「ヒューマギアの襲撃事件……??」
社長室で迅とオセロをしていた俺のところに持ち込まれた問題が、それだった。
どうも、ヒューマギアを狙って危害を加える事件が複数件起きているらしい。
そして、アズと福添社長が問題を持ってきたということは、俺に求められるものも分かり切っている。
ゼロワンとして、犯人と戦えってことだよな。
とりあえず俺は、迅と一緒に遊んでいたオセロを中断した。
そもそも全く勝てなくて、ちょっと飽きてきたところだったしな。
やっぱりこの手の頭を使うゲームは、ヒューマギアが強すぎる。
「犯人の手がかりとか、次に襲われるヒューマギアの目星とかは?」
「現場の映像を入手してあるぞ。でございます」
アズが、社長室の壁に映像を投影してくれた。
そこに映っているのは、かなり画質が荒かったけど……仮面ライダー
迅が、物言いたげだった。
「ヒューマギアを、守る。そして、
不良秘書のアズも。
副社長の福添さんも。
それぞれが、それぞれの理由を胸に……頷いてくれた。
『暴虐秘書アズちゃん!』
第09話:不破さんの命を預かれるのは、ただ一人! 俺だ!
で、俺は車椅子を押しながら、迅と一緒にAIMSに赴いた。
今回の一件は、AIMSの管轄かどうか微妙だけど……
俺としては、こっそり
アズと福添さんが、口をそろえて言うんだよ。AIMSと情報共有しろって。
飛電インテリジェンスは後ろ暗いところが多い会社だから、これ以上暗部を増やしたくないんだろうなぁ。
それと、もしかして俺が一人で戦うことを心配して言ってくれているという線もあるか?
福添副社長ならありそうだけど……アズの奴は、そんなことを考えるタマじゃない気がする。
あの暴虐秘書が俺の身の心配をするなんて奇跡が起こるぐらいなら、渋谷に隕石が降ってきて街が壊滅するって言われた方がまだ信じられる。*1
でもまぁ、何だかんだで先日はメインメモリを貸してくれた訳だし、俺は嫌われている訳ではないとは思う。
というか、あいつの前身になったヒューマギアって5種類いるって聞いた気がするし、そのうち1体ぐらいは飛電一族に対して好意的な奴も居たのかもしれないなぁ。
そんなことは、ともかく。
AIMSの基地に来た俺は、不破さんの元へ一直線に通ることが出来た。
警備担当者たちに顔を覚えられて、もはや俺は顔パスだったりする。
結構頻繁に来てるとはいえ、それで良いのかAIMS。
「いつも、お世話になってます! 飛電インテリジェンスです!」
「おう、社長さん。ガサ入れ以来だな。……なんだ、
「その件は済まなかった、バルカン……」
車椅子に載せられた迅を見て、不破さんが不機嫌になる一連の御約束を挟みつつ。
俺は、不破さんへと情報を提供した。
ヒューマギアが物理的に襲撃されていて、その容疑者が
これってAIMS案件だよね!?
「……確かに、実行者がヒューマギアだという疑いがある以上、人工知能特別法違反の疑いが強いからAIMSは出動するべきだ」
「分かってくれたんだな、不破さん!」
非常に渋い顔をしながら、不破さんが頷いてくれた。
無茶苦茶嫌そうだ。
俺の目には『どうして俺がヒューマギアを守らなくちゃならないんだ……』っていう不破さんの本音が見えた気がした。
坂本コービー*2の時にも思ったけど、やっぱりヒューマギアを守るのは嫌なんだなぁ。
「バルカン。聞いても良いかな」
「…………聞くのは勝手だが、答えるかどうかは俺のルールで決める」
不機嫌そうな不破さんへと、迅が声をかけていた。
不破さんは、一応完璧に否定するわけではないっていうスタンスみたいだ。
ヒューマギアに対する嫌悪感は健在みたいだけど、死にかけたときに医者型ヒューマギアに命を救われたらしいし、ほんの少しでもヒューマギアに対する印象が良くなっているのかもしれない。
「どうして人間は、自分自身がやりたくない事をするんだ?」
迅の質問の意味を、俺は不破さんと一緒に考えてみた。
ここでいう「やりたくない事」とは、不破さんがヒューマギアを助けることだ。
隙あらばヒューマギアを破壊しようとする不破さんが、ヒューマギアを助けるために働かされるのは……ストレスの原因になるはずなのに。
っていうか、それ聞いて大丈夫なの?
