Y.U.I.~都市伝説ファイル~   作:ドラ麦茶

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消えた友達 第2話

「……で、その天才の口車に乗せられて、美沙子って娘のことを調べてるの? 大変だね、結衣も」

 

 明奈は、ベッドの上で雑誌をパラパラとめくりながら、興味なさそうな口調でそう言った。

 

「口車に乗せられたとは失礼ね。あの娘の言うことは、ちゃんと筋が通ってるでしょ?」あたしは言い返した。

 

 今朝、大学のロビーで、あたしは理名と亜美に美沙子のことを相談した。美沙子は中学時代の友達だけど、突然引っ越し、行方不明になってしまったのだ。それだけでなく、確かに存在したはずなのに、当時のクラスメートは誰も覚えていないと言い、アルバムに写真も存在しなかった。いったい何が起こっているのか? 普通に考えれば、そんなことはあり得ない。あたしの勘違いだろうと思う。でも、亜美は言う。

 

「確率が低いからと言って、起こっていないとは限らない。納得するまで調べてればいい」

 

 その心強い言葉を得て、さっそくあたしは調べようと、部屋のパソコンに向かっているのだけど、いつものように遊びに来た明奈が、せっかくのやる気を削ぐようなことを言う。

 

「その美沙子って娘のこと、あたしも奈々も梓も、誰も知らないのよ? 写真も無いわけだし、いるはずが無いでしょ?」

 

 フン、なんとでも言うがいい。誰が何と言おうとも、あたしはあたしの信じる道を行くのだ。

 

「まあ、別にいいんだけどさ。せっかく奈々が帰って来てるときにやらなくてもいいと思うけど」

 

 う……。それを言われると弱い。

 

 そうなのだ。今日は珍しく、堀北に奈々が帰って来ている。こんなことするよりみんなで遊んだ方が賢明という気はしないでもない。

 

「ああ。あたし別に構わないよ」と、奈々が笑った。「だって結衣。どうしても、その美沙子って娘のことが気になるんでしょ? だったら、ちゃんと調べないとね」

 

 涙が出るほどありがたい言葉だ。かえって悪い気がしてくる。ゴメンね、奈々。

 

「相変わらず結衣には甘いよね、奈々。ま、いいけど」明奈はやれやれという感じで肩をすくめた。「終わったら、半ゲームやらせてね」

 

 ……せっかく奈々が帰って来てるのに1人でゲームをやるのはいいのか。

 

 まあいい。明奈は放っておこう。とりあえず気になることだけ調べて、さっさと遊びに行こう。さて、まずは何から手をつけるべきか。

 

 …………。

 

 とりあえず、あたしみたいな体験をした人が他にいないか調べてみよう。

 

 インターネットを立ち上げ、大手検索サイトにアクセスする。えーっと。「同窓会」、「友達」、「みんな忘れてる」と。キーワードを入れ、ぽちっと検索。おお。12万件もヒットした。さいさきのいいスタートだ。何々?

 

 

 

 

 

 

『友達のブログを見て、高校のクラスメートの同窓会があったことを知りました。ボクだけ呼ばれていません。何故ですか?』

 

 

 

 

 

 

 …………。

 

 なんて可哀想な人だろう。同情するけど、今のあたしには関係ない。サクッと飛ばす。次は……。

 

 

 

 

 

 

『同窓会で、ボクをいじめていた人に再会し、あの頃の恨みを言ったのですが、その人はいじめていないと言います。何故ですか?』

 

 

 

 

 

 

 …………。

 

 ま、そんなもんよね。いじめられた方はずっと根に持ってるだろうけど、いじめた方はケロッと忘れてるか、そもそもいじめてる意識も無かったのだろう。まあ、これも今のあたしには関係ない。サクッサクッと飛ばす。次は……。

 

 

 

 

 

 

『同窓会に行ってきました。久しぶりの再会でボクは嬉しかったのですが、みんなボクのことを覚えていませんでした。何故ですか?』

 

 

 

 

 

 

 …………。

 

 これはなんとなく近い気はするけど、でも、忘れられた本人が存在しているから、近いようで、全然違う気がする。てか、これ、全部同じ人じゃないのか? なんだってこんなかわいそうな人がいるんだ?

