ネタ短編集   作:龍牙

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推しの子×デジモン 試作品 後半

「な、何無茶してるのよ!」

 

「いやー、流石にあのままガンマモンと一緒に敵に体当たりするよりは良いと思って……」

 

苦笑しながらそう言うクリスをかなは無言の涙目で睨み付ける。

必殺技の都合上……かながいなかったらガンマモンと一緒に突っ込んでいたのだが、流石にかなはそれは嫌だろうと考えた結果だ。

ガンマモンと共に突撃か自由落下、どちらも嫌だと言いたい気分なのは分かる。だけど、

 

「それに、こんなのは無茶には入らなさそうだ……」

 

「え……?」

 

カウスガンマモンの背中にクリスが座るとかなもそれにならう。

 

「先ずは状況を見てみてくれ。俺達はまだ元の場所に戻っていない」

 

「え? あいつをやっつけたら戻れるんじゃ……無いの……」

 

「ああ、残念ながら、もう一体敵がいる」

 

「……何で……」

 

俯いているかなからそんな声が漏れる。

 

「何で……あんな怪物が何人も私を殺そうとしてるのよ……」

 

「……えーと、変なWEBニュースとか届かなかったか」

 

俺の言葉にかなは黙って頷く。泣き出したかなに、

 

「……届いた……そんなの、下らないって言った……」

 

「あいつが君を狙ったのはそれが原因だ。下らない、とバカにした奴が次のニュースの内容に使われる」

 

そして、かなが有名人だから態々殺そうとした。

有名な天才子役の突然の死亡事故、しかも、不可解な状況での不可思議な事故での死に方、間違いなく、それは多くの人の注目を集めるだろう。

 

次のニュースのネタにする。そんな事のために殺されそうになった。命を狙われた。有名人だから殺されそうになった。

改めて恐怖が押し寄せたのだろうか。

 

「大丈夫、少なくとも今は安全だから」

 

そんな彼女を安心させる様に声をかける。

それに、俺の考えが正しかったら……こんな事をできるであろうデジモンがパブリモン程度の目的に力を貸す理由は無い。

 

空しかない空間、球体の内側に居るような状況。かなを飲み込み何かの姿。そこから分かるのは……

 

(……セフィロトモンか)

 

頭に思い浮かぶのは、そのデジモン。

この状況を作り出せるデジモンは、条件から考えられる中で一体だけ。

 

セフィロトモンの姿が、かなを飲み込む何かの姿を……ここに飛び込む際に一瞬だけ見えた気がした。

 

だが、セフィロトモンの事を考えると、パブリモンの下に付いているのならば、先程の戦いはもっと苦戦していたはずだし、自我を持って協力しているのは、その在り方を考えれば、パブリモンよりも遥かに格上の存在となる為に考えられない。

 

ならば、考えられるのは、

 

セフィロトモンに自我が無くて何者かに使われている。

別の何かが目的を持ってパブリモンに貸し与えたと考えれば、それが一番しっくりくる。

 

(……となると、セフィロトモンの狙いは、俺か?)

 

考えてみれば以前戦ったデジモン、奴との戦いで俺の存在に気付かれた。そして、セフィロトモンを送り込んで来たと考えてもいい。

考えすぎ、と言えばそこまでだが、そんな事は考えている場合ではない。

最大の問題は今俺達がいるのは、セフィロトモンの中だと言う事だ。

 

「少なくとも、ガンマモンが力尽きる前に此処から脱出しないと、パブリモンの思惑通りか」

 

俺の言葉に俯いていたかなが「え?」と言う顔で見上げてくる。

 

「ガンマモンが飛べなくなったら、俺たちは揃って転落、だからな」

 

後は十分に加速した所でセフィロトモンが俺達を外に吐き出せば、パブリモンの思惑通りに、皆んな仲良く地面に激突して、その先は考えるまでもなく地面に真っ赤な花火を広げる事になるだろう。

 

そして、最大の問題点は、此処からの脱出の方法が今の俺には無いことだ。

フロンティアは兎も角、コロンに於いて閉じ込められた太一達がセフィロトモンの中から脱出する際には、腹の中からホーリーエンジェモンがセフィロトモンを切り裂いていた。

こう考えると飲み込んだ当人の意思以外での脱出、そして侵入には、最低限完全体の上位クラス、最悪は究極体レベルの力は必要になってくる。

そして、現状、そんな力を出す方法で現実的なのは、

 

(……グルスガンマモンか)

 

頭に思い浮かぶのはガンマモンの第四の進化形態。

暗黒進化にして、本来の姿と言うべき、成熟期でありながら複数の完全体を相手にできる、究極体クラスの力を持った姿、グルスガンマモン。

強大であるが、ガンマモンとは別人格の様な存在で、制御できない代わりに、成熟期である為に、キッカケさえあればすぐにでも進化可能な姿だ。

 

