ネタ短編集   作:龍牙

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The Knight Of DRAGON外伝『騎士-ナイト-』 弐章

 

伊万里達と別れた後、一時間後…(ダークウイングによって)目を覚ましたキョウを連れて、カズヤが山道を歩いていた。

 

 

その足取りはトボトボとした物で、心なしか上半身が俯いている。

 

 

「まだなのか? キョウ?」

 

 

伊万里達と別れてから一時間歩き続けた結果、疲れ切ったカズヤの言葉だった。

 

 

「もう休憩するの? 二十世紀人はひ弱だねぇ。そんなんじゃ日が暮れるまでに会えないよ。」

 

 

「…選べ…ここで本体捨てられるか、ナイトに変身してダークウイングで空を飛んで会いに行くか、休憩するか?」

 

 

そもそも、伊雅と言う人物の元へと届けて欲しいと頼んだ(本人としては様々な思惑があるが)のはキョウであり、カズヤは見捨てても別に構わないのだ。そして、ナイトに変身して、空から向かうことも『そんな事したら、魔人と間違われるよ』と却下したのもキョウである。

 

 

「しょ、しょうがないなぁ。じゃあ、十分休もう。」

 

 

「……いや、一刻も早くお前という厄介事を片付けたい……。遠慮するな、最高速で連れて行ってやる。」

 

 

疲れ切った表情に邪笑を浮かべ、カードデッキをペーパーナイフへと向ける。見ればペーパーナイフに映るダークウイングもその表情に愉快と言いたげな笑みを浮かべている。

 

 

「す、すみませんでした!!! どうか、好きなだけ休憩してください!!!」

 

 

ペーパーナイフをポケットの中に戻し、近くに椅子代わりに丁度いい石を見つけて座り込むと、無言のままキョウへと視線を向ける。

 

 

「…二つほど確認したい事があるけどいいか?」

 

 

「なんだい、カズヤ?」

 

 

『何でも聞いてよ』と言いたげな様子で胸を張っているキョウを黙殺しつつ、今の自分の持っている最大の疑問をぶつける事にした。

 

 

「向こうとの距離の差はどれ位有るんだ?」

 

 

「えーと、君達の距離で言うと百キロぐらいかな。」

 

 

とんでもない事を軽く言ってくれるキョウに対して疲れが倍増する思いのカズヤだった。

 

 

「…やっぱり、変身していいか?」

 

 

「どーしてえ!?」

 

 

「百キロと言えば、東京→熱海間の距離だろう! オレは変身しなけりゃ普通の人間だぞ。」

 

 

「訳の分からない事を…。」

 

 

カズヤを説得しようとし始めそうなキョウを手で制しつつ、二つ目の疑問を問いかける。

 

 

「二つ目の質問…向こうはこっちの事が分かってるのか? こっちと逆方向に移動されてちゃ、生身で幾ら急いだ所で意味は無いんじゃないのか?」

 

 

「それは大丈夫だよ、カズヤ。向こうも近づいてきてるから、どんどん反応が強くなってるんだ。カズヤが魔人みたいな姿に変身しなければ、向こうの歩く速度の方が速いから、実際にカズヤが歩く距離は三分の一で済むよ。」

 

 

「…そうか…。」

 

 

呼吸を整えながら、空を見上げる。

 

 

「そうだよ、だから、がんばって…。」

 

 

「今日中に会うのは諦めて…向こうに頑張ってもらおう…。」

 

 

真剣な顔でキッパリと言い切るカズヤの言葉にずっこけるキョウだった。

 

 

「なんでぇ?」

 

 

「…疲れすぎてたら、お前が余計なことを言う前に逃げられないからだろうが。」

 

 

「ギクゥ! い、いやだな…余計な事なんて言う訳無い…。」

 

 

明らかに動揺して目を逸らしているキョウの様子にカズヤは『やっぱり』と言う意思を浮かべる。

 

 

「それにそんな事言ってたら、今日は二人で野宿になっちゃうよ。いいの?」

 

 

「…この陽気なら死にはしないだろうし、獣が襲ってきてもダークウイングが守ってくれるだろう。」

 

 

完全に休憩モードに入ったカズヤを尻目にキョウはぶつぶつ言いながら、何かを考え始めた。

 

 

「仕方が無い、あそこに行こう。」

 

 

「あそこ?」

 

