Y.U.I.~都市伝説ファイル~   作:ドラ麦茶

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パソコン

「……へぇ。蒸気機関車って、蒸気の力で走るんだ」

 

 さかんにパソコンをいじっていた明奈、ぽつりとつぶやいた。

 

「当たり前でしょ。蒸気機関車なんだから」理系が苦手なあたしですら知ってることだぞ、それ。

 

「ま、言われてみたらそうなんだけどね」笑ってごまかす。

 

 今、明奈はあたしの部屋でパソコンに向かっている。学校に提出するレポートをまとめるため、インターネットで調べ物をしているのだ。最近1人暮らしを始めた明奈は、まだパソコンを持っていないそうで、何かあるとよくあたしのパソコンを使いに来るのだ。

 

「うわっ。これ見て。H県H市のH中学校で、20年前、生徒10人が謎の失踪、だって。何々……失踪した生徒たちはオカルトマニアで知られ、その夜、学校の校舎に集まって『悪魔召喚』の儀式を行っていた。しかし、夜中になっても誰も帰宅しなかった。儀式が行われたと思われる教室の床には魔法陣が描かれ、ろうそくや剣などの魔術品が置かれたままになっていた。警察は集団失踪事件として捜査したが、何の手がかりも得られなかった。事件から2週間後、H市から約200キロ離れたT県の山中で、行方不明の生徒1人を保護。生徒は憔悴しきっていたものの、外傷は無く、命に別条も無かったが、記憶に混乱が見られ、事件当時のことはほとんど覚えていなかった。ただ、発見された当時はうわごとのように、『悪魔がみんなを連れて行った……悪魔がみんなを連れて行った……』と、つぶやいていた……だってさ。あたしたちも中学生のころは、似たようなことやってたよね。怖い怖い」

 

 なぜか嬉しそうな明奈。確かにあの頃、あたしたちの間では怖い話がブームで、よく肝試しとか百物語とかやって、実際に不思議な体験や怖い思いをしたものである。

 

「……っていうか明奈、あんた、さっきから何調べてんの?」

 

「あ、ゴメン。レポートに書くこと調べてたんだけど、いつの間にかオカルトサイト見てた」

 

 てへって感じで笑う明奈。明奈は昔から怖い話が大好きな娘だったけど、今もあまり変わってないみたい。やれやれ。

 

 それからまた明奈は調べ物を再開。あたしは邪魔しないように、本を読んで静かにしてる。部屋は明奈のマウスをクリックする音とキーボードをたたく音だけだったけど、突然。

 

 ピコーン。

 

 と、聞きなれない音。

 

「何?」

 

 パソコンの画面を見ると。

 

『ウィルスを検出しましたが駆除しました。感染はありません』

 

 と、表示されている。

 

「……明奈、何やったの?」

 

「あ……あはは……ちょっと、欲しいファイルがあったから、ダウンロードしようとしたんだけど……」

 

 画面には、どこかで見たようなアニメキャラと、中国語がびっしり表示されたページが映っている。見るからに怪しいサイトだ。

 

「もう! こんなサイトにつなげないでよ! 変なものに感染したらどうすんの!?」

 

「ゴメンゴメン。もうしないから」

 

 そう言って明奈は、検索ページに戻った。

 

「まったく……ウィルス対策ソフト入れてたから良かったようなものの、気をつけてよね」

 

「はーい。気をつけます。……でも結衣、ちゃんとウィルス対策してるんだ」

 

「当然でしょ? ちゃんと対策してないと、あっという間に壊れちゃうんだから」

 

「でもさ、そのウィルスって、対策ソフトを作ってるメーカーが、意図的に流してるのよ」

 

 ……はい? 何言ってんだこの娘。

 

「新しいソフトを買ってもらったり、更新して次の年も使ってもらえるように、メーカーが毎年より強力なウィルスを開発してるってウワサだよ?」

 

「そんなわけないでしょうが……」

 

 呆れ顔で明奈を見つめるあたし。それが本当だったら大変な問題だよ。ホント、明奈ってこういう話が大好きなんだから。

 

 と、そのとき。

 

「……あれ? 動かなくなっちゃった」

 

 パソコンの画面を見ると、確かにフリーズしてる。

 

「……今度は何やったの?」

 

「何もしてない。ただサイト見てただけ」

 

 あたしは明奈に代わりパソコンをいじる。でも、マウスをクリックしてもキーボード叩いても、うんともすんとも言わない。

 

「うーん、このパソコン、そろそろ寿命かな? 買ってから5年も経つからなぁ」

 

「5年……。それってもしかして、故障タイマーじゃない?」

 

 またまた目を輝かせる明奈。今度は何を言うつもりだ?

 

「良く言うじゃない? 電化製品は買い替えのサイクルを早めるため、保障期間を過ぎたら強制的に壊れるようにできてるって」

 

「言いません、そんなこと。あーあ。でもホント、このパソコンも、そろそろ買い替え時かなぁ」

 

 なんて言った瞬間、ぶちっと、電源が落ちた。

 

「あらら。これは重症だね」あたしはため息をつく。

 

「結衣が買いかえるなんて言うから、パソコンが拗ねたんだよ」

 

「……また、何言いだすの」

 

「たとえ機械と言えども、優しく接してあげないといけないのよ? なんたって、心が宿ってるんだから」

 

 ……だから、この娘は何言い出すんだ。

 

 明奈は、パソコンのモニターを優しく抱きしめ、まるで赤ん坊をあやすようになでた。「ごめんなさいね、結衣がひどいこと言って。大丈夫。あなたを捨てたりしない。ちゃんと修理に出して、もっともっと、使ってあげるからね」

 

 すると。

 

 プツ。グイーン。

 

 ……あ、電源入った。

 

 そして、何事もなかったように起動するパソコン。

 

 …………。

 

 ウソ、なんで?

 

「だから、パソコンには心が宿ってるのよ。優しくしてあげないといけないの」

 

 得意げに言う明奈。

 

 ……そうか。そうだよね。思えばあたし、最近はあんまりパソコン触ってなかったな。買ったころは毎日毎日触ってたのに。ごめんね、あたしのパソコン。これからは、もっと大切にしてあげるからね。

 

 あたしは、そう心に誓った。

 

 

 

 …………。

 

 って、そんなわけあるか!

 

 

 

 

 

 

(都市伝説「コンピューターウィルス・○○ータイマー・心を持つ○ッ○」より

 

 

 

 

 

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