9月27日(水) PM 5:16
高校1年の夏休みが終わり、夏の強い日差しもそろそろ弱くなってくるかな、と思い始めた頃。あたしは、学校の帰り道で中学時代のクラスメートに会った。
「――結衣ちゃん」
かすれるような声でそう呼ばれ、振り返る。初め、その人が誰だか判らなかった。しかし、見覚えが無いわけではない。記憶を探る。思い当たる人がいたが、あっているか自信はなかった。だがこのまま黙ってるのも悪いので、あたしは自信なく言う。「……亜弥、ちゃん?」
するとその娘は、少しだけうれしそうに微笑んだ。それを見て、あたしはその娘が中学校の3年間同じクラスだった、今井亜弥だと判った。
「久しぶりだね、元気?」
「……うん。結衣ちゃんは?」
「うん、あたしも元気だよ」
「……そう」
そこで会話は途切れてしまう。なんだか気まずい雰囲気。
亜弥はどちらかと言うと暗い感じの子で、正直、あまり仲が良いというわけではなかった。別に彼女のことが嫌いなわけではない。自分から話すことがあまり無い娘なので、しゃべるのが苦手なんだろうな、と思い、あまり話さないようにしていたのだ。みんなで話したり遊びに行ったりするときなどは一緒にいたけれど、2人っきりで話したり遊んだりすることはほとんど無い……そんな感じの関係。
それでも半年振りに会った元クラスメートということもあり、そのまま別れるのもなんだか冷たい気がしたので、あたしは亜弥を近くの公園に誘い、少し話をすることにした。
「亜弥ちゃんって、どこの高校に行ったんだっけ?」なるべく明るく、あたしは訊く。
「……北高」
こういうのを、気のない返事と言うのだろうか。亜弥はあたしの方を見るわけでもなく、ただうつむいたまま、ポツリ、と答えただけだった。
「……そっか。他に誰がいたかな、北高」
「……別に……私だけ」
「……そうなんだ……。あ、そうそう。奈々って覚えてるよね? あの子さ、高校入ってバスケ部に入ったんだよ! あんなに運動音痴だったのに、ビックリするよねぇ」
「……うん」
あたしは何とか会話を盛り上げようとしてみるものの、亜弥はあいかわらず気のない返事をするだけ。普通なら少し腹が立ってくるところだが、あたしはそんな彼女が逆に心配になってきた。元々暗い感じの子ではあったが、中学時代はこれほどひどくはなく、話をすればそれなりに答えてくれる娘だったのに……。
「……大丈夫? なんだか元気ないね」あたしは亜弥の顔を覗き込み、心配して訊いてみた。久しぶりに会った彼女は、顔色が悪く、中学時代よりも少し痩せていて、なんだか病人みたいだ。
「……結衣ちゃんってさ……結構霊感、強かったよね」
「……え?」
突然の亜弥の言葉に、あたしは少し驚く。
確かにあたしは、中学時代は霊感が強い娘ということで通っていたのだ。
「……うん。そうだけど、それがどうかした?」
亜弥はしばらく黙った後、ゆっくりと口を開く。
「実は……最近夜になると、あたしの部屋に出るの――幽霊が」
「――――」
あたしは何と答えていいか判らず、ただ、黙って亜弥の話を聞くことしかできなかった。
「結衣ちゃん。今度の土曜、あたしのうちに泊まりに来てくれない?」
「――え!?」
「お父さんやお母さんは、幽霊なんていない、って言うの。あたしが疲れているから、変な夢を見るんだ、って。でも、あたしは夢なんか見ていないと思う。だから、結衣ちゃんに確かめてほしいの。もし結衣ちゃんにも幽霊が見えたら、本物だって思うし、もし結衣ちゃんに見えなかったら、幽霊なんていない、あたしの妄想なんだ、って、思えるかもしれないし。だから……」
そう言ったっきり、うつむいたまま、亜弥は黙ってしまった。
9月30日(土) PM 6:04
土曜日、どうしても放っておく気になれなかったあたしは、亜弥の家に泊まりに行くことにした。
亜弥の家は木造2階建ての古い借家で、両親と亜弥の3人で暮らしているようだった。