 

休憩して空を眺めていたカズヤがキョウへと視線を向ける。今回はいやな予感もしないので、大して気にもしていないが…。

 

 

「この近くに耶麻台国の神を奉った神社があるんだ。今はどうなってるかは分からない…多分、狗根国によって廃棄されてると思うんだけど、夜露ぐらいはしのげる筈だから。獣に襲われる心配もないし。」

 

 

キョウの言葉に暫く考え始める。確かにダークウイングと言うガードが居るにしても獣に襲われる心配があり、慣れない野宿では却って疲れが溜まる心配があるのだ。キョウのその申し出はありがたい。

 

 

「分かった。それでその神社の場所は?」

 

 

「そんなに遠くないよ。うーん、そうだな、十キロぐらいだよ。」

 

 

『オレ達の感覚じゃあ、十分すぎるほど遠い』と思いながらも、野宿よりもいいと考え、キョウの申し出に応じることにする。

 

 

「雲も出てきた事だし急ぐぞ。濡れて風邪引いたら、薬も医者も家も無いオレには死活問題だ。」

 

 

「はいはい、じゃあ急ぐよ、カズヤ。」

 

 

妙に張り切っているキョウの態度に僅かな不審を感じつつ、夕立に遭う前にと考え急ぎ足で歩き出す。

 

 

 

 

 

 

 

間に数分ずつの休憩を挟みながら、歩く事三時間…ようやく目的地の神社へと向かう階段まで辿り着く事が出来た。

 

 

「…オレは常々思っているけど、日本と言う国の神社仏閣はどうして階段の上に建てるんだ?」

 

 

実際、西洋の教会に比べて、日本の神社仏閣はどうしても階段の上に建てる傾向がある。しかも、由緒正しい場所ほど高い所に…(勿論、例外もあるだろうが)。

 

 

「まあまあ、これを登り切れば今日の仕事は終わりだからさ。ほら、最後の一踏ん張り。」

 

 

「まあ、ここまで来たんだ…ゆっくり、のんびり行こうぜ。急いだ所で、可愛い女の子とか、綺麗な女の子とかが待ってくれている訳じゃないんだし。」

 

 

「あ、いいの、そんな事言って。ガールフレンドに言いつけちゃうよ。」

 

 

場を和ませる為の冗談なのだろう…愉快そうに笑いながら言うキョウだったが、彼とは対照的にカズヤは辛そうな表情を浮かべる。

 

 

「…言わなかったか…? オレを待っていてくれる大事な人はもう居ない…。」

 

 

心から凍り付きそうなほどの冷たい声と、触れたら切れてしまいそうな刃を連想させる視線。キョウは改めて理解する彼が単純に強力な力を持っただけの人間ではなく、戦士である事を…。

 

 

それと同時に彼から感じた悲しさ…大切な者を奪われた人間であると言う事を理解した。ならば、狗根国によって支配される現状をみれば必ず力を貸してくれると考える。

 

 

「どうした?」

 

 

さっきから黙っているキョウを不審に思いじと目で銅鏡の精霊を見る。

 

 

「あ、あはははは…。さすがにおいらもちょっと疲れちゃったから。」

 

 

「…精霊でも疲れるのか?」

 

 

「まあね。こうやって実体化しているのも、結構能力使うんだ。キョウは出っ放しだったたろ、だから、早く鏡の中に戻って一休みしたいんだよ。」

 

 

「ふーん…。ミラーモンスターとは違うんだな。」

 

銅鏡を取り出し視線を向けてそんな事を呟く。当然ながら、ミラーモンスターは鏡ミラーワールドの中の存在ではあるが、しっかりとした実体を持っている。

 

 

「当たり前だよ! おいらをあんなのと一緒にしないで欲しいな!」

 

 

『心外だ』とでも言いたげな態度で腰に手を当てて叫ぶキョウだが…。

 

 

「…『ダークウイング』からの伝言だぞ。『次、言ってみろ…餌にするぞ。』だそうだ。」

 

 

カズヤの言葉に恐怖に怯えながら、真っ白になるキョウだった。

 

 

「さっさと神社に行くぞ。地面の上じゃなくて、建物の中でゆっくり休みたい。」

 

 

「あ、ああ、そうだね。」

 

 

キョウは正気に戻ると慌てて彼の後をフワフワと浮きながら付いて行く。

 

