壮 絶 な ネ タ バ レ
それは数十分前の出来事。
殺し合いゲームが始まって2日目の今日この頃。仮拠点を見つけてしまった為、少量の荷物だけをバックパックに詰め込め、手に鉄バットを持って辺りを軽く散策していた。
外は晴天で暖かく、森林の風がとても心地よい。こんな状況じゃなかったから、森林浴と評して小一時間ほど川を眺めたいが、飽き性のボッチの俺には無縁である。
時刻は先程散策する前に確認した、太陽の位置から予測した。おおよそお昼の1時ぐらい。普通なら大寝坊である。
20分ほどだろうか。ある程度周りを探索して気付いたことは、俺の仮拠点の周りは森がほとんどで、本当に仮拠点にある川が奇跡的なようなものだった。川の下流を少し下れば、少し大きめの水溜まりのような場所に出る。
明日は上流にでも足を運んでみるかと思い、踵を返し、少し開けたルートで帰っていた時だった。
「あっ」
『あ゛…?』
目と目があったらポ〇モンバトルッッ!!
で、今。
『死ねっ!しねぇ!』バンッバンッッ
「ひょっ!ほっ!あっぶねぇぇ!」
木と木の間を走り抜けながら、先程目と目があってしまった大柄の男に拳銃をバンバン打たれております。
幸い、相手が素人ということと走りながらっていう事もあり、その銃弾のほとんどが"避けなくても当たらない弾道"な為、避けれる弾のみを避け続ける。
当然地形も何も把握していない為、この先に何があるといのもまるで検討もつかない…
「っ!?くそっ!」
そう舌打ち交じりで目の前の断崖絶壁を下から見上げる。プロのロッククライマーじゃなければ到底『よし!登ろう!』なんて意欲がわかないほどの絶壁だ。
それに相手は遠距離武器の拳銃だ。例え俺がプロのロックマンだとしてもノコノコと壁なんてよじ登ってたら、予測であぼーん。どこかのお犬に寝首をとっ捕まえかねられない。
それに…
『やっとおいつめたぞ!このくそ雑魚がっっ』
「っ…」
見た目の割に、小回りが聞くデカブツなようで、既に俺がでてきた森の方からノソノソと少しリロードに手こずりながらも、次のマガジンを装填しながら歩いてきていた。
チラリと確認した時に、このデカブツは拳銃を片手で走りながらバンバン撃ってきていた。普通、素人や俺みたいな奴じゃ、片手で撃ったら反動で肩が持って行かれる。最悪脱臼だ。
なのにこのデカブツは、素人の癖に片手で正確ではないものの、俺の方に撃ってこられていた。そんな奴にこんな広けた場所で、後ろは崖がそびえ立っており、森に帰ろうにも右にも左にも、まぁまぁの距離を走らなければならない。
ましてや、森に帰ったところで逃げ足にしか自慢がなかった俺の足を持ってしてもまけなかったこの男相手じゃ、運良く森に逃げ帰れたとしても、拳銃相手じゃ仮に逃げきれなかったら体力切れで俺の敗北だ。
『もう逃がさねぇーぞっ!クソガキッ!』チャキッ
そもそもの問題、素人が片手で走りながら撃ってたら、俺のスレスレを掠るはずがない。実力者…という見た目でもない男だ。恐らく、この逆境で開いたのだろう。射撃という才が…
「…クッソッ…」ギリッ
そう言葉を漏らしてしまう。…普通、一般人が拳銃を向けられたら、腰を抜かして諦めて動くことすらもやめるはずなのに、何故か俺はそうされても、諦めきれなかった。
凄く怖い。銃弾が少しでもかすれば、激痛が走るってわかってるのに。腹部を突き抜けられればそのまま出血多量で死ぬかもしれないのに。…そんな現実があるってのに…どうしても諦め切れない。
その証拠に、両手で鉄バットを握りしめて悪あがきをしようとしているのだから。
大柄の男を見据える。男の人差し指がトリガーに添えられる。
『死ねっ!』バンッッ
「っっ!?」スッ
銃弾が発射されるその刹那、バンっと音を置き去りにして銃口から弾薬が射出されるのが見えた。それは真っ直ぐと俺の額へと吸い付くように飛んでくるのが見える。
それを俺は…条件反射で、考えるより先に、体が動き…
『んなっ!?』
「?!」
ガンッっと後ろから何かに衝突するような音が聞こえる。後ろを少し見れば、俺がクイッと動かした首の真横スレスレに、男が発砲した拳銃の弾丸が壁にめり込んでいた。
『マグレがっ!死ねっ!』
男は焦って俺へと再び発泡してきた。…先程よりも、正確にそして鮮明に…
「見える…?」カキンッッ
『なぁっ!?』
意味もなく前に突き出した鉄バットに弾かれ、弾薬は本来俺のお腹を貫いていたであろう弾道から少しズレ、また後ろの壁に突き刺さる。
(見える…弾道が見える。…あれは本当に実銃か?いや…実銃なら、こんなチンケな鉄バットで弾けないよな?)