 

 それからしばらく検索に引っかかった他のページをいくつか見てみたけど、どれも同じような内容で、あたしと同じ体験をしたというような話は一切出てこなかった。

 

「そんな調べ方じゃ当然でしょ? まったく、見ててイライラするわ」いつの間にか背後に立っていた明奈。

 

「何よ? 何か問題ある?」

 

「大アリよ。そんなんじゃ、いつまでたっても知りたい情報は出てこないわよ。もっと効率よくやらなくちゃ」

 

 偉そうな口調だな。「じゃあ、どうやって調べたらいいの?」

 

「そうね。結衣の話だと、その美沙子って娘は、ただ連絡が取れなくなっただけじゃなく、みんなの記憶からも消えてしまった。単なる失踪事件じゃないわ。オカルト的な何かがある。オカルト的な失踪と言うと、何と言っても神隠しよ。とりあえず、『神隠し』、『事例』で検索してみて」

 

 ナルホド。神隠しか。あたしは言われた通り、その言葉で検索する。1万6千件がヒット。最初のページを見ると。

 

 

 

 

 

 

『1872年。ポルトガル沖にて、アメリカの帆船・メアリー・セレスト号が漂流しているのが発見された。船内には誰1人いなかったが、不思議なことに、食堂のテーブルには、まだ温かいパンやスープやコーヒーなどが置かれてあり、まるで、たった今まで船内に誰かがいたような様子だった。救命ボートは全てそのまま残っており、船員はどこへ行ったのか、いまだに不明である』

 

 

 

 

 

 

「これ、なんか聞いたことある事件だね」奈々もいつの間にか後ろに立っていた。「怖いよねぇ。まさしく神隠しだよ。いったい、何があったんだろ?」

 

「メアリー・セレスト号事件ね」と、明奈。「航海事件史上最大の謎とされてるけど、最近の調べでは、この話はほとんどがデマだと言われているわ」

 

「へ? そうなの?」

 

「うん。当時は新聞の報道が今ほど節度を守ってなくてね、面白そうな事件があると、読者の興味を引こうと、あること無いこと何でもでっち上げて書いたそうよ。それはもう、東スポなんて目じゃないくらいにね。実際のメアリー・セレスト号には、温かい食事なんて置かれてなかったそうだし、救命ボートも無かったらしいわ。そのあたりは、ねつ造された情報なんだって」

 

 スラスラと説明する明奈。さすがにこういう話には詳しい。

 

 ま、なんにしても美沙子の事件とは関係なさそうだ。次行ってみよう。えーっと。ノーフォーク連隊事件? 第1次世界大戦中、トルコのサル・ベイ丘で、イギリス陸軍・ノーフォーク連隊341名が行方不明……これも船のやつと似たようなもんだろう。日本の事例はないかな? えーっと。お? 日本の神隠し事件を取り扱ったサイトがあったぞ。見てみよう。何々?

 

 

 

 

 

 

『1989年5月5日。H県H市。親戚の家に遊びに来ていた5歳の少年が、両親が目を離した40秒の間に姿を消した。現在も捜索中』

 

 

 

 

 

 

 これはなんかテレビでよく見る事件だな。警察は今でも手がかりを探してる。不思議な事件で、ネットではオカルト的な解釈もされている。次は……。

 

 

 

 

 

 

『1991年7月3日。T県S市。市内在住の会社員Mさんの長女が、この日から行方不明。多くの目撃証言があるが、有力な手掛かりが無く、現在も捜査中』

 

 

 

 

 

 

 これもテレビでよく見る事件だ。次は……。

 

 

 

 

 

 

『1991年8月4日。H県H市。市内の自営業、Tさんの長男と長女の2名が行方不明になる。長男は遺体で発見されるが、長女は今も行方不明。この日の2人の目撃情報はほとんど無く、有力な手掛かりは得られていない。』