不破さんが協力してくれなくなる可能性とか、思考から抜け落ちてたりしない??
「AIを使用した犯罪に対処するっていうAIMSの方針自体に異論がある訳じゃねぇよ。ただ、その任務の結果としてヒューマギアを守ることになるのが気に食わないだけだ」
任務は遂行する、と続けて不破さんは言い切った。
頼もしいプロフェッショナルの姿そのものだと、俺には思えた。
さすがAIMSの隊長だけのことはある。
もちろん、今の仕事をやめた場合に新しい仕事を探すのが面倒だって理由もあるのかもしれないけど。
「バルカンは、ヒューマギアを廃絶したいんだよね。それならさ……AIMSの仕事には手を抜いて、AI犯罪の被害者を増やした方が、結果的にヒューマギアの廃絶に近づくんじゃないかな?」
「俺が仕事に手を抜いてるって言いてぇのか!!」
「やめろ、迅! 不破さんも、すみません!!」
不破さんが、怒りに身を震わせた。
俺は、すぐに不破さんに謝った。
迅に謝らせるのは何かが違う気がしたが、名目上だけでも社長の俺は謝っておくべきだと思った。
こうして、どこか不協和音を残しつつ、俺たちの
……とはいえ、飛電インテリジェンス側に出来る捜査なんて殆ど無かった。
次にどこを襲撃するか分からない
目撃情報を元に俺たちが現場に駆けつけても、既に
正直に言って、飛電側で出来たのはAIMSへの情報提供ぐらいだった。
データ提供に関してだけは、一応俺たちも捜査に役立っていると思いたいところだ。
破壊されたヒューマギアのメモリーのバックアップデータなんかは、飛電側が協力しないとAIMSは入手できないからな。
そして、待つこと2週間。
ついに不破さんが、飛電の社長室に報告に来た。
連絡をくれれば、こっちから出向くのになぁ……なんて思ったけど、もしかして不破さん、迅の車椅子の移動が不便だから気をつかってくれたのか?
ヒューマギアが嫌いな割に、妙なところで繊細な人だよな……。
不破さんの方は単身で来ていて、技術顧問の刃唯阿さんは居ない。
一方の飛電インテリジェンス側は、俺のほかにアズと迅が同席している。
相変わらず、アズは来客にはお茶を出すけど、俺には出してくれない……。
まぁ、コイツの性格が悪いのは平常運航なので、ツッコんでもキリがない。
「まどろっこしいのは嫌いだ。結論から言うぞ。
「ざいあ……? どこかで聞いたような気がする!
どうだ!
芸人に復帰するかどうかは分かんないけど、一応鍛え続けてきた俺の渾身のギャグの威力は!
爆笑ギャグ……と言うには力不足かもしれないけど、俺だって進歩しているんだ。
今のは、「ザ・イヤー」って言うのと同時に自分の耳を指さして、分かりやすさを重視する工夫をしてみたんだけど。
「ぶふぅっ!!?」
不破さんが、お茶を口から吹いていらっしゃる!!?