 

階段の両側は見事な広葉樹の森で、木の幹は太く、高さは二十メートル以上有る為、日差しが遮られ、まだ昼間だと言うのにあたりは暗く、心地よい樹の薫りが鼻腔をくすぐった。

 

 

「この階段は何段くらいあるんだ?」

 

 

「二百段くらいかな?」

 

 

「そうか。」

 

 

ライダーバトルである程度身体能力は鍛えられているのだ。並の人間よりは鍛えられている。二百段程度の階段では音を上げる程ではない。

 

 

 

 

 

 

それから数十分後

 

 

「ここが、その神社か?」

 

 

それほど広くない境内は、鬱蒼とした原生林の中にあり、二十世紀では珍しい樹齢数百年と思われる木々に囲まれた物音一つしないその場所は、神社と言う神聖な場所に相応しい神秘的な雰囲気に満ちていた。

 

 

「カズヤ、カズヤ。」

 

 

神秘的な景色に見惚れていたカズヤに小声で呼びかける。

 

 

「なんだ?」

 

 

カズヤがキョウの方へと視線を向ける。

 

 

「ちょっと、その辺の樹の陰に隠れてて。」

 

 

「なんでだよ? 誰かいたとしても、オレが変身すれば…人間や獣相手なら…。」

 

 

「いるのが、敵じゃなくて味方だったらどうするのさ!? ぼくなら精霊だから、普通の人間に気配を悟られる心配は無いから、建物の中を調べてくるよ。」

 

 

「そうか。なら、頼んだぞ。」

 

 

素直にキョウに従って樹の陰に隠れる。それを確認して空中を飛んで神社へと近づいていく。近くで見るとここが使われなくてから年単位で時が過ぎている事を表す様に汚れが目立っている。キョウは建物の直ぐ前で急降下すると床下へ消えて行った。

 

 

「………………。」

 

 

無言のままキョウの様子を見守っていると、暫くしてから慌てた様子で戻ってきた。

 

 

「どうした、人でも居たのか?」

 

 

「そ、そうだよ! あそこ、誰か使っている!!!」

 

 

キョウの言葉にカズヤの視線が鋭さを増す。

 

 

「どういう意味だ? 詳しく話せ。」

 

 

「あのね、床下にいろんな物が転がってる。工具だとか、何かの部品だとか。それもかなり新しいから、最近、誰かがここにいたのは間違いないよ!」

 

 

「なるほど…だったら、ここで待っている事は得になりそうだな。」

 

 

キョウからの報告を聴き、笑みを浮かべつつ答えるカズヤの言葉に一瞬だけ、キョウに驚愕が浮かぶ。

 

 

「ど、どうして!!! 狗根国かも知れないのに…そうじゃなくても、もう戻ってこないかもしれないのに!」

 

 

「第一に…狗根国の人間ならこんな不便な所で隠れながら使っている訳が無い。第二に…部品はともかく工具まで置いていったという事が戻ってくるという考えの理由だ。」

 

 

(やっぱり、カズヤって…。)

 

 

自分の連れてきた人間の想像以上の優秀さにキョウは思わず呆然としてしまう。もっとも、本人は協力する気は無いが…。

 

 

「キョウ、中に誰も居ないようなら、そろそろ入った方がいいんじゃないか?」

 

 

「あ、うん。でも、気をつけてよ、何時戻ってくるか分からないから。」

 

 

「分かってる。」

 

 

キョウの言葉にそう答え、社殿に上がる階段を駆け上がり、扉を僅かに開けてから一度扉から離れる。反応が無い事を確認しつつ、扉を開き中に入る。

 

 

室内は暗かったが、所々破れた壁や屋根から光が差し込み、何も見えないと言う事もない。予め目を暗さに慣らしておかなかった事を僅かに悔やみつつも、目が暗闇に慣れてくると部屋の様子がはっきりと分かる。

 

 

「誰かが使ってるのは間違いないな…。荷物まで置きっぱなしと言う事は、戻って来る意思も有ると言う事か。」

 

 

「ふうん、床のここが開いて床下に通じているんだ。なるほど、なるほど。手を加えていると言うことは、たまたま昨日、今日、ここに立ち寄ったと言う訳じゃなさそうだ。」

 

 

などと床下を調べながら独り言を呟いている。

 

 

