Y.U.I.~都市伝説ファイル~   作:ドラ麦茶

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エンジェル様(?)

 明奈から、相談したいことがある、と、メールで呼び出され、あたしたちはファミレスで落ち合った。まあ、その相談は大したことじゃなく、すぐに片付いてしまったので、今は普通におしゃべりしてる。

 

「……ってわけで、そのレポートを、今書いてるわけ」

 

「レポートか。明奈も大変だね」

 

 明奈は市内の情報処理系の専門学校に通っている。よくレポートを書いていて、調べ物をするためにあたしの家にパソコンを借りに来ることもある。情報処理系の学校に通いながらパソコンを持ってないってのもどうかと思うけど、明奈は1人暮らしでお金が無いそうなので、しょうがないようだ。

 

「で、今はどんなレポート書いてるの?」

 

「んー。確率統計に関することかな」

 

「……まともじゃん」

 

「学校に提出するレポートだから、当たり前でしょ」

 

「まあ、そうなんだけど。うちの大学には変なレポート書く娘がいるよ。錬金術とか、パンを食べると犯罪者になりやすいとか」

 

「……何それ? 意味わかんない」

 

「でしょ? あたしもそう思うんだけど、なぜかそのレポート、先生には大絶賛されてるの。世の中おかしいよね」

 

「ふーん。変わってるね、結衣の大学って」

 

「そうなのよ。でも、ちょっと意外だな。明奈がまともなレポート書くなんて。あなたのことだから、変なウワサの検証とか、そういうのかと思っちゃった」

 

 あたしがそう言うと、明奈、なぜかほくそ笑む。何だ?

 

「んー。まあ、ウワサの検証って点については、当たってるかもね」

 

「……どういうこと?」

 

「今やってるのは、おもちゃの宝箱はどのくらいの確率で当たるか、なの」

 

「……はい?」

 

 思わず耳を疑う。

 

 おもちゃの宝箱とは、玉チョコというお菓子を買って、当たりが出るともらえる賞品だ。あたしたちが小さなころからあり、『シャンパンゴールドのエンジェル様なら1枚、ソリッドシルバーのエンジェル様なら5枚集めて送ろう』というCMのキャッチコピーが有名だ。

 

「玉チョコを200箱買って、全部開けたの。気持ち良かったなぁ。小さいころからの夢だったのよね。大人買い。結衣もやってみたら?」

 

 誇らしげに言う明奈。気持ちは判らなくは無いけど、確か1箱60円だったから1万2千円か。最近は食料品が値上がりしてるから、もっと高いかもしれないな。あたしは遠慮しておこう。

 

「てか明奈……そんなレポートで良いの?」

 

「確率統計には違いないでしょ?」

 

「そりゃそうだけど」

 

「それに、結衣も知りたくない? どれくらいの確率で当たるのか」

 

 ま、それは確かにあるかな。

 

 おもちゃの宝箱は、その有名さとは裏腹に、本当に当たるのか常に疑問視されている。あたしも小学生のころよく玉チョコを買ってたけど、シャンパンゴールドはおろかソリッドシルバーのエンジェル様すら見たこと無い。『友達の友達が当たったって聞いたよ』という話はよく耳にしたけど(こういう言い方をするのはほとんど明奈だった気がする)、実物を見ることはついに無かった。

 

「で、どうだったの?」

 

「ん。200箱のうち、シャンパンゴールドは2枚、ソリッドシルバーは10枚出たよ。当たり率2%だね」

 

 2%か。想像以上に少ないな。それじゃ当たらなくて当然だ。

 

「ちなみに当たりの入り方は完全にランダムで、1パッケージ10箱入りなんだけど、当たりなしの場合もあるし、ソリッドシルバーが2つ入ってることもあった。シャンパンゴールドが2箱入ってるのはさすがに無かったけど。もっと調査していけば、もしかしたらあるかもね」

 

 嬉しそうに言う明奈。おもちゃの宝箱が当たることは判ったから、次はシャンパンゴールドのエンジェル様が2箱入っているパッケージはあるのか? とか言い出しそうだな、この娘。

 

「てか、玉チョコ200箱って大変じゃない? どうするの?」

 

「もちろん食べるよ。最近は朝食代わりにしてる。レポートもまとめられて朝食も確保できる。一石二鳥だよ」

 

 そう言って、明奈は笑った。ま、何の役にも立ちそうにないけど、長年の謎が解明されて、あたしもなんだか嬉しい気がしないでもない。明奈もすごく満足そうだしね。

 

 

 

 

 

 

 しかし数ヶ月後、明奈は少し太り、この実験をしたことを激しく後悔するのであった――。

 

 

 

 

 

 

(作者オリジナル)

 

 

 

 

 

 

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