(…オレは死んだのか…。)
決して譲る事の出来ない願いを掛けた親友との殺し合い…その果てに自分は敗北した、友達を殺そうとした事は後悔していない…それは相手も同じなのだから…殺された事は恨んではいない…相手が自分を殺したという事実をどう感じているのか、それが分からないほど浅い付き合いではないのだから…
(ダークウイング…今までありがとうな…。)
消え行こうとする意識の中で彼、『仮面ライダー騎士-ナイト-』こと、『北川 カズヤ』は今まで共に戦ってきた自身の戦友、相棒であった契約モンスター『ダークウイング』への感謝の言葉を告げる、契約の上での協力とは言え、今まで力を貸してくれていた相手への言葉を告げる
(…アキラ…オーディンは…神崎は絶対にお前が倒せ…オレは…オレは必ずお前が勝つ、そう信じてる…。)
届かないであろう、最後の勝者を決めるべき戦いへと残った親友への激励の言葉を最後に最後にカズヤの意識は闇へと落ちていく…………………
「あれぇ、君は誰?」
…はずだった…
「なんだ!?」
突然の声に目を開けて飛び起きるとカズヤの視界の中に森と空中に浮かんでいるぬいぐるみが入ってきた
「…な・・なんだ…? こ、ここは何処だ? ……それにお前、新種のモンスターか?」
「あっ、モンスターは酷いな~。これでもオイラは耶麻台国の神器、天魔鏡の精なんだぞ!」
「…邪馬台国~…オレは日本史より、世界史のほうが得意なんだけどな…。」
『キョウちゃんとでも呼んでおくれよ。』等と言いながら胸を反らす謎の物体X(カズヤ命名)を無視しながら、『日本史は輝の専門なんだよな~。』等と考えているカズヤであった
「まあ、お前が何であろうと関係ないか。」
「ガ~ン、関係ないって。」
「…ここは何処だ…オレはあの時…。」
その後に続く『ミラーワールドで殺し合いをしていて、死んだはず』と言う言葉を飲み込むと心臓の辺りに触れる
(あいつに付けられた致命傷どころか、かすり傷や古傷一つない…オレは…なんで生きてる? オレは死んだはずじゃなかったのか…?)
「初めの質問だけど、ここは三世紀の九洲。で、君が何でここにいるかと言うとオイラがよんだからだよ!」
「そうか。」
カズヤはキョウの言葉に興味無さそうにそう答える、事実、カズヤにはここが何処であろうと関係ない
オーディンとの戦いは輝へと託した今となっては元の場所に戻りたい理由もない、友との殺し合いにも後悔はない…あるとすれば最終決戦のあの現場から消え、ライダーとしての未来を奪われた事への絶望…唯一つであった
「『そうか』って、それだけ? もっとこうさ、さっきみたいに『え~!?』とか『何~!?』とかないの?」
「イヤ、別にここが何処でもどうでもいいし。それにしても、三世紀か…何とかして中国のほうに渡ってみるかな、中国史の英雄を見れるいいチャンスだな♪ 誰もオレの事を知らない世界で生きるのも…今のオレには悪くないな。」
キョウはカズヤの反応がかなり不満らしく、ブツブツと文句を呟いているが、それに対してカズヤも今後の事を呟きながら考えていた
ふと、カズヤの手がポケットの中の『それ』に触れる…そう、自分が北川カズヤと言う存在であった事の証『仮面ライダーナイト』の『カードデッキ』の存在が今の彼にはありがたかった
(…ダークウイング…お前も一緒だな…。)
心の中でそう呟き小さく嬉しそうな微笑を浮かべると、何処からか、ダークウイングの声が聞こえた気がした
「まぁいいけどね。それで君………………え~と。」
「オレはカズヤ、『北川 カズヤ』だ。」
「あ、うん、よろしくカズヤ。それでカズヤを…間違ってだけど…よんだのは耶麻台国を復興して欲しいからなんだ。」
「へー…滅んだのか。」
「うん。十五年前に狗根国に滅ぼされたんだ。」