まさかここまでツボにはまるとは思わなかったけど、それだけじゃない。
なんていうか、俺は……ただ純粋に嬉しかった。
俺のギャグで笑ってくれる人が居るのって、こんなに嬉しかったんだなって久しぶりに思ったんだ。
お笑い芸人に復帰するかどうかは分からないけど、今までギャグについて色々調べてきたのは無駄じゃなかったんだ、って実感できた瞬間だった。
「ゼロワン。『ザ・イヤー』だと『まさに耳で』みたいな訳にならない? それを言うなら『ズィス・イヤー』じゃないかな?」
「或人しゃちょーが哀れになるから、ギャグの解説はしないぞ。なけなしの慈悲だぞ。でございます」
不破さんにティッシュを渡して謝りながら。
ヒューマギアたちの酷評をスルーして俺は話を本題に戻した。
話がそれたのは全面的に俺のせいだ。ごめん……。
社長室に、真面目な雰囲気が戻り始めた。
「ZAIAエンタープライズというのは、IT系の最大手だぞ。12年前の衛星アークの打ち上げ計画にも飛電とともに関わっていたぞ。でいらっしゃいます」
「ZAIAの情報は良いとしてさ。ちょっと待ってよ、バルカン。どうやって、そんなのを調べたんだ?」
なるほど。
……と俺は単純に思ったんだけど、話はそんなに簡単じゃなかったらしい。
車椅子に座ったままの迅が、不破さんに疑問を投げかけていた。
不破さんは、迅に対して若干不機嫌そうな表情を見せながらも、答えてくれる方針のようだった。
「犯行後の
「そんなはずは無い。滅亡迅雷.netのヒューマギアは特殊なステルス加工をしているんだ。電波を感知しての追跡なんて絶対に無理だ」
え?
そうなの?
アズも無言で頷いているし、俺だけ知らなかった情報がポンポン出てくるんだけど……?
しかし、そういうことなら不思議だ。
あの
発信機的なものを戦闘中に付けても、
いくら不破さんがAIMSの優秀な捜査員だとはいえ、流石に不思議だ。
「警察犬を借りてきて、硝煙の匂いを追跡させたに決まってんだろ」
アナログゥ!!?
確かにそれは、いくら
さすがに自分自身の数十分後に、同じ道をたどって追ってくる犬を警戒するのは、
というか滅亡迅雷.netのステルス性能を見越して警察犬という選択肢を即座に用意できる不破さんが有能過ぎる……。
「警察犬……。そうか、そういう方法もあるのか」
迅は、インターネットで警察犬について検索してるっぽい?
新しい情報にアクセスする速さは、やっぱりヒューマギアの強みなんだよなぁ。
俺も、言うほど警察犬について詳しいわけじゃないからコメントしづらいけど。
まぁ日本で硝煙の匂いが付いている奴なんて殆ど居ないだろうし、多分有効な捜査手法だったんだろう。
「
車椅子に座ったままの状態で、迅が不破さんへと頭を下げた。
少しの間だけ、社長室に沈黙が流れた。
不破さんは、ちょっと返事に困っているみたいだった。
俺とアズは、不破さんの言葉を待った。
「……俺は、仕事に手は抜かねぇ」
ひょっとしてだけど。
もしかしたら、不破さんの中にも……迅のためっていう気持ちがほんの少しでもあったのかもしれない。
ぶっきらぼうに言い放った不破さんの顔をみて、何となく俺はそんなことを思った。
もちろん、俺の気のせいかもしれないけど……。
「話が見えてきたぞ。刃唯阿が同席していない理由も納得がいくぞ。であります」
「どういうこと?」
そこでどうしてAIMS技術顧問の刃さんが出てくるんだ、アズ。
警察犬の話と、刃さんが何か繋がっているのか?
刃さんって犬が嫌いとか、そんなキャラ付けされてたっけ?
どっちかっていうと、刃さんは犬派なイメージあるんだけどな。(偏見)
「……刃のヤツは、AIMSに出向してきているが、本来はZAIAの社員なんだよ」
ああ、犬の話じゃなくて、ZAIAの話と繋がっていたのか。
そして、刃さんがZAIAの社員だってことは……つまり、どういうことだ?(頭プスプス)
「僕も分かったよ。ZAIAへのガサ入れをAIMSが大々的にやる場合、刃唯阿の出方が分からなくて困るっていうことだね」
うん、そうそう!
そういうことだよな!
俺もそれを聞いた今なら、分かった!
土壇場で刃さんが邪魔に入るかもしれないってことだな!
「社長さんたちに、『コイツ』を預ける。解析して、不審な点があったら教えて欲しい」
そう言いながら、不破さんはベルトと銃器を取り出した。
社長室のテーブルの上に置かれたのは、AIMSの装備であるショットライザーだ。
不破さんが仮面ライダーバルカンに変身するための、文字通り生命線と言える装備のはずなのに。
……いや、生命線だからこそ、か。
いざという時に命を預ける装備に、不信感を残したくないんだろう。
大一番で刃さんが妙な仕込みを起動させたりすると、洒落にならない。*3
「そんなの、
「ダメに決まってんだろ。だが俺は俺のルールで動く」
なんか不破さん、割とヤバいこと言ってない?
