Y.U.I.~都市伝説ファイル~   作:ドラ麦茶

32 / 99
覚醒

 駅前に、大きなショッピングモールができたので、その日、あたしはお母さんに連れられて、お出かけすることになった。

 

「結衣、きっとビックリするわよ? 今まで結衣が行ったことのあるどんなデパートよりも大きいんだから」

 

 お母さんがそう言うので、あたし、わくわくしてくる。いつも出かけるデパートも大きくて、何度か迷子になったことがあるくらいなのに、それよりも大きいんだ。楽しみ楽しみ。

 

 駅前はものすごい人だった。今日はオープン初日で、バーゲンセールと言うのをやっていて、みんな、それが目的らしい。交差点の向こうに、そのショッピングモールが見える。うわ。すっごくおっきい。デパートはもちろん、あたしが通う小学校よりも大きいよ!

 

「あの中、全部お店なの?」お母さんに聞く。

 

「そうよ。お店だけじゃなく、病院とか、英会話の学校とか、映画館もあるんだから」

 

 ホントに? すごいなぁ。ますます楽しみだ。早く行きたいけど、赤信号だ。うーん。早く青にならないかな。

 

 ……あれ?

 

 道路の向こう側に、変な人がいる。

 

 その人、今は夏なのに、長袖の、ぶかぶかの服を着ている。真っ黒で、ボロボロだ。フードを深くかぶってて、顔は良く見えない。一番変なのは、手に持っているもの。長い棒の先に、ナイフみたいな三日月形の刃物がついている。前に見たことがある。たしか、田舎のおじいちゃん家に行ったとき、お庭の草を刈るのに使ってたやつ。カマ、って言ったかな? でも、おじいちゃんが使ってたのより、ずっと大きい。

 

 すごく変な格好の人だけど、お母さんも、周りの人も、誰も、何も言わない。だったら、別に変じゃないのかな? うーん。

 

 信号が青になった。みんな、一斉に渡りだす。

 

「結衣、行くわよ」

 

 お母さんに連れられて、横断歩道を渡る。その変な人も、こっちに向かって歩いてくる。大きなカマを持ったまま。危なくないのかなぁ? でも、みんな、やっぱり何も言わない。その変な人の前を歩いている、痩せて眼鏡をかけた背広のおじさんも、何も言わない。

 

 その変な人、だんだん近づいてきて、フードに隠れた顔が、はっきりしてくる。

 

 ――――!!

 

 その顔を見て、あたしは、立ち止まってしまう。

 

 それは、絵本なんかでよく見る、ガイコツのお化けだった。

 

 あたしはその場から動けない。

 

「結衣、どうしたの?」

 

 お母さん、不思議そうな顔であたしを見る。お母さんは怖くないのかな、あのガイコツお化け。

 

 周りの人も、やっぱり誰も何も言わなくて、まるで、見えてないみたいだ。

 

 お母さんが怖くないんだったら、多分、大丈夫だろう。

 

 そう思い、あたしはまた歩き出した。ガイコツお化けが近づいてくる。お母さんはやっぱり何も言わない。あたしは怖いので、目をそらして、なるべく見ないようにして歩いた。大丈夫、大丈夫。そう、自分に言い聞かせて。

 

 そして、横断歩道の真ん中あたりで、すれ違った。

 

 そのとき――。

 

 

 

「よく判ったな――」

 

 

 

 しゃがれた声で、ガイコツお化けが言った。

 

 あたしは怖くて怖くて、お母さんの手を引っぱって、急いで横断歩道を渡った。

 

「ちょっと、どうしたの? 結衣?」

 

 と、お母さんが言ったとき。

 

 キキキキィー! ドン!!

 

 ものすごく耳障りな音と、続いて、鈍い音。

 

 みんながざわめいて、悲鳴を上げる女の人もいた。

 

 振り返ると。

 

 さっきのガイコツお化けの前にいた、眼鏡をかけた背広のおじさんが倒れていた。

 

 頭を打ったみたいで、横断歩道に、真っ赤な血が、水たまりみたいに広がっている。そのそばに、バンパーがへこんだ車。どうやらおじさん、車にはねられたらしい。

 

「きゅ……救急車! 救急車!!」

 

 誰かが叫ぶ。あたしはじっとその光景を見ていたけど、「行くわよ」と、お母さんが手を引っぱったので、あたしは慌ててついて行った。

 

 さっきのガイコツお化けは、もう、どこにもいなかった。

 

 

 

 

 

 

 この出来事の後、あたしは、他の人に見えないものが見えたり、聞こえない声が聞こえたりといった、不思議な体験をすることが多くなった。友達からは、「霊感が強い」と言われている。今思えば、この出来事がきっかけだった気がする。

 

 そう。この日は、あたしの霊感が覚醒した日だ――。

 

 

 

 

 

 

(都市伝説「見えてるくせに・よく判ったな」より)

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。