「いらっしゃい。さあ、狭いけど、あがってちょうだい」
家に入ると、亜弥とは対照的な明るい声で、ご両親が迎えてくれた。言われるままにあがると、居間には豪華な料理が並べられていた。ちょっとしたパーティーのようだ。
「さ、結衣さん。座って座って。亜弥もすぐに下りてくるから」
亜弥のお父さんに言われ、あたしは戸惑いながらも席に着いた。しばらくして、2階から亜弥が下りてきた。
「なんだかすごいね」
あたしは料理を見ながら亜弥に言った。亜弥は少し頷いただけだった。
「さあ、冷めないうちに食べて食べて」
「はい、いただきます!」
予想外の展開に驚きながらも、あたしは料理を食べた。亜弥のお母さんの手作りの料理はどれもおいしく、また、おじさんとおおばさんが明るく話しかけてくるので、あたしは幽霊のことなんか忘れて、楽しく食事をさせてもらった。
食事も終わり、デザートのケーキまでいただいたところで、おばさんが言う。「あ、そろそろお風呂が沸くわね。結衣ちゃん、先に入ってちょうだい」
「はい、ありがとうございます」あたしはおばさんたちの明るさに負けないように、とにかく笑顔で、元気よく言った。
お風呂は少し狭かったが、温かい湯船につかり、気持ちよくあがらせてもらった。
「お風呂、ありがとうございます」
「ごめんなさいね、狭いお風呂で。亜弥も入る?」
おばさんが言うと、亜弥は黙って立ち上がり、お風呂へ向かった。
「ごめんなさいね、なんだかあたしたちだけではしゃいじゃって」おばさんは口元に手を当てて笑った。「だって、あの子がうちに友達を呼ぶなんて、今までになかったことだから」
「そうなんですか?」あたしは聞き返す。確かに、あたしは亜弥の家に来るのは初めてだし、中学のときも、誰かが亜弥の家に行ったという話は聞いたことが無かった。
「結衣さん。これからも、亜弥と仲良くしてやってください」おじさんはそう言いながら、あたしのグラスにジュースを注いだ。
「はい!」
あたしは笑顔でそう答えた。
――もしかしたら、幽霊のことは口実で、本当は誰かに遊びに来てほしかったのかもしれない。
この頃になると、あたしはそう思うようになっていた。考えてみれば、亜弥の通う北高には、中学時代の親しい友達は1人もいない。亜弥の性格から考えれば、初めての人に自分から話しかけることなんて、難しいことなのかもしれない。自然とクラスからは孤立し、友達もできないまま半年が過ぎる……。亜弥がどんな気持ちでいたか、簡単に想像できた。こんなことなら、奈々たちも誘えばよかったかな……。そう思い、少しだけ後悔する。ううん、また今度、みんなで一緒に遊びに来よう。そうすれば、きっと亜弥も元気を取り戻し、きっと、北高でも友達ができるだろう。そんなことを考えた。
バタン。
ドアが閉まる音がした。どうやら、亜弥がお風呂から上がったらしい。
「あら、もうこんな時間ね。ごめんなさいね、こんなおじさんおばさんの話につき合わせて。お布団は亜弥の部屋に敷いてあるから。亜弥のこと、よろしくね」
「はい。ありがとうございます」
そしてあたしは、おばさんからお菓子とジュースを載せたお盆を受取り、亜弥と一緒に2階の部屋に向かった。時計を見ると、10時を少し過ぎたところ。明日は日曜だ、お菓子とジュースがあれば明け方近くまで話せるだろう。友達の家に泊まる醍醐味は、この時間からだと言ってもいい。奈々たちを連れて来なかったのが心残りだが、今夜は仕方が無い。あたし1人でも、精いっぱい、亜弥を元気付けてあげよう。そう思った。
亜弥の部屋は、階段を上がったすぐそばにあった。上がるたびにギイギイと音を立てる階段を上がり、途中、振り返って、おじさんとおばさんに挨拶をしようとした。
「それじゃあ、おやすみなさ――」
思わず、言葉を飲み込んでしまった。
亜弥の両親は、階段の下に立ち、じっと、こちらを見上げていた。
先ほどまでの明るい笑顔は消えていた。
何かを訴えかけるような目。
いや――祈るような目?
