた。
「ありがとう直治さん、我おかげで吹っ切れたよ。明日からよろしくお願いします。」
そう言って元気に走っていった秋明の背中を見つめる直治の瞳には、ある男の姿が重なって見えていた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
堅剛の家の前までたどり着いた秋明は中々戸を開けられずにいた。
飛び出してしまった以上、出て行けと言われても何もいえない。
木々が夜風に煽られ騒がしい。
自分の責任は取らなければいけない。
そう思い秋明は戸を開けた。
堅剛と雅が並んで座っている。
「…ただいま。」
「「…おかえり。」」
秋明は不安が杞憂だったようで胸を撫で下ろす。
「じいちゃん、我、直治さんのとこに居たんだ。我のことを話した。そしたら狩舞鬼のことを教えてもらった。我、じいちゃんの鍛錬もしっかりこなす。人間でも、妖怪より強くなる。だから、俺は妖怪として生きるよ。」
「そうか、直治と会ったのか。…わかった。今まで以上に厳しくなる。ただ、条件がある。半年後、若い妖怪たちで関東妖怪団への派遣隊を編成するための力比べが行なわれる。それで派遣隊に選抜されなければ、鍛錬をやめて、ここで平和に暮らせ。…いい忘れておったが、秋明、帰ってきてくれてありがとう。」
「秋明、あたしたちは秋明のことを家族だと思ってるよ。どんな結果でもあたしたちは秋明を応援するよ。…さ、今日はもう遅いし、そろそろ寝なさい。おやすみ。」
秋明は溜まった疲労に気づき、倒れる様に布団に潜った。今日の濃密な経験を忘れないことを心に決め、意識を手放した。
翌日の早朝、快晴の下、体に酸素を行き渡らせ、希望と共に駆け出した。
家族という存在
疑問を持ったことは
ありますか?