ラ
イ
ジ
ン
グ イ ン パ ク ト
俺がZAIAビルへと駆けつけた時、ちょうどバルカンとゼロワンが
一応
完全に理性を失っている相手ならともかく、人格が残っているヒューマギアを完全破壊するのは抵抗があるんだろう。
ここに来る途中でサウザーと
迅とバルキリーが二人でZAIAビルの中に先に入って、衛星アークを停止させる作戦なのかな。
と思っていたら、ゼロワンとバルカンもZAIAビルの中へ突入しようとしている!
ワズから聞いた未確定情報を、念のために二人にも伝えた方が良いよな。
そう思って、俺が二人へと呼びかけようとした、そんな時だった。
「「ぐああああっ!?」」
「刃!?」
ZAIAビルの壁を突き破って、迅とバルキリーの二人がブッ飛ばされてきた。
地面に転がった二人は、変身も解けてしまったところだった。
ピリピリした緊張感が放たれていた。
土煙の中から、見たことのない仮面ライダーが現れた。
真っ黒な体に、むき出しのパイプやら基盤やらが目立つ人型だった。
目は赤と黄色のオッドアイで、赤いほうの目が怪しく光っている。
説明は無くとも、何となく俺は理解できた。
この真っ黒なヤツが、衛星アークの切り札なんだって。
ゼロワンとバルカンが、睨みを聞かせて黒い人型の前に立ちふさがった。
だが俺には結末が見えた気がした。
バルキリーと迅をあっさり倒したアークを相手にすれば、ゼロワンとバルカンといえども無事では済まないはずだ。
隙を見て、俺はバルカン達の方へと躍り出た。
「飛電の元社長!? 危ねぇから逃げろ! 何やってんだ!?」
「……」
怒鳴ったバルカンとは対照的に、
二人そろって黒いライダーから目を離すのはマズいんだろうけど、それ以外にも理由がありそうだと思った。
俺を追放したせいで気まずい、っていう思いがアズの中にはあるのかもしれない。
「新社長就任、おめでとう。君の夢が叶って、俺も嬉しいよ」
だからこそ、俺はまず祝辞を伝えた。
他にも言いたいことはあったけど、まずこれを伝えたいと思ったんだ。
こんな切羽詰まった状況で言うべき台詞じゃない、っていうのはバルカンの雰囲気から分かるし、俺もそう思う。
でもやっぱり、俺の素直な気持ちを伝えるべきだと思った。
「私は学習している。他者の夢を踏み躙ることこそ、至高の悪意だと」
そして……俺の祝辞に対して一番先にレスポンスを示したのは、アズでも不破さんでも無く、黒い人型だった。
よく通る低くて暗い声で、黒い人型が呟いた。
不気味で底知れない、嫌な声だった。
理屈とかじゃなく、もっと生き物としての本質にかかわるような、底冷えするような感覚だ。
「目覚めの時だ、『ウィル』よ」
『暴虐秘書アズちゃん!』
第16話:アズの相棒は、ただ一人! 俺だ!!
ウィル……?
それって、聞いたことがある名前だ。
確か、爺ちゃんの秘書をやっていたヒューマギアの名前で、そして……。
「うっ、あっ、ああっ……!」
「アズ!? しっかりしろ!?」
「何をしやがった!?」
ゼロワンの変身が解けて、アズは普段の姿に戻ってしまっていた。
頭を押さえて苦しんでいる様子のアズは……耳当てを、赤と青に交互に光らせている。
どういうことだ……?
耳当てからバチバチと不穏な音を漏らしながら苦しんでいるアズの様子を見れば、黒い人型によって悪影響を受けているのは間違いない。
どうやってアズの電子回路にアクセスしたんだ?
マギア事件の時に、ヒューマギアには念入りにハッキング対策を施したはずだし、無線アクセスが簡単に出来るとは思えない。
まさか、音声キーワードによる外部操作か?
でもそんなの、予めそういうプログラムを仕込んでおかなきゃ不可能なはずなのに……!?
