Y.U.I.~都市伝説ファイル~   作:ドラ麦茶

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中学の同級生 第3話 今井亜弥

8月31日(木) PM 7:20

 

 

 

 今日、あたしは1日中憂鬱だった。まあ、たいていの子供は8月31日には憂鬱になるものだろう。7月下旬に始まった長い夏休みが終わる日。休みの日々が楽しければ楽しいほど、たまった宿題という名のツケが、この日に返って来る。夏休みがあと10日あれば……あと1週間あれば……あと1日あれば……多分みんな、そう考えていると思う。

 

 もっとも、あたしは宿題が終わっていないわけじゃない。夏休みの最終日になってもまだ宿題が終わっていないような人って、よっぽど計画性のない人。あたしはそんなタイプではない。夏休みの宿題なんて、やろうと思えば、そんなに無理しなくったって7月中に終わらせることができるもの。高校生にもなればなおさら。高校の宿題の量って、小学校や中学校と比べて、圧倒的に少ない。その分勉強は自主的に行え、ってことなんだろう。だから、あたしの宿題はもうとっくに終わっていて、夏休みの勉強は、ほとんど1学期の復習と2学期の予習。明日から始まる学校の準備は万端。

 

 それでも――あたしは憂鬱。できることなら、学校なんて行きたくない。

 

 学校に行きたくない。

 

 あたしくらいの年頃なら、誰でも1度はこう思うはず。でも、ほとんどの人は思うだけ。実際学校に行けば、それなりに楽しんでいるものだ。授業は退屈かもしれないけど、学校にはたくさんの友達がいるのだから。同じ年代の人たちがあんなにたくさん集まるような場所って、学校くらいしかない。学校が無ければ、友達なんて、多分そんなに多くできるものじゃないって、あたしは思う。学校は交友関係を学ぶ場所。どこかの偉い先生が、テレビか何かでそんなことを言っていた。

 

 ――だったら、何であたしは学校なんか行ってるんだろう。

 

 ふう。またひとつため息。今日何回目だろう? 数えてないけど、もうすぐ3ケタ行くんじゃないだろうか? 明日からまたあの寂しい日々が始まるのかと思うと、ため息しか出てこない。本当に憂鬱だ。

 

 高校に入学してから5ヶ月が経つけど、あたしにはまだ、友達と呼べる人がいなかった。あたしは元々人と話すが苦手で、特に、知らない人にこちらから話しかけるなんて、あまり経験が無い。なのに、あたしが入学した北高には、中学時代の友達が誰もいなかった。周りは知らない人ばかり。自分から友達を作るなんてあたしにはできなかったし、話しかけられてもうまく受け答えができないから、そのうち、誰も話しかけてこなくなった。気がつけば、あたしはクラスから1人、孤立した状態。自分のクラスなのに、他のクラスに迷い込んでしまったかのような違和感。その状態が4ヶ月続き、ようやく夏休み。友達のいない夏休みというのもそれはそれで寂しいものだけど、学校に行くよりは何倍もマシだった。でも、それも今日で終わり。明日からはまた、勉強をするためだけの学校に行かなければならない。

 

 中学の時はそうじゃなかった。多いとは言えなかったけど、一応、あたしにも友達と呼べる人がいた。休み時間にはおしゃべりの輪の中に入れてくれたし、放課後は街へ遊びに行ったり、お休みの日にはお出かけもした。あたしはもっぱらみんなの話を聞き、みんなについて行く専門だったけど、それが楽しかった。でも、中学卒業と同時に、みんなとは離れ離れ。今では連絡も取っていない。あたしはこんな性格だから自分から連絡なんてしないし、みんなも新しい生活に忙しいだろうから、あえてあたしに連絡したりもしないだろう。あたしは、1人。

 

 玄関が開く音がした。どうやら、お父さんが帰ってきたらしい。いつも帰りは遅いけど、そう言えば、今日は早く帰るって言ってたっけ。そのせいか、今日の母は朝から随分機嫌がよく、夕ご飯は焼肉だって、張り切っていた。

 

 台所から玄関に向かう母の足音が聞こえた。

 

「お帰りなさい、利夫さん」

 

 まるで、10代の少女のようなときめきを含んだ声が、2階のあたしの部屋まで聞こえてくる。お父さんからカバンを受取り、鼻歌を歌いながら居間で背広とネクタイをハンガーにかける母の姿が容易に想像できた。そして、こう言っているに違いない。「お風呂、先に入る? もう沸いているわよ」

 

 母のこういった態度には、いい加減、うんざりする。

 

 母には、なんと言ったらいいかな……難しいけど、あの人の中には理想の家族像ってものが存在していて、それを忠実に実行しようとしているの。

 

 例えば、お父さんが帰ってくる。母は、必ず玄関まで迎えに出る。1日働いた主人を出迎えるのは妻として当然のこと、と言わんばかりに。

 