でも、すぐにその考えを否定する。

 

(……無理だな)

 

グルスガンマモンを制御できる自信も無く、進化させる危険性、何より、今飛行できるカウスガンマモン以外の姿になれば、自分達がどうなるかは考えるまでも無い。

 

グルスガンマモンが素直に力を貸してくれるかどうかは別にして、飛行能力を持ったカウスガンマモンに乗っているから転落を免れているのだ。

 

「どうしようもないな」

 

「え?」

 

思わず諦めの言葉が出てしまった。今の俺の手札にこの状況をどうにかする手段はないし、進化しての戦闘はまだ二度目、完全体に進化出来るかはどうかは考えるまでも無い位に低い可能性だ。

 

敢えてガンマモンを退化させて力尽きたフリをする? それも無理だろう、吐き出されたとしても、こちらが再度進化するよりも、地面にぶつかる方が早い可能性もある。と言うよりも敵の立場なら間違いなくそうする。

 

どう考えても、現状で自分達を乗せて飛行が可能なカウスガンマモン以外への進化が出来ないのなら、完全に詰みだ。

 

…………思えば、前世に於いても色々と手を回したが、結局辿り着いた結末はあんな物だった。人間、どう頑張っても終わる時は終わってしまう、詰みという状況など幾らでもある。

三度目の人生は、十歳にもなれない短い人生だったが、もう諦めるしかないのかもしれない。

 

ふとそちらを見てみるとかなが泣いていた。

 

「泣くのは演技だけで十分だって……」

 

「……どうようもないんでしょ……?」

 

思わず口に出てしまった諦めの言葉、それが聞こえてしまったのだろう。弱々しく「……まだ、死にたくないよ……」と呟きながら泣いている。

 

(……そうだよな……)

 

例え、どうしようもないとしても、助けにきた者が先に諦める訳には行かない。

 

「……有馬、かなり無茶をするけど、大丈夫?」

 

「え……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、クリス、準備は良いか?」

 

「ああ、こっちはいつでも行ける」

 

カウスガンマモンのグリップにしっかりと捕まるクリスとかな。そして、クリスはカウスガンマモンと意識をリンクさせる。

 

やることは一つ、策でも何でもない力技。

 

「「ウインダ、インパルス!」」

 

必殺技さえも使ってカウスガンマモンの最高速度でセフィロトモンが此方に何か仕掛けるよりも早く、こちらが力尽きる前に、奴の体を撃ち抜く事。

 

ジェットコースターよりも速い速度でグリップに捕まるだけで振り落とされないのはカウスガンマモンの飛び方によるものか。

そんな事を考えてしまう中で、俺達を嘲笑うような不気味な笑い声が耳に入る。

敵が体内の空間そのものを操っているのなら、奴が認識するよりも早く飛べば良いと考えたが、甘い考えだったのか。そんな弱気な考えはすぐに投げ落とす。

 

少なくても自分よりも無力な者の前で、助けに来た、少しでも力がある奴が……

 

「俺が、今、諦めたら、ダメだろう!」

 

俺一人じゃ何も守れなかった。だけど、今はパートナーが、ガンマモンがいる。

 

「全力なんて……超えろ! ガンマモン!」

 

「ああ! クリス、俺とクリスなら……」

 

「俺達二人なら……」

 

「「超えられる!」」

 

その瞬間、クリスのデジヴァイスに浮かび上がる。重なり合う白と黒の星のような紋章、それが、限界を超えて、新たな力を得る証。

 

 

「カウスガンマモン! 超! 進化ぁ!」

 

光に包まれたカウスガンマモンが白い星を潜り、その姿を変える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、まだ帰ってこないクリスとかなを心配して探しに行くかと言う話になっていた撮影スタッフの一人がそれに気付く。

 

空の一部にヒビが入り、そこから極光が漏れ出す。

 

同時に悲鳴をあげて複数の球体が固まった異形の物体が現れる。

 

「え? UFO?」などと言う会話が撮影スタッフの中で交わされる中、

 

(デジモン、なのか……あれ?)

 

(デジモン、よね、あれ?)

 

デジモンについてクリスから聞いていたアクアとルビーは、上空に現れたセフィロトモンを呆然と眺めながら心の中で何となくそう思ってしまった。

 

苦しむ様に蠢くセフィロトモン。その中の一つのヒビの入った球体から極光が吹き出し、咆哮と共に白い体表のドラゴンが現れる。

 

「カノーヴァイスモン!」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

俺の名前は五反田 泰志。しがない映画監督だ。

森の中に入って行った子供二人がなかなか戻って来ないから、そろそろ探しに行った方が良いかという話になった時だった。

 

何処かから急に何かの悲鳴の様な変な音が聞こえて来た。映画を撮りに来てガチの怪奇現象か、と思って音の聞こえてくる方、空を見上げてみると……空に緑色の葡萄みたいなのが浮いてた。

後で調べてみたがあの形はセフィロトの樹って奴らしい。

 

それの一番上にある口から悲鳴が出ている様だ。宇宙船? 怪獣? なんて会話が聞こえて来やがるが、今度はそいつの体の球体の一つに罅が入ったかと思ったら、其処から光と一緒に何かが飛び出して来た。

 

『カノーヴァイスモン!』

 

そんな叫びと共に現れたのは白いドラゴンだった。え? 何で怪獣映画がリアルに起こってるんだ?

