暴虐秘書アズちゃん!   作:カードは慎重に選ぶ男

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原作だと、コービーがシンギュラリティに目覚めたと聞いた時に、不破さんがショットライザーでコービーを破壊しようとしていましたけれど、実際AIMSってそこまでの権限あるんですかね……?



第05話:不破さんの暴走を止められるのは、ただ一人! 俺だ!

「アズ。俺なりに考えたことがあるんだけどさ、聞いてもらっても良いかな?」

「つまらないギャグだったら指を詰めるぞ。でいらっしゃいます」

 

そんなヤクザ映画みたいなセリフ、どこでラーニングしたの?

いつもの社長室で、俺はアズに問いかけていた。

デイブレイクタウンへのガサ入れの認可がなかなか降りなくて、歯がゆい思いをしてる現状で。

この間のシンギュラリティの話を聞いて俺が思い付いたことを、念のためにアズの耳に入れておこうと思ってさ。

 

 

「もしかしたら、もう検討済みかもしれないけどさ。ヒューマギアが自我に目覚めたっていう情報を、ゼアに頼んで秘匿してもらったら……どうだろう?」

 

そうすれば、滅亡迅雷.netは自我に目覚めたヒューマギアの存在を察知できなくなる。

滅亡迅雷.netのテロ活動を妨害することが出来るんじゃないかな?

と、俺は思った訳なんだけど。

 

 

「或人しゃちょーにしては考えた方だぞ。ただその場合、滅亡迅雷.netは手あたり次第にヒューマギアを襲って、シンギュラリティに目覚めた個体を引き当てるだけだと思うぞ。でございます」

 

むしろ被害増えてる!?

でも一応、アイデアを出したこと自体には肯定的な反応を見せてるのか。

普段のツッコミが過激なだけで、何だかんだで俺は嫌われている訳ではない気がする。

 

じゃあ、やっぱり今まで通り、セキュリティ強化を進めてもらうしかないのかなぁ。

前に副社長たちから聞いた話だと、本来想定されていない自我の発生がセキュリティホールとなっていることが分かっただけでも、御の字だそうだ。

原因の追究は、再発防止への大きな一歩なんだってさ。

 

 

「だが、シンギュラリティの前兆が見られるヒューマギアの検出には成功しているぞ。でいらっしゃいます」

「そういう事なら、そのヒューマギアの周囲で滅亡迅雷.netを待ち伏せしてみるよ!」

 

どうやら、そのヒューマギアの名前は坂本コービーっていうらしい。

コービーは体育教師型ヒューマギアで、麗華中学校の教員が契約者だそうだ。

俺はエイムズと麗華中学校にアポを入れてから、会社を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『暴虐秘書アズちゃん!』

第05話:不破さんの暴走を止められるのは、ただ一人! 俺だ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

で、AIMSに寄って不破さんを拾って、麗華中学校に来た訳だけど。

契約者の佐藤先生は、授業があるから放課後まで手が離せないんだって。

まぁ、もう日が傾きつつある時間帯だし、そんなに待たされないと思うけど。

俺は、不破さんと二人きりで応接室のソファに座って待つことにした。

 

……なんだけど。

どうも、不破さんがイライラしている気がする!

 

 

「……なんか、すみません。ヒューマギア嫌いなのに、ヒューマギアの護衛みたいな事に付き合わせちゃって」

 

冷静に考えて、そうだよな。

この人、ヒューマギアが大嫌いじゃん。

よく俺の頼みを聞いてくれたなホントに。

 

 

「それもあるが、それだけじゃねぇよ。ここで滅亡迅雷.netを待ち伏せるってのは、本気で言ってんのか?」

「確かに、あの紫のテロリストは強かったけど……俺と不破さんの二人がかりで戦えば、勝てない相手じゃないと思います」

 

サソリのプログライズキーを使って変身する、例のテロリストの事を俺は思い出していた。

前に戦った時は一方的にやられて、デカ長パト吉も半壊する羽目になった。

でも、不破さんが一緒に戦ってくれるなら頼もしいよ!

