Y.U.I.~都市伝説ファイル~   作:ドラ麦茶

63 / 99
明奈の都市伝説ファイル・ファイナルシーズン

「…………」

 

「…………」

 

「……明奈、ファイナルってなってるけど、ホント?」

 

「そ。今作の人気を支えていたこのシリーズも、いよいよ見納めってわけよ。止めてもムダよ。どんなに惜しむ声が多くても、もう決めたことなの。人気があろうとも、終わるべきところで終わるのが正しい姿なのよ。ムリヤリ話作って続けても仕方が無いわ」

 

「誰も止めやしないと思うけど……そんなこと言って、『明奈の都市伝説ファイル・リターンズ』とか、『明奈の都市伝説ファイル・THE MOVIE』とかやるんじゃないでしょうね?」

 

「ぎく」

 

「……やっぱりか」

 

 

 

 

 

 

第1話・河原の幽霊

 

 

 

 キーンコーンカーンコーン。

 

 6時間目の終了を告げるチャイムが鳴り響く。今日の授業はこれで終了だ。みんなで先生に礼をする。

 

「よっしゃぁ、今日も1日終わりだ! さあ、帰るわよ!」

 

 待ってました、とばかりに叫ぶ明奈。この娘が学校でテンションが上がるのは、お昼と放課後の2回だけだ。

 

「帰っちゃうの? せっかくだから、これからどこか行かない?」梓が提案する。

 

「あ、いいね。どこ行こうか?」あたし、同意。

 

「うーん。行きたいけど、あたし、今月お小遣いピンチなのよね」明奈は苦笑いをした。

 

「今月ピンチって……今日10日だよ? 早すぎでしょ。何に使ったのよ」呆れるあたし。

 

「んー。まあ、ちょっと欲しいゲームがあってね。レアゲームで、すごく高かったのよ」

 

 ああ。そう言えばこの前そんなこと言ってたな。メタルスレイダーなんとかってやつ。ネットオークションで1万円だとか。

 

「そう、それ。迷ったけど、結局買っちゃった。だからあたし、ほとんどオケラなの。まあ、付き合ってもいいけど、お金のかかるところはパス」

 

「しょうがないわね。じゃあ、ワックでも行く? ジュースくらいならおごってあげるわよ」と、梓。

 

「お? ラッキー。行く行く」喜ぶ明奈。

 

「奈々はどうする?」あたしは訊いた。

 

「もちろん行くよ」

 

「じゃ、さっそくレッツゴー!」

 

 と、いうわけで、いつもの4人で学校近くのワックに入り、適当にハンバーガーやポテトなどを注文して席に陣取り、いつものようにくだらない話に花を咲かせる。

 

 やがて、話題も尽きてきた頃。

 

「ところでさぁ、明奈。最近なんかないの? 怖い話」梓が言った。

 

「うーん、あるけど……聞きたい?」明奈、急に声のトーンを下げる。

 

「何々? 話して」奈々と梓、目を輝かせる。

 

「いいけど――これ、本当に怖いよ。心臓が凍りつくくらいに……」

 

 明奈は不気味に微笑んだ。その笑顔に、不吉な物を感じる。

 

 明奈、どこに情報網があるのか、いつも新しい怪談話を仕入れてくる。中にはホントに怖いものも多い。その明奈が、ここまでもったいぶるなんて、相当なものに違いない。

 

「……いいよ。話して」梓が促す。

 

「いいけど、後悔しないでね」

 

 みんな、明奈の方を見た。

 

「これは、つい昨日、あたしが経験した話。学校の帰りに、家の近くにある河原の草むらで、お婆さんが1人、探し物をしていたの。あたしは気になって、『何を落としたんですか?』と、声をかけてみた。そしたら、『孫に買って来たクマのぬいぐるみを落としちゃってねぇ』と、お婆さんは言うの。その顔を見たとき、あたし、あれ? どこかで会ったことあるかな? って、思ったの。でも、思い出せなかった。お婆さんは一生懸命探してる。なんだか気の毒になってね。あたし、手伝ってあげることにしたの。それからしばらく草むらの中を探したけど、クマのぬいぐるみは見つからない。やがて日が暮れて、辺りは真っ暗になった。こりゃダメだ。もう諦めよう。お婆さんにそう言おうと、あたしは振り返ったんだけど、そこには誰もいなかった。辺りを見回したけど、あたし1人。おかしいな、先に帰っちゃったのかな? そう思った。不思議と腹は立たなかったわ。あたしも探すのをやめて、家に帰ったの」