 お父さんは帰宅後まずお風呂に入るのが普通。だからお風呂は、お父さんが帰ってくる頃には必ず沸いている。と、同時に、夕飯の支度もほぼできている。お風呂より先にご飯を食べることもあるからだ。お父さんがお風呂と夕飯、どちらを希望しても、どちらでもできるよう、常に準備している。これも、妻の務め、と言わんばかりに。

 

 これが、母にとっての理想の妻像なのだ。

 

 そして、その理想像は、あたしに対しても出来上がっている。

 

 理想の子供像だ。

 

 例えば、学校。

 

 あたしの通う北高は、市内でも一番の進学校だ。ここに娘を入学させるのが母の夢だったらしく、あたしは小さな頃から北高北高と言われ続けた。そして、自分で言うのもなんだけど、あたしは勉強はワリとできる方で、北高に受かることができた。でも、本当は北高なんて行きたくなかった。中学の友達は、みんな南高や西高を選んだから、あたしもそっちに行きたかった。でもその高校は、母に言わせれば、二流、三流の学校。当然認めてくれるわけも無く、結果、友達のいない高校に入学したあたしは、孤独な1学期を過ごし、寂しい夏休みを終え、また孤独な2学期を迎えようとしている。

 

「亜弥、もうすぐご飯にするから、少し手伝って」

 

 1階から母の呼ぶ声が聞こえた。母の理想の家庭像の中には、お父さんがお風呂に入っている間に娘と2人で食事の支度、というのがあるのだろう。迷惑な話だ。

 

 でも、逆らうことはできない。

 

 母は、自分の理想の家族像が乱されることを、決して許さないのだ。

 

 高校を選ぶときもそう。あたしが、北高ではなく南高か西高に行きたい、と言ったとき、母は烈火のごとく怒って反対した。居間のテレビの上にあるブロンズ像で、殴られるかと思ったほど。実際あのまま反対してたら、殴られたかもしれない。

 

 …………。

 

「はーい」

 

 あたしは返事をし、仕方なく下に降りていった。

 

 

 

 

 

 

「いただきます」

 

 台所からお茶碗とグラスを運び、ご飯をよそったところで、お父さんがお風呂から上がったので、夕食の始まり。母は、肉や野菜を次々と鉄板の上に置き、お父さんは次々とおいしそうに食べた。あたしも、あまり食欲は沸かないものの、母の手前、とりあえずおいしそうに食べる。その様子を見た母は、さも満足そう。

 

 ――息がつまる。

 

 おいしくもない食事を、おいしいフリをして食べるのに、どれだけ気力を使うことか。いや、本当はおいしいのかもしれないけれど、あたしにはその味が全く感じられないのだ。母の機嫌を損なわないように気を使いながらの食事では、味など判るはずもない。

 

 ふう。明日から学校ってだけでも憂鬱なのに、この、一見和やかに見えて、実は窒息しそうな食卓。あたしの安らげる場所は、2階の自分の部屋しかないのだろうか?

 

「コラ、亜弥。箸をかむのをやめなさい」

 

 ――しまった!

 

 考え事をしていて、あたし、ついやってしまった。この癖。

 

 小さい頃から、食事中に気を抜くと、つい箸をかんでしまうのだ。何度も母に注意されている、この癖。

 

 どうしよう……。

 

 あたし、金縛りにあったように動けなくなる。

 

 ダメなのだ、これは。この癖を注意されるのだけは、ダメなのだ。

 

 普通は、謝れば終わる。しょうがない子ね、そう言われて、終わり。でも、そうでもない日もあるのだ。もし今日が、そうでない日だったら……。

 

「あ……ご……ごめん」

 

 あたしは、しぼり出す様な声で、そう言った。

 

 母の反応を待つ。

 

「まったく、いつまでたってもその癖、直らないんだから」

 

 母は呆れたような、しかし、どこか嬉しそうな声でそう言った。

 

 ふう。よかった。どうやら機嫌を損なわずにすんだようだ。

 

 その後、母は終始上機嫌のままで、何事もなくその日の食事は終了した。あたしは後片付けを少し手伝い、そして、部屋に戻った。

 

 あたしはベッドの上に横になり、じっと、天上を見つめた。

 

 ――また、嫌なことを思い出してしまった。

 

 思い出したくない記憶。しかし、箸をかむ癖を母に注意されるたびに、どうしても、思い出してしまう。7年前の、あの日の記憶を。

 

 あの日が無ければ、あたしは母に怯えることはなかっただろう。あの日が無ければ、あたしはもっと幸せな生活を送っていたはずだ。

 

 あの日が無ければ――。

 

 

 

5月9日(日) PM 3:35 (7年前)

 

 

 