AIMSって内閣府直属の軍警察みたいな組織だよな。
その中でもショットライザーの仕組みって最高機密のカタマリでは?
いくら不破さんがAIMSの隊長とはいえ、危険な橋を渡り過ぎじゃないの??
「現時点で刃とZAIAが信用できない以上、どのみち外部委託の当ては飛電しか無ぇんだ。それに……情報の秘匿と隠蔽は、
「分かりました。こっちでも情報が漏れないように細心の注意を払います」
こっちにも内通者が居る疑惑が濃厚だから、気を付けないとな。
というか、社長室に今の段階で居るアズと迅以外には、絶対に情報を漏らさないようにしよう。
「多次元プリンターに入れて解析するぞ。でございます」
アズがショットライザーを手に取って、そのまま社長室の隣のラボへと持ち込んだ。
あの多次元プリンターって、解析機能とかあったのか。
俺たちも遅れてラボに入って、解析結果を待った。
結果が楽しみなような、怖いような……。
「一応、ショットライザーの仕込みに関しては予想はついているよ」
「心当たりがあるのか、迅?」
解析結果を待っている途中で。
迅が静かに話を切り出した。。
もしかして、多次元プリンターによる解析の途中経過を、無線で傍受していたんだろうか。
迅の表情からは、その予想に自信がありそうだと見える。
「科学者は、自分の携わった機械には必ず自爆装置を仕込むものらしい」
「「な、なんだって!?」」
不破さんと一緒に御約束で驚いてみたけど。
それって、往年のマンガとかアニメとかの話だよな。
まさか、「出来る女」を体現しているみたいな刃さんが、そんな大昔のマッドサイエンティストじみた真似をするとは思えない。
迅が深刻そうな顔で言うから、つい乗せられちゃったじゃないか。
「解析が終わったぞ。特に不審な仕込みはショットライザーには内蔵されていないぞ。残念ながら自爆装置も無いぞ。でいらっしゃいます」
「なるほど……。ショットライザーは、バルカンの脳内に埋め込まれたICチップと連動しているみたいだけど、ICチップの方も調べた方が良いんじゃない?」
残念とか言うんじゃない。
解析が終わったのは良いんだけど、自爆装置があって欲しかったみたいな言い方やめろ。
あと迅は、さらっと重要な事言ってない?
脳内にチップを埋め込んであるとか、AIMSってそんな改造手術みたいな事をしてたの?
「脳内に? 何言ってんだ。そんなもん有るわけ無いだろ」
「バルカンは覚えが無いのか? でも、ショットライザーのデータ上は……」
「解析データを画面に映し出すぞ。であります」
ラボの壁に、データが投影された。
数字とアルファベットが一杯並んでる!
こういうのを、「プログラム」とか「アルゴリズム」とかって呼ぶことは知ってるぞ!
意味はよく分かんないけど!
「……確かに、そんな感じだな。だが俺は、そんな手術なんて受けた覚えは無ぇぞ……?」
「え……? 不破さんってプログラムとか読めたの??」
ウッソだろ、おい。
不破さんは、絶対に「こっち側」の人間だと思ってたのに!
真剣な顔して、分かったフリしてるだけでしょ? そうなんでしょ??
「いや、ちゃんと学んだ訳じゃねぇけど、何となく読めねぇか? 多分、この辺りが通信を必要とする部分なんだろ?」
「あってるぞ。でいらっしゃいます」
そんなふうに「何となく」とか「感覚」とかでプログラムを読めたら、世の中にITエンジニアなんて仕事は無くなると思うんだけど……??
でも、不破さんがプログラム上の一点を指さして、アズと迅もそれに頷いている。
どうなってるんだ。
野性の勘?
プログラムと野性の勘って、メチャクチャ相性悪そうだけど?