そんな2人の姿を見て、あたしは背中に冷たいものが走るのを感じる。
2人は顔に笑みを浮かべることも無く、ゆっくりと一礼をする。
そして、居間へ戻っていった。
――もしかしたら、幽霊のことは口実で、本当は誰かに遊びに来て欲しかったのかもしれない。
あたしは、この考えが甘かったことを、すぐに思い知った。
9月30日(土) PM 10:14
亜弥の部屋は6畳ほどの広さで、クリーム色の壁紙に、薄いピンクの絨毯。部屋には勉強机とベッド、後は本棚があるだけだった。
「へぇ、これが亜弥ちゃんの部屋かぁ」
どちらかと言えば地味な部屋だったので、なんとなく当たり障りの無い感想になってしまった。何か盛り上がるような話題はないかと、部屋を見回す。本棚に並んだコミック本が目に入った。さほど興味の無いタイトルだったが、あたしはそれを手に取る。
「あ! これ読みたかったんだぁ。ねぇ、今度貸してよ」
振り返って亜弥の方を見た。
亜弥は、すでにベッドに入り、布団をかぶって、向こうを向いていた。返事は無い。
せっかく泊まりに来たのにそれは無いだろう、と思いながらも、あたしが話しかけても返事をしてくれなかったので、仕方なくあたしも寝ることにした。電気を消そうと、壁のスイッチに手をやる。
「消さないで!」
突然、亜弥が叫んだ。
驚いて、あたしは手を引っ込める。
「……お願い、消さないで」小さな声で、亜弥が言う。
「うん……判った」あたしは仕方なく、床に敷かれた布団にもぐりこんだ。
電気を点けて眠るという習慣が無く、また、寝るにしても少し早い時間だったせいか、あたしはなかなか寝付けなかった。どれくらい時間が経ったか、なんとかウトウトしかけた頃……。
バタン。
ドアが閉まる音がして、あたしは目を覚ました。
ギィ……ギィ……ギィ……。
階段を下りるような音。
亜弥がトイレにでも行ったのだろうか?
そう思い、ベッドを見た。しかし、亜弥は初めと同じように、こちらに背を向けたまま、ベッドの上にいた。
あたしはドアを開け、階段の方を見る。薄暗い階段には、誰の姿も無い。
両親が心配して見に来てくれたのだろうか……そう思うしかなかった。考えても仕方が無いので、あたしはもう1度布団に入った。
しかし、しばらくすると……。
ギィ……ギィ……。
また音がする。
――実は、最近夜になると、あたしの部屋に出るの。幽霊が。
公園で聞いた亜弥の言葉が頭をよぎる。
いや、古い家は湿気や風のせいできしむんだ。どこかでそんな話を聞いたことがある。それが足音のように聞こえるだけ。あたしは自分にそう言い聞かせ、布団かぶって目を閉じ、気にしないようにした。
その後もその音は止むことは無く、1時間経っても鳴り続けた。しかも、その音はどんどん近くなり、今では部屋の中から聞こえてくるのだ。
そう。誰かが部屋の中を歩き回っているかのように。
と――。
ふっと電気が消えた。
「え……?」
あたしは布団の上に上半身を起こし、辺りを見回した。停電だろうか? 部屋の中は真っ暗だが、窓から入るわずかな光――おそらく窓の近くに街灯があるのだろう――で、目が慣れてくると部屋の中がぼんやりと見えてきた。そして……。
部屋の隅に、誰かいた。
あたしは息をのむ。
亜弥か?