 5月9日日曜日。今日は母の日。友達の明奈ちゃんに誘われ、あたしと結衣ちゃんと奈々ちゃんの4人は、駅前のショッピングセンターにやってきた。お母さんにプレゼントする物を買うの。

 

「んー、いろんな物売ってるね、何買おうかなあ」

 

 明奈ちゃん、すっごくうれしそうに、店の中を次々と見て回っている。結衣ちゃんと奈々ちゃんも負けないくらいうれしそう。あたし、ついて行くのがやっと。

 

「ねえ、亜弥ちゃん、何買おうか?」

 

「え……? ん、と……」

 

 奈々ちゃんに言われ、あたし、フロアを見回して考える。いろんな店がある。お花屋さん、化粧品屋さん、果物屋さん、文房具屋さん、洋服屋さん、雑貨屋さん、靴屋さん、宝石屋さん……は、ちょっと小学3年生には無理だよね。うーん、どうしよう? 本当にいろんなお店があり、それぞれのお店がいろんな物を売っている。あたし、こういうのダメだ。選べない。優柔不断ってやつ。

 

「……みんなが選んだ物でいい」

 

「そう? ねえ、結衣ちゃんは何がいい?」

 

「うーんとね……」

 

 3人はあれこれ見て回りながら、あーでもないこーでもないと話し合っている。で、結局、洋服屋さんに入ることになった。

 

「あ! これかわいい!」

 

 入るなり、明奈ちゃんが手に取ったのは、ピンクの花柄のハンカチ。他にもいろんなハンカチがあって、いろいろ見比べていたけど、やっぱりそれが気に入ったみたいで。「あたし、これにしよっと!」

 

「えー、明奈ちゃん、もう決めたんだ。ねえ、奈々ちゃん、どうする?」

 

 結衣ちゃんと奈々ちゃんは、ハンカチの隣の棚にあるスカーフを見ている。そこにもたくさんの種類があって、2人ともあれこれ比べながら迷っているけど、やがて結衣ちゃんは薄いグリーンのスカーフ、奈々ちゃんはクリーム色のスカーフを選んだ。

 

「後は、亜弥ちゃんだけだね。亜弥ちゃん、何にするの?」

 

 うーん、困った。全然わかんないや。ハンカチもいいと思うし、スカーフもかわいい。でも、他の物がいいかな? どうしよう? いろいろ見ていると、お母さんにはどんなものがいいのか、判らなくなってくる。

 

「亜弥ちゃん、あたし達、先に買ってるね」

 

 明奈ちゃん達、先にレジに行っちゃった。あー。早く決めないと。置いて行かれちゃうことは無いと思うけど、待たせちゃ悪いもんね。でも、どうしようかな……。明奈ちゃんと同じハンカチにしようかな。

 

 と、そのとき、洋服屋さんの奥のハンガーにかかっている、赤いコートが目に入った。

 

 あたし、吸い寄せられるように、そのコートの方へ行く。

 

 そう言えば春になる前、「今年の冬は新しいコート買わなくちゃね」って、お母さん言ってたっけ。お母さんのコート、もう何年も着てるみたいで、ボロボロだった。

 

 値札を見ると、3000円。コートの値段としては安いと思う。まあ、これから夏だし、バーゲン価格ってやつかな。ちょっと高いけど、おこづかい全部つぎ込めば買える。でもそうすると、来月まで、お菓子もジュースも我慢しなくちゃいけない。どうしようかな? やっぱり、ハンカチにしようかな。あっちは500円とか1000円とかだし。うーん。でもやっぱり、これがいいな。

 

「え、亜弥ちゃん、このコートにするの?」

 

 レジでお金を払った明奈ちゃん。店員のお姉さんに綺麗にラッピングしてもらったハンカチを大事そうに持って、あたしのところに戻って来た。

 

「でも、結構高いよ、これ」

 

 結衣ちゃんもやってきて、値札を見てそう言った。

 

「うん。でも、あたし最近、お母さんに叱られてばっかりだから」

 

 そう。最近あたし、お母さんに叱られてばかり。例えばこの前の算数のテスト、あたしは80点だった。普段の点数と比べると悪い方だけど、でも、そのときのテストは結構難しくて、みんなもっと悪い点だった。明奈ちゃんなんか、40点だったもんね。ナイショだけど。でもお母さん、「こんな点数じゃ、良い学校に入れませんよ。もっとしっかり勉強しなさい」と、叱った。他にも、お皿洗いのお手伝いでコップを割っちゃったり、お買い物でにんじんを買い忘れたり、いろいろ失敗しちゃってる。だから、少しでもお母さんに喜んでもらいたい。

 

「うん、いい。あたし、これ買う!」

 

 あたしはそのコートをレジにもって行き、財布の中の千円札3枚全部、レジのお姉さんに渡した。すっごく丁寧にラッピングしてもらい、リボンもつけてもらった。うん。お母さん、喜んでくれるかな。