 

 明奈はここで大きく息を吐いた。この話がウソだということはすぐに判った。明奈の家の近くに川なんて無いし、探すのを手伝ってあげたのに本人は勝手に消えて、明奈が怒らないはずはないのだ。でも、もちろんそんなツッコミは入れず、あたしたちは黙って聞いてる。

 

 明奈は話を続ける。「家に帰ったら、お母さんが『何があったの?』と、心配そうに訊いてきた。ずっと草むらの中にいたから、制服はすっかり汚れちゃってたの。あたしは河原であったことを全部話した。すると、お母さんの顔色がみるみる変わっていった。そして、タンスの中から1枚の写真を出して、あたしに見せてくれたの。そこには、小さな赤ちゃんを抱いた、あのお婆さんが映っていた。これ、誰? と、あたしが訊くと、お母さんは言った。『あなたのおばあちゃんよ。あなたが産まれて間もないころ、あの河原のそばで、車にはねられて亡くなったの。あなたのために、クマのぬいぐるみを買って帰ろうとしていたそうよ』あたしは言葉を失ったわ。じゃああれは、おばあちゃんの幽霊? 今でも、あたしのためにクマのぬいぐるみを探しているの? でも、消えちゃったよ? すると、お母さんは言ったわ。『あなたが一緒に探してくれて、嬉しくて、きっと成仏したのよ』と――」

 

 ごくり、その場にいる全員が、息を飲んだ。

 

 

 

「――言っとくけど、この話は全部ウソよ。あたしのお婆ちゃんは、今でも元気。でもね、あたしは、このクマのぬいぐるみを探すお婆ちゃんの幽霊の話が、とっても好きなの」

 

 

 

 …………。

 

 ……なんだ? なんか、いつもと様子が違うぞ? どうなってんだ、おい?

 

 

 

 

 

 

第2話・ネコとネズミ

 

 

 

 キーンコーンカーンコーン。

 

 6時間目の終了を告げるチャイムが鳴り響く。今日の授業はこれで終了だ。みんなで先生に礼をする。

 

「よっしゃぁ、今日も1日終わりだ! さあ、帰るわよ!」

 

 待ってました、とばかりに叫ぶ明奈。この娘が学校でテンションが上がるのは、お昼と放課後の2回だけだ。

 

「帰っちゃうの? せっかくだから、これからどこか行かない?」梓が提案する。

 

「あ、いいね。どこ行こうか?」あたし、同意。

 

「うーん。行きたいけど、あたし、今月お小遣いピンチなのよね」明奈は苦笑いをした。

 

「今月ピンチって……今日5日だよ? 早すぎでしょ。何に使ったのよ」呆れるあたし。

 

「んー。まあ、ちょっと欲しいゲームがあってね。レアゲームで、すごく高かったのよ」

 

 ああ。そう言えばこの前そんなこと言ってたな。銀河婦警伝説なんとかってやつ。ネットオークションで3万円だとか。

 

「そう、それ。迷ったけど、結局買っちゃった。だからあたし、ほとんどオケラなの。まあ、付き合ってもいいけど、お金のかかるところはパス」

 

「しょうがないわね。じゃあ、餃子のキングでも行く? キングラーメンくらいならおごってあげるわよ」と、梓。

 

「お? ラッキー。行く行く」喜ぶ明奈。

 

「奈々はどうする?」あたしは訊いた。

 

「もちろん行くよ」

 

「じゃ、さっそくレッツゴー!」

 

 と、いうわけで、いつもの4人で学校近くの餃子のキングに入り、適当にラーメンや餃子などを注文して席に陣取り、いつものようにくだらない話に花を咲かせる。

 

 やがて、話題も尽きてきた頃。

 

「ところでさぁ、明奈。最近なんかないの? 怖い話」梓が言った。

 

「うーん、あるけど……聞きたい?」明奈、急に声のトーンを下げる。

 

「何々? 話して」奈々と梓、目を輝かせる。

 

「いいけど――これ、本当に怖いよ。心臓が凍りつくくらいに……」

 

 明奈は不気味に微笑んだ。その笑顔に、不吉な物を感じる。

 

 明奈、どこに情報網があるのか、いつも新しい怪談話を仕入れてくる。中にはホントに怖いものも多い。その明奈が、ここまでもったいぶるなんて、相当なものに違いない。

 

