ヨン様の妹…だと…!?   作:橘 ミコト

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制御…だと…!?

 ヨン様の斬魄刀が始解したらしい。

 

 

 早くない? 

 まだ真央霊術院に入ってそんなに経ってないよ? 

 

 これが公式チートの力なのか……。

 

 ちなみに、同期ではないものの同年代にあの天才『浦原喜助』と瞬神『四楓院夜一』がいるようだ。

 あと、一年の時の現世研修の時に引率してくれた六回生が、あの『平子・ハゲ・真子』だったみたい。アンチじゃないよ? むしろ好きだよ? 

 

 黄金世代じゃん。

 幻のシックスメンどころか定員から一人足りないけど。

 

 次の黄金世代はやっぱりルキアとかの副隊長同期組なるんですかね。

 こっちも五人……いや、69入れたらギリ五人。

 幻の六人目は青鹿君、キミに決めた! 

 いや、幻だったら蟹さんの方が幻っぽいけど。

 

 マジでどうでもいい事を考えてしまった。

 

 それよりもヨン様ですよ、ヨン様! 

 

 これでぶっ壊れ斬魄刀『鏡花水月』が解禁された訳です。

 きっとすぐに霊王とか五大貴族とかの世界の成り立ちを知っちゃうんだろうなぁ。

 鏡花水月使えば忍び込み放題だもんね。

 

 そう考えると、ヨン様の入学前に俺が余計な事を言った感が凄い。

 

 ガバ理論で「ヨン様と一緒に愉悦すればええやん!」なんて考えたが、果たしてそんな事できるのだろうか。

 

 よく考えなくても、どうせ滅却師が尸魂界へとその内攻めてくるのだ。

 白いヨン様がいたら負けない気もするが、そうなるとヨン様は強さを求めていない事になる。

 

 

 

 そんなヨン様ちゃうやんっ!

 

 

 

 これだから中途半端に知識だけもってる凡人は。

 本当にすみませんでした。

 俺のせいでヨン様が闇落ちするとは思えないけど、ていうか死神になる前から闇落ちしてたっぽいし。

 

 時々感じた恐怖は今でも覚えてますことよ? 

 

 

 さて。

 では、こっから俺はどう行動すべきだろうか。

 

 未だに実家からは殆ど出してもらえず、基本的に霊圧を解放する事は禁止。

 お兄様は長期休暇に時々顔を出しにくるくらいで、現在そこまで会う機会はない。

 

 ある意味、何か行動を起こすならばお兄様が離れている今がチャンスな気もするが……。

 

 

 絶対バレるって。

 間違いない。

 

 

 ヨン様こえぇよぉ。

 何もしてなかったとしても「何かしてるんじゃ?」と疑心暗鬼に陥れる天才だよぉ。

 

 

 やっぱりここは無難に魂魄の強度を高める方法を模索するのが賢明なのかなあ。

 

 胡散臭い駄菓子屋店主がまだ死神になったばかりらしいから、多分まだ虚化の研究とかは進んでない気がするけど。

 でも、浦原喜助の前任十二番隊隊長、後の零番隊南方神将『曳舟桐生』さんとか、可能性としては北方の『修多羅千手丸』さん辺りが思いついていたりはしそう。

 

 流石に所詮学生のヨン様もまだ虚化とか思いついてないじゃろ。

 だって崩玉作るの浦原さんやし、ヨン様が再現しようとしても出来なかったんでしょ? 

 ヨン様も浦原喜助の才能は認めていた訳だし、現状の研究成果から虚化とかはね、流石にね。

 

 ……フラグかな? 

 

 少し寒気を感じてブルリと身が震える。

 

 え、ウソ、もしかして思いついちゃってるとか? 

 ありえないはありえない、だっけ。

 一応、もう思いついて行動を開始している前提で考えてみようか。恐ろしいわ。

 

 

 なんだか桐生さんが義魂の概念を既に確立しているようで、そこから発明された義魂丸によって現世駐在隊士の活動範囲がグッと広がったとかいう噂を女中から聞いた。

 

 これ応用したら私の魂魄強化とかできない? 

