第1話 雪女
4月8日(水) AM 7:45
「おはよー、みんな」
教室に明奈が入ってきた。みんな、それぞれ朝の挨拶。これで全員集合。
「はあ、今年もこのメンバーか。ま、よろしくね!」
「うん! よろしく!」
今日は中学2年の始業式。クラス替えがあったけど、あたし、奈々、明奈、美沙子、亜弥の5人は、今年も同じクラス。腐れ縁ってやつですな。ま、このメンバーでないと学校に来たって気がしないしね。
「ふあああ。それにしても、ねむー」美沙子、レディーであることも忘れて大あくび。
「ちょっと、はしたないよ」奈々が呆れた顔。
「だって、春休み中ずっと夜更かししてたんだもん。急にこんな時間に起きろって言うのが無理なのよ。ただでさえ、春は眠いのにさあ」
「ま、確かに。実はあたしも結構眠いのよね」奈々もあくびをする。「ねえ明奈。何か眠気の覚めるような話、ない?」
「あるけど……聞きたい?」明奈、急に声のトーンを下げる。
「何々? 話して」奈々と美沙子、目を輝かせる。
「いいけど――これ、本当に恐いよ。心臓が凍りつくくらいに……」
明奈は不気味に微笑んだ。その笑顔に、不吉な物を感じる。
明奈、どこに情報網があるのか、いつも新しい怪談話を仕入れてくる。中にはホントに恐いものも多い。その明奈が、ここまでもったいぶるなんて、相当なものに違いない。
「……いいよ。話して」美沙子が促す。
「いいけど、後悔しないでね」
みんな、身を乗り出した。
「これから、死後……つまり、死んだ後の世界の話をするんだけど――」
ごくり。その場にいる全員が、息を呑んだ。
「あのよー」
…………。
確かに、心臓が凍りつくかと思った。
第2話 雪の女王
9月1日(火) AM 7:45
「おはよー、みんな」
教室に明奈が入ってきた。みんな、それぞれ朝の挨拶。これで全員集合。
「はあ、2学期もこのメンバーか。ま、よろしくね!」
「うん! よろしく!」
今日は中学2年の2学期最初の日。もちろんあたしたち、あたし、奈々、明奈、美沙子、亜弥の5人は、2学期も一緒。ま、このメンバーでないと学校に来たって気がしないしね。
「ふあああ。それにしても、ねむー」美沙子、レディーであることも忘れて大あくび。
「ちょっと、はしたないよ」奈々が呆れた顔。
「だって、夏休み中ずっと夜更かししてたんだもん。急にこんな時間に起きろって言うのが無理なのよ。ただでさえ、夏は眠いのにさあ」
「ま、確かに。実はあたしも結構眠いのよね」奈々もあくびをする。「ねえ明奈。何か眠気の覚めるような話、ない?」
「あるけど……聞きたい?」明奈、急に声のトーンを下げる。
「何々? 話して」奈々と美沙子、目を輝かせる。
「いいけど――これ、本当に恐いよ。心臓が凍りつくくらいに……」
明奈は不気味に微笑んだ。その笑顔に、不吉な物を感じる。
明奈、どこに情報網があるのか、いつも新しい怪談話を仕入れてくる。中にはホントに恐いものも多い。その明奈が、ここまでもったいぶるなんて、相当なものに違いない。
「……いいよ。話して」美沙子が促す。
「いいけど、後悔しないでね」
みんな、身を乗り出した。
「これからする話は、『蛙の怨霊』っていう話なんだけどね――」
ん? なんか前にこんなことがあったような? まさかこれって、デジャ・ヴってやつ?
