この回を持って、IF編のプロローグはお終いです。
揺れる車の中、私は目を覚ました。
「う、う~ん・・・・・」
「あ!起きたんだ」
寝起きの私に語り掛けてくるのは
「響。起きて早々だが、腹を満たしておけ。目的地に着いたらすぐに始めるぞ」
こちらを一切見ずに運転しながら話しかけてくるのは、父親型のヒューマギア『滅』。
「はい」
「‥……ありがと」
「どういたしまして」
横に座す迅が人間用の保存食を手渡してくる。簡潔にお礼を言うと微笑ましい者を見る目で笑いかけてきた。滅が父親なら迅は兄みたいと密かに思いながら、封を切り味の薄い保存食を口に運ぶ。
◆◆◆◆
虫のように迫りくる素体のようなヒューマギア。『トリロバイトマギア』を歌う事でエネルギーを補充できる鎧を纏った私が撃破していく。
「は!」
「ふん!」
近くでは火の鳥のように翼を広げ空飛ぶ『迅』、紫を中心とした装甲に身を包む『滅』。
滅がカマキリのような鎌をもった『マギア』を、迅が人の
「‥‥…っハ!」
黒を基調に黄色のラインが入った剣を振り下ろしてくるトリロバイトマギア。その一撃を躱し、右手にエネルギーを溜め、そのまま拳を振るい頭部を破壊する。
「っく!」
その直後、別の個体が標準装備のナイフを振り下ろしてくる。いったん歌うのをやめ、地面を転がり回避。その時先程壊した奴が待っていた剣を回収し、起き上がりざまに右足を軸にした回転斬りで周囲のマギアを撃破。
「~♪」
私の纏う『シンフォギア』と呼ばれる装備は歌の力で戦うらしく、迅いわく私の中にその破片が埋まってるらしい。本来はノイズを殺すための物だが、ヒューマギアと戦う時にも使ってる。
「わぁ!」
鳥のような赤いマギアは迅を6門の砲身からガトリングを放ち、地面へと墜落させる。
「っく!」
滅は緑色の斬撃を躱しながら、迫りくるトリロバイトマギアをカウンターで各個撃破。しかし数が数なだけに苦戦してるみたい。そもそも私達が今いる場所は、奴らの本拠地である大きな会社『飛電エンターテインメント』。
‥‥…生前の父が務めいた会社であり、ヒューマギアが真っ先に占拠した場所でもある。ここに居る理由は一つ、人類とヒューマギアが戦う理由になった
「悪意に飲まれた同胞よ……‥‥安らかに眠れ!」
『スティングユートピア!』
ムチの様に伸ばした刺突ユニットで緑のマギアを拘束し手探りで引きよせる。拘束を解除したと同時に左足に巻き付け蹴り飛ばした。
「ごめんね、君を解放するにはこれしかないから‥‥…」
『バーニングレインラッシュ!』
翼を広げ、炎を纏った飛び蹴りを放つ迅。蹴りを受けたマギアは後方へと吹き飛ぶ。他のマギアの背中にぶつかり、巨大な火柱を上げ破片へと変わる。
迅と滅はヒューマギアでありながら、ネットワークを必要としない。その為アークと接続しておらず、人間である私と行動を共にしている。
「‥‥‥‥‥」
爆風によって飛ばされてきた緑と赤の『ゼツメライズキー』回収。ヒビがある方(どっちもある)‥‥…緑方を起動し剣の底にあるスリットにセット。
『ベローサ!』『"Progrise key confirmed. Ready to utilize."』『ゼツメツアビリティ!』
ブレードを一度閉じる事で、エネルギーを溜める。なぜ初めて使うのに使い方を知ってるのって?
