そのツイートが投稿されたのは九月三十日のお昼頃のことだった。
怪盗ピエロ
@kaito pierrot
殺人お知らせ申し上げます、十月一日金曜日、午後八時三十分より、
ジョー・力一の誕生日配信内にて、お仲間やメンバーシップの方のお越しをお待ちします。
#予告殺人 #常套句 #ジョー・力一
この衝撃的なツイートは数時間で姿を消した。
ツイートが消えたのと同時にアカウントも削除されたようだった。
アカウントが消えてしまったことや、掲載されていた時間が短かったこともあり、
そこまで大きな話題や問題にはならなかった。
大部分の人たちからは、所詮いつもの悪戯の類だろうとあしらわれていた。
だが、実際に何人もの人間がスクリーンショットを保存していたのも事実であった。
その画像は瞬く間に拡散され、インターネット上の掲示板や、まとめサイトを賑わせた。
その余りにも過激な内容もさることながら、誰が犯人なのかで盛り上がりは加速していった。
にじさんじ内の同じライバーではないのとか、ホロライブファンではないかとか、
アンチの暴走なのではないかなど多種多様な人物の名前が上がっていた。
悪戯に焚きつけて煽る者たち、真剣に心配し通報する者たち。
ツイッター上には類似名の模倣アカウントが次々と生まれては消えながら、
普段は言えない悪意をばら撒き散らしていった。
しかし、一回きりのツイートだったこともあり、事態は思ったよりも早く鎮火していった。
そんなことが起きた同日の夜のことだった。
名指しされた当の本人は翌日の配信準備に追われていた。
コーヒーを相棒にパソコンとの睨めっこを続けていた。
過酷な一日を過ごしたスマホが再び悲鳴を上げた。
ディスプレイには盟友の名前が表示されていた。
「はーい。舞元さん。どうしたの? 」
「お疲れー。大丈夫か? 」
電話の相手は舞元であった。力一は一旦、作業の手を休めた。
「ツイッターの件かい? 心配させて悪いね。問題ないさ。どうせ悪戯だよ。」
「まあ。そうだよな。なんか明日の準備で忙しいのに悪かったな。」
最初は神妙な感じだった舞元の声は、元の軽快な口調に戻りつつあった。
力一の元には例のツイートが出てから、様々な人から同じような電話が掛かってきていた。
会社のスタッフやマネージャー、もちろん舞元のように同僚ライバーからもであった。
「いやいや。心配してくれるのは有り難いし、嬉しいことだからさ。それよりさ...。」
折角の電話だったので、力一は明日の打ち合わせをすることにした。
明日は誕生日配信のゲストとして舞元も参加予定だったのだ。
その後、他愛もない会話を挟みながら、通話は三十分程続いた。
「それじゃ。ありがとうね舞元さん。明日もよろしくね。」
力一は電話を切った。
コーヒーを一口だけ啜ると、パソコンに保存しておいた画像ファイルを開いた。
モニターに表示された画像は自分自身に宛てられた殺人予告のツイートだった。
力一本人もスクリーンショットを保存していた人物の一人だったのだ。
「ふっ...。」
力一は軽く笑いながら、その画像を閉じた。