 

 家に帰ったあたし、玄関のドアを静かに開ける。お母さん、今日はどこかに出かけてたみたいだけど、もう帰ってるかな? あ、お母さんの靴がある。もう帰ってるのか。じゃあ、こっそり2階に上がらないと。プレゼントを渡すのは、夕ご飯の後にするの。ビックリさせたいから、気付かれないようにしなきゃ。ドアを静かに閉め、そして、抜き足、差し足、忍び足、で、階段を上がる。部屋に入り、ふう、気付かれなかった。あたしはコートを押入れの中に隠した。さて、まだ6時前か。ご飯は普段7時過ぎだから、居間でテレビでも見ようかな。

 

「亜弥? 帰ってるの?」下でお母さんの声がした。

 

「あ、はーい」

 

「帰ったら、ただいまくらい言いなさい!」

 

「あ、ごめんなさい」

 

「まったく……」

 

 ……うーん。あの声のトーン。お母さん、今日は機嫌が悪いみたい。あたし、何かしたかな?

 

 しょうがない。テレビはやめておこう。宿題は終わってるけど、勉強をしようかな。明日の予習。下手に遊んでたりすると、余計な雷が落ちてくるかもしれないし。あたしは机に向かい、算数の教科書とノートを開いた。

 

 しばらく勉強していると、また、お母さんの声。「亜弥、ご飯の支度、少し手伝って!」

 

「はーい!」

 

 うーん、やっぱり機嫌が悪そう。あたし、すぐに教科書とノートを片付け、1階に下りていった。

 

「これ、運んでちょうだい」

 

 お母さんはそう言って、お茶碗とグラスののったお盆を渡した。あれ? あたしとお母さんの分しかない。お父さん、今日はまだ帰ってないのかな? お仕事の日なら珍しいことじゃないけど、今日は日曜で、お仕事は休みのはず。どこかに出かけるとは言ってたけど、どこに行ったんだろう? もしかして、お父さんがまだ帰ってないから、お母さん、機嫌が悪いのかな?

 

「早くしてちょうだい」

 

 お母さんがイライラしたように言ったので、あたしは慌てて居間に運ぶ。テーブルの上に茶碗とグラスを並べると、また台所に戻り、今度はおかずを運び、ご飯をよそった。お母さんも居間に来た。

 

「いただきまーす」

 

 今日のおかずはハンバーグとポテトサラダとおみそ汁。やったね。あたし、お母さんのハンバーグ大好き。上にチーズがのってて、半分に切ると、中にもチーズが入ってるの。トロッとしてフワッとして、とってもおいしいの!

 

 ハンバーグを食べながら、あたし、考える。ご飯が終わったら、いよいよプレゼントを渡すの。思い切って買ったコート。お母さん、喜んでくれるかな? 喜んでくれるよね。うん。どんな顔するだろう? 楽しみだな。

 

 このときあたし、考え事をしていて、無意識のうちに箸の先をかんじゃってた。あたしの悪い癖。お母さんから何度も注意されてるけど、思わずやっちゃうの。そして、今日のお母さん、すごく機嫌が悪いから、

 

「亜弥! 箸の先をかんじゃダメって、いつも言ってるでしょ!」

 

 ものすごく大きな声で怒られた。あたし、ビックリして、慌てて口から箸を離した。でもその勢いで、手がおみそ汁のおわんにあたる。がちゃん! おみそ汁がこぼれる。

 

「何やってるの!」

 

 お母さん、ますますカンカン。すっごく恐い顔。あたし、恐くて、頭の中が真っ白になった。お母さんが台所から布巾を持ってきて、テーブルの上を拭くけど、それを黙って見てるだけ。ごめんなさい、と言って、手伝えばよかったんだけど、何も言えず、何もできなかった。だからお母さん、ますます怒る。

 

「もうご飯は終わり! 部屋に戻ってなさい!」

 

「……あ、でも……」この後、お母さんにプレゼントをあげるはずだったのに。

 

「早くしなさい!」

 

 あたし、これ以上お母さんを怒らせちゃいけないと思い、仕方なく部屋に戻った。

 

 ……またやっちゃった。

 

 涙をぬぐいながらベッドの上に横になる。

 

 今日のお母さん、機嫌悪かったから、気をつけなきゃいけなかったのに、つい、箸をかんじゃった。あたしってダメな子だ。プレゼント、渡しづらくなっちゃった。どうしようかな……。とりあえずしばらく待って、お母さんの機嫌が直ったら、さっきのこと謝ろう。それからプレゼントを渡そう。大丈夫だよね。ちゃんと謝れば、お母さんはきっと許してくれる。そしたら絶対、プレゼント、喜んでくれるはず。

 