すぐにベッドを見る。亜弥は背を向け横になっていた。
背筋が凍りつくような感覚。
ギィ……。
また、音が鳴った。床がきしむ音。
振り返るのが恐ろしかった。しかし、振り返らずにはいられない。見ると、部屋の隅にいたその人は、1歩、近づいていた。
目をそらすことができない。金縛りにあったかのように、指1本動かすことができなかった。
身長は、あたしと同じくらいだろうか。黒いロングヘアーに、9月だと言うのに、赤いロングコートを着た女性。よく見ると、体中泥だらけだった。そして、髪もコートもぐっしょりと濡れ、雫が絨毯に滴り落ちてる。まるで、雨の日に山の中で転んだような、そんな格好。顔は暗くてよく見えない。見えないが、女が1歩近づくごとに、徐々にはっきりとしてくる。
そして……。
女があたしのすぐそばまで来たとき、顔が見えた。
女の顔は――無かった。
いや、無いと言う表現は正しくない。顔自体はある。あるが、正常な形をとどめていない。鼻はあらぬ方向に折れ曲がり、血が滴り落ちている。少しだけ開いた口からは、歯が何本か折れているのが見えた。そして目は、無い。眼球があると思われる部分には暗い穴が開いているだけ。眼球をくりぬかれたら、あのような目になるのだろうか? そんなことを思う。
あたしは言葉にならない悲鳴を上げた。ようやく金縛りから解放される。しかし、逃げることはできなかった。ただ布団をかぶり、女が消えてくれることを祈るだけ。
「結衣ちゃん! 助けて!」亜弥の叫ぶ声が聞こえた。
しかし、あたしにはどうすることもできない。
確かにあたしは、霊感と呼べるものがあった。子供の頃から、他の人には見えないものが見えたし、それが霊だと言えば、そうなのかもしれない。しかし、だからといって、何かができるわけではない。霊を成仏させることなどできないし、霊と話すこともできない。見えていることに、脅えるだけ。今のように。
……ギィ。
足音が近づいてくる。
1歩。
さらに1歩。
「結衣ちゃん! 結衣ちゃん!」
亜弥の悲痛な叫び声。何もできないあたしは。
「ごめん! 亜弥ちゃんごめん!」
あやまるしかない。ごめんなさい。その言葉を、ただひたすら叫び続ける。何もできなくて申し訳ない気持ちを表すよりも、ただ、大きな声を出すことで、亜弥の助けを求める声、そして、女が近づいてくる音を、聞こえないようにしたかったのかもしれない。だから、あたしは叫び続ける。ごめんなさい。
だが、どんなに大きな声を出しても。亜弥の声も、あの足音も、聞こえてくる。足音は、さらに近くで。
あたしのすぐ近くまで来た足音は――そのままそばを通り過ぎる。
「結衣ちゃん! 結衣ちゃん! ゆい――」
…………。
突然、亜弥の声は聞こえなくなった。
あの足音も。
……どうなったのだろう?