壁際には葛篭や寝袋に寝具がいくつも置いてある。周囲に散乱しているのは恐らくは衣服だろう。

 

 

「みんな、女物だ。……って事はここを使ってる人間は全員女性なのか。しかも、ここに脱ぎ捨ててある服を見ると巫女が居るな。」

 

 

カズヤが他の場所を調べようと視線を逸らした隙に近づいたのだろう、キョウが衣服を調べながらそう言っている。

 

 

「どうする? 出かけてる奴らもそのうち戻ってくるだろうし、ここで待つか。」

 

 

「うーん、どうだろう。最悪の事態を考えると相手の正体が分からない以上鉢合わせしたくないな。」

 

 

「ま、どこかに隠れて待っているか。こんな所を使ってる人間なんて、大抵、元耶麻台国の関係者だろう。そいつ等にお前を引き渡せば、オレはお役御免だ。」

 

 

そう言いながら最初にキョウが調べていた木の床を蹴り、その付近にある出っ張りに手を触れ、持ち上げる。

 

 

「隠れるとしたら、やっぱりここだな。」

 

 

カズヤが床下へ潜り込むとそれに続いてキョウも床下へと潜り込む。床下も十分暗かったが、それでも外と通じているらしく光が差し込んでくるので、目が暗闇に慣れているカズヤには問題なかった。

 

 

「ここにしよう。カズヤはおいらが穏伏おんぶくの術で気配を消すから。」

 

「そんな事もできるのか、お前。」

 

 

初めて感心した様子でカズヤはキョウを見るとキョウは胸を張って答える。

 

 

「まあね、神器の精だからね、カズヤ一人ぐらいなら。」

 

 

「じゃあ、速くやってくれ。」

 

 

「ちょっと待っててね。」

 

 

キョウはカズヤの周囲を一回りして、地面の上に円を描く。次に円の周囲の何箇所かに何か不思議な文字を描いていく。

 

 

「はい、できたっと。この円から出ちゃ駄目だよ。出たら効力が消えちゃうからね。」

 

 

「ああ。」

 

 

カズヤがキョウの言葉に同意を示して腰を下ろすとキョウもその隣に腰を下ろした。

 

 

「ふう。少し疲れちゃったな。ねえ、カズヤここを使ってる人間が戻ってくるまで、ちょっと休んでおきたいから、銅鏡出してよ。」

 

 

「ほら。」

 

 

ポケットの中に入れておいた銅鏡を取り出す。

 

 

「多分ね、伊雅が持ってる神器がおいらの位置を教えてくれるはずだから、きっと明日になれば伊雅もこのあたりまで来ると思うんだ。」

 

 

「神器同士で引き寄せ合うと言う訳か。ただ、向こうはお前に比べて探知能力は劣っているんだろう?」

 

 

「そうそう。伊雅の持ってる神器はおいらに比べて探知能力が劣っているから、こっから近付いてやらないと反応しないんだ。」

 

 

「でも、向こうの探知能力の範囲内に入ったんだろう?」

 

 

「うん、このくらいの距離まで近付けば、向こうの神器がおいらの位置を見失うことはないはずだから。」

 

 

思えば龍騎とのライダーバトルの最終決戦を終えてから、歩き通しで訳の分からない化け物との戦闘までこなしたのだ。何故か龍騎との戦いの疲労は無いとは言え、疲労は溜まっている。

 

 

「なら、今日はゆっくり休ませてもらうか。」

 

 

「そうだね。あ、誰かがここに近付くのを感知したら出てくるから。じゃあね。」

 

 

それだけ言い残して、キョウは鏡の中に吸い込まれていった。

 

 

「…やれやれ。輝に負けて死んだと思ったら、訳の分からない世界で目を覚まして、運び屋の真似事か…。さーて、こいつを届けたらどうするかな? なあ、相棒ダークウイング。」

 

そう、今はミラーワールドの中にいる契約モンスター『ダークウイング』へと問いかける。

 

 

「そう言えば…輝は元気にやってるかな? まあ、オーディンはちゃんと倒しただろうしな。」

 

 

そう言って楽しそうな笑みを浮かべる。勝利を…願いを託した友への信頼は決して揺るがない。信じているのだ…輝の力を…。そうして、カズヤはキョウの張った結界の中で神社を使っている人間が来るまで待ちつづけた。

 

 

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