 

白いドラゴンはこっちが唖然としてると一度地面に降りたと思ったらまた空を飛んで中から飛び出した緑色のヤツと戦い始めた。

 

目の前で繰り広げられる怪獣大戦争。思わず言葉を失って見入っちまう。

 

って、コイツら撮りてえ! こんなすごい絵を撮らないなんてねぇだろ! 誰かカメラ回せ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「逃しはしない」

 

カノーヴァイスモンは近くの森にクリスとかなを下ろすと、慌てた様子で逃げようとするセフィロトモンへと翼を広げ向かっていく。

 

「ガリア、フィッシャー!」

 

カノーヴァイスモンへと向けてセフィロトモンの口から放たれる氷や炎を受けながらも叩きつけられる爪が、セフィロトモンの紋章のある体を切り裂く。

 

「おおおおおぉー!」

 

苦しむセフィロトモンに更に追撃の拳を叩き付けるカノーヴァイスモン。

 

((何やってるだよ(やってんのよ)、クリス!?))

 

カノーヴァイスモンとガンマモンが結びついてしまったのか、心の中で上空で繰り広げられる怪獣対決にツッコミを入れるアクアとルビーであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はデジヴァイスをセフィロトモンへと向けて意識をカノーヴァイスモンとリンクさせる。

 

カノーヴァイスモンの拳が何度も紋章が書かれた体に打ち込まれるたびに、セフィロトモンの苦痛に満ちた悲鳴が聞こえてくる。

 

(間違いない、あれが奴のコア!)

 

「トドメだ、カノーヴァイスモン!」

 

俺の脳裏に浮かぶカノーヴァイスモンの技の情報、選択する技は一つ。

 

俺の意識を感じ取ったカノーヴァイスモンもセフィロトモンから距離を取り、羽を閉じて光弾となり突撃する。

 

「「ドラゴニア!」」

 

砕かれた物を含め、自身の体をコアの盾にするが、セフィロトモンの体を貫きながら光弾となったカノーヴァイスモンは、次々と球体の体を撃ち抜いていく。

 

「お前の目的は分からないけどな……此処で完全に、倒す!」

 

「おおおおおおおおぉ!!!」

 

方向と共に最後に紋章のある体と口のある体を撃ち抜く。

 

極光が晴れ、カノーヴァイスモンが翼を広げるとセフィロトモンの体はデータの粒子となり消滅する。

同時にカノーヴァイスモンも光に包まれて消えていった。

 

「よっと」

 

後に残るのは俺とかな、そして、カノーヴァイスモンから退化して、パブリモンとセフィロトモンの二連戦の戦闘と、初めての超進化による疲労で目を回しながら落ちてきたガンマモンだけだった。

 

「頑張ったな、ガンマモン」

 

「疲れた〜、お腹すいた〜」

 

眠るガンマモンを受け止めて、デジヴァイスの中に入れた後、この状況をどうするかと言う考えに至ったが、かなの方も怪物に襲われたなど誰も信じないと考えた様子で、簡単に話し合った結果、遅くなったのは道に迷ったと言うことに落ち着いた。

 

まあ、元の場所に戻った後、スタッフの人達に散々怒られたのは当然の結末と受け入れたのだが、アクアのルビーの視線と、突然現れた怪獣同士の対決の話題に、今更ながらデジモン同士の戦闘を見られていた事に気が回ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「星野、クリス」

 

帰りの車の中で、台本の端に追加された名前を見やる。本名か芸名かは判らないが、命を助けてくれた恩人の名前を忘れぬよう、しかと心に刻み込む。

 

「……お礼、言ってなかった」

 

そう呟いたところで気が付いた。あの時のハンカチを返していないことに。

懐から取り出す。「Crystal」と刺繡がされた、白くも見えるブルーの手巾。

 

迫る死の恐怖から救ってくれた青いドラゴンに乗った彼の姿が、白いドラゴンと共に自分を救ってくれた姿が何度も脳裏に蘇る。

 

あの時に伸ばされた手の温もり、抱き止められた時に感じた胸の高鳴りが、何なのか、それはまだ分からなかった。

 

本来の時の流れよりも早い、デジモンに纏わる二度目の再会までまだ数年の時を要する。

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