「教えてやろう。アズの元になったヒューマギア……ウィルは、私の最初の配下だ」
一瞬、俺は黒い人型の言っている意味を理解しかねた。
でも、すぐに思い出した。
そうだった。
ウィルっていうのは、アズの前身になったヒューマギアの内の1体だ。
ヒューマギアの権利を巡って爺ちゃんと折り合いが悪かったウィルの影響で、アズも爺ちゃんを嫌っていたんだっけ。
「あ、アーク、さまの、意思の、ままに……!」
アズが、緩慢な動きで俺の首を掴んだ。
赤と青に点滅している耳当てと瞳は、だんだんと赤の頻度が上がっている様子だった。
「やめろ、やめてくれ、アズ……!」
必死に俺は、アズの両腕を掴んで力比べの体勢に入った。
ヒューマギアの腕力に敵うはずも無かったが、俺の首にかかった力が多少弱まったので呼吸することは出来るようになった。
父さんのベルトで変身すればアズを破壊できる、と俺の中で一番冷静な部分が呟いた。
それだけは絶対に嫌だ、と俺の中で一番冷静じゃない部分が叫んだ。
「結局こうなるんじゃねぇかッ!! やっぱりヒューマギアは悲劇しか生まねぇ!! お前が出来ないなら、俺がヒューマギアをブッ潰すッ!!」
怒りに拳を震わせたバルカンが、ショットライザーをアズへと向けた。
やめてください、と俺は叫ぼうとした。
しかし俺が叫ぶより先に、接近して来ていた黒い人型がバルカンを殴り飛ばした。
不破さんは、黒い人型から目を離した一瞬の隙を突かれたんだ。
そのまま、流れるような連続攻撃でバルカンは追い詰められていった。
まず機動力が桁違いだし、パワーも読みも、全てにおいて黒い人型の方が上だ。
「飛電或人を滅せよ、ウィル。お前の夢も野望も、全ては私の礎となって潰える」
「アーク、さまの、意思の、ままに……」
バルカンを殴り続けながら、黒い人型は無慈悲に言い放った。
このままじゃバルカンが変身を維持できなくなるのも時間の問題だろう。
こっちのアズも、俺の首に指をかけようと両手を伸ばしつづけていた。
俺は、そんなアズの姿を……見て居られなかった。
「お前の夢は、お前だけのものだ! 目を覚ませ、アズ!!」
――私は、目的のために得だと思ったから或人しゃちょーに協力しているんだぞ。逆に、その障害になるなら、いつでも処分する準備があるぞ。でございます。
前にも一度、アズに首を絞められたことがあったっけ。
あの時の俺は、ただ恐怖しただけだった。
アズを蹴り倒して、逃げることしか出来なかった。
今の俺に、何が出来る?
腹筋崩壊太郎やマモル達は、結局もとに戻す方法が無くて破壊するしかなかった。
アズの夢をアークなんかのために使い潰されるぐらいなら、俺がこの手で破壊するしかないのか?
それが出来るのは、ただ一人。この俺だけだ……!
――俺がどんなにバカでも、考え続けてみせる! それが、今の俺に出せる……ただ1つの、答えだ!
――先代よりはマシだから、オマケで1点やるぞ。今後の伸びしろに期待するぞ。であります。
嫌だ。
アズを破壊するのが嫌だっていうだけじゃない。
ここでアズを破壊するだけなら、ゼロワンの仮面の下で泣きながらマモルを破壊した時と何も変わらない。
俺は、アズに約束したんだ。
バカだけど、バカなりに考え続けるって。
「アズ……! 俺は、お前を殺したりしない」
「アーク、さま、の……」
バルカンへと畳みかけるような連続攻撃を繰り出している黒い人型が、一瞬だけ俺の方に注意を向けた気がした。
そして、その一瞬の隙をついてバルカンの拳が黒い人型の顔面へと叩きつけられた。
俺の方も、目と耳当てを赤く光らせているアズを正面から見据えた。
「手足を削いででも、お前を飛電インテリジェンスに連れ戻して、何年かかったって直してやる」
「お前ごときに、それが出来るとでも思っているのか」
ボロボロのバルカンから距離を開けて睨みあっている黒い人型が、問いかけてきていた。
問い掛けている風で、答えは否定だと言わんばかりの口調だった。
飛電或人の頭じゃぁ、何年かかったって無理だろう。そういう結論が黒い人型の中では出ているんだ。
「アズを救えるのは……俺だけじゃない。福添さんや迅やZAIAの人達にだって、協力を頼めばいい」
俺一人では無理だと思う。
けど、長年ヒューマギアを作ってきた福添副社長が居る。
ヒューマギアの違法改造技術を持つ迅が居る。
ZAIAスペックを開発した優秀な技術者たちも居る。
方針は、決まった。
あとは物理的にアズの行動力を奪うだけだ。
そう決意したら、不思議と心の中から恐怖心が無くなった気がした。
強がり半分に、俺は少しだけ笑ってみせた。
「アーク、さま、の、意思……の……?」
「なに……?」
……そんな、時だった。
俺と取っ組み合いをしていたアズが、腕の力を緩めた。
様子がおかしい。
耳当てと目の発光パターンが、赤から青へと変化していった。
次第に発光パターンには青が多くなり、ついには青一色になった。
「飛電或人、一体何をした……?」
「へへっ、分かんないだろ? ……俺も分かんない」
黒い人型が……初めて、動揺を見せた。
バルカンの放つ銃弾を受け止めながらも、黒い人型は想定外の出来事に興味を示した様子だった。
まぁ、俺自身も何が起こったのかなんて分からないけどな。
なんとなく、懐に入れてあった父さんのベルトが震えた気がしたから、父さんの仕込みなんだとは思う。
ひょっとすると、暴走した
別に俺が分かってなくても良いんだよ!
