「参ったよ。シェリン。君の言う通りだ。僕は最初から黒岩さんがなくなったことも、
二人の子供の正体も知っていたよ。莫大な金が手に入るのは嬉しかったけど、
僕が本当に欲しかったものは金じゃない。数字なんだよ。そう思った時だ。
一冊の台本が僕の頭の中に浮かんだんだ。その筋書は予期せぬ所から金を
手に入れることになった男。そして、その男は本当の息子に命を狙われる。
命の危機を掻い潜り、仲間の死を乗り越えて、男は強く生きていく...。
どうだい? 素晴らしい台本だろ? 」
力一はシェリンに向かい、悪びれる様子もなく微笑みかけた。
「チャイカの件は驚いたよ。まぁ結果的に素晴らしいお涙頂戴の演出になったけどね。」
「いい加減に...! 」
刑事たちに制止されながらも尚も殴り掛かろうとする舞元の横を尊が足早に
力一の目の間に向かった。
「恥を知れ! 」
涙を流しながら尊の平手が力一に頬を捕らえた。さらに手を上げた尊に
天宮が後ろから抱きついた。
「尊様! 駄目ですよ。」
子供のように泣いている天宮が尊の体にしがみつく様にして制止していた。
天宮の泣き声で我に返った尊は「ごめん。」と呟くと振り返り、
天宮を抱き締め返した。
「でも、名探偵シェリン君が説明してくれた通り、ルイスの件は認めよう。
それにチャイカの件は私に殺意はなかった。過失致死ってやつさ。
そして、笹木の件に関しては僕の犯行だったってどうやって証明する?
僕以外にも犯行可能だし、証拠ないだろう。通話履歴はあるが、それを言うなら
シェリン。君にも掛かってきているんだからね。」
力一は挑戦的な目つきでシェリンを見下ろしていた。確かに力一の言う通りだった。
現段階では力一が笹木殺害の犯人であることは立証できないだろう。
「力一さん...。笹木さんっていう人は実に執念深い人なんですよ。
そして負けず嫌い。ねぇ。椎名さん? 」
「え? まあ。執念深いとこはあるかもな。」
「それで? まさか名探偵が僕の後ろに笹木さんの怨霊がいるとか言わないよね? 」
笑いながら話す力一の前に一人の刑事がある物を持ってきた。
それはパンダのパーカーだった。
「それ。笹木のやん。」
椎名以外の皆もすぐにわかったことだったが、それは笹木がいつも愛用している
パーカーだった。
「それがどうした? 」
「力一さん。これを見てください。」
シェリンがそう言うと刑事がフードの部分を裏返した。
白地のフードの裏側部分に赤い染みが残っているのが確認できた。
「これは血痕です。どうやら笹木さんを殺した人間はどこか怪我をしていたようです。
力を込めて首を絞めた時に傷が開いたんでしょうね、後ろから首を絞めた時に
滴った血をフードが受け止めたんでしょうね。」
シェリンの説明を聞いて、みるみるうちに力一の顔が青ざめていった。
「笹木。逆転ホームランやで。」
気が付けば雲が消え、綺麗な月が空に浮かんでいた。
夜空に向かい呟いた椎名の声は高く澄み切った空に向かい消えていった。
これにて『にじさんじ』✕『ミステリー』二作品目
『#予告殺人』完結となります。
ここまで読んでいただきまして、誠にありがとうございます。
また一作目『虹の向こうに』から続けて読んでいただいてありがとうございました。
この原作を選んだ理由は原作では新聞の広告欄に殺人予告がされるのですが、
それを現代版にしたらどうなるかと考えた時にSNSでやったら面白いのでは
と考えて構想してみたのですが...。
正直後悔しました。それ以外の設定を現代に落とすのがすごく難しかったです。
私の技量ではこの作品が限界でした。
途中、中だるみしてしまったり、少し無理のある設定をぶち込む結果となってしまい、
一作品目と比べると個人的には少し物足りない感じになってしまったと思ってます。
裏設定というわけではないのですが、社さんと舞元さんの絵師さんが同じ方でしたので
兄弟設定にしてみました。
自分の力不足を痛感する作品になりましたが、少しでも楽しん頂ければと思い
書きあげました。
本当に最後まで読んでいただきましてありがとうございました。
次回作も考えていますので、見かけた際には覗いていただけると嬉しいです。