代理人の異常な空間認識   作:イエローケーキ兵器設計局

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前回の続きです……
時系列的にはこちらの作品の前半部くらい……かな?
https://syosetu.org/novel/230582/11.html


GOING SWIMMING 02

 高度およそ3000m。

 隣を飛ぶホーネット03は武装の点検をしている。

 ホーネット01,03は本物のDOLLS。私のように被弾すれば細切れになるような可能性は低い。多少の装甲を纏っているとはいえ彼女たちと比べれば紙に近い。困ったものだ。

 

 地上部隊が戦闘を開始。相手は災獣のようだ。もっとも、上空からは見えない。想定外の吹雪のせいである。

 

 前方に複数の芥子粒を確認。補助の望遠式照準器を覗くと……正体はYak-9,La-7であるとわかる。

 Yak-9といえば、"フランク(Frank ?)"というコードネームを持つARMSを装備した青っぽい露出度の高い教官機だった筈……。37mmか45mmの機関砲を装備していたっけ。

 La-7も青っぽく、20mm機銃らしきものを装備していると聞いた。

 対するこちら側は30mm機関砲、20mm機銃の混載である。

 速度で勝り、機動性で劣る。敵であるならば戦い方を選ばなくてはならない。

 

 酸素マスクを着用。これであと5時間は上に上がれる。奴らは高高度が苦手と聞いたことがある。3000mあたりでもたつくとか……

 

『30秒で射撃位置に着く。散開!』

「ホーネット01,03了解。」

 

 DOLLSの射撃武器には敵味方識別装置(IFF)射撃管制装置(FCS)の両方の機能が備わっていることが多い。敢えて外すケースもあるが。IFFに反応は相変わらず無い。

 

「ホーネット01、エンゲージ!」

『ホーネット02、エンゲージ。』

「ホーネット03、エンゲージ!」

 さあ……誰が来る?敵はヤコブレフランク(Yak-9)が6機、ラボチキチキン(La-7)が6機……頭数的には勝てる訳がない。でも、後ろにはHs-129B-3(アヒル)が複数機待機している。ここを突破されるわけには行かない。

 

 上下二連式ライフルを構える。30mm機関砲が上、20mm機関銃が下側。奴らの装甲が戦車並みでなければ……やれるはず。

 

 Yak-9が発砲。散開していた上に回避機動を取れたから被弾は無かった。

「インメルマンターンだ!02,03、上へ!」

『02了解。』

「03了解。」

 インメルマンターンとは、宙返りの頂点で半ロールを打ち、速度を犠牲に高度を稼ぐ機動である。

 

 100m、200mと宙返りを繰り返す度に上昇していく。

 高度4000m帯。ラボチキチキン(La-7)のエンジンはこのあたりで出力が下がる。半分くらいになるとのレポートがある。

 しかし、ヤコブレフランク(Yak-9)はそうも行かないだろう。

 となると、勝つ為には高度が必要になる。さらなる高みへ。幸運な事に私達は出力で勝る。

 

『フランクが接近中。排除する。』

 高度を犠牲に速度を稼ぐ。ロー・ヨー・ヨーの原理である。芥子粒からゴマ粒にまで拡大された実像がこちらに照準を合わせる前に下を向いて飛び込む。

 

『癖がないと思ってたが……かなりあるじゃないか。』

 この機体は素直だと勝手に思っていたが、実際はそうでもないらしい。

『そろそろ喰い付くな……来たぞ。』

 ゆっくりと反転しながら追いかけてくる影。まだハッキリとは見えないが敵影だ。

 ARMSの仮想操縦桿を引き起こし、高度を上げる。影もついてくる。機首を起こしながらエアブレーキとフラップを開く。ARMSに引っ張られて少し身体が悲鳴を上げる。スポイラーを開いて失速させる。ついてきたヤコブレフランク(Yak-9)は狙い時、と照準を合わせようとする。が、それが運の尽きであった。

 

『また会おうねー?教官さん?』

 後ろからの機関砲、機関銃による鉄の雨がその身体を穿き、DOLLSだったモノへと変えてしまった。

「お見事。」

『共同撃墜……01、と。』

 

 その後も喰らいついてくる敵機。出力低下による性能低下を覚悟の上で助けようとしたラボチキチキンは翼を30mmに引き裂かれた。

 追いすがるYak-9をコブラでオーバーシュートさせ、エンジンを破壊。下で01と格闘戦をしていたLa-7は既に火の玉になっていた。

 

 コブラは失速機動の一つ。進行方向を変えずに機首を上げ、後ろにつく敵機をオーバーシュートさせる機動である。なお、プロペラ機でやるような芸当ではない。

 

「こちらホーネット03!動きの早いフランクに絡まれている!……撃ってこないぞ?」

「ホーネット03!逃げろ!」

「クソッ!離れない!」

 DOLLSに備わる恐怖と生存本能などによって引き起こされる悲鳴と、少し遅れての爆発音。一機味方を喪った。

 

『ホーネット01、あいつは……私が。他を頼める?』

「……ホーネット01了解。必ず勝って。」

『……やってみよう。』

 

 相手はフランク。ヤコブレフランクなんて呼んでたからキレちゃったのだろうか?

「……君の名前は?そこの4本線。」

『……私か?』

「そう。君。」

『……コードネーム?それとも……個体識別コード?』

「……コードネーム。私は戦う相手の事を知りたい。」

『そうだな……私はホーネット02。貴女は?』

「私は……エカテリーナ。部隊ではカーチャ1と呼ばれている。……こんな内戦なんて馬鹿馬鹿しいのだが。」

『そう……カーチャ、私はホルニッセ。よろしく。』

「な、人間だったのか。」

 距離100。高度1000。互いに静止。向き合って無線で会話している。武器を向ける様子はない。相手は私と同じ人間、か。

『撃たないのかい?』

「撃った方が良いか?」

『さあ……どうだか。』

「30秒で離れて、交戦しよう。」

『もっと穏便に、別の形で会えればよかったんだけど……』

「まったくだ……1,2,3……」

 全速力で反転する。後部カメラからは反対方向に逃げる姿が見えた。

 高度を仰角30°で上昇。高度3000mまであっという間につく。

『……交戦開始、か。』

 同時に反転するカーチャ。距離的には互いに射程外。もしかしたら37mmか45mmが飛んでくるかも……飛んできた。

『発砲炎が見えてなかったらやられていたかもしれんな……』

 小さな光の放射が私をミンチになる未来から救い出した。

 

 

 

 

 

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