「何、無茶な事を遣らせる為に人様をこんな変な場所によんでんだ、このアホ。」
カズヤはそう言い切り、チョップをキョウの頭に叩きつけて沈黙させる
頭を抑えながら、キョウがカズヤを涙目で睨んで来る
「う~…酷いな、今なら復興できるかもしれないんだよ。」
「…じゃあ訂正してやろう…『かもしれない』で人をよびつけるな。…それで、何で復興できる…『かもしれない』んだ。」
「そもそも耶麻台国が滅んだのは百五十年くらい前から直系に火魅子の資質を持った女の子が生まれなくて、仕方なく傍系で素質を持った娘を女王にしてきたんだけど五十年くらい前から傍系にすら資質を持った娘が生まれなくなっちゃったんだ。そんな時に、女王不在の時に狗根国に攻め込まれて…。」
キョウの表情が曇る
「でも、耶麻台国が滅びるよりちょっと前に火魅子の資質を持った娘が五人、傍系だけど生まれていたんだ。」
「ほ~。」
完璧にやる気の感じさせないカズヤの合いの手に気を悪くした様子も見せず話を続ける
「今までにも何度か狗根国に対する反乱は起こったんだけど、圧倒的に数でも練度でも負けている反乱軍は当然敗北。」
「そりゃそうだ。」
「このままじゃ徐々に狗根国に対して不満を持つ者はいても反乱を起こそうとする人はほとんどいなくなっちゃう。でも、『火魅子候補』と『神器の精』そして『神の遣い』の三点セットが、ってあれ?」
いつの間にかカズヤはキョウに背中を向けて歩き出している
「ね、ねぇ? ちょっと、どこに行くのさ!?」
キョウは慌ててカズヤを追い抜くと、彼の前に回り込み、怒った様に腰と思われる部位に手を当てながら言った
「君、オイラの話聞いてた? 君には耶麻台国を再興してもらうためによんだんだって。」
「ああ」
「じゃあ、どこに行くつもりなのさ?」
『何でお前に言わなきゃならない』と視線で訴えかけるが、
「…………大陸にでも渡って、この時代の中国でも見物する。そもそも、オレは日本史より世界史が好きなんで。それにダークウイングと共に天下をとってもいいな。」
律儀にキョウの問いに答えた、彼の頭の中には…中国を統一して、皇帝となっている『仮面ライダーナイト』の姿を思い浮かべている、幸いにもキョウにはその後半部は一切聞こえていなかったが…
「え?」
カズヤの返答にキョウは困った様な表情をしたが、すぐにパッと明るい物を浮かべる
「そうだ、君が元の世界に還るには耶麻台国を復興させて女王火魅子に時の御柱を動かしてもらうしかないんだ。だから………。」
「オレは『元の世界に帰りたい』って言ってないぞ?」
「…………へっ?」
(こいつ、オレの言葉の意味を『折角だから、観光していこう』程度に受け取ったな…。この絶望の元凶が…。)
沈黙の後、間抜けな声を上げたキョウから自分の言葉の意味をそう理解していたのだろうと推測してそんな事を考えていた
「え? でも。」
「縁があったらまた会おう、さらばだ。」
呆けているキョウに手を振りながらカズヤは立ち去っていく
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
カズヤは切羽詰ったようなキョウの声に再び足を止め振り返った、そこには声のとおり焦ったようなキョウがいた
「どしたんだ?」
「『どしたんだ?』じゃないよ! 君がいなくなったらオイラはどうするのさ? 耶麻台国の復興は!?」
「そんな事はオレには関係ない。どんなに栄えていても結局は滅びる物だろうが…。それにオレは…まあいいか。」
「そ、そんな。で、でも、元の世界に戻るには…。」
「あのさ、オレはもう前の世界には何の未練もない。…イヤ、お前と輝が完全に消してくれたしな…。」
カズヤにハッキリと断られたキョウはそれでも何かいい考えはないかと視線とともに思案を巡らせていた