 まあ、どうやって話を通すのかって問題はあるんだけど。

 

 私が元気に活動する方法としては、単純な考えで二つ。

 

 ・霊圧を魂魄に合わせて抑える

 ・魂魄を霊圧に合わせて強化する

 

 現状は前者の方法を採って普通に暮らしている訳だけど、こうなると死神としての実力が頭打ちになってしまう。平隊士レベルで。

 ヨン様と戦う事を考えるならどう考えても無理ゲー。

 

 だから、俺はどうにかして後者の魂魄を強化する術を見つけたい。

 

 後は”改造魂魄”とか? 

 でもあれ良いイメージないんだよ。

 コンは良いんだけど、死体を虚に特攻させるための計画でしょ? 

 

 生き残るために考えてるのに、死体を使う事を前提に考案された技術はちょっと……。

 

 まあ、詳しい理屈とかはチンプンカンプンなんで、有効そうなら吝かでもない。

 

 

 

 

 そんな感じでうんうんと無い頭を唸って打開策を考えていたある日の事だった。

 

 

「どうもー☆」

「ほう、こやつが惣右介の妹御か。中々に凛々しい顔をしておるの」

 

 

 なんか浦原喜助と四楓院夜一が家に来た。

 

 すごいびっくりした。(小並感)

 

 まさかお兄様とこの二人が家に遊びに来るくらい仲良しだとは思ってもみなかった。

 

 あれ、ヨン様って浦原喜助の事めっちゃ嫌いだったんじゃないの? 

 

「那由他、挨拶を」

「藍染那由他です」

 

 簡潔に答える。

 突然すぎて上手く対応できなかった。

 もっとも、元々口下手だから余裕を持っていても大して変わらなかったと思うが。

 

「ボクは浦原喜助って言うっス。これでも藍染サンの先輩に当たるんですよー」

「儂は四楓院夜一という。まあ、この胡散臭い奴と同じあやつの先輩じゃな」

 

 俺の自己紹介に一瞬ポカンとした顔をした二人だったが、何が可笑しいのかクスクスと笑い名乗ってくれた。

 めがっさええ人たちやん。

 

「すみません。那由他は少し人見知りする子でして」

「構わん構わん。別に畏まって欲しい訳でもないしの。むしろこやつの態度の方が良いくらいじゃ」

「そうっスね。ボクもそっちの方が気楽で良いっス」

 

 俺の顔見ての第一印象で気楽という言葉を吐ける人など初めて見た。

 やっぱり観察眼とか凄いのだろうか。しゅごい。

 

 じゃあ、俺の考えはお兄様にも筒抜けなわけだ。

 

 ポーカーフェイスが役に立たない事が間接的に証明されてしまった。

 なんてこったい。

 

「名前を聞いて那由他も分かったと思うけれど、二人とも貴族の方々だ。あまり失礼のないようにね」

「かーっ! 惣右介は相変わらず堅っ苦しい奴じゃのお! わざわざ言葉にせんでも良いじゃろうに」

「そういう訳にもいきません。特に四楓院殿には」

「お主にも喜助くらいの緩さが必要じゃ」

「あれ? ボクに対する遠回しな嫌味っスかね?」

「気のせいじゃろ」

 

 随分と仲が良いですね。(困惑)

 

「ほれ、お主らが馬鹿な事をやっとるせいで那由他が困っておるではないか」

 

 どうして分かるんですかね。(大困惑)

 

 俺の表情ほとんど変わってないんだよあぁ。

 

「不思議そうッスね。まあ、夜一さんはお家柄ッスよ」

「喜助、お主とてそういう人の腹を読むのは得意じゃろ。儂だけ変な奴扱いするでない」

 

 お兄様がニコニコしているのが怖い。

 

 絶対なんか理由がある。

 そうに決まっている。

 でもその理由が分からん。

 

 一体どういう事だってばよ! 