‥‥…何度も苦しめられたから。
『チャージライズ!フルチャージ!』
持ち手部分にあるトリガーを引き、剣を振り下ろすことで必殺の一撃を放つ。
『ゼツメツカバンダイナミック!』
半透明の鎌のようなエネルギーが放たれ、トリロバイトマギアを次々と撃破していく。
「いやはや。流石、仮面ライダーと装者の方々だ」
混戦中の中、一人の男性の声が聞こえる。私達は戦いの手を止め声が聞こえてきた方‥‥‥ 建物の入り口へと視線を向ける。
「君達のうわさは聞いてますよ…」
悠々としゃべる奴は、現在の飛電エンターテインメント代表取締役社長。高級な礼服に身を包むヒューマギアの『アルア・ペンド』。その横には黒ロングに赤の指し色が入った秘書型のヒューマギアの姿。
「………裏切り者のヒューマギアと裏切られた人間とね」
アルアが皮肉気に語り掛けてくる。その言葉に拳を握りしめ、走り出そうとするのを迅が右腕を伸ばし止めてきた。それにより私はただ奴を睨みつける事しかできない。
「せっかく来てくれたんだ。テロリストの
奴は隣にいたヒューマギアから赤いベルトと赤いプログライズキーを受け取りベルトを腰に装着。すぐさま右手の親指キーを起動、ベルトにかざして認証。
『ジャンプ!』『オーソライズ!』
独特な待機音が鳴がれ、雲を突き破って空から巨大なメカバッタが降り立つ。
「危ない。」
「っ!」
すぐさまメカバッタが飛び回り周囲にクレーターを作っていく。
それに巻き込まれそうになった私だったが、迅が私を抱きかかえ飛ぶで無事に済んだ。奴はそのまま両腕を大きく回して前方に突き出し、キーを顔の右に持って行きながらキーを展開。
「変身……」
展開したキーをベルトに装填。
『プログライズ!』
メカバッタはバラバラになり、灰色のアーマーとなり奴に装着される。
『飛び上がライズ!ライジングホッパー! "A jump to the sky turns to a rider kick."』
次の瞬間、私達の視界から奴の姿は消え迅共々地面に叩きつけられていた。
「っが!!」
「響ちゃん!‥‥一体何が?」
痛みで体がしびれ動けない私、そこに迅が辺りを警戒しながら近寄ってくる。
「!そこだ。」
滅が右手を伸ばし刺突ユニットを前方に伸ばす。すると吸い込まれるように奴の右腕が絡みついた。
「‥……ほう、やるな。貴様名は?」
「‥‥滅。悪意を滅ぼすまで戦う。それが‥仮面ライダー滅だ!」
そこから二人はお互いに近づき拳をぶつける。奴の蹴りをミリで回避し反撃。滅の拳を受け流し膝蹴り。回し蹴りをしゃがんで回避し、足払い。二人の実力は互角。私や迅が入るスキのない激闘が繰り広げられていた。それぞれの拳が胸部の装甲に当たり、火花を散らしながら後退する。
「っく!」
「ッチ!これを使うか」
ベルトの右ホルダーにセットされてたプログライズキーを手に取り起動。
『ブリザード!』
ベルトに認証させ、キーを手頸のスナップで開く。そしてそのままキーをベルトにセットする。
『オーソライズ!』『プログライズ!』
螺旋状のエフェクトが奴に伸びていき、新たな装甲となった。
『Attention freeze!フリージングベアー! "Fierce breath as cold as arctic winds."』
灰色の装甲の上に氷のようなクリアな装甲、手や肩。顔には水色のパーツが追加されている。
「ハイブリットライズの力、試させてもらう!」
再び戦闘を繰り広げる二人。しかし先ほどとは違い、一方的な戦いになっていた。
手の平から放たれる冷気よって滅の右手が凍り、刺突ユニットが使用できずいるからだ。その状況になっても私達のはいる隙が無い事に、はがゆさを感じる。
「っがは!?」
奴の拳が滅の複眼に命中、その勢いのままこちらに吹き飛ばされてきた。
「滅。」「お父さん!」
滅の元に近寄る私達。その複眼にはヒビが入っており、そこからヒューマギア特有の青いオイルが流れ出ていた。
「ッ!‥……お前!」
私は怒りに震え立ち上がり、地面をける。確かな殺意と共に拳を強く握りしめた拳を力の限り振るう。私の拳は奴の顔面めがけて風を切る。
「ッフ…」
しかし私の拳は奴に届くことなく、体は何かに閊えったかのように歩みを止める。
「響ちゃん!!!」
「実に単純。」
腹部に違和感を覚え覗き見る。そこには槍に剣を合わせたような金色の武器が、私の腹部に突き刺りインナースーツと地面を赤く染めていた。
「が!ガァァァァァァァァaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!」