「そ、そうだ! この世界の事、何にもわからないでしょう? オイラに協力してくれれば少なくとも生活に困ることは…。」
「いいな、それはそれで楽しそうだ。オレには強い味方がいるしな。」
ポケットの中からカードデッキを取り出し、カードデッキに刻まれた『蝙蝠』を象った紋章、そして…契約のカードを眺める
(そうだろう…ダークウイング。)
「う~、で、でも! 神の遣いになれば地位や富や女の子だって好きな様に出来るよ。」
「興味ない………訳はないが…誰かに恵んでもらうのは気に入らない。地位なんて煩わしい物は持ちたくも無いしな。」
三度断られたキョウは目に見えて意気消沈していたが、急に俯かせていた顔を上げた
(…いやな予感が…。)
そのキョウの様子にカズヤの直感が『危険』と告げている…やっかいな事に巻き込まれると本能が警告していた
「じ、じゃせめてオイラを伊雅の所に連れてってよ。」
「伊雅ぁ? ……誰だよ?」
「耶麻台国の元副王だった男さ。」
何を考えているのか探る様な視線をキョウに向けるが、その真意は今のカズヤでは完全には測りきれない
「別にいいけど、その伊雅っとか言う奴が何処に居るのか…それは分かってるのか?」
「うん。伊雅も神器を持ってるからね、って………は?」
突然、何かを疑問に思ったらしくキョウはそんな声を上げた
「いや、さっき言ってた、火魅子候補と違って居場所は分かってるのか? …そう聞いてるんだけど…。」
カズヤがそう言うとキョウは傍目にもわかるほど確実に驚愕を表す
「な、何でわかったの!?」
「はぁ? さっき自分で言ってただろうが。『火魅子候補と神器そして神の遣いの三点セット』、『伊雅も神器を持っている』ってな。」
「う、うん。」
「神の遣いと言うのは偶然よばれたオレの為のポジションだ。結局のところ、在ろうが無かろうがどっちでもいい…そんな形で権力者に利用されるのは御免だ。神器と言うのはつまり、王家の証。だが、元副王の伊雅って奴が神器の一つを持っているのに『今までにも何度か反乱は起こったのに《当然》敗北』。それは何故か? 簡単だ…それは最後の一つ、絶対に不可欠な『火魅子候補』がいなかったから。違うか?」
カズヤの推測を聞いていたキョウは放心したようにゆっくりと頷く事しかしなかった
「で、伊雅の場所はわかるんだな?」
カズヤがそう問うとゆっくりと首を縦に振った
近くに落ちていた鏡…キョウの話だと、本体である神器だろうそれを拾い上げ、カズヤはキョウに話しかけようとした瞬間…
何かの《声》が風に乗ってカズヤの耳に届いた…僅かな物だったが…その音の正体は『悲鳴』
(今のは…。場所は…向こうか、助けない訳にはいかないよな…《輝》…お前の親友として…。)
敵が何であろうと《仮面ライダー》にさえ変身すれば負けはしない…そんな確信を持って、カズヤは森の中を駆け出した
「あっ、待ってよ~…そっちじゃ…。」
「ダークウイング!」
「え、なにを…『キィィィィィィィー!!!』うわぁー!!!」
カズヤが自らの戦友の名を叫ぶと、その意味が分からず聞いてくるキョウだったが、突然、天魔境の中から出現した蝙蝠型のモンスター…カズヤの契約モンスター『ダークウイング』に驚き、気絶したキョウをダークウイングが咥え、カズヤはダークウイングに捕まり目的地へと急ぐ
異世界、九洲の地にて、ライダーバトル最後の戦いに望む戦士を決める決戦において、紅き騎士に敗れた、漆黒の翼と鎧を纏う鏡の世界の騎士が神器たる鏡から降臨した…漆黒の翼、闇の翼『ダークウイング』と契約せし騎士…彼の者の名は『北川 カズヤ』…もう一つの名は…『仮面ライダー騎士―ナイト―』
その名こそはライダーバトルにおいて、かつて『秋山 蓮』と名乗っていた青年の役割を演じる事となった者の名