 9時過ぎ。そろそろいいかな? あたしは押入れからプレゼントの包みを出した。

 

 ゆっくりと階段を下り、こっそり、居間をのぞいた。夕ご飯の片づけが終わったお母さんは、家計簿をつけていた。機嫌、直ったかな? わかんないけど、あたし、思い切って声をかける。

 

「お母さん」

 

「ん? 何?」

 

「その……さっきは、ごめんなさい」

 

「ああ。もういいわよ。お母さんも、ちょっときつく言いすぎたわ」

 

 ……よかった。機嫌、大分よくなってるみたい。

 

「……それでね、今日、明奈ちゃんたちと一緒に、お買い物に行ったの。母の日のプレゼント買いに。コレ」あたしはプレゼントを差し出した。

 

「え? お母さんに?」

 

「うん!」

 

 お母さん、すっごくうれしそうに受取ってくれた。「ホントに? 何かしら? 開けていい?」

 

「うん。開けてみて」

 

 お母さんは包装紙を丁寧にはがしていく。やがて、赤いコートが姿を見せる。おこづかい全部をつぎ込んで買った赤いコート。あたし、ちょっと得意げになって。

 

「あのね、明奈ちゃんはハンカチを買ったの。結衣ちゃんと奈々ちゃんはスカーフ。でもあたしは、そのコートにしたの。ちょっと高かったけど、お母さん、コートボロボロだったし、欲しがってたし。いつもご飯の支度や掃除に洗濯、大変なのに、あたし、最近お母さんに叱られてばっかりだったから、だから、その――」

 

 うーん。どうしよう。お母さんに、「ごめんなさい、いつもありがとう」そう言いたかったんだけど、うまく言えないや。

 

「――いらないわ」

 

「え?」

 

 あたし、一瞬何を言われたのか判らなくて、きょとんとした顔で、お母さんを見た。

 

「いらない、って言ったの。もう5月よ? これから暑くなるんだし、コートなんか着ないもの」

 

 おかあさんは冷たくそう言って、興味が無いと言わんばかりにコートをテーブルの横に置き、何も無かったかのように、また家計簿をつけだした。

 

 え? え?

 

 何で? 何で? せっかく買ったのに。おこづかい全部使って買ったのに。お母さん、喜んでくれると思って買ったのに。なのに、なのに、なのに!

 

「でもお母さんあたし――」

 

「うるさいわね! いらないと言ったらいらないの!」

 

 お母さんは、テーブルの上の赤いコートを、まるでゴミでも扱うかのように払いのけた。

 

 それを見て、あたしは思う。

 

 あのコートは、あたし自身なのかも。

 

 あたしは、お母さんに拒否されたんだ、きっと。

 

 あたしが、悪い子だから。

 

 算数のテストで80点を取ったり、コップを割っちゃったり、にんじんを買い忘れたり、箸の先をかんだりする、悪い子だから。

 

 そんなあたしのプレゼントするコートなんか、いらないんだ。

 

 あたしなんか、いらないんだ――。

 

 あたしは、捨てられた赤いコートを拾い、部屋に戻り、そして、泣いた。枕に顔をうずめ、声を上げてずっと泣き続け、泣き疲れ、いつの間にか眠っていた。

 

 翌朝。

 

 できることならずっと眠っていたかった。お母さんに会いたくない。でも、あたしは小さな子供。この家を出て行くことなんてできない。だから、お母さんに会わないためには、ずっと眠ってるのがいい。眠っていれば、お母さんに会わなくてもすむ。眠っていれば、嫌なこと全部忘れられる。

 

 でも、そんなことはもちろん不可能で、朝が来ればあたしは目覚めてしまい、学校へ行かなきゃいけない。朝ごはんを食べなきゃいけない。お母さんに会わなきゃいけない。

 

 あたし、のろのろと学校に行く支度をして、下に降りていった。階段のすぐ側が居間。あたし、その場に立ち尽くす。お味噌汁のにおいがするから、居間にはもう、朝ご飯の支度ができてるんだろう。ということは、お母さんも居間にいるに違いない。どんな顔して会えばいいんだろう。

 

 と、居間からお母さんが出てきた。

 

 あたし、ビクってなって、また昨日みたいに怒られるんじゃないかと、うつむいて、体をこわばらせた。

 

 でも――。

 

「あ、亜弥、おはよう」

 

 お母さん、すっごい笑顔で言った。

 

 ……へ?