「……いいよ。話して」梓が促す。

 

「いいけど、後悔しないでね」

 

 みんな、明奈の方を見た。

 

「これは、ネコとネズミが仲良くケンカする、あの有名なアニメの話。長く子供たちに親しまれてきたアニメだけど、最終回を見た人は少ないと思う。それは、こんな話なの。ネコとネズミはそれからも、何年にもわたってずっとケンカを続けた。そんなある日、ネコは死んでしまったの。寿命よ。でも、ネズミは『ああ、あいつ死んだのか。からかう相手がいなくなって、ちょっと退屈になるかな』くらいにしか思わなかったの。で、ネコが死んで何日か経ったある日、家に、新しいネコがやって来た。ネズミは巣の中からこっそり新しいネコを観察した。前のネコよりも若いけど、体はひと回り小さく、ずっとのろまだったの。『なんだ、あんなネコじゃ、からかい甲斐が無いなぁ』ネズミはそう思った。でも、暇つぶしにはなるだろう、と、ネズミはさっそく新しいネコをからかいに行ったの。後ろからそっと近づいて、尻尾を大きなトンカチで叩いてやろうとした。そうすれば、新しいネコは飛びあがって痛がるに違いない。前のネコのように。ネズミは気付かれないように、トンカチを振り上げ、そっと近づいて行った」

 

 明奈はここで大きく息を吐いた。まあ、この話も間違いなくウソだろう。こういった長寿番組には、最終回のウワサがつきものなのだ。そして、主人公は実は植物人間だったとか、飛行機が墜落して死んだとか、大抵不幸な結末が待っている。冷静に考えれば、作者が自分の大切な作品をそんな粗末に扱うわけはないと判るのだけど、なぜか信じてしまう不思議な説得力がある。

 

 明奈は話を続ける。「でも、新しいネコはネズミの接近に気付いたの。くるっと振り返ったネコを見て、『あれ? こんなに簡単に見つかるはずはないのに。変だな』と、ネズミは不思議に思った。ネコはすぐにネズミに襲いかかったの。ネズミは慌てなかった。所詮前のネコよりのろまなヤツ。捕まるはずはないと思ったの。ネズミはいつものように逃げたけど、不思議なことに、すぐに捕まってしまった。おかしい、こんなはずはないのに。それでもネズミは慌てず、捕まえたネコの手に噛みついたの。こうすれば、ネコは悲鳴を上げて飛びあがるはずだから。でも、新しいネコは前のネコよりも体が小さいのに、噛みつかれても全然平気だった。結局ネズミは、そのまま新しいネコに食べられてしまったの。そのとき、ネズミは気付いたそうよ――」

 

 ごくり。その場にいる全員が、息を飲んだ。

 

 

 

「――ネズミはようやく気付いたの。ああ。ネズミがネコとケンカして、勝てるわけが無いんだ。前のネコは、ワザとボクを捕まえず、負けたフリをしてたんだな、と。その後、天国で再会した2匹は、今でも仲良くケンカをしているそうよ」

 

 

 

 …………。

 

 何……? あたし、どうしたんだろう? まさか、明奈の話に感動しているの? そんなの、あり得ないわ……。でも、だったらこの胸が締め付けられるような思いは何……? 

 

 

 

 

 

 

第3話・口裂け女

 

 

 

 キーンコーンカーンコーン。

 

 6時間目の終了を告げるチャイムが鳴り響く。今日の授業はこれで終了だ。みんなで先生に礼をする。

 

「よっしゃぁ、今日も1日終わりだ! さあ、帰るわよ!」

 

 待ってました、とばかりに叫ぶ明奈。この娘が学校でテンションが上がるのは、お昼と放課後の2回だけだ。

 

「帰っちゃうの? せっかくだから、これからどこか行かない?」梓が提案する。

 

「あ、いいね。どこ行こうか?」あたし、同意。

 

「うーん。行きたいけど、あたし、今月お小遣いピンチなのよね」明奈は苦笑いをした。

 

「今月ピンチって……今日1日だよ? 早すぎでしょ。何に使ったのよ」呆れるあたし。

 

「んー。まあ、ちょっと欲しいゲームがあってね。レアゲームで、すごく高かったのよ」

 

 ああ。そう言えばこの前そんなこと言ってたな。マッスルタッグ何とかゴールドバージョンってやつ。ネットオークションで50万円だとか。

 