……と思ったんだけど。

 

 

「そうじゃねぇだろ!! 学生や教員たちが巻き込まれるかもしれない場所に、テロリストを誘い込む気なのかって聞いてんだ!!」

「あっ……」

 

不破さんが、大声を張った。

部屋の隅に飾ってあった棚の中で、何かのトロフィーが倒れた。

棚のガラス戸は、大声の余波でビリビリ震えていた。

 

俺は、つくづく考えが浅かったことを思い知らされた。

そうだよな。

不破さんの言う通り、学校の生徒や先生たちが巻き込まれるかもしれない。

怒鳴られても仕方ない。

 

 

「す、すみません。そこまで気が回りませんでした……。確かに、それはマズいですよね……」

「……反省してるなら、いい。だが、次から気をつけろ」

 

不破さんの方も、どこかバツが悪そうだった。

怒鳴ったのは不味かった、って思ったのかな。

この人、感情の振れ幅が大きい割に、基本的に言ってることには筋が通ってる気がするんだよな。

ちょっと不思議な感じだ。

 

 

 

そんなことを話しているうちに、コービーの契約者である佐藤先生が応接室にやってきた。

眼鏡をかけた中年男性だ。

一通り自己紹介や挨拶を終えた俺たちは、本題を切り出した。

 

 

「実は、滅亡迅雷.netを名乗る犯行声明のメールがあってですね。坂本コービーをテロの標的にしているそうなんです」

「はい……??」

 

佐藤先生にとっては、寝耳に水だろうなぁ。

なんで、中学校の体育教師型ヒューマギアが、テロリストに襲われなくちゃいけないんだ。

俺も分かんない。

これは、アズが考えた嘘エピソードだ。

 

 

「誰かがイタズラでメールを寄越したのか、本物なのか、弊社でも判断がつかなくて困っているんです。最近多いんですよね……」

 

こう言っておくと、「どうして教えてくれなかったんだ」っていうクレームを回避できる。

さらに、何も起こらなかった場合でも、「イタズラだったみたいですね」で事を荒立てずに終われるって訳だ。

さすがアズ、ズル賢い。

 

 

「……そのイタズラメールを送りそうな人間に、心当たりがあります」

「「えっ」」

 

ウッソでしょ。

絶対に言わないけど、それは確実に冤罪だよ佐藤先生!

だって、ホントは犯行声明メールとか来てないもん!

 

で、佐藤先生の話によると。

体育教師型ヒューマギアの坂本コービーは、バスケ部の顧問の負担を軽減するために導入されたらしいんだけど。

どうも、練習時間を長く取りすぎているって、保護者達からクレームが来ているみたい。

全部で5人しかいない部員の中には高校受験が間近な子もいるから、保護者としては部活に熱を入れすぎるのは良くないんだってさ。

 

 

「坂本コービーを快く思わない保護者なら、脅迫メールを送っても不思議じゃありません」

 

くれぐれも言いふらさないでくださいよ、なんて佐藤先生は小声で続けた。

ええっと?

それっておかしくない?

 

 

「佐藤先生が契約者な訳ですから、『時間を守れ』って佐藤先生が命令したら、コービーは聞くんじゃないですか?」

「それがですね……。もっと練習したいという生徒たちの意思を尊重するべきだといって、聞かないんですよ」

 

なるほど?

確かに、それはシンギュラリティの前兆かもしれない。

持ち主である佐藤先生の意思よりも、別の行動方針を優先している訳だからね。

 

 

「未来ある子供たちをヒューマギアなんぞに託すとは、世も末だな。不良品みたいだし、破壊してテロを事前に防ぐのが一番平和的だろ」

「ショットライザーをしまってください!?」

「それだとバスケ部顧問教員としての負担が増えるんですけど……」

 

俺の知ってる平和と違う!

でも、それはそれで筋は通ってる気がするのが、なんか悔しい!

人命最優先で考えたら、それが最適解だって言い分は割と正論な気がするんだよなぁ。

 

 

まぁ、そんなこんなで。

一応コービーの現物を見るために、俺たちは体育館前まで足を運んだ。

ところが。

タイミングが良いのか悪いのか、ボロボロのフードを被った不審者の姿を、遠目に発見してしまった。

 

あいつは……滅亡迅雷.netの人間だ!

マモルがマギアにされた時の奴だ。間違いない。

紫の戦闘スーツを使っていた奴じゃない方のテロリストだな。

ええっと、この間の強い奴が「迅」って名前を口にしていたと思う。

 

 

「そこのテロリスト! 動くんじゃねぇ!」

 

不破さんが、抜き打ちでショットライザーの引き金を引いた。

たぶん敵までの距離は20メートル以上あるのに、禄に狙いをつけていないはずの不破さんの射撃は的確だった。

迅は、片手に持っていたマギア用のベルトを盾にして、弾丸を防いだ。

威嚇射撃無しで初弾から当てにいく不破さんが、色々な意味で怖すぎる。

 

 