 

 あたし、意外な展開に、きょとんとして、その場に立ち尽くす。

 

 昨日の、あの恐いお母さんが嘘のように、今朝のお母さんはいつも通りの――ううん。いつも以上に機嫌のいい、やさしそうなお母さんだった。

 

「どうしたの、亜弥? ボーっとしちゃって。早くご飯、食べちゃいなさい。遅刻するわよ」

 

「あ、うん」

 

 あたし、何がなんだかわからないまま居間に入る。お父さんが新聞を読んでいた。あたしはお父さんにおはようを言って、席に着いた。テーブルには朝ごはん。ご飯におみそ汁、海苔、玉子焼きにお漬物。我が家の朝食の定番。お母さんも席について、そして、みんなでいただきます。いつもと変わらない朝。

 

「利夫さん、今日は帰り、早いんでしょう?」

 

「ああ、7時過ぎには、帰れると思う」

 

「よし。じゃあ今日はお母さん、腕によりをかけて、お夕飯、ご馳走作っちゃうわ。亜弥、楽しみにしててね」

 

「え……? あ、うん」

 

 あたし、曖昧な返事をする。

 

 何故だろう? お母さん、まるで昨日のことなんて無かったかのように、すっごい笑顔であたしに話しかけてくる。

 

「ん? 亜弥、どうかした?」

 

 あたしがじっと見つめているのに気がつき、お母さん、不思議そうな顔をする。

 

「あ、え……と……」言いよどむ。うーん、どうしよう? 昨日の事、もう怒ってないのか、聞いてみてもいいのかな? 聞くと、余計な話を蒸し返してしまうみたいだけど、でも、なんかこのままじゃすっきりしないし、思い切って聞いてみよう。

 

「その……お母さん、昨日のこと、もう怒ってない?」

 

「え? 昨日のことって、何?」

 

 ――お母さんの返事は、すごく、意外な言葉だった。あたし、返す言葉が無い。

 

 そんなあたしに、お母さんは、さらに混乱するようなことを言う。

 

「あ、そうそう。亜弥、昨日のお夕飯、ほとんど食べてなかったでしょう? 亜弥の大好きなハンバーグだったのに。半分以上残してたから、夜、お腹空いたんじゃない? ダメよ。ちゃんと食べなきゃ。あ、それとも、 もしかして、おいしくなかった?」

 

 …………。

 

 何だろう? これ、何かがおかしい。

 

 確かにあたしは昨日の夕食をほとんど残した。でもそれ、食べなかったんじゃない。お母さんのハンバーグは大好きだし、全部食べたかったけど、食べさせてもらえなかったんだ。あたしが箸をかんで、お味噌汁をこぼして、お母さんが怒ったから。だから、夜、お腹が空いていたのも事実なんだけど、それ以上に、お母さんに怒られたこと、お母さんにプレゼントを受取ってもらえなかったことがショックで、お腹が空いたなんてこと、気にする余裕は無かった。

 

 でも、何なんだろう? あのお母さんの言い方。

 

 まるで、昨日怒って、プレゼントを受取らなかったことなんて、無かったみたい。忘れてしまったかのような言い方。

 

 お母さんが――判らない。

 

 

 

8月31日(木) PM 9:04 (現在)

 

 

 

 ふう。思い出したくない、忘れてしまいたい7年前の出来事を思い出してしまい、あたし、またため息をつく。あ、やだ、涙。あたし、いつの間にか、泣いてる。

 

 あの日以降、あたしの母を見る目は変わった。そして、気がついてしまった。母の本質に。

 

 母は、自分の理想の家族像を持ち、その実現に必死で、理想を乱されることを嫌い、そして、理想と違うことが起こっても、忘れることができるのだ。

 

 7年前の5月9日。お父さんは帰って来ない。娘は何度注意しても箸をかみ、みそ汁をこぼし、初夏だというのに、コートをプレゼントする。

 

 そんな1日は、母の理想の家族像には無いのだ。

 

 だから、忘れてしまう。

 

 嫌なことがあっても、時間が経てば忘れてしまうのは、誰にでもある。でも、それは忘れるのではなくて、記憶が薄れていくだけ。完全に忘れることなんて、そうそうできるものではない。

 

 でも母は、それができるのだ。本当に、自分の中で無かったことにできる。良いことだけを見て――自分の理想に合った物だけを見て、生きていけるのだ。

 

 そして――その結果、娘が傷ついているなんて、思いもしない。

 

 母のためにと、おこづかいをつぎ込んで買ったプレゼントを受取ってもらえない。行きたい高校に行かせてもらえない。母の理想に合わないから。

 

 ――もし、あたしが母の理想の娘でなくなったとき、母は、あたしのことを忘れてしまうのだろうか?