奴が武器の鞘についたレバーを引いた瞬間、シンフォギアに金色の稲妻が走る。
それと同時に中にある物が無理やり引っこ抜かれるかの激痛が襲い掛かり、只々叫ぶ事しかできずにいた。
「っあ。あ、ああ‥…」
『"Progrise key confirmed. Ready to break."』
シンフォギアが消失し、膝から崩れ落ちる。奴はそんな私を蹴飛ばし、武器に何も描かれてないプログライズキーを差し込んだ。
『ハッキングブレイク!』
体にうまく力が入らず起き上がれずにいた私に向かって、突き刺すように武器を振るう。刃先からエネルギーの刃が伸び、私を突き刺そうと迫る。死を悟り思わず目を背けた私。
「‥………………………っ!」
けれどいつまでも来ぬ痛みに疑問を持ち、視線を正面に戻す。そこには‥……
「ガH‥…」
滅が私を庇って、エネルギーで出来た刃に貫かれているところだった。
「━━━━━━━━━━」
何かを
「‥‥‥逃げるよ響」
「じん………?」
いつも笑顔な彼では考えられないほど冷酷な声が聞こえ、疑問の声を発する。
そんな私にお構いなく滅が投げたベルトと二本のキーを回収し、アタッシュケース型に折りたたまれた剣と弱った私を抱え撤退する為、背中の翼を広げ空へと飛び立つ迅。
◆◆◆◆
雲の上を跳ぶ私達。私に気を使っているのか、滅を失った喪失感でどこかバグり始めているのか、普段よりも明らかに飛行速度が遅い。
「降りるよ」
それでも迅はいつも通り優しく語り駆けてくれた。その声を聞きながらも私は上の空。
「‥‥‥‥‥」
地面に降り立った迅がゆっくりと私を降ろす。私の両足が地に着いたのを確認して迅は変身を解いた。
「大丈夫…‥‥じゃ、ないよねぇ~」
「‥‥して‥…」
「うん?」
「どうして!!!」
最近の自分じゃ考えられないほど大きな声が出た。
そこから私は支離滅裂な事を迅に向かって叫ぶ。行き場のない悲しみも怒りも悔しさもすべて迅ぶつけた。一度叫んだらダムの崩壊のように止まらず、喉がガラガラになるまで叫んでしまった。その言葉の一つ一つ、最後まで迅は静かに聞き止めてくれた。
「‥……取り合えず、これは君が持っていて」
迅が私に渡したのは、滅が使っていたフォースライザーとサソリが描かれた紫色のアイテム『スティングスコーピオンプログライズキー』。
「それとこれも」
続いて渡されたのは先の戦いで私が奪ったアタッシュカリバー。そのスロットにはいまだにゼツメライズキーがセットされてる。その上に添えられているのは黄色のバッタが描かれたプログライズキー。
「これ!迅の‥…」
そして最後に『バーニングファルコンプログライズキー』が私の手に握られる。迅に返そうとしても迅の手の平で遮られた。
「持ってて。響ちゃんの夢が見つかるまでの間で良いから」
そういう迅の目はまるで死を覚悟した兵士の様だった。
「‥……待ってじn」
「ここら離れて、ひたすらまっすぐと」
私の言葉を遮り、迅は先を指さす。その音色は駄々を練るを諭すかのようで、その姿に滅の姿が自然と重なる。
「ッ!……………………………」
迅が何をするのかを察し、それでも何も言えず。言われた通りに走る。走る走る走る!
「生きて、僕の初めての友達」
そんな声が風に乗って聞こえた気がする……………
これはヒューマギアの反乱から半年、ライブの悲劇から1年たったころの出来事。
◆◆◆◆
「…………もう、1年が経とうとしてるのか‥‥」
瞳から流れる水を指で拭いながら、小さく呟く。
薄汚れひびの入った窓から見えるのは月明り。まだ夜中のようだ。
あの日から私には胸の奥から響く音は聞こえず、シンフォギアを纏えなくなった。
その代わり、私は滅と迅が残したベルトとキーでヒューマギアやノイズと戦ってきた。一人寂しく孤独に……… それも1週間前に変わった。
「スゥーーーーーーー」
私の横で眠る少女の髪を優しく撫でる。彼女は『
なぜらしいのかと言うと、私にゼロワンドライバーを渡した『鳴滝』と言う叔父さんが彼女の事をそう呼んでいたから。
「‥…………‥‥」
でも私はそうは思ない。何でって彼女、『立花小夜』。
記憶喪失の少女で小夜の名前は必死に
ちなみに立花って聞いた時、彼女の脳内にはオレンジ色の服に流れ星のようなバッチを付けた。男性が浮かび上がったとか。記憶を失う前の知り合いに立花って苗字の人がいたのかな?
されど、隣に眠る彼女の人肌は温かった。
お疲れさまでした。
やっとIF編の主人公の名前が出てきましたね。オリジナルライダーについては後の回にて。
失ったモノと新たに手にしたモノ。
心の傷が癒えぬ中、新たな出会いが彼女達を待つ。