「そう、それ。迷ったけど、結局買っちゃった。だからあたし、ほとんどオケラなの。まあ、付き合ってもいいけど、お金のかかるところはパス」

 

「しょうがないわね。じゃあ、定刻ホテルの灘マンでも行く? メインディッシュくらいならおごってあげるわよ」と、梓。

 

「お? ラッキー。行く行く」喜ぶ明奈。

 

「奈々はどうする?」あたしは訊いた。

 

「もちろん行くよ」

 

「じゃ、さっそくレッツゴー!」

 

 と、いうわけで、いつもの4人で学校近くの定刻ホテルの灘マンに入り、適当にディナーを注文して席に陣取り、いつものようにくだらない話に花を咲かせる。

 

 やがて、話題も尽きてきた頃。

 

「ところでさぁ、明奈。最近なんかないの? 怖い話」梓が言った。

 

「うーん、あるけど……聞きたい?」明奈、急に声のトーンを下げる。

 

「何々? 話して」奈々と梓、目を輝かせる。

 

「いいけど――これ、本当に怖いよ。心臓が凍りつくくらいに……」

 

 明奈は不気味に微笑んだ。その笑顔に、不吉な物を感じる。

 

 明奈、どこに情報網があるのか、いつも新しい怪談話を仕入れてくる。中にはホントに怖いものも多い。その明奈が、ここまでもったいぶるなんて、相当なものに違いない。

 

「……いいよ。話して」梓が促す。

 

「いいけど、後悔しないでね」

 

 みんな、明奈の方を見た。

 

「これは、あたしが小学生の頃の話。当時、あたしは目が見えなかったの。だから、杖をついて学校に通ってた。ある日の帰り、いつものように杖をついて家に帰ってたら、真っ赤なコートで、大きなマスクをした女の人が近づいてきた。そして、こう言ったわ。『私、キレイ?』あたしは少し考えて、『うん、キレイだよ』と、答えた。すると女の人は、その大きなマスクを取って叫んだ。『これでも……キレイかあぁ!!』女の人の口は、耳まで裂けていた。そして、コートの中からカマを取り出し、振り上げたの」

 

 明奈はここで大きく息を吐いた。あたし、少し安心する。第1話と第2話は今までと方向性が違っていて、あたし、ちょっと戸惑っていたけど、今回のはまとも(?)そうだ。よく聞く怖い話だし、最初からツッコミ所が満載だ。まず、明奈の目が見えないなんて初耳だし、目が見えないのに女の人が近づいてきただ、口が耳まで裂けていただ、カマを振り上げただ、どうやって判るというのだろう? ま、それを突っ込んでも、きっと「相手の気を感じたのよ」とか言うに違いない。

 

 明奈は話を続ける。「でも、あたしは困ったの。だって、あたしは目が見えないもの。だから、正直に言った。『ゴメンなさいお姉さん。あたし、目が見えないの。だから、お姉さんが言う、これでも、というのが、よく判らないの』するとその女は少し困った顔をした。でも気を取り直し、あたしの手を取って、自分の口を触らせたの。そこであたしは初めて、女の口が耳まで裂けていると判った。そして、女は改めて言った。『これでも……キレイかあぁ!!』と。あたしは、こう答えたわ――」

 

 ごくり。その場にいる全員が息を飲んだ。

 

 

 

「――あたしはこう答えたの。『あたし、お姉さんみたいな人に会ったの、初めて。みんなね、あたしの目が見えないって判ると、可哀想だ、とか、ゴメンね、とか言うの。なんかみんな、あたしのことを避けるんだよね。まあ、それも仕方が無いと思う。みんな、あたしとどう接したらいいか判んないんだと思う。でもあたし、別に同情とかされたくない。目が見えなくたって、他の人と同じように扱ってほしいもん。あたしを特別扱いしなかったのは、お姉さんが初めてよ。すごく嬉しい。だから、あたしは目が見えないけれど、お姉さんは、すっごく綺麗な人だと思うな』すると女は、振り上げたカマを下ろし、去っていった。その後、口裂け女の姿を見た人はいないそうよ――」

 

 

 

 …………。

 

 ……泣いてない。泣いてなんかないもん。ただ、目から汗が出てるだけ……。

 

 

 

 

 

 

(都市伝説「おもちゃを探す幽霊」「ト○とジェリ○の最終回」「ツンデ霊・口裂け女」より)

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。