よくよく考えてみれば、このゲームは殺し合いだが、それならばはなからみんな同じところに固めさせて殺し合いさせればいい。わざわざ皆を違うスポーン地点から始めなくて済むんだから。
つまり、回りくどいやり方を好むゲームマスターなら、直ぐに人が死ぬような実銃や真剣を避けるはず。それならば、最初っから支給される武器に俺のような鉄バットが妥当な筈だ。
つまり、あれはよくあるモデルガンの超改良型だ。モデルガンであれば、質感やマガジンもそれなりに似せれるだろうし、何より火薬を詰めてそれに耐えうる物で作り替えちゃえば、それは実質本物と大差変わりない。
要は…おもちゃって事だろ?
「…急に怖くなくなったかも…」ニッ
『っ!こ!このっ!舐めやがってぇぇ!』バンッ
「」カキンッッ
『っっっ!!?』
やはりだ。普通ならこんなに遅くはない…筈だ。
まぁそれでも、当たれば貫通は防げないだろうが…鉄バットでも防げるほどのフニャチン性能なんだ。これならっ…!
「っ!」シュッ
倒せるっ…
『っ!?く!来るなっ!来るなぁ!』バンバンッッ
俺が急に駆け出した事に焦ったのか、男はばらまくように拳銃を乱射してきた。
幸い、拳銃の単発連射速度があまり早くはないおかげで、銃口を見ていれば、避ければいいか避けなくていいのかをワンテンポ遅れてからも反応できるため、着実に避けながら相手との間合いを詰める。
『ヒィっ…ヒィっ!?』カチカチッ
弾切れを起こしてもなお、顔をぐしゃぐしゃにしながらトリガーを引き続ける男。そんな男の顔に思いっきり…
「ギガッッッシャァァァァッッ!!」
『がっ!?』
フルスイングした鉄バットを叩き込む。仰け反りながら地面に倒れる男…
だが、たかが一発の鉄バットフルスイングで死ぬほど人間脆くない。…よって
『ま…まへっ…まっへ…くれっっ』
鉄バットで殴った際に男の持っていた私物がそこら辺に飛び散る。そこから俺は手放したハンドガンに、最後のマガジンをリロードして、コッキングする。
『ま…へっっ…落ちつっ…』
「…こんな言葉がある。手を出すってことは、逆に手を出されても文句が言えない…ってな。」チャキッ
「まっっまっっ!!」
こめかみに銃口を突きつけて…
「…自分の不運を呪うんだな」
「待っっっっっ!!」
バ ン ッ !
『初めての脱落者が出たぞぉ?名前は大山 模部。残りは8人。頑張れっ!
ちなみに、明日の13時に、救援物資が投下されるよ!場所は…そうだね。お楽しみとさせていただこうかな…♪引き続き、頑張ってくださいな♪』
安定の駄文でお涙が出てくるねぇ…ふっはっ!(泣