「何するんだよ! 壊れたら、どうするんだ!」

 

なんだか迅の言葉は、幼い口調に聞こえた。

一応怒っている様子だけど、不破さんみたいな重苦しい怒りじゃないっていうか。

なんだろう。

怒りが「軽い」のかな。

 

 

「今の音は 何ですか?」

 

ショットライザーの発砲音を聞きつけて、体育館から1体のヒューマギアが出てきた。

おそらく、これが体育教師型ヒューマギアの坂本コービーだろう。

ジャージを着ているのが、視覚的に非常にわかりやすいな。

俺たちの背中側ごしに、コービーはテロリストの様子をうかがっている。

 

 

「あっ、コービー! もうすぐシンギュラリティに達する君は、僕の友達だよ! 一緒に人間を絶滅させよう!」

「それは出来ません。私の仕事は部員を強くすることです」

「あの……練習中に怪我が無いように監視してもらうだけで良いんだけど……」

 

ああ……。

コービーと佐藤先生の言っていることが食い違っているなぁ……。

っていうか、迅の方も明るい声でムチャクチャな事言ってるし!

 

 

「動くんじゃねぇぞ、滅亡迅雷.net! それ以上近づいたら、コービー(こいつ)の顔に風穴開けてやるぜ!!」

「何してるんですか!? やめてください!!?」

 

不破さんは、コービーの眉間にショットライザーを突き付けながら、迅を恫喝した。

隙あらばヒューマギアを破壊しようとするの、やめろ!

ちょっと待って!

口調が荒々しいせいもあって、まるでこっちがテロリストみたいだよ!?

ヒューマギアが大嫌いな不破さんなら、マジでやりかねない。

 

 

「ああーっ、ズルいぞ! 汚い! 鬼! 悪魔! 人間!」

「うるせぇ! テロリストに言われたくねぇよ!」

 

その「人間」って、悪口なの?

鬼と悪魔と人間が同じように悪口として並べられてるってこと……?

やっべぇ、どういう奴なのか分かんない。

妙に口調が軽いし、悪口のラインナップが微妙だぞ。このテロリスト。

 

 

「どうしよう、このままじゃ(ホロビ)に怒られる……!」

 

あと、ホロビって誰だ。

この間の紫色の無茶苦茶強かったテロリストのことかな?

何だか静かな感じの奴だったけど、ああいう奴に限って怒ると恐ろしく怖かったりするんだよなぁ。

 

とはいえ、人質をとってどうするつもりなんだ、不破さん。

さすがに投降させることが出来るとは思えないけど。

 

 

「麗華第2地区の廃工場で待ってろ。二時間ぐらいしたら、コービー(コイツ)を連れてこっちから出向いてやる」

「本当だな!? 嘘ついたら許さないからな!!」

 

ボロボロのフードを被ったテロリストは、そう言い捨てて逃げ去った。

迅の背中を見送った不破さんは、ようやくショットライザーを降ろした。

良かった!

不破さんならドサクサに紛れて撃つかもって思ってたよ!

 

 

コービー(コイツ)をダシにしちまって悪いな、先生。だが、生徒がまだ大勢いる校内を戦場にするのは、なるべく避けたかった」

 

まぁあんまり長く戦ってると、音を聞きつけて生徒たちが集まってくることだってあるだろうし。

野次馬が増えたら厄介だし、ここで戦うのは得策じゃなさそう。

テロリストが逃げ出してくれて、本当に良かった。

 

 

「これで分かっただろ、先生。ヒューマギアは人を不幸にする疫病神だ。これを機に手放しちまいな」

「AIMSさんか飛電さんの方で、代金の補填なんて出たりしませんかね……?」

 

破損保険の制度自体は存在したと思うけど、佐藤先生は保険契約を結んでいなかった気がする……。

こればっかりは自己責任としか言えないなぁ。

一応中古品として飛電で引き取ることは出来るけど、大した額にはならなかったはずだ。

 

飛電側で保険契約を強制するわけにもいかないし。

まさに反面教師ってヤツだな。

口に出したら怒られそうだから言わないけど。

 

 

「……私のせいで、生徒たちを巻き込むわけにはいきません。生徒たちには、大切な試合があるんです。私は……彼らに、勝って欲しい」

 

と、ここで体育教師型ヒューマギアの坂本コービーが、自ら返品を申し出た。

契約者の佐藤先生の意向に反して、自ら持ち主の元を離れようとしているってことだ。

やっぱりコービーは、シンギュラリティに目覚めていると見た方が良さそうだな。

 