 

 

 

 

 

 

 次。

 

 

 

 

 

 

『1984年2月21日。H県H市。市内の中学校に通う男子生徒1名が行方不明。その1週間後、同じ高校の女子生徒が行方不明になる。2人はクラスメートで、仲も良かったそうだが、2つの事件の関連は不明』

 

 

 

 

 

 

 …………。

 

 

 

 

 

 

『1983年11月24日。H県H市。市内の中学校で生徒10人が謎の失踪。1人は200キロ離れたT県の山中で発見されるが、残りの9名は今も行方不明』

 

 

 

『1992年7月28日。H県H市。市内の大型ショッピングモールの前で会社員の男性が車にはねられた。すぐに救急車が呼ばれ、男性は近くの病院に搬送されることとなったが、その途中、救急車が行方不明となる。後に救急車は市内の山中で発見されるが、男性および救急隊員は行方不明』

 

 

 

『2000年10月17日。H県H市。市内に住む会社員の男性が、妻を殺害し埋めたと、警察に自首をした。供述に基づき警察は死体を埋めたとされる場所を調べたが、死体は発見できず。その妻は、行方不明とされた』

 

 

 

『1992年5月9日。H県H市……』

 

『1999年1月24日。H県H市……』

 

『1986年9月16日。H県H市……』

 

『1993年6月30日。H県H市……』

 

 

 

 

 

 

 …………。

 

 ひと通り見終えたあたしは、なんとなく不安になる。

 

「なんか、やたらと多くない? H県H市って」奈々も不安そうな顔。

 

「だね。何だろう……」明奈が呟く。

 

「まさか、堀北じゃないよね……」あたしは言った。

 

「…………」

 

 明奈は答えない。黙って、横から手を出してキーボードを叩いた。「H県堀北市」、「失踪事件」で検索ボタンを押す。

 

「――――」

 

 絶句するあたしたち。

 

 検索の結果、50万件近くヒットした。1989年5月5日、1991年8月4日、1992年7月28日……さっきのサイトで見た日付がずらりと並ぶ。もちろん、同じ事件もあるだろうが、50万件というのは、多すぎではないだろうか? 試しに『東京』、『失踪事件』で検索してみると、44万件だった。堀北は、どちらかと言えば田舎街だ。それなのに、東京を上回る数の失踪事件が起きている……?

 

「あくまでも失踪事件を取り扱ったサイトの数だから、事件そのものが東京より多いとは言えないけど……それにしたって、普通じゃないわね」と、明奈。

 

 何だろう、これは。

 

 この街で、いったい何が起きているの……?

 

「ちょっと代わって」

 

 明奈はあたしを押しのけるようにパソコンの前に座ると、あたしとは比べ物にならないほどの早さでキーボードを叩き、現れたページを次々と見ていく。目は真剣そのもの。こういうオカルト事件に関して、明奈ほど頼りになる人はいないだろう。あたしは黙って見守った。

 

「見て、これ」

 

 しばらくして、明奈があるページを見せてくれた。1991年8月4日の事件に関するページだ。何々?

 

 

 

 

 

 

 1991年8月4日。堀北市に住む自営業Tさんの長男A君と長女Bちゃんの兄妹が行方不明となった。

 

 その日、2人は昼食を食べた後、外へ遊びに出かけた。自宅から10分ほど離れた山の中に入るのを、近所の主婦が目撃している。その山は普段から子供たちの遊び場になっており、近所の人たちも、そこで遊ぶことはさほど危険ではないと考えていたようだ。

 

 しかし、A君とBちゃんは、夜になっても帰って来なかった。

 

 警察などが山を捜索したが、2人は見つからず、手がかりとなりそうなものも発見できなかった。

 

 2日後、山の中腹にある池の周りを調べていた警察官が異変に気付いた。池が、血のように真っ赤に染まっていた、と言うのだ。

 