 

 時々、そんなことを思う。

 

 忘れてしまう。言い換えれば――無かったことにしてしまう。あの日のプレゼント、受取ることを拒否された、あの赤いコートのように。

 

 あの赤いコートは、今でも押入れの奥に眠っている。捨てられないのだ。あのコートは、あたし自身だから。

 

 あたしは母には逆らえない。母が、恐い。

 

 

 

9月3日(日) PM 2:15

 

 

 

 日曜の午後、あたしは駅前のショッピングセンターにやってきた。数学の参考書と問題集を買うため。高校に入学したときに買った問題集は、もう全部解いてしまった。なんせ、クラスに友達のいないあたしは、休み時間は勉強しかすることが無い。北高は進学校だから、休み時間に勉強する人は珍しくなく、勉強さえしていれば、誰も話しかけてこないし、誰とも話す必要が無い。言ってみれば、参考書と問題集が、あたしの友達なのよね。だから、無くなるとすっごく困る。このショッピングセンターには全国にチェーン展開してる大きな書店が入っていて、参考書などの品揃えが良く、あたしのお気に入りの場所でもある。あたしはいくつかの参考書と問題集を見比べ、良さそうなのを買い、本屋を出た。

 

 さて、これからどうしようかな。他に特に用事は無いけど、せっかく駅前まで来たんだし、このまま帰るのはちょっともったいない。あたしは、少しショッピングセンター内を見て回ることにした。

 

 ……あれ?

 

 今エスカレーターで上ってきた男の人……お父さんだ。女の人と、腕を組んで歩いてる。母ではない、長い黒髪の、きれいな女の人。歳は母と同じくらいだけど、ジーパンにTシャツというラフな格好だからかな? 母よりも随分若く見える。

 

 お父さん、確か今日は、会社の取引先の人とゴルフに出かける、とか言って、朝早くに出かけていった。それが何故、駅前のショッピングセンターで、母でない人と腕を組んで歩いてるんだろう……。

 

 2人はエレベータそばの婦人服売り場で、秋物の服を見ながら、楽しそうに話をしていた。まるで、本当の夫婦みたい。お父さん、母と出かけることは、最近ほとんど無いのに。

 

 と、お父さんと目が合った。

 

 お父さんは――右手を上げ、あたしの方へやってきた。

 

「よう、亜弥。買い物か?」

 

「うん……参考書、買いにね」あたしは本屋の紙袋を見せる。

 

 お父さんの後ろから、黒髪の女の人もやってきた。そして、あたしを見て、笑顔で言う。「こんにちは、亜弥ちゃん」

 

 あたしも笑顔で答えた。「こんにちは――貴美子さん」

 

 

 

 

 

 

 あたし達はショッピングセンター内にある喫茶店に入った。あたしはアイスミルクティーを、お父さんと貴美子さんは、アイスコーヒーを注文する。

 

 この女の人は、大沢貴美子さん。あたしの産みの親。あたしの――本当のお母さん。

 

 話は少し複雑になるんだけどね。

 

 お父さんと貴美子さんは今から17年前に結婚。翌年、あたしが産まれたんだけど、あたしが1歳のときに離婚しちゃったの。で、その後お父さんは、今の母――こんがらがるから、礼子さんと呼ぶね――と出会い、再婚。でも実はお父さんと礼子さん、あんまりうまくいかなかったみたい。で、8年位前に、偶然街で、お父さんと貴美子さん、再会してしまったの。その後、2人は礼子さんには内緒で頻繁に会うようになった。初めのうちは元夫婦という形で、あたしのことや、その他離婚後の生活の相談とかで会っていたらしいんだけど、会ううちに2人とも、もう1度やり直したい、って思うようになったらしいの。で、去年の今ごろだったかな、お父さん、あたしに貴美子さんを紹介したの。あたし、礼子さんが本当の母親じゃないなんて思いもしなかったから、そのときは、すごくショックだった。でも、今ではそれを受け入れている。だって貴美子さん、すごくいい人なんだもん。あたし、かなり人見知りする性格だけど、貴美子さんとはすぐ打ち解けた。やっぱり、本当の母子だからかな? でも、母子って言うより、同年代の友達って感じがする。

 

「亜弥ちゃん、学校は楽しい?」

 

 貴美子さんはアイスコーヒーをひと口飲み、言った。

 

「あ、はい。楽しいです」

 

 あたし、ウソをつく。本当は楽しくなんて無いけど、貴美子さんに心配をかけたくない。

 

「そう。良かったわ。そう言えば、1学期のテスト、どうだったの? 聞いていい?」

 

「えっと……12位でした。学年で」

 

「12位? 本当に? 北高で12位? すごいじゃない!」

 

 貴美子さんは本当にうれしそうにそう言った。

 

 あたし、休み時間に勉強ばかりしてるから、成績だけは悪くない。その理由が、友達がいないから、って言うのがちょっと寂しいところだけど。でも貴美子さん、あんなに喜んでくれて、あたしも本当に嬉しい。北高に合格したときも、すっごく喜んでくれたっけ。北高なんて、母に無理やり通わされているようなもの。本当は行きたくないけど、貴美子さんが喜んでくれるのだけが唯一の救い。

 

 それからあたしたち3人は、1時間ほど楽しく話をし、喫茶店を出た。

 

