忽然と目の前に現れた現実を受け入れるまで、全員が暫しの時間を要していた。
「り、力一! 」
舞元とチャイカが力一の元へと駆け寄った。
力一の腕からは血が流れ続けていた。
傷は左腕を掠め、腕の一部を抉っていた。
「警察と救急に連絡して! 」
社は近くにいたスタッフに指示を出し、少し遅れて舞元たちの後に続いた。
舞元たちと同じ様なタイミングで走り出した凛月とシェリンは
ルイスと思われる女性の元へと向かっていた。
背格好はルイスであったが、うつ伏せで倒れており顔がはっきりと見えなかった。
少しずつ近づくにつれて、二つのことが疑念から確信へと変わっていった。
一つ目は、うつ伏せで倒れているのが間違いなくルイス本人であること。
二つ目は、もう助けてあげられないであろうということだ。
ルイスは頭から血を流しており、ピクリとも動く気配はなかった。
「なんで...。ルイスちゃん。どうしてよ...。」
凛月は横たわるルイスに抱きつきながらポロポロと大粒の涙を流しながら子供の様に泣いていた。
シェリンには、そんな二人を見つめることしかできなかった。
自然と握った拳に力が入った。
自分が彼女たちを救えたのではないか?
驕りだと言われるかもしれない。
でも、ルイスを救うチャンスは確実に自分にはあった。
シェリンは前日の出来事を思い出していた。
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九月三十日 某ビジネスホテル ロビー
シェリンは翌日の番組収録のため、このスタジオ近くのビジネスホテルに泊まっていた。
外出先から部屋に戻ろうとロビーを通った時だった。
「お。迷探偵さんじゃん。」
聞き覚えのある声にシェリンが振り向くと、そこにいたのはルイスだった。
「あれ? 予告状を貰った覚えはないんですが。こんなとこでなにしてるんですか? 」
テンプレートのようなやり取りを終えるとルイスは、何だか楽しそうにニコニコと笑っていた。
「実は明日この近くのスタジオで『大仕事』があってねー。」
この時のルイスは本当に楽しそうだった。子供の様に無邪気に笑っていた。
「『大仕事』? 」
「うん。実は
シェリンさんも時間があったら、明日の力一さんの誕生日配信リアタイで見ててねー! 」
そう言い残すとルイスは軽快にエレベーターに乗り込み去って行った。
「力一さんの配信? 」
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十月一日 スタジオ内
僕はルイスさんと会った時は、まだTwitterで起きていた例の出来事を知らずにいた。
それを知ったのは自分の収録が終わった時だった。
前日のルイスさんの発言もあって。妙な胸騒ぎを覚えた。
スタッフの人に聞いて、このスタジオを訪れたのだった。
ルイスさん。残された僕に出来ることは一つだよね。
もう無邪気な笑顔を見せることのなくなった彼女の顔をしっかりと目に焼き付けた。
それは自分自身の中の決意を断固たるものにするために必要だと思ったからだ。
「ルイスさん...ごめんよ。でも、僕が見つけてやるからな。」
一人の仲間として、一人の探偵として。