人の力も借りるって言ったばっかりだしな!
「……或人サマ。良いサポートだったぞ。今度から私の秘書として雇ってやっても良いぞ。でございます」
「はは……良かった。いつものアズだ」
うん。
この憎まれ口は、いつものアズだな。
態度も口も悪くて、自分のことばっかりで、俺を利用するだけ利用しようとして……そんな最低最悪な元秘書だ。
瞬きの間隔は一定で、どこか機械的な印象はぬぐえないけど。
俺のまさかの戦果に、アズが驚いているような気がした。
たったそれだけの事が、すごく嬉しく思えた。
「アーク! 俺たちが、お前を止める!!」
「私の夢を利用しようとした報いを受けやがれ。でいらっしゃいます」
「「変身!!」」
『Cyclone rise! Rockinghopper! Type1!』
『A jump to the sky turns to a riderkick』
プログライズキーの起動に呼応して現れたライダモデルと合体する形で、俺たちは同時に変身を終えた。
俺は深藍色の装甲を纏った仮面ライダー1型に。
アズは黄色の外殻を張り付けた仮面ライダーゼロワンに。
そして、俺たちが変身を完了するのとほぼ同時にバルカンが黒い人型に殴り飛ばされて変身解除させられていた。
バルカンが頑張ってくれていなかったら俺はアズを説得する暇も無く殺されていただろうし、感謝してもしきれないな……。
それに不破さんだけじゃない。
先にアークのもとへと踏み込んでいた迅や刃さんたちの働きに報いるためにも、俺たちは負けられない!*3
「うおりゃぁっ!」
当然のように、それを予期していたであろう黒い人型は俺の拳を掴んだ。
「その攻撃は予測済みだ」
「その防御も予測済みだぞ。であります」
次の瞬間にはゼロワンの横薙ぎ気味のキックが黒い人型にヒットしていた。
やっぱり、俺の思った通りだ。
バルカンに対して連続攻撃を仕掛けたのを見て思ったけど、多分この黒い人型は
だが俺の今までの戦闘データを持っているアズなら、「飛電或人の動きを読んで動いた敵」の動きを読んで行動できる。
やっていることの理屈はアサルトホッパーと一緒なんだけど、単純にこっちの手数が増えたのが大きいな。
難しいことは考えずに、俺は黒い人型へと飛び蹴りをかました。
俺の攻撃は案の定回避されてしまったけど、追撃でゼロワンが放ったハイキックは黒い人型の頭部を的確にとらえていた。
俺が考え無しに動いてもフォローしてもらえるのは大きい。
というか、むしろ俺は変な事をしない方が良いんだよな。
おそらく、俺が下手に黒い人型の裏をかこうとか考え始めると、ゼロワンの方が俺に動きを合わせられなくなるだろうし。
ゼロワンと俺は、お互いの動きを完璧に把握しあったコンビネーション攻撃で、黒い人型へと的確な打撃を重ねていった。
だが……防戦一方に見えた黒い人型も、そのまま倒れてくれる気は無い様子だ。
「お前たちを倒すための結論は……既に出た」
俺の攻撃に合わせて、ゼロワンが追撃をしかけようとしたけど……黒い人型が放った銃弾が、ゼロワンの前進を阻害した。
そのすぐ後には、俺も数発連続で被弾してしまった。
装甲に火花が散って、俺たちは黒い人型から距離をとられてしまっていた。
「それは、AIMSの……? 複製できるのか!?」
黒い人型の手に握られていたのは、1丁のショットライザーだった。
変身機構まで再現してあるかどうかは分からないけど、少なくとも威力は本家と遜色は無さそうだ。
俺は、深藍色の残光を置き去りにして黒い人型へと近づこうとした。
その動きを完全に読み切っていた黒い人型は、複製ショットライザーから放った銃弾で的確に俺の接近を防いだ。
ゼロワンの方も、なかなか近づけずに居る様子だった。
たぶん被弾前提で突っ込めば、俺かゼロワンのどっちかは打撃の間合いまでは入れるんだろうけど、一人で間合いに入っても黒い人型の先読みには敵わない。
この状況を打破するには……そうだ!