 

「まあ、今日は少し顔を見に来たようなもんじゃ。そう緊張せんでも良い」

「そうそう。藍染サンも気楽にして下さいッス」

「それだと兄と妹どちらを呼んでおるのか分からんではないか」

「んー。じゃあ、お兄さんの方を藍染サン、妹ちゃんの方を那由他サンにしましょう」

「どうしてじゃ?」

「そりゃあ呼ぶなら女の子の名前の方が良いからに決まってるじゃないッスか!」

「那由他、喜助を殴って良いぞ」

 

 できません。

 

「そろそろ本題に」

 

 しばらくわちゃわちゃとクッチャべっているのをポカンと眺めていたら、お兄様が微笑みながら話を進め始めた。

 

 本題? 

 

「おお、そうじゃったな。喜助」

「はいッス」

 

 チラリと視線を合わせたのは浦原さんと夜一さん。

 なんか四楓院様と呼ぶな、なんて言われたので仕方なく下の名前で呼ぶ事になった。

 浦原さんも「是非とも喜助サンって!」と言っていたが勿論遠慮させてもらっている。

 

 いや、呼んでもいいんだが、一瞬お兄様の圧が増したのが怖かったんだ。

 

 霊圧じゃなくて笑顔の圧だから背中を向けていた二人は気付いてないだろうけれど。

 

「では、ちょっと失礼して」

 

 ゴソゴソと懐から何かの機械を取り出す浦原さん。

 この人、既に発明家だったのか。さす浦。

 

「藍染サンから那由他さんの魂魄の状態を聞いたので、何かお力になれるかと思ったんスよ」

「残念ながら、こやつの作った物は本物じゃ。試してみる価値はあるじゃろうと感じての」

 

 驚いてヨン様を見る。

 微笑みを返された。

 

 い、一体どんな悪魔的思考で話したんだっ!? 

 

 怖いよぉ。

 ヨン様こわいぉ……。

 これが何の布石になるか分からないよぉ。

 

「ふーむ」

「どうじゃ、喜助?」

「非常に珍しい、と言えますね。魂魄そのものには問題ありませんし、霊子の組成にも問題はないです。藍染サンが仰ったように膨大すぎる霊圧が魂魄に見合っていないだけッスね。つまり、霊圧を抑える事ができれば那由他さんは普通の生活を送れます」

「して、それは可能なのかの?」

「ボクを誰だと思ってるんスか?」

「胡散臭い奴じゃの」

「酷くないッスか!?」

 

「それで、その道具とは?」

 

「あ、はい。これッスよ」

 

 一瞬だけお兄様から漏れ出た霊圧に二人がビビる。

 珍しっ。お兄様が普通に威圧したよ。

 

 そして、浦原さんが取り出した二つ目の機械はブレスレットのような物だった。

 

「これを両方の手首につけて下さい。霊力の噴出口である霊穴を強制的に塞げます」

「無理やり塞いで大丈夫なんじゃろうな?」

「はい。普通なら出口を失った霊力が暴走するんスけど、正確には那由他さんの霊圧制御を補助するようなものッス」

「まあ、詳しい事は儂には分からん。惣右介」

「はい。那由他、浦原さんの能力は僕も信頼している。どうか付けてくれないかな?」

 

 ほんとにこの人お兄様? 

 もしかして鏡花水月なんじゃない? 

 

 でも俺、まだお兄様の始解とか見てないんだよね。

 てことは本物。

 マジもん? マジポン? 

 

「はい」

 

 特に逆らう理由もないので、大人しく腕輪を付けてみる。

 

 少し息苦しいものや体の重みが増えたのを感じたが、気分は逆にずっと良くなった。

 今までは体の怠さや慢性的な頭痛、吐き気、体の節々の痛みなどなど、色々と体調的な悩みがつきまとっていたのが嘘のようだ。

 多分、霊圧による身体能力のブーストが消えたせいで体を重く感じたのだろう。

 

「凄い……」

 

 さす浦。

 でもこの発明品、確か空座町決戦で崩玉藍染を自爆させたアレと似たような物じゃない? 