「ある若いカップルが、夜中にドライブをしていたの。男は街を離れ、近くの山の中にある湖の側で車を停めた。実は男の車、ここに来る途中、1匹の蛙を踏み潰していたんだけど、そのことに男も女も気がつかなかった。月の綺麗な夜だったわ。水面にも対をなして揺れる月が映っていて、車内にはカーステレオからロマンティックな曲が流れてる。2人のムードは最高に盛り上がった。そして、見つめあう2人の唇が重なろうとしたとき、どこからか、蛙の鳴き声が聞こえて来たの。その鳴き声はどんどん大きくなっていって、車内の音楽が聞こえなった。これじゃ、ムードぶち壊し。男はカーステレオのボリュームを上げようとした。でもそのとき、女が言ったの――」
ごくり。その場にいる全員が、息を呑んだ。
「変えるの? 音量?」
…………。
冬はまだ遠いのに、教室の中は、遭難しそうなほどの吹雪で荒れていた……。
第3話 ホワイトアウト
1月11日(月) AM 7:45
「おはよー、みんな」
教室に明奈が入ってきた。みんな、それぞれ(中略)奈々もあくびをする。「ねえ明奈。何か眠気の覚めるような話、ない?」
「あるけど……聞きたい?」明奈、急に声のトーンを下げる。
「何々? 話して」奈々と美沙子、目を輝かせる。
「いいけど――これ、本当に恐いよ。心臓が凍りつくくらいに……」
明奈は不気味に微笑んだ。その笑顔に、不吉な物を感じる……別の意味で。
明奈、どこに情報網があるのか、いつも新しい怪談話を仕入れてくる。中にはホントに寒いものも多い。その明奈が、ここまでもったいぶるなんて、相当寒いものに違いない。
「……いいよ。話して」美沙子が促す。
「いいけど、後悔しないでね」
みんな、身を乗り出した。
「これからする話は、あたしの死んだおばあちゃんの、1周忌のときの話なんだけどね――」
明奈のおばあちゃんは今も元気で、毎朝の散歩や、週1回のゲートボールを欠かさないって、前に聞いたことがあるような気がするけど、そこはつっこまない。
「お寺での法要が終わり、親戚みんなであたしの家に集まって、ご飯を食べながら、おばあちゃんの話をして盛り上がってたの。でも、おばあちゃんは騒がしいのが嫌いな人だった。生きていた頃は、あたしが家で騒いだりすると、ものすごく叱られて、押入れに閉じ込められたりしたの。その日は、久しぶりに親戚みんな集まったから、大騒ぎになってしまって、夜遅くまで宴会みたいな状態だったわ。12時回ったくらいだったかな? 突然、おばあちゃんの位牌を飾った仏壇が、ガタガタ揺れはじめたの。もちろん地震なんかじゃない。揺れてるのは仏壇だけだった。みんな、おばあちゃんが怒ってるんじゃないかって、すごく脅えたの。あたしもすごく恐かったけど、でも勇気を出して、仏壇を調べたの。何か、揺れる原因があるんじゃないかと思って。で、仏壇を隅から隅まで調べて、そしたら――」
ごくり。その場にいる全員が、上着を羽織った。
「ぶつだん変わった所は無かったわ」
…………。
凍りつく世界の中で、あたしは信じられない光景を目にし、更なる戦慄を覚えた。亜弥だけが、笑っていたのだ……。
第4話 デイ・アフター・トゥモロー
4月8日(木) AM 7:45
「おはよー、みんな」
教室に明奈が入ってきた。みんな、それぞれ(もう、いいっての!)奈々もあくびをする。「ねえ明奈。何か眠気の覚めるような話、ない?」
「あるけど……聞きたい?」明奈、急に声のトーンを下げる。
「何々? 話して」奈々と美沙子、目を輝かせる。懲りない面々だ。
「いいけど――これ、本当に恐いよ。心臓が凍りつくくらいに……」
明奈は不気味に微笑んだ。その笑顔に、あたしは呆れる。
明奈、どこに情報網があるのか、いつも新しい与太話を仕入れてくる。ホントに勘弁して欲しい。
「……いいよ。話して」美沙子が促す。
「いいけど、後悔しないでね」
みんな、身を乗り出した。
「これからする話は、親元を離れて暮らしている、あたしと妹の話なんだけどね――」
明奈は実家に住んでいて、1人っ子だったはずだけど、そこは空気を読んでつっこまない。
「実はあたしの妹、夜になると首が伸びるの。ろくろ首ってやつ。毎晩毎晩首が伸びて、行灯の油を舐めるのよ? 恐かったわ。ある日、あたしはとうとう恐さに耐えかねて、実家に逃げ帰ることにした。帰る途中、友達に会ったの。どうしたの? って訊くから、事情を全て話した。そしたらその友達、すごく心配してくれて、でも実家に帰るのはいいことだ、って言ってくれた。そして――」
ごくり。その場にいる全員が、ストーブやこたつを取り出した。
「友達はこう言ったの。『実家じゃお母さんが、あなたが帰ってくるのを、首を長くして待ってるよ』って。だめだ! それじゃ、実家にも帰れないじゃない!」
…………。
今回のは、ちょっとおもしろかったな……。
「って言うか明奈――」
「何?」
「このシリーズ、いつまで続ける気?」
「こんな話でよければ、後10個くらいはあるけど?」
「……勘弁してください」
「次回 明奈の都市伝説ファイル 第5話 『恐怖のみそ汁』 お楽しみに」
「やりません」
(第1話 駄洒落「死後の話」より)
(第2話 駄洒落「蛙の怨霊」より)
(第3話 落語「粗忽の釘」より)
(第4話 落語「ろくろ首」より)
(参考文献・白泉社・花とゆめCOMICS 「パタリロ!」)