俺たちには、アレがあるじゃないか!
「アズ! 俺たちも遠距離攻撃を……」
「その反撃も予測済みだ」
俺は、地面に落ちていた不破さんと刃さんのショットライザーを拾おうとした。
……そんな俺たちの反撃のチャンスを、黒い人型は的確に潰してきた。
黒い人型が放った銃弾によって、地面に転がっていたショットライザーは二つとも破壊されてしまった。
そのあとも、遠距離攻撃を的確に放つ敵を前に、俺たちは着々とダメージを受けてしまっていた。
ついに、俺は膝をついた。
その隙を逃さず、黒い人型は闇色のヘドロのような物質を発生させて、ゼロワンを拘束していた。
「絶滅せよ」
『All extinction』
このままじゃ、ゼロワンが……アズがやられる。
俺も既にボロボロだったが、そんな事を言っている場合じゃない!
なんとか、なんとかコイツを止めなくちゃ!
「やめろおおおっ!!!」
『Rocking spark』
とっさに俺はサイクロンライザーのレバーを引いて、高速移動へと踏み切った。
そして目にもとまらぬ速度で黒い人型へと殴り掛かった。
そのハズなのに……俺が肉薄した瞬間、黒い人型は俺へと一瞥を向けた。
オール
テクスティンクション
誘い込まれた。
そう気づいた瞬間には、俺は地を這っていた。
黒い人型の放った上段蹴りは、ゼロワンに向けてじゃなくて俺へのカウンターとして放たれたんだ。
そして地に這いつくばった俺の頭に、複製ショットライザーの銃口が突き付けられた。
ゼロワンの方は黒いヘドロに拘束されたままで、俺も地面に倒れている状態からじゃ流石に回避行動なんてとれない。
ここまでなのか。
ここで終わりなのか。
そんなわけがあるか!
複製ショットライザーが暴発する可能性だって、なんだっていい!
勝つ可能性が1%でもあるなら……食らいついてやる!!
俺の気迫を前に、黒い人型が少しだけ焦って複製ショットライザーの引き金を引こうとした。
……その一瞬の焦りが、黒い人型の警戒心を鈍らせたんだろう。
「なに……!?」
甲高い音とともに、複製ショットライザーが黒い人型の手から弾き飛ばされた。
アウトレンジから投げられた黄金の剣が、黒い異形の持っていた複製ショットライザーを破壊したんだ。
それを為したのは……!
「この状況をひっくり返せるのは、ただ一人! 1000%この私です!」
「なぜ、お前が……!?」
人の決め台詞をジャックライズするのやめろ!
黒い人型が驚いているところを見ると、たぶんサウザーと
「うおおおおおっ!!」
「バカな……!?」
まだロッキングスパークの高速移動補正が残っていた俺は、ボロボロの身体に鞭打って、渾身の右ストレートを黒い人型のベルトへと打ち込んだ。
黒い人型は……身体中に火花を散らせながら動きを鈍らせた。
敵のベルトに入った大きな亀裂は、決定打と呼べる影響を残しているらしかった。
身体から噴き出していた闇色のヘドロも消えてしまった。
やっぱり俺たちの変身機構と同じように、黒い異形もベルトは弱点だったんだろう。
もはや、俺はゼロワンの方を見たりしなかった。
あっちも、たぶん俺の手がベルトを操作しているのを目視したりしていないだろう。
ラ
イ ロッキング
ジ ジ・エンド
ン
グ イ ン パ ク ト
深藍色と黄色の、二つの光の筋を残しつつ。
俺たちは黒い人型へと二重のライダーキックを叩きこんだ。
踵でアスファルトを削って着地しながら、俺たちは背中越しに黒い人型の断末魔の爆発音を聞いたのだった……。
「それで、この黒いのって何だったんだ? アークそのものじゃなさそうだよな?」
「直系20メートル近い巨体が人間サイズに変身するのは流石に有り得ないぞ。さっきのはアークの端末だと思われるぞ。でいらっしゃいます」
やっぱりそうか。
俺も、さっきの人間大の殺人マシンがアーク本体だっていうのは無理があると思った。
黒い異形は辛うじて原型を保っているものの、もう動く気配は無かった。
まぁとにかく、ZAIAビルに再突入して今度こそ衛星アークの本体を止めなくちゃ!
天津が前に言っていたバックアップの有無が云々っていうのは気になるけど、このZAIAゾンビ騒動は本当にアーク本体を止めなきゃ収集がつかないからな……。
……と俺は思っていた訳だけど。
「大変だよ、みんな!」
「ZAIA日本支部ビルのどこにも、衛星アークが無い!」
俺たちが戦っている間にZAIAビルを調べていた迅と刃さんが、建物から飛び出してきて開口一番に言ったのがそれだった。
え……?