 ヨン様に見せていいん? 

 

 今の時点でそんな予防線張れる訳ないですよね。知ってた。

 

 確か、浦原さんはヨン様とは逆の発想における天才だ。

 ヨン様は未来予知かと思う程の予防線や暗躍をごまんと張り巡らせるが、浦原さんは起こった出来事に対する最善手をすぐに選択できる奇才。

 

 つまり、起こってもない事に対する手を打つ思考をあまり持っていないのだ。

 現世へ追放されてからは藍染に計画に対するカウンターを用意していた訳だし、そこまで間違ってもいないと思う。

 

 この人も「主人公の味方」っていう補正があるけど、よく考えたらヤバイ人種だからなぁ。

 

 天才ってヤバイ奴しかいないのか。ヤバイな。

 

「どうだい、那由他」

「はい、気分がとても軽くなりました」

 

 お兄様の目が笑ってない気がする。

 それは俺に対してか浦原喜助に対してか。

 

 恐らく両方だと思う。

 

 浦原さんは言わずもがなだけど、ヨン様好みの膨大な霊圧が俺からなくなっちゃったしね。

 正確には無くなった訳ではないんだけどさ。

 

 これでMAXレベルが平隊士かー。

 

 でも、霊圧制御が上手く行ければ席官も夢じゃない? 

 まあ、魂魄強度は変わってないから解放した瞬間破裂しますが。なにそれこわい。

 

 

 

 何の問題も解決してないんだよなぁ……。

 

 

 

「まあ、根本的な問題は解決してないんスけどね!」

 

 浦原さんもそこは当然分かっている。

 

「ボクの方でもどうにか出来ないか考えてみます」

「ありがとうございます」

 

 しかし、これで俺が日常生活をする分には何も問題がなくなった。

 平とは言え、死神になれるだけの力も安定して振るえる。

 

 死神になるかどうかは少し考えようと思うけれど。

 

 ヨン様以前に虚にすら殺されそうだからね。

 

 でも、ヨン様と愉悦したいなら死神にはなるべきだよなー。

 

「いいっスよー。何か困った事があったらまた教えて下さい」

「では、儂らはお暇するとしようかの」

「お見送りします」

「気にせんでも良いのじゃが……」

「そういう訳にも参りません」

 

 苦笑する二人を伴って部屋を出ていくお兄様。

 ふと、俺の方へと振り返ると、

 

 

「良かったよ、那由他」

 

 

 割と邪悪な顔で嗤っていた。

 

 俺「ありがとうございます」ってお礼言ったくらいなんだけど、何がヨン様にとってプラスに働いたのか分かんない。(白目)

 

 ねえ、何が良かったのぉ? 

 めっちゃこわいぉ……。

 

 

 

 

 

 ▼△▼

 

 

 

 

 

 私は失望した。

 

 浦原喜助にである。

 

 彼は真央霊術院の先輩に当たったが、今まで出会ってきた凡愚とは一線を画す才能を持っていた。

 知力でもって私と同等と感じさせたその叡智は瞠目に値する。

 

 だからこそ、彼が那由他にどういった手法を取るのか気になった。

 

 

「那由他さんの霊圧制御を補助するようなものッス」

 

 

 その言葉を聞いた時、私は失望したのだ。

 

 私や那由他に並びうる才を持ちつつ、彼は弱者の理論を展開していた。

 

 お前ほどの才能があるにも関わらず、何故お前は動かない。

 何故他者からの支配を唯々諾々と受け入れ続ける事が出来る。

 

 凄いと口に出して驚いていた那由他に対しても、私は絶望しかけた。

 

 しかし彼女の目を見て、それは早計であったと知る。

 

 

 ──どこか不服そうな色を宿していたのだ。

 

 

 あれは自身の安定化に喜んでいた表情ではない。

 

 そうだ。

 彼女は私と同じように、弱者に寄り添う事なく高みを目指せる人物だ。

 