「バルカン本人の記憶に残っていない脳内チップ……。どう考えても怪しいよ」
「キナ臭ぇな。それも解析してくれ」
「多次元プリンターの中に入りやがれ。靴は脱がなくても良いぞ。でございます」
「その多次元プリンターって、中に人間を入れて本当に大丈夫なの……??」
何かの間違いでバッタと合成された改造人間とかが出来上がったりしないだろうな?
確かに個室トイレ以上の大きさがある多次元プリンターなら、人間を中に入れること自体は不可能ではない。
でも、多次元プリンターの扉を叩きながら「出してくれ! 出してくれぇ!!」って叫ぶ不破さんの姿なんて俺は見たくないぞ。*4
そして不破さんも多次元プリンターに入るのに躊躇いが無さ過ぎる……!
本日の来社までの間に、飛電に命を預ける覚悟をしてきたからなんだろうけどさ。
この分だと、遺書を書いてから来ている可能性すらある。*5
ショットライザーを飛電側に一度渡した時点で、飛電側では何でも仕込めちゃうからなぁ。
……で、待つこと数分後。
無事に不破さんは多次元プリンターの中から生還した。
良かった。本当に良かった……!(切実)
解析も無事に終わったみたいだ。
それで結果はどうなの、アズ?
不破さんも、早く結果を聞きたいみたいだ。
「変身に必要な部分は特に問題が無さそうだったぞ。ところが、変身に全く必要のない不審なプログラムが検出されたぞ。でござる」
「ござる?」
レア語尾だな。
いや、語尾は良いんだ別に。
やっぱり不審なプログラムは入ってたのか。
トロイの木馬的な?
「不審なプログラムって何だよ。勿体つけてないで言え」
「……バルカン。怒らないで聞いて欲しい。これは……ヒューマギアの思考プログラムだ」
……うん?
どうして不破さんの脳内チップに、ヒューマギアの思考プログラムが入っているんだ?
意味が分からなすぎる。
ショットライザーの変身システムは、ヒューマギアの思考プログラムを元に作られたのか?
うーん、でも変身に全く必要が無い部分だって話だよな。
ま、俺は分からなくても仕方ないか。頭脳担当じゃないしな!
「なんでそんなモンが入ってるんだ。……いつからだ?」
「履歴を探ったら、デイブレイクタウンへのガサ入れの日だったぞ。でいらっしゃいます」
ガサ入れの日?
その日に不破さんの脳内チップにデータを書き込むとすると、不破さんに一番スキがあったのは病院内か?
俺を庇って意識不明の重体にまで追い込まれていた不破さんは、多分脳内チップを操作されても気付かなかっただろうし。
けど、医者型ヒューマギア達が目を光らせていたハズだし、国立医電病院のヒューマギアは専用のイントラネットにしか接続しない仕様だから簡単にハッキングされたりしないって聞いた気がするぞ?
「ひとまず、チップの中のヒューマギアのデータは別のところに移し替えてくれ」
「了解だぞ。多次元プリンターの中にもう一度入りやがれ。でいらっしゃいます」
再度巨大マシンの中へ入っていった不破さんの背中を見て、ふと俺は思った。
不破さんはヒューマギアが嫌いだと言いながらも、アズや迅との間の壁が大分薄くなってきたように思えるんだ。
今だって、名目上の社長である俺を介さずに、不破さんが直接アズに頼んだ訳だし。
もしかしたら、不破さんの心の壁が薄くなったのは……大怪我をしたときに医療用ヒューマギアに救われたからじゃないのか?
その前提を、俺たちは今から壊そうとしているのでは?
頭の隅に不安を抱えながらも、俺たちは不破さんの脳内チップへの処置を待つほか無かった。
この待ち時間が終わったら、俺たちは国立医電病院へと捜査に行くことになるだろう。
多次元プリンターの中から不破さんが出てくるまでの短い時間が、えらく長く感じられた……。
「あともう一つ不安なんだけどさ。ゼロワンドライバーって、自爆装置とか入ってないよね?」
「私が『入っていない』と言ったら、或人しゃちょーは信じやがるのか? でございます」
「え……? 自爆機構って、一般のヒューマギアやゼロワンには入ってないの?」 ←