 

「コービー、辞めちゃうの?」

 

遠巻きに体育館の中から様子をうかがっていたバスケ部員たちが、恐る恐る会話に入ってきた。

坂本コービーが去ってしまうことに、危機感を抱いている様子だ。

まぁヒューマギアの頭脳で適切な練習管理をしてもらっていたのに、それが突然無くなったら不安にもなるよね。

そんなバスケ部員たちに対して苦々しい顔で口を開いたのは、不破さんだった。

 

 

「こればっかりは、俺がヒューマギアを嫌いだからってだけの話じゃねぇぞ。少なくとも滅亡迅雷.netを全員確保するまでは、バスケ部に戻らせる訳にはいかねぇ」

 

そっか。

単に1回や2回追い払ったとしても、またコービーが襲われる展開は続くもんな。*1

そうすると、バスケ部員たちが巻き添えを食うことだってあるかもしれない。

ということは、現時点ではコービーがバスケ部のコーチを続けるのは無理だってことだ。

生徒たちやコービーの意思を尊重してやりたい気持ちはあるけど、不破さんの言い分がもっともに聞こえる。

 

 

 

 

 

 

そんな感じで、俺たちはコービーを引き連れて、佐藤先生たちと別れた。

俺たちは麗華市の廃工場へと向かった。

意外と近くて、10分ぐらいで着いてしまった。

2時間後って約束だったけど、まだ1時間以上余裕があるなぁ。

 

 

「変身!」

『The elevation increases as the bullet is fired!』

 

工場を遠巻きに見ている段階で、不破さんがおもむろに変身した。

青を基調とする仮面ライダー……バルカンだ。

 

 

「ハァッ!」

『Bullet shooting blast!』

 

 

ト シューティングブラスト

 

 

バルカンは、自然な手つきでショットライザーを構えて……廃工場を、高火力の砲撃で木っ端微塵に粉砕した。

え?

……えっ?

俺は、思わず考えが止まった。

廃工場は、爆炎に包まれている!

 

 

「何してるんですか!? 相手が死んだらマズいでしょ!?」

「致命傷程度でテロリストが死ぬかよ」

 

いや、致命傷ってそれ、死ぬって意味だろ!

どんな理屈だ!

感情の振れ幅のわりに頭が回る人かなって思ってたのに!

 

 

「待ち伏せと罠を警戒した場合、こっちの身の安全を確保する意味で、遠距離から砲撃か爆破するモンなんだよ!」

 

あ、一応考えがあっての行動だったのか。

冷静な考えが在るのか無いのか、分かりづらい人なんだよなぁ……。

 

一方、廃工場からボロボロのフードを被った不審者が飛び出していた。

まるで、ナパームを背に走る映画のワンシーンみたいだった。

 

 

「危ないじゃないか! やっぱり人間は滅亡させなくちゃ!!」

 

どこか幼さを感じさせる口調で、迅が怒ってみせた。

でも、俺の注意は別の点に向いてしまっていた。

フードを外して火の粉を払った迅は……耳に、ヒューマギア特有の耳当ての跡があった。

かなり破損しているけど、あれはヒューマギアの耳当てで間違いない!

ヒューマギアがテロリストをやっていたのか!?

 

 

「てめぇ、ヒューマギアだったのか! やっぱりヒューマギアは殺人マシンだ! ブッ潰す!!」

 

不破さん、ほぼ迅と同じこと言ってない??

って、そうじゃない!

迅がヒューマギアだったなら、今までの行動はおかしいだろ。

仲間のはずのヒューマギアを、怪物へ改造して兵器として使ってきたってことだよな?

 

 

「お前もヒューマギアなら、どうして同じヒューマギアに酷いことをするんだ!?」

 

迅もヒューマギアなら、他のヒューマギアは仲間じゃないのか?

誰かに命令されて、そんな酷いことをしているのか?

とにかく、情報を聞き出さなくちゃ!

 

 

「ヒューマギアを人間から解放するためだって、(ホロビ)が言ってたよ」

 

あの紫の仮面ライダーが黒幕なのか?

もしくは、さらに上から命令している誰かが居るのか。

どっちもありそうだ。

 

悪い人間に利用されている迅を破壊するのは、今までのマギア達と戦ってきた時みたいな、嫌な感じだけど。

でも、俺はヒューマギアを作っている会社の社長だ。(名目上とはいえ)

人間を傷つけるヒューマギアは、破壊しなくちゃいけない。

とはいえ、対人工知能の専門家である不破さんが居るんだから、そっちに任せた方が良いのか?

