#予告殺人   作:夏野 雪

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 笹木の事件に関しては現時点では力一の事件と関係性があるのか通り魔的な犯行なのかが、

はっきりとせずに警察では社の聴取に注力をしていくようだった。

社自身は当初のように黒岩の子供であることは認めていたが、もう一人の子供に関しては

黙秘を続けており、犯行に関しては全面的に否認を貫いていた。

 

シェリンは社の証言を信じており、笹木の事件も一連の犯行と同一犯であると考えていた。

それは決して自分自身の推理に自信があり行っているのではなかった。

今、探偵を真実に向けて突き動かしている感情は『後悔』と『慙愧』だった。

自分だけにはルイスと笹木を救えたかもしれなかった。

一回ならまだしも、二回までもサインを見逃してしまっていた。

シェリンにとって遺産や子供のことなんてどうでも良かった。

シェリンは独自で笹木事件のアリバイを関係者へ聞いて周っていた。

舞元はリオンの証言と一致しており、シェリンと二十二時過ぎに警察署の前で別れた後、

リオンを自宅付近まで送り別れたという。時間は二十二時半頃だった。

尊と凛月は一日中、一人で自宅に居たという。

 

シェリンは残りの葉山と天宮の二人が一緒に本社にいると聞き、会いに行っているところだった。

本社に着くと二人は会議室にいると言うことだった。

シェリンが会議室に向かった。ドアに付いていた小窓から室内を確認すると、

丁度休憩中のようで二人が仲睦まじく並んで座っているのが見えた。

ノックをしてからドアを開けると天宮がシェリンを出迎えた。

「あーシェリンさんだ。どーしたんですか? 」

「探偵さんだ。どうしたんですか? 」

心なしか、いつもより疲れた様子の葉山も笑顔で迎えてくれた。

「お忙しいところすいません。実は...笹木さんの件で。」

シェリンは少し躊躇いなかがらも二人に笹木の名前を告げた。笹木の名前を聞くと

二人の顔から笑顔が消えた。黙りこくってしまい二人の目に薄っすらと涙が浮かんだ。

シェリンにも予測がついていたことではあった。だけど、シェリンは聞かなければならなかった。

それが自分で決めたことであったからだ。

「こんなことを聞くのは本当に心苦しいのですが、私は笹木さんの無念を晴らしたいんです。

出来る事なら、お二人にも協力していただきたいのです。」

「咲ちゃん先輩...。」

天宮が呟いた。二人はシェリンの思いの込められた言葉に協力を決めた。

「天宮とはやまりん先輩は、その日の夜九時から十一時くらいまでコラボ配信してました。」

「そうだね。あまみゃと配信中だったよ。」

二人の言う通りに配信のアーカイブも残っており、時間も間違いなさそうだった。

「そうですか。ちなみにコラボはオフですか? 通話ですか?」

「通話だよー。でも配信中に変な音とかなかったよね。あまみゃ。」

「はいー。特に無かったと思いますよ。」

二人はそれぞれの自宅から通話を使い、配信をしていたようだ。

笹木の発見場所からも二人の自宅は離れており、アリバイ有りと考えて良さそうだった。

「なるほど。ありがとうございます。助かりました。」

「探偵さんも頑張ってくださいね。」

葉山が精一杯の笑顔をシェリンに向けた。シェリンもしっかりとそれに応えるように

笑顔で返した。

その時、シェリンの足元に何かが当たった。二人が何かを落として、それが足に当たったようだ。

足元に目を向けると、そこにあったのはボールペンだった。

それはポケモンのキャラクタードット絵が幾つか描かれている可愛らしいボールペンだった。

シェリンはボールペンを拾い上げると二人の前に差し出そうとした。

「あれ? 」

シェリンの目に不思議な物が飛び込んできた。それはボールペンだった。

現在シェリンの手の中にあるボールペンと全く同じものが机の上に置いてあった。

「可愛いでしょー。これ。」

天宮が目の前に置かれていたボールペンを手に取り、シェリンに見せつけた。

「探偵さん。それ葉山のなんです。」

シェリンはボールペンを葉山に返した。葉山は「ありがとう」と言うとボールペンを受け取った。

「このボールペンはあまみゃと二人でお出掛けした時に一緒に買ったんですよ。」

二人はボールペンを持ち、お互いの顔を見て笑っていた。

「ペアルックじゃなくてペアボールペンってわけですね。」

 

 

『ペア? 』

 

 

何かがシェリンの頭を揺さぶった。

 

 

『同じものが二つ? 』

 

 

シェリンの脳裏に浮かんだものは

 

 

『最初から...同じものが...二つ...? 』

 

 

そうだったんだ。

 

 

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可愛らしい二本のボールペンがシェリンに一つの答えを授けた。

 

 




 『私はルイスからあなたの名前を聞いていました。あなたはルイスを
甘く見過ぎていました。あなたとの会話を記録していました。
私はそのデータのコピーをルイスから受け取っています。
これを渡してほしければ、三百万円用意して下さい。拒否するなら
警察へこのデータを渡します。受けて下さるなら返信を下さい。』


全く困ったものだ。こうもトラブルが続くとは...。
まぁ。そんなものなのだろう。
とりあえず、返信を了承するというメッセージを返すか。
やり方は後で決めるとするか。
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