夜空を照らす、シリウスへ 作:中人間
続けられるように頑張ろうとは思います。
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誰にだって、多かれ少なかれ
実はオタクだとか、テストで悪い点だったとか、誰が好きだとか、例をあげたらキリがない。事の重大さに差はあれど 、秘密が全くないという人間は存在しないと断言していいだろう。
……もし居るとするなら、それはきっと気味が悪い。
人間には自己を自己たらしめるため、他人とは共有しない部分、いわゆる精神的なパーソナルスペースは必要だ。その領域は、秘密にすることで壁を作り誰にも介入されず、否定されない。故に確固たる自己を保てる。否定されるのが怖いのだ、結局。正確に言えば、否定されることで瓦解してしまいたくない 。その臆病から秘密というものはうまれるのだと思う。
秘密は誰にも触れられてはいけない。秘密がないのは自己がないのと同義である。
かくいう私にも大きな秘密がある。
実は人生2回目である。そして、ここがどんな世界であるか知っている。私が幼い頃、流行っていたアニメ——ゲームもあったが——の世界である。
まさか前世で再三読んだ異世界転生を、自らも体験するハメになるとは思わなかった。
前世の私はどこにでもいる普通の女子高生だったと思う。あるとき死んで、そして第二の生を得た。物心つくころには、漠然としたものではあったものの、すでにかつての記憶があった。それを前世のものだとは理解してはいなかったが、なぜか聞いたこともないのに日本語が喋れた。
バリバリの日本人の両親の元に産まれたが、彼らは世界を股に掛け働いていて、当時の私は日本に住んだことはなかった。仕事人な彼らは家でも一切日本語は喋らなかった。それにもかかわらず私が無意識にこぼした日本語に、彼らは大いに驚いた。まあ当然の帰結であろう。
幸いなことに気味悪がられることはなく、むしろ天才児だともてはやされた。やめてくれ。そんなのでは無い。彼らは仕事の腕はすごい様だがどこかフワフワしているのだ。
天然がすぎる両親に時々閉口することはあるものの、とてもいい人であったのでなのも言えず、愛されてるなぁと他人事のように思いながらも実際のところ満更でもなかった。もし前世の記憶がなかったら、とんでもないわがまま娘になっていたのだろうななどと妄想して、ゾッとする。うん、まあそういう意味では良かった……のか?
ともかく、私は幼児と言うには些か大人で、大人と言うには不安定なお子様であった。羞恥心から手伝ってもらったりするのを遠慮したせいか、ワガママなマセガキと思われていたと思う。働いている両親の代わりに私の世話をしてくれたお手伝いさんの、どう扱ったらいいか分からないという表情を今も覚えている。そらそうだわな、片手でおさまる歳の子供が、1人でできると言い張って色々なことをこなしているの光景にさぞ困惑しただろう。
そんなふうに過ごしていたある日、私の全てがここから変わった。
公園に行ったとしても同年代の子供とは遊ばず、1人砂場に絵を描いている私を心配した両親が入れた幼稚園。その登園初日、挨拶に寄った職員室。そこでついていたテレビから聴こえた単語——『フットボールフロンティア』——そして、飛び交う歓声と必殺技の数々。それを見た時、唐突に全てを理解した。ああ、ここは私の知っている世界であると。そして、同時に私のシラナイ世界であると。
その日は私の5回目の誕生日であった。
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テレビに釘付けになって動かなくなった私を見て、両親は何を勘違いしたのか、私はサッカーに興味があるのだと思われた。あれよあれよという間にクラブチームに入れさせられ、辞める理由も見当たらなかったのでなんだかんだずっと続けている。
かつてインドア派だった私は、運動が苦手で苦労した記憶があったから、幼いうちにやっておこうと無理しない程度に運動していた。前世の記憶というアドバンテージがある頭脳も、異なる国で育ったものだから知識はあまり活かせない。それでも、精神的には年上だから、同級生の子供達に負けるのは嫌で、本をたくさん読んだ。とにかく、今世は後悔したくないから、勉強も運動もがむしゃらに頑張った。
サッカーを続けたのだって結局のところ
……なんだか大人気ないな。
そうして何年か続けたサッカーも、努力の甲斐あってか女子の中ではかなり強い部類に入れたのではないかと自負している。
時は経ち、中学に上がるのに際し日本に来た私は、知り合いのすすめでいわゆるお嬢様学校に通い始めた。
お金持ちの子供が多いその学校は、あまりスポーツは盛んではない。サッカー部に入部はしたがとくに大会には出ていない。