 ならば、力を押さえつけられた環境に甘んじるとは思えない。

 

 その片鱗が見えただけで、私の胸中は安堵に襲われた。

 

 

 驚く。

 まだ自分にもそのような感情があったのかと。

 

 もはや他者に期待する事などないと、そう思っていた私だが、やはり那由他は私にとって特別であったらしい。

 

 

 

 その後も表面的な付き合いを浦原喜助とは続けた。

 

 奴の頭脳から導き出される研究成果は、失望したとは言え私をして賞賛に値するものが多かったからだ。

 それを抜きにしても、死神となった私は他者から羨望の眼差しを受けられるように振舞った。

 

 全ては那由他と私が神の高みを目指すために。

 

 そして、鏡花水月を使い死神と虚の垣根を超える研究を続けていた時だった。

 

 浦原喜助も私と同じ仮説へと至ったのだ。

 

 再び、私は奴へと期待した。

 

 一度は裏切られたものの、考え方や倫理観など簡単に変わる。

 主観などという矮小なものに囚われる個人という存在は少しの出来事で影響を受ける。

 

 そのため、私と同じ発想にたどり着いた彼がどのような形で研究を進めるのか非常に興味があった。

 しばらくは私の研究を秘匿し、彼の動向を探るのが得策だろう。

 

 

 

 しかし、いずれ時が来たら──。

 

 

 

 私の隣には、浦原喜助が立っているのだろうか。

 

 

 

 

 いつものように、鏡花水月を使い私は研究を続ける。

 

 今までは机上の空論であったのだ。

 すぐに結果を出せるとは思っていなかったが、やはり中々に難航していた。

 

 まずは那由他の魂魄を安定させる必要がある。

 つまり、死神の虚化を第一段階として研究を進めていた。

 

 

 

 その結果、私は見つけてしまった。

 

 

 

 ──この世の成り立ち、霊王と五大貴族の原罪を。

 

 

 

 

 

 

 

 しばらく放心していた。

 

 私は、神の頂きにたどり着けば『力』を手に入れられると錯覚していたのだ。

 

 神など初めからいなかった。

 

 神と崇められてきた霊王ですら、弱者のための人柱でしかなかった。

 

 

 

 私は再びこの世に絶望した。

 

 

 

 

 

 何故だ。

 何故だっ。

 何故だっ! 

 

 

 何故だぁっ!! 

 

 

 何故、力を持つ者が導く事を放棄する!? 

 

 何故、弱者に利用されるだけの存在であろうとする!?

 

 世界の均衡を保つため? 

 

 違う、違うっ! 

 

 それは敗者の理論だ! 

 

 

 

 勝者とは常に世界がどういうものかでは無く、どう在るべきかについて語らなければならない!!!! 

 

 

 

 私はこれからどうすべきなのか。

 

 決まっている。

 

 

 

 耐え難い天の座の空白を終わらせる。

 

 

 

 これからは──私が天に立つ。

 

 

 

 

 

 

 霊王を堕とす。

 

 

 そのためには霊王と同格の、超越者としての霊格へと至らなければならない。

 

 元は那由他が切っ掛けで始めた研究だが、彼女はまるで私を導いてくれたかのようだ。

 あの子の目はどこまでも真実を見通すのだろうか。

 素晴らしい。

 

 たとえ、偶然であったとしても重なれば必然だ。

 

 那由他にはきっと才能を超えた“ナニか”があるのだろう。

 

 

 それは『未知』。

 

 

 私に常に“知らない”や“足りない”を那由他から教えてもらえる。

 それだけで、あの子は私にとってとても価値ある宝石のようだった。

 

 

 しかし、いくら鏡花水月があるとはいえ、私一人だけでは手が足りない部分も出てくる。

 

 知力の問題ではなく物理的な問題だった。

 

 

 

 そんな時である。

 

 

 

 

 

 

 世界を憎み、憎悪し、狂気に犯されながらも世界を愛そうと努める男。

 

 

 

 

 ──東仙要と出会った。

 

 

 


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