「すまん、ちょっと、トイレに行って来る」

 

 喫茶店を出ると、お父さんは1人トイレに向かった。あたしと貴美子さんは近くの休憩所で待つことにする。

 

「ねえ、亜弥ちゃん」

 

 休憩所の椅子に座ったところで、貴美子さん、なにやらすっごく真剣な表情になった。「私と利夫さんは、もう1度やり直したいと思ってる。多分、そう遠くないうちに、利夫さんと礼子さんは離婚すると思うの。亜弥ちゃん、反対?」

 

「――――」

 

 突然のことで、一瞬言葉に詰まる。

 

 でも貴美子さん、すっごく真剣な表情だから、あたしも、真剣に答えなくちゃいけない。お父さんが礼子さんと別れて、貴美子さんと一緒になるのは、反対しない。ううん。むしろ、いいことだと思う。

 

「あたしは……良いと思います」思った通りのことを口にする。

 

「そう。ありがとう」貴美子さんはにっこりと微笑んだ。でもまたすぐに真剣な表情に戻り。「私、今度礼子さんに会おうと思うの」

 

「え――」

 

 あたし、ビクッと、大きく震えてしまった。

 

 貴美子さんが、礼子さん――母に会う。

 

 母はどう思うだろう。あたしの本当の母親が現れ、お父さんとやり直そうと思っている、と、知ったら。

 

 母の持つ理想の家族像。あたしには理解し難いものだけど、これだけは断言できる。母の理想の家族像の中に、お父さんとよりを戻そうとする元妻は存在しない。お父さんと離婚する、なんてことは存在しない。

 

 しかし、現実には存在するのだ。母の理想像は、あくまでも理想でしかない。その現実を突きつけられたとき、母はどうするだろう? 想像すると、震えが止まらない。本能が警告する。2人を会わせてはいけない。

 

 でも、続く貴美子さんの一言に、あたしの考えは180度変わる。

 

「利夫さんと礼子さんが離婚したら、私はあなたを引き取りたいと思ってる」

 

「――――」

 

「もちろん、利夫さんもそれを望んでいるわ。家族3人、もう1度やり直しましょう、亜弥」

 

 ……どうしよう。あたし、嬉しくて言葉が出ない。貴美子さんが、あたしのお母さんになってくれる。そりゃ、始めから本当のお母さんなんだけどさ。でも、あたしを引き取りたいって、あたしと暮らしたいって、言ってくれた。それが嬉しくて、でも、その気持ちをどう言葉に表せばいいのか判らなくて、だから、あたしは貴美子さんの――お母さんの胸に飛び込んだ。お母さんは、そんなあたしをそっと抱きしめ、やさしく髪を撫でてくれた。

 

 このとき、あたしははっきりと気がついた。

 

 お父さんと、貴美子さんと、あたし。本当に血のつながった3人で暮らしたい。

 

 これ以上礼子さん――今の母に怯えて暮らしたくない。母の勝手な理想に踊らされ続けるなんてゴメンだ。貴美子さんは、あたしを今の生活から救ってくれる人なのだ。きっと。

 

「お待たせ。ん? どうしたんだ、2人とも」トイレから戻ってきたお父さん、あたしたちの姿を見て、不思議そうな顔。

 

「あ、ううん、なんでもない。さ、行きましょう」貴美子さん、笑ってごまかし、椅子から立ち上がった。

 

「そうか?」

 

 お父さんは特に気にした様子も無く、休憩所を後にする。

 

「亜弥、私が礼子さんに会うの、利夫さんには内緒にしていてね」

 

 貴美子さん、お父さんに聞こえないような小さい声で、あたしに言った。

 

「え? 何でですか?」

 

「うーん。なんて言うのかな。母親の意地、ってやつ? あなたを引き取る話は、私と礼子さん、2人っきりでしたいの。それに利夫さん、私1人で礼子さんに会う、なんて知ったら、反対するだろうし」

 

 うん。それは確かにそうだろう。あたしだって、本当は反対したい。母に会って、あたしを引き取りたい、お父さんとやり直したい、なんて話をしたら、母、どうなるか判らない。

 

 でもね、恐がってちゃダメなんだ。

 

 あたし、今までは母が恐くて、母の言いなりになって生きてきた。でも、貴美子さんとの生活を望むのなら、恐がってちゃいけない。あたしも貴美子さんと一緒に暮らしたい。そのためには、母と話すのは避けられないこと。その日は遠からずやってくる。そうなったら、あたしも逃げずに立ち向かおう。貴美子さんと同じように。

 

 

 

 

 

 

 そして、1週間後の9月10日。その日はやってきた――。

 

 

 

 

 

 

中学の同級生 第3話 今井亜弥 終

 

 

 

 

 

 

(作者オリジナル)

 

 

 

 

 

 

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