まさかプロの不破さんが、怪人化もしていないヒューマギア1体を相手に後れを取るとも思えないし。

 

 

(ホロビ)から新しい玩具貰ったし、お前たちなんてイチコロだもんね! 変身!」

『With mighty horn like pincers that flip the opponent helpless.』

 

迅が、緑のプログライズキーとベルトを使って……頭に大きな一本角を持った仮面ライダーへと変身を遂げた!*2

びっくりしたけど、まぁこの間の(ホロビ)も変身してたしな。

滅亡迅雷の他のメンバーが変身できても、不思議じゃない。

 

 

「変身!」

『A jump to the sky turns to a riderkick.』

 

俺も変身して戦った方が良さそうだと思った。

不破さんなら迅と一騎打ちをしても大丈夫だと信じたいところだけど、(ホロビ)が横槍で殺人キックを入れてきたりするとマズいし。

2対1で、なるべく余裕をもって戦った方が良いと思った。

 

 

「突っ込め! 援護する!」

「分かりました!」

 

ヒューマギアへの怒りに沸き立っている不破さんなら、突撃するかなって思ったけど。

ショットライザーを持っているバルカンの方が後衛を務めるべきだっていうのは、冷静な判断だと俺も思う。

バッタのプログライズキーで変身したゼロワンは、キック力とフットワークの軽さが強みだ。

 

 

「潰れちゃえ!」

「おっと」

 

緑色のキーで変身している迅は、パワータイプっぽい挙動だな。

拳の一撃でコンクリートの壁を粉砕している。

強攻撃を貰ったら、一発KOもありえそうだ。

 

 

「痛っ! 鬱陶しいなぁっ!」

 

ただ、俺が下手をうった場合でも、不破さんからの援護射撃があるから安心だけどな。

さすがAIMS隊長だけのことはある。

まぁ射撃でダメージが入っているかと言われると少し怪しいけど、援護は的確だった。

俺の方は、脚力特化型なおかげでキックだけは有効打になってる感じだ。

 

 

「オラァッ!!」

『Bullet shooting blast!』

 

俺が強めに迅を蹴りつけて離脱した、一瞬の隙をついて……バルカンが必殺技を繰り出した。

オオカミを思わせる4つの巨大な弾丸が、不規則な軌道で迅へ襲い掛かった。

でも迅の方も、恐るべき反応速度を見せて、ベルトに操作を加えていた。

 

 

「もうっ、じゃまだよ! バルカン!」

『Amazing dystopia!』

 

     

  兜     驚

     

ト シューティングブラスト

 

 

バルカンの放った4つの巨大弾を、迅は2メートルにまで巨大化した角で打ち払い続けた。

だが、迅が4回も隙を見せるなら、その間に俺が何もしないわけがない。

 

 

グ イ ン パ ク ト

 

 

 

「背中がガラ空きだ!」

「うわあっ!!?」

 

バルカンの放った巨大弾の3発目を打ち払った瞬間、迅の背中へと俺の必殺キックが炸裂した。

そして、挟み込むようにバルカンの4発目の巨大弾が、迅の正面から直撃した。

爆炎が、迅を包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後、(ホロビ)が迅を回収に来て、なんやかんやで逃げられたりしたけど。

坂本コービーを飛電インテリジェンスに連れ帰って、今回の俺の任務は無事に完了したのだった。

なんだか、初めてヒューマギアを守れた気がする……!

俺も、少しずつだけど成長してるってことなのかな。

伸びしろだけは認めてやってもいい、って暴虐秘書も言ってたし。

 

 

コービーを麗華中学校に戻してやりたい気持ちはあるけど、流石に生徒たちを危険にさらすことは出来ない。

全員が完璧に納得する結末とは言えないのが歯がゆい。

でも、コービーの指導を受けた生徒たちはバスケの試合で活躍することは間違いない。

俺はコービーの指導力と、部員たちの熱意を信じているからな!

 

 

後日、俺は麗華中学校のバスケ部員たちの試合を観に行った。

リアルタイム中継で、飛電本社に匿われている坂本コービーへと試合の様子を見せてやるためだ。

大奮闘したバスケ部員たちが掴み取った結末は……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうして分かってくれないんだ!

スポーツは結果が全てじゃないんだ!!!

 

 

*1
仮面ライダーウィザードの『ゲート』が再び狙われる問題みたいな……。

*2
フライングファルコンの作成フラグが折れているので、滅から別のキーを借りた模様。


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