そもそも「サッカー」と銘打ってはいるものの、サッカーをまともにできるメンバーがいない。地域推薦でその学校に入った子たちだけで構成されており、人数的には試合はできるものの、サッカー経験がないものがほとんどだ。彼女たちは地元枠ということで入学したはいいが、なにぶん自分たちは庶民なもので、ブルジョワたちとの部活動には参加しずらいとの談。
よってお金持ちのご息女方が一番参加しないであろうサッカー部を選んだそうだ。わからなくもない。だって少なくともお嬢様方は汗かいてスポーツをやるイメージがない。うちの学校の盛んな運動部と言えばテニス部とかだ。それも趣味程度のもので、あらあらうふふと茶会をしてるだけであまり活動はしていない。
ちなみにサッカー部にはちゃんとスポンサーはついている。居場所が無くなる!と危機感を覚えた部員のひとりが、少し仲良くなったどっかの会社のご令嬢にねだったら、スポンサーとしてその子のお父様の会社がついてくれたらしい。小悪魔かな?近ごろのJCは逞しいなと感心した。
まあそんなこんなでサッカー部に逃げてきた彼女たちは、サッカーは全くできないのだそうだ。私がサッカーをやっていたことを知ったとき、すごく申し訳なさそうな顔をして色々なことを教えてくれた。
そう、そんなこんなであまり日本では活動をしなかったのだ。
にもかかわらず私に届いたのは、『FFI日本代表選手選考会のお知らせ』。
日本ではひとつも試合は行っていないのに一体どこで私のことを知ったのか。
同じ部活の仲間たちは、私がそのようなものをもらえる実力者だと知って驚いていたものの、祝福してくれた。おめでとうの言葉に、ありがとうと笑顔で返してはいたものの私の頭はとても混乱した。あの時の表情は引き攣っていなかっただろうか。
いや、怖すぎる。そもそも向こうの国にいたころもあまり試合には出ていなかった。私は身長が低いから、日本人に比べてフィジカルの強い選手が多いあちらでは使いずらい。だから知る機会なんてほんとになかっただろうに。
ならば、なぜ。
何か思惑があるのか、或いは。どれだけ考えてもなぜ自分が呼ばれるのかわからなかった。
わからないことを考えていてしょうがないと、早々に諦め招待に応じることにした。大人の考えることなんかは、大人を経験していない私にはわからないだろう。それに、別に行くのが嫌なわけじゃない。だって前世も含め人生で一番頑張ったことだから。その頑張りが認められたみたいで純粋に嬉しかった。
——がんばれ、応援してるから。部活仲間のその言葉を背に私はスタジアムへ向かった。
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見事なまでの蒼穹だ。
人々の歓声がスタジアムに響き渡る。たくさんの人間が立ちふさがる廊下を、うまくよけながら歩を進める。
人々の興奮は、不機嫌そうに靴音を鳴らしながら歩く私のことをまるで意に介さない。それほどまでに場は浮き立ち、対して捻くれ者の私は平静で冷めていた。やっぱ来なきゃ良かったかも。少し後悔する。
こういうの苦手なんだよな昔から。一緒に盛り上がれないというか、なんというか。みんながテンション高いとなんだか萎える。周りのあまりのテンションの高さに少し辟易する。さながら祭りのときカップルの間を抜けているときのようだな、と思いながらも歩みは止めない。いやまったく。素直じゃないな、私。
やがて、スタジアムの中にたどり着いてあたりを見渡すと、これまた浮ついた雰囲気の同年代であろう少年少女が目に入った。
どうやら同じ学校の仲間同士で固まっているようだ。そんな中に堂々と割って入れるほど私はメンタル強者じゃないので、空いている席を探すためゆっくり歩きながら目を配った。
代表候補の座席側はぎゅうぎゅうな観客席とは違い、少し人数に余裕がある。移動する時にすれ違う人に気を使う必要もなく、スムーズに移動できた。
色とりどりのユニホームに個性的な髪型。座席に座っている後ろ姿をぼんやりと見ながら歩く。冷静に考えたらすごいな、同じユニホームの選手がいるってことは、同じチームから何人も代表候補がいるわけだろ。強すぎるな、個性も、能力も。
しばらくすると空いている席を見つけた。そこはトイレや少しの物販がある建物内とのゲートで日陰になっており、ああなるほどと納得した。そんなに暑くないのであれば明るい場所で見るほうがいいのだろうな。それにここは場所の都合上スクリーンが少し隠れてしまっている。でも前列にいけばきっと見えるだろうが、大人数で座るには都合が悪いのだろう。
そんなことを気にしなくて良い私は迷わずそこに座る。周りが仲良さげな中、ひとりでいて気を張っていたためだろうか、席に座る時無意識に大きく息をついた。なによりアウェイ感が酷んだもの。