 しかし、他の警察官が駆けつけたときには、池は普段と何ら変わりのない色だった。念のため池の中も捜索したが、2人は見つからなかった。

 

 失踪から1週間後、池のそばを通りかかった近所の住人が、A君の遺体を発見する。検死の結果、A君の体内からは全ての血が抜き取られていたことが判った。しかし、遺体に外傷などは一切無かった。警察は死因を原因不明の心臓麻痺としたが、なぜ全身の血が無かったのかについての発表は一切されなかった。

 

 Bちゃんは、今も行方不明のままだ。

 

 

 

 

 

 

「……何、これ。本当なの?」明奈に訊くあたし。

 

「さあ……何とも言えないけど。後、こんなのもあるわよ」

 

 明奈は画面に別のサイトを表示させた。

 

 

 

 

 

 

 1984年2月21日。堀北市の中学に通うS君が、授業終了後、校門前で目撃されたのを最後に、行方不明となる。警察が捜索するも、有力な情報は得られなかった。

 

 ただ、クラスメートの女子Oさんが奇妙な証言をした。S君が、校舎の屋上から飛び降りたのを見た、と言うのだ。

 

 警察は証言に基づき捜査したが、このような事実はなく、Oさんの勘違いということで処理された。

 

 そして、S君の失踪から1週間後、Oさんも失踪した。こちらも有力な手掛かりは何も得られていない。2つの事件の関連も不明。

 

 

 

 

 

 

「ネット上の情報だから、どこまで本当なのかは判らない。さっきのメアリー・セレスト号の事件と同じで、面白おかしく書かれた可能性も高いけど、堀北で起きたすべての失踪事件がこんな感じで書かれてある。いったい、どうなってるのかしらね」明奈が言った。

 

 あたしは明奈が調べたページを次々と見ていく。確かに彼女の言う通り、全ての失踪事件は、いわゆるオカルト的な内容になっている。

 

 と。

 

 あるページで、あたしの目はくぎ付けになった。

 

 

 

 

 

 

 1983年11月24日。堀北市内の中学校に通う生徒10人が謎の失踪。

 

 失踪した生徒たちはオカルトマニアで知られ、その夜、学校の校舎に集まって『悪魔召喚』の儀式を行っていた。そして、夜中になっても、誰も帰宅しなかった。

 

 儀式が行われたと思われる教室の床には魔法陣が描かれ、ろうそくや剣などの魔術品が置かれたままになっていた。警察は集団失踪事件として捜査したが、何の手がかりも得られなかった。

 

 事件から2週間後、堀北市から約200キロ離れたT県の山中で、行方不明の生徒1人を保護。生徒は憔悴しきっていたものの、外傷は無く、命に別条も無かったが、記憶に混乱が見られ、事件当時のことはほとんど覚えていなかった。

 

 ただ、発見された当時は、うわごとのように、

 

「悪魔がみんなを連れて行った……悪魔がみんなを連れて行った……」

 

 と、つぶやいていたという。

 

 

 

 

 

 

「これ、なんか聞いたことない?」明奈に言う。

 

「そう言えば、なんか聞いたことあるわね。なんだっけ?」

 

 記憶をめぐる。明奈は中学時代はオカルトマニアだった。こういった話をどこからともなく仕入れてきては、みんなに聞かせていたけど、この話を聞いたのは最近だったように思う。あれは……いつだったか……。

 

 そうだ。思い出した。

 

 あの、パソコンがウィルスに感染されそうになった日だ。

 

「そうか。そうだね」明奈も思い出したようだ。「あたし、適当にサイト巡ってて、見つけたんだ。あれ、堀北の事件だったんだ」

 

 1983年の堀北の中学で起こった事件。

 

 まてよ。

 

 あたしは他の堀北の事件も確認する。そして気付いた。

 

「1983年以前の事件は無いね」

 

「ん? そう言えばそうね」明奈は再びパソコンのキーボードを叩く。しばらく調べて。「ホントだわ。堀北での失踪事件は1983年の、この10人の失踪事件以降に多発するようになってる」

 

 どういうこと? まさか、この事件がきっかけで、失踪事件が起こるようになった?