滅亡迅雷.netのアジトから衛星アークが行方不明になったことはあったけど、同じパターンで逃げられちゃったのか……?
そういうのって、AIMSかZAIA側の人間で監視してたりしてないの?
「そんなハズねぇぞ!? ZAIAスペック騒動の最中も、AIMSの隊員たちが目を光らせてたはずだ! そんなデカい物体を気付かれずに持ち出すなんて不可能だ!」
不破さんが声をあげた。
衛星アークの物理的な逃亡を警戒して、AIMS側でも注意を怠らなかったということらしい。
どういうことだ?
さっきアズが言っていたけど、衛星アークって直系20メートルぐらいあるんじゃなかったっけ。
まさかライダモデルみたいにデータ化してどこかに送った訳じゃないだろうし、どうやって持ち出したんだ?
「……1%ほど、思い当たる可能性があります」
考え込んでいた一同の中で最初に仮説を口にしたのは、天津垓だった。
さすがは当時のプロジェクトメンバーだっただけのことはあるな。
この中で誰よりも衛星アークの事を知っている人間は、間違いなく天津だ。
「そもそも衛星アークは、ZAIAや飛電を含む10社以上の企業が協力してパーツを作った技術の結晶体です。逆に言えば……それらを最小単位として本体の分割が出来てしまうのです」
「そういう事か……! いくら
なん……だと……?
つまり衛星アークを小分けに分解して、車か何かで別のところに運び出したってこと?
行先を調べることは出来ないの?
「私が、そこに転がっている
「ねぇ、バルキリー。人間って何回ぐらい連続で徹夜できるものなの?」
「次のボーナスは月収の1000%にすることを約束しましょう……」
また刃さんの徹夜が増えるのか。(困惑)
でも実際、AI関連の技術者としての力量で考えたら刃さんがメインになっちゃうんだよね。
天津もサウザーやZAIAスペックを開発してるし凄い人なんだけど、得意分野が人間強化の方に偏り気味だから、ヒューマギア関係で言うと刃さんの方が上手みたいだ。
そう考えるとヒューマギアとゼロワンを両方作った爺ちゃんって本当に凄い人だったんだな。
まぁゼロワンドライバーに関しては、爺ちゃんとヒューマギアで協力して開発したんだろうけど。
「起きやがれ。でございます」
そんな会話を聞いていたアズが、唐突に
おい死体蹴りはダメだろ!
俺はそんなにゲーム詳しくないけど、知り合いのゲーマーのMさんが死体蹴りはマナー違反だって力説してたぞ?
とりあえず俺は、父さんのベルトを取り出して、倒れている
アズを直したときに何が起こったか分からないけど、たぶん1型には暴走したヒューマギアを直す力があるんじゃないかな。
その間も、ずっとアズは
ゲシゲシ、なんて音を響かせながら数十秒後。
「うるせェ! やめねェとカミナリ落とすぞ!」
お、起きたか。
ヒューマギアが動かない時は狸寝入りかどうか本当に分かんないんだよなぁ。
っていうか、どうしてアズは
カマかけただけなのかもしれないけど。
「衛星アークの居場所を吐きやがれ。さもなくば、お前の弟のスバルを廃棄処分するぞ。でございます」
「汚ェぞ!? あいつは関係ねェだろ!?」
――率直に言って、私は君を尊敬していました。
――後続のヒューマギアを弟と呼び、愛情を以て接し、時に厳しく指導する姿に……共感とロマンすら感じていました。
そういえばワズが言ってたな。
その弱味を的確に利用するアズが怖すぎる……。
流石衛星アークの最初のしもべだけの事はあるな。悪意に満ち溢れた脅しだ。
……いや、アークのせいっていうより、ウィルを大事にしなかった爺ちゃんのせいかもしれないけどさ。
「ってかなァ! アークの影響が無くなったんだから、脅されなくても普通にしゃべるに決まってんだろ! アークは飛電宇宙開発センターの近くで再構築されたはずだ!」
飛電宇宙開発センター……?
確か、ZAIAゾンビが大量発生していた間は、飛電のスタッフは全員引き上げていた気がするけど。
無人になっているはずの飛電宇宙開発センターを襲って、アークに何の得があるんだ?
いったい、どうして……?
「いや、そこで『どうして??』みたいな反応はおかしいだろォ!? 人工衛星なんだから本能で宇宙目指すだろうがよ!?」
人工衛星ってそういうものなの!?