そうしてぼんやりとしながらグラウンドを見つめる。周りには誰もおらず、少し遠いが、さっき後ろを通ってきた子たちの会話がよく聞こえる。私と同様に日本代表の候補者であろう子供たちの希望に溢れる会話——「楽しみだね」、「誰が選ばれるのかな」、「緊張してきた」——初々しいな。いいなあ若いって。なんだか年寄りじみた考えになっている自分を自嘲する。
少なくとも今は、というか見た目は彼らと同じくらいなのだから、はたから見たら私も同じようなものなんだろうな。
——わあっ、と歓声が聞こえてきて一気に意識が引き戻される。グラウンドの中心に向かってFFIの旗を持った人たちが入場していた。
「さあついに、日本全国が注目する日本代表、イナズマジャパンの発表は間もなくです!」その言葉とともに人々の熱気がいっそう増し、スタジアムを飽和する。アナウンスのテンションも心做しか上がり、声がうわずっている。興奮冷めやらない様子でいうアナウンスの「スクリーンにご注目ください」と言われるがまま視線をそちらに向ける。
目を向けた先、ステージの上に登場したのは、恰幅のいい中国風のオジサン。あれが伊那国雷門イレブンの監督……。確かに見た目的に彼は奇天烈な策を使いそうだ。掴みどころがなさそう。名前は……ええと、なんだったか。きん…
しんっ……とあたりが静まり、少しの張り詰めた空気が広がる。
注目したスクリーンの先、当世風な演出とともに今は同年代の、いかにも利発そうな子供たちが映し出される。
「
これから日の丸を背負ってたたかう選手たちの名前が呼ばれる。やはり
にしても豪華な。さすが日本代表、オールスターと言ったところか。あの雷門のエースストライカーに、伊那国雷門イレブンのフォワード。確か灰崎…彼はもともとは伊那国中のメンバーではなくて星章学園から移ったんだっけか?あまり前のことなので覚えていない。それに加えエイリア…もとい永世学園の選手。おお、本物だ。なんだかすごい気分だ。昔は文字通り次元が違う人たちだったから。
転生したものの、せっかくの超次元試合は色々忙しかったから、リアルタイムで見られたのは王帝月ノ宮中と雷門中の決勝だけだった。でも、さすが。手に汗握るというか…うん、なんて言ったらいいか。月並みな言葉だけど、とても感動した。惹きつけられた。私もあんな試合ができたら……やめよう。中途半端な私にはきっと無理だ。
とりあえず、新しい物語の始まりを見届けよう。なんだかんだいって、私はこの話も嫌いではないから。新たなイナズマジャパンの誕生を見届けて、スタジアムの外の露店に売っていた『トゲもじゃ焼きそば』でも食べよう——
「——
「——
——え……。
……は?カツミヤアマネって言った今?蝎宮さんって私以外にいるのか?いやいやあの映像見る限り明らかに自分なんだが?てかアレいつの?ムリムリムリムリ受け入れらんねぇ。は、え、まじか。
冷や水を浴びせられた、という表現が正しいかわからないが、まさにそんな気分に陥った。心臓がキュッとなって、一瞬呼吸が止まる。衝撃、不安、戸惑い、とにかく様々な感情が渦巻き私の口からは「あ、」だとか「え」だとか、間抜けな声しか出てこない。
えっ、まじですか。いやいやいやいやどこで代表入りフラグ立てた?身に覚えがないが??もしかしてあれか?転生特典的な何かなのか、いやいらない切実に。普通に試合見て応援するくらいでいいのだが。
えええええ、ほんとに?うれしくないわけでははないが……。
混乱に混乱を重ねる。情報処理能力が著しく低下している。何も考えられない。どれだけ頬をつねっても痛いし、スクリーンに映っているのはどう考えても私だし。
うん。
ひ、ひとまず……
露店にあった生ドーナツでも食べてこよう…。
ピコピコとなるメッセージツールの通知は聞こえないふりをして、そそくさと席を立った。
✳︎
人っ子一人いない通路を歩いていると後ろから手を引かれた。
「いたた……なんだよう、急に」
「お前……」
「おぉ君か。久しいな。」
振り返ると、苦虫を噛み潰したような顔があった。
「目つきが悪いね、どうかしたのかな?」
今はまだ何者でもない青髪の少年は 、私の手首を強く握った。
文章の書き方あってますかね。
あってたとしても「――」とか「……」とか多すぎですねこれ。あと「、」も。ぼちぼち直していけたらなと思います。
あと主人公の性格。かなりブレブレだなと思った方いると思いますが、全くそのとおり。優柔不断というか、めんどくさい感じです。負けず嫌いかと思えばすぐ諦めるような言動をするし、嫌だと思っているのにやったりと、結構矛盾した行動をします。
でも一応、なんだかんだ言いながら目標はしっかりやる子です。体裁は気にしますが。