 

 あたしはもう1度、その10人の失踪事件の記事を隅から隅までじっくり読んだ。

 

 気になるのは、やはり悪魔召喚という言葉。

 

 カタカタカタ、と、明奈がキーボードを叩く。画面には、悪魔に関するページが表示された。

 

 

 

 

 

 

 悪魔。

 

 神に敵対する者。魔界や地獄に住み、人を堕落させる魔物。

 

 悪魔召喚とは、文字通り魔界から悪魔を呼びだす行為のことである。呼び出した悪魔を下僕にしたり、あるいは、3つの願い事をかなえてもらうといった話は、ファンタジーや童話の世界でよくある話だ。その代わり悪魔は、呼び出した者の魂を奪うとされる。

 

 悪魔にとって魂は、人間で言うお金みたいなものである。つまり、たくさん持ってる方が偉いのだ。ゆえに悪魔は、あの手この手で人間の魂を得ようとしている。

 

 1872年12月24日。ある日本の学者が、驚くべき研究レポートを発表した。悪魔を召喚する方法である。このレポートは当時新聞などに掲載され、全国に知れ渡った。

 

 この学者は、数日後に行方不明となっている。また、新聞に掲載された方法を真似し、悪魔を呼び出そうとする者も多かったが、同様に行方不明になる人が後を絶たなかったという。

 

 

 

 

 

 

 ページには、その学者が発表した悪魔を召喚する方法が、細かく書かれてあった。用意する道具、床に描く図形、召喚の呪文。当時新聞に掲載された内容だという。

 

 そのページに描かれてあった図形に目が止まる。

 

 三角形2つを組み合わせた六角の星を円で囲んだ図形。円周には、英語ともアラビア語ともつかない文字がびっしり。いわゆる、魔法陣と呼ばれるものだ。悪魔を召喚する際に、床に描く図形。

 

 そう言えば……。

 

 これ、どこかで見たような。

 

 あれはいつだっただろうか……最近ではないだろう。ずっと前。確か、中学生の頃……。

 

 ……そうだ……そうだ!

 

 その図形を見て。

 

 あたしの頭の中で、まるで、ジグソーパズルが完成するかのように、ひとつひとつのパーツが、次々と組み合わさっていく。

 

 そして、1つの結論が。

 

 ――そんな。まさか。

 

 それは、あまりにもバカバカしい考えだった。考えた自分でも信じられない。そんなことは、あり得ない。

 

 いや。

 

 あり得ないなんて言い切れない。どんなに可能性が低くても、それは、本当に起こっているかもしれないのだ。

 

 確認しなきゃ。

 

 もし、あたしの考え通りだとしたら、これは、大変なことだ。

 

 あたしは、部屋を飛び出した。

 

「ちょっと、結衣? どうしたの?」

 

 驚いた奈々の声を背中で聞く。1階に下りて、リビングへ。

 

「お母さん! 落書きを消すものって、ある!?」

 

 いきなりのことに、お母さんは目を白黒させる。「何よ結衣。いきなり」

 

「ゴメン。とにかく落書きを消すもの! 壁とか床とかに描いたヤツを消すの」

 

「うーん。家には無いわね……ホームセンターに行かないと」

 

 時計を見る。9時30分。駅前のショッピングモールの中にあるホームセンターは10時までだったはず。急げば間に合うかもしれない。

 

「ねえ、いったいどうしたのよ?」

 

 奈々と明奈が下りてきたけど、説明してる時間は無い。

 

「ゴメン。急がないと!」あたしはそのまま玄関へ行き、靴を履いた。

 

「なんなの? どこ行くの!?」

 

 わけが判らないという顔の奈々と明奈に向かって、

 

「旧校舎! 中学校の!!」

 

 叫ぶように言い、そして、あたしは駆け出した――。

 

 

 

(作者オリジナル)

 

 

 

 

 

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