判るはずもなかった。確かめるには、見るしかない。いつまでもこうしているわけにもいかない。あたしは頭からかぶった布団をゆっくりと上げた。
部屋の電気はいつの間にか点いていた。部屋を見回すが、あの赤いコートの女の姿は無い。どこへ行ったのだろうか? 判らないが、姿が見えないのでとりあえず安心はできた。だがそれも一瞬。亜弥の事を思い出し、ベッドの方を見た。亜弥は、あたしに背を向けた状態で、小刻みに震えていた。
「大丈夫、もういなくなったよ」震える亜弥を安心させてあげようと、あたしは亜弥の肩に手をかけた。
「――――!」
亜弥の顔を見て、あたしは言葉を失う。
まるで死人のようだった。血の気を失った顔色は青白さを通り越して冷たい土のような色をしており、目は焦点が定まっておらず、小刻みに震える口からは意味のないうめき声が漏れていた。呼びかけても反応が無い。
「おじさん! おばさん!」
あたしは、ありったけの声で助けを呼んだ。
「タクシーを呼んでおいから、悪いけど、今日は帰ってくれないか?」
亜弥の両親はそう言ってあたしに1万円札を手渡し、追い払うかのようにあたしを家の外まで送った。閉ざされた玄関の向こうからは慌しく駆け回る音と、時折両親の怒鳴るような声が聞こえてくる。あたしはそれ以上何もできず、その日は家に帰るしかなかった。
10月14日(土) PM4:32
2週間後、あたしはふたたび、亜弥の家を訪ねた。古い木製の門に付けられた呼び鈴を押す。しばらく待ったが、返事は無い。もう1度押すが、結果は一緒。機能しているのかどうかも判らなかった。あたしはドアをノックしてみた。
「あの……こんにちは」
1度目は遠慮がちに。反応が無いので、2度目はかなり大きくノックする。それでも中から人が出てくる気配は無い。
誰もいないのだろうか? そう考えるのが妥当だが、もしかしたら、呼び鈴やノックが聞こえない所にいるのかもしれない。庭の方に回ってみることにした。それほど親しいわけでもないのに勝手に庭に入るなんて失礼な感じもしたが、何となくそのまま帰る気にはなれなかったのだ。
亜弥の家の庭はそれほど広くはなかった。小さな物置と物干し台があるだけ。庭に出るための勝手口をノックしてみるが、結果は同じだった。
「やっぱりいないのかな……」
諦めて帰ろうとしたとき、何かやわらかい物を踏んだ。ぐにゃっとしたその感覚はすごく不快で、すぐに足を上げる。しかし、そこには何も無く、ただ、土があたしの靴の形に沈んでいるだけだった。安心したのもつかの間、あたしは、すぐにその違和感に気がついた。
しばらく雨は降っていないので庭の土は全体的にしっかりしてはいるものの、その部分――横1メートル、縦2メートルほどの広さだけが、やわらかいのだ。
また、庭は手入れが行き届いているものの、ところどころに小さな雑草が生えているが、その部分には何も無い。
それは……そう。まるで、1度地面を掘って、もう1度埋めた……そんな感じ。
ドクン……。
心臓が大きく鳴った。言い様の無い不安が、胸をよぎる。
何かを埋めた……そうとしか見えない跡だった。だが、一体何を埋めたのだろう? ゴミなどを埋めるなら、もっと小さくてすむはずだ。その大きさは、人1人が十分に入るほどの大きさだ。掘るのにも相当な時間と体力が必要なはずである。そのような苦労をしてまで、一体何を埋めたというのだろう……。
「今井さんちに何か用かい?」
突然声をかけられ、あたしは軽く悲鳴を上げてしまう。見ると、隣の家の窓から、初老の女性がこちらを見ていた。
「あ……あの、亜弥ちゃんに用があって……」声を上げてしまったのが恥ずかしく、あたしは少しうつむいて答えた。
「今井さんなら、1週間くらい前に引っ越したみたいだよ」
「え!?」
予想外の答えに、あたしはまた声を上げてしまう。
話によると、亜弥は精神を患ってしまい、どこかの病院に入院したのだそうだ。その数日後、両親は逃げるように家を出たらしい。挨拶など何も無く、亜弥が入院している病院も、家族の引越し先も、全く判らないそうだ。
結局あたしは、何もできないまま帰るしかなかった。
あの夜、亜弥の部屋で見た赤いコートの女は何だったのか?
そして、両親は何か知っていたのだろうか?
今となっては知る術もない。
――いや。
ひとつだけ、気になることがある。
そう。庭の、あの掘った跡。
あそこには何かが埋まっている。
人1人が十分に入るほどの、大きな穴を掘った跡。
あそこには、今回の出来事に関する、何か重大な物が埋まっている……。
そんな気がしてならない。
――だが。
今のあたしには、それを確認するだけの勇気は無かった。
中学の同級生 第1話 宮崎結衣 終
(怪談新耳袋「中学の同級生」より)